社会人になって習い事やサークルに入っても、なかなか打ち解けられない。新しくできた教室を7か月追った研究では、どの教室も回を重ねるごとに親しさが増していた

在宅勤務が増え、用事の多くはネットやAIで済むようになりました。人とのつながりを取り戻そうと、習い事やサークルに入ってみた。それなのに、何回通ってもなんとなく輪に入れない。そんな自分にがっかりしている人もいるはずです。新しくできた大人向けの教室を7か月追ったイギリスの研究では、どの教室でも、回を重ねるごとに親しさは少しずつ増えていました。
3行でわかる
- イギリスの大人向けの教室7つを7か月追った研究では、歌・手芸・創作文のどの教室でも、毎回の授業のあとに「クラスとの近さ」が上がっていた。
- 歌の教室は最初の1か月で一気に打ち解け、手芸と創作文の教室はゆっくり近づいた。7か月後には、両者の差ははっきりしなくなっていた。
- 動きをそろえる活動が仲間意識を高めることは、60件の実験のまとめでも中くらいの効果として示されていた。打ち解けるのが遅いのは珍しくなく、続けることと、一緒に動く場を選ぶことが手がかりになる。
01 結論から言うとなかなか打ち解けられないのは、自分のせい?
そうとは限りません。新しくできた教室を追った研究では、親しさは数か月かけて少しずつ増えるのがふつうでした。最初の数回で輪に入れなくても、通い続けるうちに追いつく可能性があります。
この研究では、教室が始まって1か月の時点で、授業前の「クラスとの近さ」は7段階で2〜3点台でした。7か月後には、どの教室も5点台まで上がっていました。
打ち解けるまでの速さは、活動の種類で違いました。みんなで声を合わせる歌の教室は、最初の1か月で一気に近づきました。それぞれが自分の作品に取り組む手芸や創作文の教室は、ゆっくりと近づき、7か月後には追いついていました。速いか遅いかの違いはあっても、続けた人たちは同じくらいの所までたどり着いていたのです。
02 研究とデータでわかっていること新しい集まりで、親しさはどう育つ?
教室の親しさは、毎回の授業で少しずつ上がり、数か月かけて育っていました。みんなで動きをそろえる活動は、最初の打ち解けを早める傾向がありました。ただし、研究の数はまだ少なく、条件も限られています。
Pearce・Launay・Dunbar(2015年)[1]
研究のために新しく作られた大人向けの教室7つ(歌4、手芸2、創作文1。1回2時間、週1回)を7か月追った。1か月、3か月、7か月の時点で、授業の前と後に「クラス全体との近さ」を1〜7の絵の尺度で答えてもらった。
どの教室でも、3つの時点すべてで、授業のあとに近さが上がっていた。歌の教室は1か月の時点で1回の授業での上がり幅が大きく(平均1.80点。手芸・創作文は0.57点)、その後は上がり方がゆるやかになった。手芸・創作文の教室は一定のペースで上がり続け、3か月と7か月の時点では、授業での上がり方に両者の差ははっきりしなくなった。7か月後の授業後の近さにも、差は見られなかった。
対象: イギリスの成人学習の教室の参加者135人(歌84人、手芸・創作文51人、18〜83歳、9割近くが女性) / 限界: 参加者を教室にくじで割り振っていない。3つの時点すべてに答えたのは半分強だけ。手芸・創作文は個人作業で、「一緒に一つのものを作る」効果と歌そのものの効果は区別できていない。
Rennung・Göritz(2016年)[2]
一緒に体を動かす、リズムを合わせるなど、人と動きや感覚をそろえる体験が、相手への好意や協力につながるかを調べた60件の実験をまとめた。気持ちの面(好意や一体感)でも、行動の面(協力や手助け)でも、中くらいの効果があった(効果の大きさを示す値でそれぞれ0.49と0.45)。
実験者が仮説を知っていた実験では効果が大きめに出ていたが、知らない条件にしぼっても、気持ちの面の効果は残っていた(0.30)。
対象: 42本の論文に含まれる60件の実験(1988〜2015年。多くは学生) / 限界: ほとんどが実験室での短い実験で、教室やサークルのような場で長く続くかはわからない。
Tarr・Launay・Dunbar(2016年)[3]
初対面の人どうしが音楽に合わせて一緒に踊る実験で、ほかの人と動きがそろって踊った人は、そろわなかった人より、相手とのつながりを強く感じていた。ただし、協力の度合いを測るゲームでは、協力が増えたわけではなかった。
対象: 実験室に集まった初対面の成人 / 限界: 1回だけの実験室での結果で、その後の友人関係につながるかは調べていない。
03 まだわかっていないことどのくらい通えば、友だちになれる?
はっきりした目安は、まだわかっていません。ここで紹介した研究は、クラス全体への「近さ」を測ったもので、特定の人と友だちになれたかや、孤独感が軽くなったかは調べていません。
- 教室の研究はイギリスの7クラスだけで、参加者の多くは中高年の女性。日本の社会人のサークルや習い事で同じ結果になるかは確かめられていない。
- 参加者は自分で教室を選んでいて、途中でやめた人も多い。続けた人がもともと打ち解けやすかった可能性がある。
- オンラインの集まりで、同じように親しさが育つかはわからない。
- 人見知りが強い人や、人づきあいに強い不安がある人で、同じペースで近づけるかは調べられていない。
04 今日からできるセルフケア打ち解けられないとき、何から始める?
「最初の数回で打ち解けなくてふつう」と見通しを持ち直し、同じ集まりに続けて顔を出します。一緒に声や体を動かす場を1つ選び、授業の前後に小さな会話を1つ足すのも手がかりになります。
「3か月は様子見」と決めて通い続ける
研究では、ゆっくり近づいた教室も7か月後には追いついていました。数回で判断せず、「3か月は通ってから考える」と手帳に書いておきます。
目安 週1回、3か月
一緒に声や体を動かす集まりを1つ選ぶ
合唱やダンスのように、みんなで声や動きをそろえる場は、最初の打ち解けが早い傾向がありました(研究で調べられたのは歌と踊り)。新しく探すなら、こうした場を候補に入れます。
目安 探すのに1回15分
授業の前後に、ひとこと会話を1つ足す
研究者は、手芸などの教室では一人ひとりとのやりとりを重ねることで親しさが育ったと考えています。「今日のところ、難しかったですね」のように、その日の活動について1人に話しかけます。
目安 1回1分、毎回1人
久しぶりの相手に連絡するときの研究は昔の友達に連絡したいけど気まずいときの記事に、話したあとに一人反省会が止まらないときは「変なこと言ったかも」が止まらないときの記事にまとめています。
05よくある質問
何回通っても輪に入れないのは、人づきあいが下手だから?
そうとは限りません。イギリスの大人向けの教室を7か月追った研究では、親しさは数か月かけて少しずつ増えていました。個人作業が中心の手芸や創作文の教室では、歌の教室よりゆっくり近づき、7か月後に追いついていました。活動の種類によって、打ち解けるまでの時間は変わります。
歌が苦手でも、効果はある?
研究の歌の教室は、プロの講師が教える地域の大人向けの教室でした。歌の上手さが関係するかは調べられていません。60件の実験のまとめでは、歌に限らず、動きやリズムをそろえる体験全般で仲間意識が高まる傾向がありました。
知り合いが1人もいない集まりに行くのが不安。
研究の教室でも、始まる前にクラスに知り合いが1人もいなかった人は約3割いました。それでも、どの教室でも回を重ねるごとに近さは上がっていました。最初の数回は、話せなくても「顔を出せた」で十分です。
オンラインのコミュニティでも同じように親しくなれる?
まだわかっていません。ここで紹介した研究は、どれも同じ場所に集まって行ったものです。オンラインの集まりで、同じペースで親しさが育つかは調べられていません。
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出典
- Pearce E, Launay J, Dunbar RIM (2015). The ice-breaker effect: singing mediates fast social bonding. Royal Society Open Science, 2(10), 150221. https://doi.org/10.1098/rsos.150221
- Rennung M, Göritz AS (2016). Prosocial Consequences of Interpersonal Synchrony: A Meta-Analysis. Zeitschrift für Psychologie, 224(3), 168-189. https://doi.org/10.1027/2151-2604/a000252
- Tarr B, Launay J, Dunbar RIM (2016). Silent disco: dancing in synchrony leads to elevated pain thresholds and social closeness. Evolution and Human Behavior, 37(5), 343-349. https://doi.org/10.1016/j.evolhumbehav.2016.02.004


