画面と情報で気持ちが張りつめた日、香りをかぐと落ち着く?日本の女性40人の実験では、シークワーサーの香りを2分かいでも、香りのない空気をかいだ組と緊張の差はなかった

チャットと通知とAIの答えを追いかけて、気づけば肩に力が入ったまま。そんなとき、好きな香りをかいでひと息つく人は多いと思います。香りで本当に気持ちが落ち着くのか、研究を調べると、効いた実験と効かなかった実験の両方があり、どれも参加者は20〜40人と少数でした。
3行でわかる
- 日本の女性40人を2組に分けた実験では、シークワーサー(沖縄の柑橘)の香りを2分かいだあとの緊張の点数は、香りのない空気をかいだ組と同じだった。
- ロシアの20人の実験ではラベンダーを5分かいだあと不安の点数が下がったが、脳波や心拍のゆらぎは変わらず、効き方は「気持ちの上」にとどまっていた。
- 香りは「効くかもしれない、手軽な一息」くらいに考え、好きな香りで、画面から離れる合図として使うのが研究に合っている。
01 結論から言うと張りつめた気持ちは、香りで落ち着く?
まだはっきりとは言えません。香りをかいで不安の点数が下がった小さな実験はありますが、香りのない空気と比べたきちんとした実験では差が出ませんでした。体の反応まで変わった結果も少なく、研究の数そのものが足りていません。
香りは鼻から入ると、気持ちに関わる脳の部分にすばやく届くと考えられてきました。そのため、ラベンダーは落ち着く、柑橘はすっきりする、といったイメージが広く知られています。
ただ、研究の多くは病院や歯科などの「これから治療を受ける場面」で行われてきました。画面や情報の疲れのような日常の緊張に香りがどう働くかを、健康な人で確かめた実験はまだわずかです。
02 研究とデータでわかっていること香りをかぐと、気持ちや体はどう変わる?
比較の組をおいた日本の実験では、柑橘の香りで緊張は変わりませんでした。ラベンダーやコーヒーの香りで気分の点数が下がった実験もありますが、人数が少なく、体の指標はほとんど変わっていません。
Yamaguchiら / 宮崎大学(2026) [1]
18〜39歳の健康な女性40人を、シークワーサーの精油の香りをかぐ組と、香りのない空気をかぐ組にくじで分けました。小さな瓶を鼻の下で開け、2分間ふつうに呼吸してもらったあと、緊張の度合いを質問票で答えてもらいました。緊張の点数の中央値はどちらの組も13.0点で、差はありませんでした。瞳孔の反応や脳の血流にも差はなく、手先の皮膚の温度はむしろ香りのない空気の組でより上がっていました。
対象: 日本の18〜39歳の健康な女性40人(7割近くが大学生) / 限界: 参加者はもともとストレスの低い人たちで、かいだのは2分ずつだけでした。著者らは、香りの好みが結果に影響した可能性を挙げ、好みを事前に確かめた、より長い実験が必要だと書いています。
Morozovaら(2025) [2]
歯科の診療室で、健康な大人20人に、水・ラベンダー・なじみの薄いムスク系の香りを、目を閉じて5分ずつ順番にかいでもらいました。ラベンダーをかいだあとは、自分で答える不安の点数が、実験前より、また水のにおいのときより低くなっていました。一方で、脳波や心拍のゆらぎには変化が見られませんでした。
対象: ロシア・モスクワの健康な大人20人(男女10人ずつ、平均36歳) / 限界: 予備的な研究で人数が少数です。どの香りでも最初にかいだあとに不安の点数が下がっており、時間がたって場に慣れた影響も混ざっています。
Fukatsuら / 昭和薬科大学(2026) [3]
20代の大学生20人にコーヒーの香りを5分かいでもらい、前後の気分を比べました。気分の乱れを表す合計点は平均で約20.5点下がり、疲れや緊張、落ち込みの点数も下がっていました。脳波のリラックスの指標は上がりましたが、心拍や心拍のゆらぎには変化がありませんでした。
対象: 日本の20〜29歳の大学生20人 / 限界: 香りをかがない比較の条件がありません。著者ら自身が、時間の経過、静かに座っていたこと、期待などの影響と区別できないと書いています。
Avcı・Avcı(2026) [4]
集中治療室で働く看護師に香りを使った研究を集めたまとめです。5件・合計254人の研究があり、香りでストレスが減る方向の結果は比較的そろっていましたが、不安が減るかどうかは研究によって分かれていました。著者らは、確かな結論や日常的な導入を勧めるには、質の高い研究がさらに必要だと結論づけています。
対象: 集中治療室の看護師(5件・254人、くじで分けた試験は2件) / 限界: 研究によって使った香りや方法(かぐ・肌に塗るなど)がばらばらで、まとめて効果の大きさを出すことはしていません。
4つの研究を合わせると、香りで「気持ちが少し楽になった」と答える結果はあるものの、比較の組をきちんとおくと差が消えることもある、という段階です。香りは強い効き目を期待するより、ひと息つくきっかけとして使うのが研究に合っています。
03 まだわかっていないことどんな香りなら、誰に効く?
まだわかっていません。香りの種類、かぐ時間、香りの好みによって結果が変わる可能性が指摘されていますが、それを確かめた大きな実験は見つかりませんでした。画面や情報の疲れで確かめた研究もまだありません。
- 画面作業や情報の多さで疲れた状態から香りをかいだとき、疲れや緊張が軽くなるか
- 好きな香りと、一般に「落ち着く」とされる香りで、効き方が違うか
- 何分くらいかげばよいか(調べられたのは2〜5分の短い時間だけ)
- 効いたと感じるのが香りのおかげか、目を閉じて休んだことや期待のおかげか
- 男性や年齢の高い人、ストレスの強い人でも同じ結果になるか
04 今日からできるセルフケア張りつめた日、香りをどう使えばいい?
新しく何かを買う必要はありません。家にある好きな香りを使い、画面から目を離して数分ゆっくりかぐ、という「一息の合図」として試すのが、研究の結果に合った使い方です。効いたかどうかは自分の気分で確かめます。
家にある「好きな香り」を一つ決める
いれたてのお茶やコーヒー、みかんの皮など、自分が心地よいと感じる香りを選びます。日本の実験では、香りの好みで結果が違う可能性が示されていました。
目安 最初に1回・1分
画面から離れ、目を閉じて香りをかぐ
作業の区切りに画面を伏せ、目を閉じてゆっくり呼吸しながら香りをかぎます。ラベンダーの実験でも、目を閉じて5分かいでいました。
目安 1回・3〜5分
前と後の気持ちを10段階でメモする
かぐ前とあとに、張りつめ具合を0〜10で書いておきます。何回か続けて、自分に合うかどうかを確かめると、効かない方法に頼り続けずに済みます。
目安 1回・30秒
強すぎる香りや、苦手な香りは使わない
香りの感じ方は人それぞれで、強い香りで気分が悪くなる人もいます。職場や家族と同じ部屋では、自分の手元だけでほのかに香る程度にとどめます。
目安 毎回
香りで変化を感じにくいときは、ゆっくりした呼吸の研究や、窓の外の緑を眺める研究のように、ほかの短い休み方も試せます。
05よくある質問
香りをかぐとストレスは減るの?
結果はそろっていません。日本の女性40人の実験では、柑橘の香りを2分かいでも、香りのない空気をかいだ組と緊張の点数に差はありませんでした。ラベンダーで不安の点数が下がった実験もありますが、参加者は20人と少数でした。
ラベンダーの香りは効くの?
ロシアの健康な大人20人の実験では、ラベンダーを5分かいだあと、自分で答える不安の点数が、水のにおいのときより低くなっていました。ただ脳波や心拍のゆらぎには変化がなく、人数も少ない予備的な研究です。
コーヒーの香りでも気分は変わる?
日本の大学生20人がコーヒーの香りを5分かいだ研究では、気分の乱れの点数が下がっていました。ただ香りをかがない比較の条件がなく、静かに座っていたことや慣れの影響と区別できないと著者らが書いています。
どんな香りを選べばいい?
研究では、どの香りが一番よいかは決まっていません。日本の実験では、香りが好きな人ほど結果が違う傾向が示唆されました。家にあるお茶やコーヒー、柑橘の皮など、自分が心地よいと感じる香りから試すのが無理のない方法です。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
無料ツール
セルフチェックで「今日やること」をまとめる
当てはまる悩みを選ぶだけ。診断はせず、記事の対策を一覧にします。
研究早見表でほかの悩み345件も見る
出典
- Yamaguchi F, Kuroki M, Yoshinaga N, Nakai M, Arimura Y. (2026). Relaxation effects of Shikuwasa (Citrus depressa Hayata) essential oil inhalation: A randomized controlled trial in young adult females. Contemporary Clinical Trials Communications. https://doi.org/10.1016/j.conctc.2026.101613
- Morozova M, Gabrielyan I, Kleeva D, Efimova V, Lebedev M. (2025). Scents modulate anxiety levels, but electroencephalographic and electrocardiographic assessments could diverge from subjective reports: a pilot study. Frontiers in Behavioral Neuroscience. https://doi.org/10.3389/fnbeh.2025.1534716
- Fukatsu M, Tsuchiya Y, Inoue Y. (2026). Short-Term Psychological and Physiological Changes Following Coffee Aroma Exposure: A Multimodal Assessment. Nutrients. https://doi.org/10.3390/nu18182954
- Avcı A, Avcı M. (2026). Effects of Aromatherapy on Stress and Anxiety Among Intensive Care Unit Nurses: A Systematic Review. Nursing in Critical Care. https://doi.org/10.1111/nicc.70705


