パートナーに「ありがとう」を言わなくなった。カナダの205組の研究では、相手の感謝を実際より少なく見積もる人が多く、少なく見積もる人ほど関係への満足が低かった

一緒にいる時間が長くなると、家事も気づかいも「やって当たり前」になり、「ありがとう」を口にしなくなりがちです。相手からも感謝されていない気がして、少しずつ不満がたまることもあります。カップルの研究では、人は相手の感謝を実際より少なく見積もりやすく、感謝が伝わっていると感じる人ほど関係に満足していました。
3行でわかる
- カナダの研究チームが2つの調査で調べると、人は恋人や配偶者が自分に感じている感謝を、実際より少なく見積もる傾向があった。
- 相手の感謝を少なく見積もる人ほど、関係への満足が低かった。スイスの長年連れ添ったカップルの調査でも、支えたことに感謝されていると感じる人ほど満足が高かった。
- 相手の努力に感謝された週ほど、変わろうとする側の自発的なやる気が高かった。感謝は「伝わる形」で、具体的な行動に向けて言うのがよさそうだ。
01 結論から言うとパートナーへの「ありがとう」は、言わなくても伝わる?
伝わっていない可能性が高いです。カナダのカップルの調査では、人は相手が自分に感じている感謝を実際より少なく見積もっていて、少なく見積もる人ほど関係への満足が低いという関連がありました。
心の中で感謝していても、相手からはその量まで見えません。研究では、相手の感謝をおおまかに「多いか少ないか」は読み取れていました。それでも全体としては、実際より少なめに受け取る傾向がありました。
関係を長く保つ工夫は、大きなイベントより日々の小さなやりとりにあります。感謝を言葉にするのは、お金も時間もほとんどかからない「関係の予防策」の一つです。
02 研究とデータでわかっていること相手の感謝を、人はどのくらい見落としている?
平均すると少なめに見積もっていました。18〜35歳のカナダのカップル205組では、自分の感謝は5点満点で平均4.43、相手の感謝の見積もりは平均4.14でした。3か月後の調査でも、少なめに見積もる傾向は残っていました。
Tisseraら(2023年)[1]
2つの調査で、カップルの両方に「自分が相手にどれだけ感謝しているか」と「相手が自分にどれだけ感謝していると思うか」を答えてもらい、ずれを調べた。1つ目の調査(205組)では、自分の感謝は5点満点で平均4.43、相手の感謝の見積もりは平均4.14だった。分析すると、人は相手の感謝の多い少ないを読み取れてはいたが、全体として少なめに見積もっていた。
相手の感謝を少なく見積もる人ほど、自分の関係への満足が低かった。これは2つの調査の両方で見られた。2つ目の調査(3つのデータを合わせた634人)では、「相手は、私が感謝されていると感じられるようにしてくれる」という感謝の表し方を尋ね、3か月後にも少なめに見積もる傾向が続いていた。
対象: 1つ目はカナダの大学のコミュニティで集めた18〜35歳の205組(平均20.99歳、交際3か月以上)、2つ目は平均29.07歳の634人 / 限界: アンケートによる相関の分析で、少なく見積もることが不満の原因かどうかはわからない。研究者も、因果を確かめるには実験が必要としている。
Rothら(2024年)[2]
ストレスを抱えた相手を支えたとき、その支えに相手が感謝していると感じるかを調べた。相手を支えている人ほど、相手からの感謝を感じていて、その感謝を感じる人ほど自分の関係への満足が高かった。相手が心の中で感謝していると感じる場合も、言葉で表していると感じる場合も、同じような結果だった。
研究者は、自分の満足にとって大事なのは「支えたこと」そのものより、その支えに相手が感謝してくれていると感じられることだと述べている。
対象: スイスのドイツ語を話す男女のカップル163組(29〜90歳、交際期間は平均30.73年、2021年に回答) / 限界: 1回だけのアンケートで、時間の流れに沿った因果は確かめられていない。
Sissonら(2025年)[3]
相手に「ここを変えてほしい」と頼んだあと、相手の努力に感謝を示すとどうなるかを調べた。同居カップル150組を8週間、毎週調べた。努力に感謝されていると感じた週ほど、変わろうとする側は「自分がそうしたいから変わる」という自発的なやる気が高く、変化もうまくいったと答えていた。
最初の調査では、頼んだ側が「努力に感謝を示している」と思う度合いは7点満点で平均4.80、努力した側が「感謝されている」と感じる度合いは平均4.23だった。
対象: カナダか米国で同居し、交際1年以上のカップル150組(ほかに観察研究1件と、想像してもらう実験2件) / 限界: 週ごとの調査は相関の分析。想像してもらう1つ目の実験では、感謝の条件で変わる意欲そのものが高まるという差ははっきりしなかった。
03 まだわかっていないこと感謝を言葉にすれば、関係はよくなる?
そこまでは確かめられていません。ここで紹介した研究の多くはアンケートによる相関で、感謝を伝える習慣を始めたカップルの関係が実際によくなるかは、まだ十分に調べられていません。
- 相手の感謝を少なく見積もることが不満を生むのか、不満があるから少なく見積もるのか、向きはわかっていない。研究者は、少なめの見積もりは関係を大事にし続けるための自然なくせかもしれないとも述べている。
- 研究の対象はカナダ・米国・スイスのカップルで、日本の夫婦や、言葉で感謝を伝える習慣の少ない文化でも同じかはわからない。
- どんな言い方や頻度がよいかは、比べられていない。形だけの感謝が逆効果になる場面があるかも、わかっていない。
04 今日からできるセルフケア「ありがとう」を伝わる形にするには?
心で思うだけでなく言葉にし、何に感謝しているのかを具体的に添えます。相手が支えてくれたときや、頼んだことに取り組んでくれたときは、結果より努力に感謝を向けます。
「ありがとう」に、何がよかったかを1つ添える
「ありがとう」だけで終わらせず、「朝ゴミを出してくれて助かった」のように行動を名指しします。研究では感謝の量が相手に少なめに伝わっていたため、伝わる形にする工夫です。
目安 1日1回、10秒
支えてもらった日は、その日のうちに伝える
話を聞いてくれた、代わりに家事をしてくれたなど、つらいときに支えてもらった日は、寝る前までにお礼を伝えます。支えたことに感謝されていると感じる人ほど、関係への満足が高い傾向がありました。
目安 支えてもらった日に1回
頼んだことは、結果より努力に感謝する
「変えてほしい」と頼んだことに相手が取り組んでいたら、完全にできていなくても「気にかけてくれてうれしい」と伝えます。努力に感謝されたと感じた週ほど、自発的なやる気が高い傾向がありました。
目安 気づいたときに1回
「感謝されていない」と思ったら、見積もりのくせを思い出す
不満を感じたら、人は相手の感謝を少なめに見積もりやすいことを思い出し、決めつける前に「最近どう思ってる?」と聞いてみます。
目安 不満を感じたときに1回
一緒にいてもスマホばかりで会話が減っている場合は「ながらスマホ」と2人の関係の記事を、相手の話の聞き方は悩みを打ち明けられたときの返し方の記事を参考にしてください。自分ひとりで感謝を書き出す習慣については感謝を書き出す習慣の記事にまとめています。
05よくある質問
夫や妻に感謝しているのに、言葉にするのが照れくさい。言わなくても伝わる?
伝わっていない可能性があります。カナダのカップルの調査では、人は相手が自分に感じている感謝を実際より少なく見積もっていました。照れくさいときは、「助かった」「うれしかった」のように短い言葉や、メッセージで伝える方法もあります。
相手から感謝されないのは、大事にされていないから?
そうとは限りません。研究では、相手の感謝を少なめに見積もる傾向が全体として見られました。相手は心の中で感謝していても、こちらに伝わっていないだけかもしれません。決めつける前に、自分から感謝を伝えたり、相手の気持ちを聞いたりするのが一つの方法です。
感謝を伝えるのは、毎日でないと意味がない?
決まった頻度の答えは研究ではまだ出ていません。ただ、8週間毎週調べた研究では、努力に感謝されていると感じた週ほど、相手の自発的なやる気が高い傾向がありました。回数より、相手が何かをしてくれたときに具体的に伝えることを意識するとよさそうです。
結婚して何十年もたっても、感謝は関係に関わる?
関わっている可能性があります。平均30年以上連れ添ったスイスのカップル163組の調査でも、支えたことへの相手の感謝を感じる人ほど関係への満足が高い傾向がありました。ただし1回のアンケートで、因果までは確かめられていません。
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出典
- Tissera, H., Visserman, M. L., Impett, E. A., Muise, A., & Lydon, J. E. (2023). Understanding the Links Between Perceiving Gratitude and Romantic Relationship Satisfaction Using an Accuracy and Bias Framework. Social Psychological and Personality Science, 14(8), 900–910. https://doi.org/10.1177/19485506221137958
- Roth, M., Good, N., Ledermann, T., Landolt, S. A., Weitkamp, K., & Bodenmann, G. (2024). Building happier bonds: gratitude as a mediator between dyadic coping and relationship satisfaction in romantic couples. Frontiers in Psychology, 15, 1452397. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2024.1452397
- Sisson, N. M., Park, Y., Overall, N. C., Park, H. G., Johnson, M. D., Stellar, J. E., Le, B. M., & Impett, E. A. (2025). Thank You for Changing: Gratitude Promotes Autonomous Motivation and Successful Partner Regulation. Personality and Social Psychology Bulletin, 51, 2285–2306. https://doi.org/10.1177/01461672241246211


