比べて落ち込む

他人やAIと比べて、できていないことばかり目につく。感謝を書き出す習慣は、2万4千人のまとめで幸福感を少し高めていた

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わかっている度 ★★☆ 中研究4本を整理
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Photo: Candace McDaniel / CC0 / Stocksnap
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

同僚やSNSの誰か、そしてAIと比べて、できていないことばかりが目につく日はありませんか。そんなときによく勧められるのが「感謝を書き出す」習慣です。28か国・2万4千人分の研究をまとめた分析では、幸福感は確かに上がっていました。ただし、その上がり幅は小さく、ほかの前向きな活動より優れているわけではありませんでした。

3行でわかる

  1. 感謝を書き出す取り組みは、複数のメタ分析で幸福感や前向きな気分を少し高めていました。向きはそろっていますが、効果は小さめです。
  2. ほかの前向きな心理的活動と比べると、感謝のほうが効くとは言えませんでした。「感謝でなければだめ」ではありません。
  3. 不安や落ち込みへの効果は小さく、確実性も低めです。2025年のまとめの中で日本の研究だけを見ると、はっきりした効果は出ていませんでした。

01結論から言うと

感謝を書き出す習慣は、幸福感を少し高めることが多くの研究でそろって示されています。ただし効果は小さく、ほかの前向きな活動と同じくらいです。気軽に試せる手段の一つと考えるのが研究に合った見方です。

人と比べて落ち込むとき、注意は「足りないもの」に向きがちです。感謝を書き出す取り組みは、その注意を「すでにあるもの」にも向け直す練習だといえます。

この分野の出発点となった実験では、感謝を数える習慣を続けた人たちに、前向きな気分の高まりがもっとも安定して見られました。

一方で、「人生が変わる」ほどの効果を期待すると、がっかりしやすくなります。効果は小さく、合う人と合わない人がいます。続かなくても、自分を責める理由にはなりません。

02研究とデータでわかっていること

3本のメタ分析で、感謝の取り組みは幸福感を小さく高める向きにそろっていました。何もしないグループとの差は出やすい一方、ほかの前向きな活動との差は見られませんでした。

2万4,804人感謝の取り組みと幸福感を調べた145本の論文の参加者(28か国、2025年のまとめ)
0.19その全体の効果量(Hedges' g)。研究者自身が「小さな」上昇と表現(2025年)
−0.03ほかの前向きな心理的活動と比べた幸福感の差(d、9研究、2016年)。差なし
64件感謝の取り組みのランダム化比較試験をまとめた研究の数(子どもから高齢者、2023年)

EmmonsとMcCullough(2003年)[1]

感謝の研究の出発点となった3つの実験です。参加者を「感謝していることを書く」「わずらわしい出来事を書く」「ふつうの出来事、または人との比較を書く」などのグループにくじ引きで分け、週ごと・日ごとに気分や体調を記録してもらいました。感謝を書いたグループは、いくつかの指標(すべてではない)で心の状態がよくなっていました。もっとも安定していたのは、前向きな気分の高まりでした。

対象: 3つの実験の参加者(3つめの実験は神経筋疾患のある人) / 限界: すべての指標で差が出たわけではありません。初期の研究で、その後の大きなまとめほど人数は多くありません。

Davisら(2016年)[2]

比べる相手(対照群)の種類ごとに分けて効果を調べたメタ分析です。別の作業をしたグループと比べると、感謝の取り組みは幸福感をわずかに高めていました(d=0.17、20研究)。一方、不安については差がはっきりしませんでした(5研究)。さらに、ほかの前向きな心理的活動と比べると、感謝の取り組みは「同じくらい効くが、それ以上ではない」結果でした(d=−0.03、9研究)。

対象: 感謝の取り組みを調べた研究 / 限界: 不安を調べた研究は5本と少なく、結論は出せません。

Choiら(2025年)[3]

28か国・145本の論文・2万4,804人分を、事前に計画を登録したうえでまとめました。感謝の取り組みは幸福感を小さく高めていました(g=0.19)。効果がもっとも大きかったのは前向きな気分(g=0.27)で、抑うつ症状は0.15、嫌な気分は0.12と小さめでした。取り組んだ回数の多さと効果の大きさには、はっきりした関係がありませんでした。

対象: 2003〜2024年に発表された研究 / 限界: 効果は国によって違い、日本の研究(18の効果量)では差がはっきりしませんでした(g=0.04)。ほかの前向きな活動と比べた研究(11の効果量)でも差は出ていません。

Dinizら(2023年)[4]

ランダム化比較試験64件をまとめました。感謝の取り組みを受けた人たちは、感謝の気持ちや人生の満足度が高く、不安と抑うつの症状が少し低くなっていました。不安の点数は3本の研究・579人で比べると、対照群より1.63点(7.76%)低い結果でした(GAD-7という尺度)。

対象: 子ども・10代・大人・高齢者。対照群は食事の日記・順番待ち・何もしないなど / 限界: 多くの研究が偏りのリスクが高いと評価され、不安や抑うつの結果の確実性は「低い」とされています。

2016年と2025年のまとめはどちらも、ほかの前向きな活動と比べると感謝の取り組みとの差は見られない、という結果でした。「感謝でなければならない」のではなく、よいことに目を向ける時間をつくること自体に意味がある、と読むのが自然です。

03まだわかっていないこと

日本の人に同じように効くか、感謝が人と比べるくせそのものを減らすかは、まだはっきりしていません。不安や抑うつへの効果も、確実性の低い結果にとどまります。

  • 2025年のまとめでは、日本で行われた研究で効果がはっきりしませんでした。研究者は、国ごとの違いを説明できる要因は見つからなかったとしています。
  • 同じまとめでアジアの参加者だけを見ると、感謝の手紙のように「相手に伝える」タイプは、統計的にはっきりした効果が出ていませんでした。研究者は、相手に借りを感じるような気持ちが混ざるためではないかと考えています(確かめられた結果ではなく解釈です)。
  • 感謝を書くことで、人と比べるくせや、AIと比べて落ち込む気持ちが減るかを直接調べた研究は、今回の調査では見つかりませんでした。

04今日からできるセルフケア

寝る前に「よかったこと」を1〜3個書くことから始めます。毎日でなくてかまいません。合わないと感じたら、散歩など別の前向きな活動に切り替えても、研究上は同じくらいの手応えが期待できます。

1

寝る前に「よかったこと」を1〜3個書く

ノートやスマホのメモに、今日ありがたかったことを短く書きます。「同僚が手伝ってくれた」「昼ごはんがおいしかった」のような小さなことで十分です。

目安 1回3分

2

毎日にこだわらず、続けやすい頻度にする

2025年のまとめでは、取り組んだ回数の多さと効果の大きさにはっきりした関係はありませんでした。書けない日があっても気にせず、週に数回など無理のない頻度で続けます。

目安 週2〜3回から

3

伝えるのが気まずいなら、まず自分のために書く

感謝の手紙は渡さなくてもかまいません。相手に伝えるのが負担に感じるなら、昔お世話になったことを思い出してノートに書くだけにします。思い出すタイプの取り組みにも効果が見られていました。

目安 週1回・5分

4

比べて落ち込んだ瞬間に「今日できたこと」を1つ足す

できていないことが頭に浮かんだら、その横に今日できたこと・持っているものを1つ書き足します。足りないものだけに向いた注意を、すでにあるものにも向け直す練習です。

目安 気づいたとき・1分

人と比べたあと自分を責めてしまう人は「自分への思いやり」の研究、AIの出来と比べて落ち込む人はAIと比べる気持ちの調査も参考になります。感謝を伝えるのが気まずい人は昔の友達に連絡する研究、書くのが合わない人は散歩と気分の研究もどうぞ。

05よくある質問

感謝日記は本当に効果があるの?

幸福感を少し高める効果は、複数のメタ分析でそろって示されています。28か国・2万4,804人分をまとめた2025年の研究では、効果量は0.19で、研究者自身が「小さな」上昇と表現しています。

感謝日記は毎日書かないと意味がない?

毎日である必要はないと考えられます。2025年のまとめでは、取り組んだ回数の多さと効果の大きさに、はっきりした関係は見られませんでした。続けやすい頻度を選ぶほうが現実的です。

感謝日記で不安や落ち込みは軽くなる?

研究によって結果が分かれています。64件の試験のまとめでは不安と抑うつの点数が少し下がっていましたが、確実性は「低い」とされました。2016年のまとめでは、不安について別の作業との差ははっきりしませんでした。

感謝を書き出すのが苦手な人はどうすればいい?

無理に続けなくてもかまいません。ほかの前向きな心理的活動と比べると、感謝の取り組みは同じくらいの効果で、それ以上ではありませんでした。散歩など、自分に合う前向きな活動を選んでも大丈夫です。

つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。

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出典

  1. Emmons RA, McCullough ME (2003). Counting blessings versus burdens: An experimental investigation of gratitude and subjective well-being in daily life. Journal of Personality and Social Psychology, 84(2), 377-389. https://doi.org/10.1037/0022-3514.84.2.377
  2. Davis DE, Choe E, Meyers J, Wade N, Varjas K, Gifford A, Quinn A, Hook JN, Van Tongeren DR, Griffin BJ, Worthington EL (2016). Thankful for the little things: A meta-analysis of gratitude interventions. Journal of Counseling Psychology, 63(1), 20-31. https://doi.org/10.1037/cou0000107
  3. Choi H, Cha Y, McCullough ME, Coles NA, Oishi S (2025). A meta-analysis of the effectiveness of gratitude interventions on well-being across cultures. Proceedings of the National Academy of Sciences, 122(28), e2425193122. https://doi.org/10.1073/pnas.2425193122
  4. Diniz G, Korkes L, Tristão LS, Pelegrini R, Bellodi PL, Bernardo WM (2023). The effects of gratitude interventions: a systematic review and meta-analysis. Einstein (São Paulo), 21, eRW0371. https://doi.org/10.31744/einstein_journal/2023RW0371