人と比べて落ち込んだ夜、寝れば気持ちはリセットされる?24件の実験のまとめでは、眠ったあとにいやな画像の受け止めが軽くなった研究は17件中3件で、結果は分かれていた

同期の活躍や友達の投稿を見て、自分だけ取り残された気がした日。「もう今日は寝てしまおう、寝れば忘れる」と布団に入る人は多いでしょう。けれど研究を見ると、眠ればいやな気持ちが軽くなるとは、まだ言い切れません。眠りは気持ちの整理に関わっていそうですが、結果は研究によって分かれています。
3行でわかる
- 34人の実験では、ひと晩眠った組で、前の日に見た画像を「強く感じる」という評価が減っていた。起きていた組では減らなかった。
- ただ、24件の実験のまとめでは、眠ったあとにいやな画像の受け止めが軽くなった研究は17件中3件だけで、変わらない結果が多かった。
- 「寝ればリセット」を当てにしすぎず、寝る前に比べた相手の投稿を閉じる、翌朝まだ重ければ別の方法に切り替える、が無難。
01 結論から言うと比べて落ち込んだ夜、寝れば気持ちは軽くなる?
軽くなることはありますが、いつもそうなるとは言えません。眠ったあとにいやな出来事の受け止めが和らいだ実験がある一方、変わらなかった実験のほうが多く、研究の結果は分かれています。
「寝れば忘れる」は昔からよく言われます。睡眠の研究者の中には、夢を見ることが多い眠り(レム睡眠)の間に、いやな体験の「生々しさ」がはがれていく、と考える人もいます。
ただ、この考えを確かめる実験の多くは、いやな画像を見せて、眠ったあとにもう一度見せるという方法です。人と比べて落ち込んだ気持ちそのものを調べた研究は、今回見つかりませんでした。
02 研究とデータでわかっていること眠ると、いやな気持ちの受け止めは変わる?
変わったという実験と、変わらなかったという実験があります。24件の実験のまとめでは、眠ったあとにいやな画像を軽く受け止めるようになった研究は一部で、全体としてははっきりした変化は見られませんでした。
van der Helmら(2011年)[2]
気持ちが動くように作られた150枚の画像について、感じ方の強さを1〜5で評価してもらい、12時間後に同じ画像をもう一度評価してもらった。間にひと晩眠った組では、4や5の「強く感じる」評価が減り、1や2が増えていた。日中に起きていた組では、こうした変化は見られなかった。脳の、不安や恐れに関わる部分(扁桃体)の反応も、眠った組でだけ下がっていた。
対象: 健康な18〜30歳34人(眠る組18人、起きている組16人) / 限界: 画像を見たときの反応で、自分の身に起きた出来事や、人と比べた気持ちは調べていない。人数も少ない。
Lipinskaら(2022年)[1]
2006〜2021年に発表された、眠った人と起きていた人で気持ちの反応を比べた24件の実験をまとめた。いやな画像の受け止めを調べた17件のうち、眠ったあとに軽くなっていたのは3件だけで、ほとんどは変わらないか差がなかった。体の反応を測った研究でも、眠った人と起きていた人ではっきりした差はなかった。ひと晩眠ったあとは、いやな画像に「心がざわつく度合い」の自己評価がむしろ上がっていた。一方、昼寝をした人は、起きていた人よりいやな画像を少し軽く受け止めていた。
対象: 健康な人を対象にした24件の実験(14件は数値をまとめて分析) / 限界: 研究ごとに画像の種類や眠る時間がばらばらで、著者らも方法をそろえた研究が必要だとしている。
Wassingら(2016年)[3]
恥ずかしい思いをする場面を思い浮かべてもらい、そのつらさがどのくらい続くかを答えてもらった。眠りに悩む度合いが強い人ほど、つらさがひと晩を越えて翌日まで続くことが多かった。1日のうちにおさまるつらさとは、関連がなかった。研究者は、落ち着きのない眠りが、ひと晩でつらさがおさまるのを邪魔しているのではないかと考えている。
対象: オランダの睡眠研究の登録者1,199人(平均52歳) / 限界: 1回きりの調査で、眠りが原因でつらさが続くのかは言えない。著者らも、実験で確かめる必要があるとしている。
03 まだわかっていないこと人と比べた落ち込みにも、眠りは効く?
まだわかっていません。研究の多くは画像を見せる実験で、人と比べて落ち込んだ日の気持ちが、ひと晩眠ると軽くなるかを確かめた研究は、今回見つかりませんでした。
- 画像を見たときの反応と、自分に向けられた「比べて負けた」気持ちとでは、眠りの効き方が違う可能性がある。
- ひと晩眠ったあとに、いやな画像に「ざわつく」度合いが上がる理由はわかっていない。研究者は、翌日の出来事に備える働きかもしれないと考えている。
- 昼寝で受け止めが軽くなったという結果は、研究の数が少ない。
- 日本の人で同じ結果になるかはわからない。
04 今日からできるセルフケア比べて落ち込んだ夜は、どう過ごす?
眠ることは無駄ではありませんが、「寝ればリセット」を当てにしすぎないのが安全です。寝る前に比べた相手の投稿を閉じる、考え込まずにいつもの時間に寝る、翌朝まだ重ければ別の方法に切り替える、の3つです。
寝る前に、比べた相手の投稿を閉じる
落ち込んだきっかけの投稿やページを、布団の中で何度も見返さないようにします。画面を閉じ、スマホは手の届かない場所に置いてから横になります。
目安 寝る30分前に1回
「今夜中に決着をつけよう」としない
寝る前に「なぜ自分は」と答えを出そうとすると、考えが止まらなくなりがちです。「明日の朝、もう一度考える」と紙に1行だけ書いて、いつもの時間に寝床に入ります。
目安 1分
翌朝、気持ちの重さを0〜10で確かめる
起きたら、昨日の落ち込みが今どのくらいかを数字で書きます。軽くなっていればそれで十分です。重いままなら、眠りに任せず、気をそらす方法や自分への思いやりなど、別の方法に切り替えます。
目安 朝に30秒
比べて落ち込んだことばかり考えてしまうときは気をそらすのは逃げ?の研究で、自分を責めてしまうときは自分への思いやりの研究で整理しています。寝る前のスマホについては寝る30分前にやめた実験もあわせてどうぞ。
05よくある質問
落ち込んだ日は、早く寝てしまうのがいい?
早く寝ること自体は悪くありませんが、「寝れば必ず軽くなる」とは言い切れません。24件の実験のまとめでは、眠ったあとにいやな画像の受け止めが軽くなった研究は一部で、変わらなかった研究のほうが多くありました。翌朝もつらければ、別の方法を試す前提で寝るのが現実的です。
ひと晩寝たら、かえっていやな気持ちが強くなった気がする。おかしい?
おかしくありません。24件の実験のまとめでは、ひと晩眠ったあとに、いやな画像への「心がざわつく度合い」の自己評価が上がっていました。研究者は、翌日の出来事に敏感に反応するための準備かもしれないと考えていますが、まだ確かめられていません。
比べて落ち込んだことが、何日も頭から離れない。
思い返しが続くときは、少し離れた視点で振り返る方法や、自分への思いやりの研究も参考になります。眠りに悩む度合いが強い人ほど、恥ずかしい思いのつらさが翌日まで持ち越されやすい、というオランダの調査もありました。
昼寝でも効果はある?
研究のまとめでは、昼寝をした人は、起きていた人よりいやな画像を少し軽く受け止めていました。ただ、昼寝を扱った研究は数が少なく、比べて落ち込んだ気持ちで確かめた研究はまだありません。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Lipinska G, Austin H, Moonsamy JR, Henry M, Lewis R, Baldwin DS, Thomas KGF, Stuart B. (2022). Preferential consolidation of emotional reactivity during sleep: A systematic review and meta-analysis. Frontiers in Behavioral Neuroscience, 16, 976047. https://doi.org/10.3389/fnbeh.2022.976047
- van der Helm E, Yao J, Dutt S, Rao V, Saletin JM, Walker MP. (2011). REM sleep depotentiates amygdala activity to previous emotional experiences. Current Biology, 21(23), 2029-2032. https://doi.org/10.1016/j.cub.2011.10.052
- Wassing R, Benjamins JS, Dekker K, et al. (2016). Slow dissolving of emotional distress contributes to hyperarousal. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 113(9), 2538-2543. https://doi.org/10.1073/pnas.1522520113


