やることと情報で頭がいっぱい、考えがまとまらない。紙に書き出して「次の一手」まで決めると、頭から離れやすかった

返していない連絡、読みかけの資料、追いきれないAIのニュース、明日の締め切り。頭の中に置いたままのことが多すぎて、目の前のことに集中できない。そんなとき、頭の中を紙に出すだけで変わることがあるのか。研究では、書き出したうえで「次にいつ何をするか」まで決めると、考えが頭から離れやすくなる結果が出ています。
3行でわかる
- やり残したことは、別の作業中にも頭に浮かびやすい。実験では、次にいつ何をするかの計画を書くと、この浮かびが減っていました。
- 寝る前に5分、これからやることを書いた若い大人57人は、終わったことを書いた人より平均で約9分早く眠りに入りました。
- 気持ちを書く方法の効果は、146件の実験のまとめでは平均すると小さめでした。書けば必ず楽になる、とまでは言えません。
01 結論から言うと頭がいっぱいのとき、紙に書き出すと楽になる?
楽になる可能性があります。やり残したことを書き出し、1つずつ「次にいつ何をするか」まで決めると、関係のない作業中に浮かぶ考えが減った実験があります。ただし効果の大きさや続け方は、まだ研究が少ない段階です。
頭がいっぱいになるのは、考える力が落ちたからではありません。終わっていないことは、終わるまで頭の中で「忘れるな」と合図を出し続けやすい性質があります。
MasicampoとBaumeister(2011年)は、この合図を止めるのは「終わらせること」だけではないと考えました。いつ・どうやるかの計画を立てるだけで、頭がそのことを「いったん置いてよい」と扱えるのではないか、という見方です[2]。
情報そのものを減らす工夫は情報が多すぎて疲れる記事にまとめました。この記事は、もう頭に入ってしまったものをその場で外に出す方法を扱います。
02 研究とデータでわかっていること書き出すと、頭の中で何が変わった?
やり残したことの計画を書くと、別の作業中に浮かぶ考えが減りました。寝る前のやることリストでは寝つきが早まり、気持ちを書く練習では作業に使える記憶の力が伸びた実験もあります。いずれも小さな実験です。
MasicampoとBaumeister(2011年)[2]
参加者にやり残している目標を思い出してもらうと、そのことが関係のない文章を読む作業の最中にも頭に浮かび、別の課題の成績も下がりました。ところが、その目標について「いつ・どうやるか」の具体的な計画を立ててもらうと、こうした浮かびや作業への邪魔が見られなくなりました。計画を後で実際に実行した人ほど、浮かびが出ていませんでした。
対象: 実験室での複数の実験の参加者 / 限界: 短い課題での結果で、毎日の仕事や情報の多さに悩む人で同じ結果が出るかは確かめられていません。
Scullinら(2018年)[1]
米国の大学で、睡眠の病気のない18〜30歳57人が睡眠実験室に泊まりました。寝る前の5分間、半分の人はこれから数日でやることを、残りの人はここ数日で終えたことを紙に書きました。脳波で測ると、やることを書いた人は平均約16分、終えたことを書いた人は約25分で眠りに入りました。やることを細かく多く書いた人ほど、早く眠っていました。
対象: 米国の18〜30歳57人 / 限界: 1晩だけの実験で、比べた相手は「何も書かない人」ではなく「終えたことを書いた人」です。
KleinとBoals(2001年)[3]
大学に入ったことについての考えや気持ちを書いた1年生35人は、どうでもよい話題を書いた36人より、7週間後に「作業に使える記憶の力」(頭の中で情報を一時的に置いておく力)の伸びが大きくなりました。2つ目の実験では、つらい体験を書いた学生のほうが、よい体験やどうでもよい話題を書いた学生より、この力が伸び、頭に浮かび続ける考えも減っていました。
対象: 大学生(1つ目の実験は71人、2つ目は101人) / 限界: 大学の学期中に行われた実験で、働く大人で同じ結果が出るかはわかりません。
Frattaroli(2006年)[4]
考えや気持ちを書いたり話したりする方法を調べた、ランダムに分けた実験146件をまとめました。効果はプラスで統計的にも確かでしたが、大きさは平均すると小さいものでした(r=0.075)。
対象: 146件の実験 / 限界: 書く内容・回数・対象がばらばらで、頭がいっぱいの状態だけを調べたまとめではありません。
03 まだわかっていないこと書き出す方法は、誰にでも毎日効くの?
誰にでも毎日効くかは、まだわかっていません。紹介した研究は大学生や若い大人の小さな実験が中心で、AIや情報の多さに疲れた働く人を対象に、書き出す方法を続けて試した研究は見当たりません。
- 寝る前のやることリストは1晩の実験で、毎晩続けたときの効果は調べられていません。
- 紙とスマホのメモで効果が違うかを比べた研究は見当たりません。
- 気持ちを書く方法の効果は、146件のまとめでは平均すると小さいものでした。
- 計画を立てても実行しないと、浮かびが残る可能性があります。実験でも、計画を実行した人ほど浮かびが出ていませんでした。
04 今日からできるセルフケア頭がいっぱいのとき、その場で何をすればいい?
紙を1枚用意し、頭にあることを5分で全部書き出す。次に、気になる項目ごとに「いつ・どこで・何を」を1行で書き足す。寝る前なら、明日やることをできるだけ細かく書く。この3つが研究で試された形に近い方法です。
頭にあることを、紙に全部書き出す
やること、気になっている連絡、読んでいない情報を、順番も重さも気にせず書きます。寝る前の実験では、細かく多く書いた人ほど早く眠っていました。
目安 5分
気になる項目に「次の一手」を書き足す
「明日10時に、まず資料の見出しだけ読む」のように、いつ・どこで・何をするかを1行で決めます。実験では、具体的な計画を立てると、そのことが別の作業中に浮かびにくくなっていました。計画の立て方は「いつ・どこで・何を」を決める計画の記事も参考になります。
目安 1項目30秒
寝る前は、明日やることを細かく書いて閉じる
終わったことの振り返りより、これからやることを書くほうが寝つきは早い結果でした。書いたら紙を閉じて、布団の中では考え直さないと決めます。寝る前の過ごし方は寝る前のスマホの記事にもまとめています。
目安 寝る前5分
作業を離れるときも、一行だけ書いておく
途中で手を止めるときは「次はここから」と一行残します。中断から戻る工夫は作業の中断から戻れない記事、答えの出ない心配は心配を1日30分にまとめる記事で扱っています。
目安 1回10秒
書き出しても、すぐに全部が軽くなるとは限りません。気持ちを書く方法の効果は平均すると小さめでした。書いた紙を見て「次の一手が決まっている」と確認できるだけでも、頭に置いておく量は減らせます。
05よくある質問
頭の中のことを紙に書き出すと、本当にすっきりするの?
やり残したことに「次にいつ・何をするか」の計画を書いた実験では、関係のない作業中に浮かぶ考えが減っていました。ただし実験室での短い課題の結果で、毎日の仕事で同じだけ効くかは確かめられていません。
寝る前にやることリストを書くと、寝つきがよくなる?
米国の18〜30歳57人の実験では、寝る前に5分間これからやることを書いた人は、終わったことを書いた人より平均で約9分早く眠りに入りました。1晩だけの実験で、毎晩続けた効果はまだ調べられていません。
スマホのメモに書いても同じ?
寝る前のやることリストの実験は、紙とペンで書く形でした。紙とスマホやパソコンのメモを比べた研究は見当たらず、同じ効果があるかはわかっていません。
気持ちを書き出す方法は、どのくらい効くの?
146件の実験をまとめた2006年の分析では、気持ちや考えを書く方法の効果はプラスでしたが、平均すると小さいものでした(効果の大きさr=0.075)。大きな変化を期待しすぎず、試して合うかを見るのが現実的です。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Scullin MK, Krueger ML, Ballard HK, Pruett N, Bliwise DL (2018). The effects of bedtime writing on difficulty falling asleep: A polysomnographic study comparing to-do lists and completed activity lists. Journal of Experimental Psychology: General, 147(1), 139-146. https://doi.org/10.1037/xge0000374
- Masicampo EJ, Baumeister RF (2011). Consider it done! Plan making can eliminate the cognitive effects of unfulfilled goals. Journal of Personality and Social Psychology, 101(4), 667-683. https://doi.org/10.1037/a0024192
- Klein K, Boals A (2001). Expressive writing can increase working memory capacity. Journal of Experimental Psychology: General, 130(3), 520-533. https://doi.org/10.1037/0096-3445.130.3.520
- Frattaroli J (2006). Experimental disclosure and its moderators: a meta-analysis. Psychological Bulletin, 132(6), 823-865. https://doi.org/10.1037/0033-2909.132.6.823


