AIが広がってから、仕事の自信をなくしたまま戻らない。日本の働く人102人の実験では、できたことを振り返る15〜30分の対話で、仕事の自信が少し上がっていた

AIが仕事に入ってきてから、自分の仕事に自信が持てなくなった。そのまま何か月もたって、前の感覚が戻らない。そんな人に向けて、研究を整理しました。日本の働く人102人の実験では、できたことと強みに目を向ける15〜30分の対話のあと、仕事の自信が少し上がっていました。改善点ばかりの対話は、職場で気持ちを受け止めてもらえている人でだけ効果がありました。
3行でわかる
- 日本の働く人102人の実験では、その日の仕事を振り返り、できたことと強みに目を向ける対話のあと、仕事の自信が5段階で約0.3点上がっていた。
- 改善点を中心にした対話は、全体では自信を上げなかった。上司や同僚から気持ちを受け止めてもらえていると感じる人でだけ、自信が上がっていた。
- 褒め言葉で上がった自信は、次の課題のあとには差が小さくなっていた実験もある。できたことを振り返る機会は、くり返し持つほうがよさそうだ。
01 結論から言うとなくした仕事の自信は、どうすれば戻る?
研究では、自分がした仕事を振り返り、できたことと強みに目を向けると、仕事の自信は少し上がっていました。ただし1回の対話の直後に測った結果で、上がり方は小さく、長く続くかはまだわかっていません。
ここでいう「仕事の自信」は、心理学で「職務自己効力感」と呼ばれるものです。仕事で何が起きても、自分の力でなんとか対応できると思える感覚のことです。
AIが広がると、自分がしていた作業をAIがすばやくこなす場面を見ることが増えます。そうした日が続くと、「自分はできる」という感覚が少しずつ削られていくことがあります。この記事では、削られた感覚を立て直す方法を、研究が示している範囲で整理します。
AIに仕事を奪われる不安そのものについては「AIに仕事を奪われそうで不安」、立ち直る力を育てる練習については「AIで仕事を失う不安が続いて、心が折れそう」で詳しく扱っています。
02 研究とデータでわかっていること褒められると、仕事の自信は本当に上がる?
日本の働く人102人の実験では、できたことと強みに目を向ける対話のあと、仕事の自信が上がっていました。改善点を中心にした対話は、職場で気持ちを受け止めてもらえている人でだけ、自信を上げていました。
Watanabeら(2025年)[1]
日本の会社員やフリーランスの人を2つのグループにくじで分け、AIのチャットボットと15〜30分、その日か前日にした仕事について対話してもらいました。一方のチャットボットは強みとできたことに目を向け、もう一方は課題と改善点に目を向けるように作られていました。強みとできたことの対話をした54人では、仕事の自信が5段階で約0.3点上がっていました。改善点の対話をした48人では、全体としては上がっていませんでした。
ただし、上司や同僚から「気持ちを理解し、認めてもらえている」と感じていた人では、改善点の対話でも、自信が同じくらい上がっていました。そう感じていない人では、改善点の対話のあとの自信に変化はありませんでした。
対象: 日本の25〜59歳の働く人102人(クラウドソーシングで募集。約3割は自営業) / 限界: 1回の対話の直後に測った結果で、効果が続くかは調べていない。何も対話しないグループはなく、職場の支えは実験で変えたものではない(支えがある人ほど効果があったという関連)。
Peiferら(2020年)[2]
ドイツの大学生などに5分間の暗算をしてもらい、半分の人にだけ「これまでの参加者の平均より成績がよかった」と画面で伝えました。何も伝えられなかった人では、暗算の自信が100点満点で約55点から約49点に下がりました。褒められた人では、約54点から約57点に上がっていました。
ただし、もう一度5分間の暗算をしたあとには、2つのグループの自信の差は小さくなっていました(約49点と約51点)。暗算の成績そのものにも、全体としての差はありませんでした。
対象: ドイツの大学生を中心とした102人(平均22.5歳) / 限界: 褒め言葉は実際の成績にもとづかない、あらかじめ決めた文だった。実験室での暗算の課題で、仕事の場面とは異なる。
Sextonら(2019年)[3]
米国の医療で働く人228人が、15日間、毎晩メールで届く「今日うまくいったことは何か。それが起きるのに自分はどんな役割を果たしたか」に3つ答えました。始める前と比べて、仕事での心の疲れ(情緒的消耗)、落ち込みの症状、幸福感は、1か月後・6か月後・12か月後のどれでもよい方向に変わっていました。仕事と生活のバランスを含む4つの指標の効果の大きさは、小さいから中くらい(0.16〜0.52)でした。
対象: 米国の医療機関で働く人228人 / 限界: くじで分けた比較のグループがない予備的な研究。1か月後の調査に答えたのは、始めた人の約半数だった。
03 まだわかっていないこと振り返りで戻った自信は、長く続く?
まだわかっていません。日本の実験は1回の対話の直後、ドイツの実験は数分後までしか測っていません。くり返し振り返ったときの効果や、AIの広がりで自信をなくした人に限った研究は、まだ見当たりません。
- 日本の実験は1回の対話だけで、数週間・数か月たっても自信が保たれるかは調べられていない。
- 何も対話しない人と比べた実験ではないため、「振り返る時間を取ったこと」自体の効果と区別できていない。
- AIに仕事を任せるようになって自信をなくした人を、特に対象にした研究は見当たらない。
- 対話の相手がAIの場合と、人の場合で効果が違うかは、直接比べられていない。
04 今日からできるセルフケア仕事の自信を立て直すために、今日できることは?
その日にした仕事を振り返り、できたことと自分の役割を書き出すことから始められます。改善点を考えるのは、話を聞いてくれる人がいるときに回し、振り返りは1回で終わらせずにくり返します。
今日できた仕事を3つ書き、自分の役割を添える
「資料を締め切りに出せた。自分は構成を決めた」のように、うまくいったことと、そこで自分がしたことを書きます。米国の研究で、毎晩答えていた問いと同じ形です。
目安 1日5分・まず15日間
振り返るときは、改善点より先に「できたこと」から
AIや人と仕事を振り返るときは、最初に「今日できたこと」と「自分の強み」を挙げます。日本の実験で自信が上がっていたのは、強みとできたことに目を向ける対話でした。褒め言葉をもらうことより、自分のした仕事を具体的に確かめることを目的にします。
目安 15〜30分・週1回
改善点を聞くのは、気持ちを話せる人がいるときに
改善点を中心にした対話は、職場で気持ちを受け止めてもらえていると感じる人でだけ、自信を上げていました。ダメ出しを受ける前後に、気持ちを話せる同僚や友人を1人決めておきます。
目安 話せる相手を1人決める・5分
自分を責める気持ちが強いときは「AIの答えをそのまま使って仕事でミスした」、自分の強みの使い方は「比べて落ち込む日が続いて、自信が戻らない」も参考になります。
05よくある質問
仕事の自信をなくしたとき、まず何をすればいい?
日本の働く人102人の実験では、その日か前日にした仕事を振り返り、できたことと強みに目を向ける15〜30分の対話のあと、仕事の自信が少し上がっていました。まずは「今日できた仕事」を書き出すことから始められます。ただし1回の対話の直後に測った結果で、長く続くかはわかっていません。
AIに褒めてもらうのは意味がある?
日本の実験では、AIのチャットボットが強みとできたことに目を向けて対話すると、仕事の自信が5段階で約0.3点上がっていました。ただし実験の対話は研究者が設計したもので、実際の仕事ぶりを見て評価したわけではありません。褒め言葉だけに頼るより、自分のしたことを具体的に振り返る材料として使うのが研究の内容に近い使い方です。
ダメ出しを受けると、もっと自信をなくしそうで怖い。
日本の実験では、改善点を中心にした対話は、全体としては自信を上げませんでした。ただし、上司や同僚から気持ちを受け止めてもらえていると感じていた人では、改善点中心の対話でも自信が上がっていました。改善点を聞くのは、話を聞いてくれる人がいるときのほうがよさそうです。
褒められて上がった自信は、すぐ消えてしまう?
ドイツの大学生を中心とした102人の実験では、褒め言葉で上がった自信は、次の課題を終えたころには褒められなかった人との差が小さくなっていました。1回で終わらせず、できたことを振り返る機会をくり返し持つほうが、研究の結果に沿っています。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Watanabe Y, Nakayama M, Takemura K, Uchida Y (2025). AI feedback and workplace social support in enhancing occupational self-efficacy: a randomized controlled trial in Japan. Scientific Reports, 15, 11301. https://doi.org/10.1038/s41598-025-94985-0
- Peifer C, Schönfeld P, Wolters G, Aust F, Margraf J (2020). Well Done! Effects of Positive Feedback on Perceived Self-Efficacy, Flow and Performance in a Mental Arithmetic Task. Frontiers in Psychology, 11, 1008. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2020.01008
- Sexton JB, Adair KC (2019). Forty-five good things: a prospective pilot study of the Three Good Things well-being intervention in the USA for healthcare worker emotional exhaustion, depression, work-life balance and happiness. BMJ Open, 9(3), e022695. https://doi.org/10.1136/bmjopen-2018-022695


