AIの人間そっくりな顔や声が、なんだか気持ち悪い。研究では「人らしさのちぐはぐ」が不気味さと関わり、短いやりとりを3回重ねると和らいでいた

AIが作った人の顔の動画、なめらかすぎる合成音声、人そっくりのアバター。見た瞬間に「なんだか気持ち悪い」と感じて、そう思う自分は心が狭いのかと気になる人もいるかもしれません。この感覚は、1970年に唱えられた「不気味の谷」という考え方をもとに研究されてきました。研究では、人らしさがちぐはぐなときに不気味さが強まり、やりとりを重ねると和らぐ傾向が見えています。
3行でわかる
- 人に似ているのに、どこか人と違う相手を不気味に感じる反応は「不気味の谷」と呼ばれ、1970年に唱えられてから研究されてきた。
- 研究のレビューでは「リアルなほど不気味」という単純な説は一貫して確かめられず、顔と声のように人らしさがちぐはぐなときに不気味さが強まる説がよく支持されていた。
- 日本の大学生58人の実験では、人そっくりのアンドロイドとも、3回の短いやりとりで不気味さが下がっていた。ただし生成AIの動画や声を長く調べた研究はまだ少ない。
01 結論から言うとAIを気持ち悪いと感じるのは、おかしい?
おかしくありません。人に似ているのにどこか人と違う相手に不気味さを感じる反応は「不気味の谷」と呼ばれ、多くの研究で調べられてきました。ただし、いつでも誰にでも起きるわけではなく、条件しだいです。
不気味の谷は、日本のロボット工学者の森政弘さんが1970年に唱えた考え方です。人に似せていくほど親しみは増えるが、「ほとんど人なのに、人ではない」段階で急に不気味になる、というものです。
もとはロボットについての考えでしたが、今ではCGのキャラクターや、人の姿をした会話AI(アバター)にも当てはめて研究されています。人の顔や声をまねる生成AIが広がった今、同じ感覚を覚える場面は増えているのかもしれません。
02 研究とデータでわかっていること不気味さは、どんなときに強くなる?
人らしさがちぐはぐなときです。研究のレビューでは、人の顔に人工的な目、ロボットの顔に人の声のような「ずれ」が不気味さと関わるという説がよく支持されていました。
Kätsyri ら(2015年)[1]
不気味の谷を確かめた実験研究を整理すると、「人に近いものなら何でも不気味になる」という単純な説は一貫した支持がなかった。一方、人らしさの手がかりが食い違うとき、たとえば人の顔に人工的な目がついているとき、人の顔とロボットの声を組み合わせたときなどに不気味さが強まる説は、よく支持されていた。
対象: 不気味の谷を調べた実験研究のレビュー / 限界: 研究の多くは画像を見せて評価する形で、使った刺激が1組だけの研究もあった。研究者は、不気味の谷は特定の条件のもとでだけ現れると結論づけている。
Palomäki ら(2018年)[2]
6つの研究で不気味の谷を再現できるかを確かめた。ロボットの画像と人の画像を合成して作ったCGでは再現できなかったが、写真のようにリアルなロボットの画像では、はっきりと不気味の谷が現れた。
対象: 実験室とオンラインの参加者、計1,343人 / 限界: 画像を見て評価する研究で、実際にやりとりしたわけではない。どんな画像を使うかで結果が変わっていた。
Złotowski ら(2015年)[3]
実在の人をもとに作られたアンドロイドか、機械らしい見た目のロボットのどちらかと、就職の面接を受けるという設定でくり返し会話をしてもらった。どちらのロボットでも、短いやりとりを3回重ねるだけで不気味さが下がった。一方、好ましさは見た目よりもロボットの態度(友好的かどうか)に左右されていた。
対象: 日本の大学生58人(18〜36歳) / 限界: 1回の実験の中でのやりとりで、何日も続けた場合はわからない。画面の中のAIではなく目の前のロボットとの研究で、ロボットは別の部屋の人が操作していた。
Cihodaru-Ștefanache ・Podina(2025年)[4]
人の姿をした会話AI(アバター)と不気味さを調べた研究29本をまとめた。多くの研究の質は「弱い〜中程度」で、やりとりは数分の短いものがほとんどだった。まとめに含まれた研究の一つでは、感情を表すアバターは、やりとりをした後のほうが受け入れられやすくなっていた。
対象: 29本の研究の参加者、5〜88歳の計4,153人 / 限界: 不気味さの測り方が研究ごとにばらばらで、長い期間を追った研究がなかった。
03 まだわかっていないことAIの声や動画にも、慣れれば平気になる?
まだわかっていません。慣れで不気味さが下がった実験はありますが、数分から1日の短い研究が中心で、生成AIの顔の動画や合成音声に何週間も接したときの変化を追った研究は見当たりません。
- 年齢による違いは、研究によって逆の結果が出ている。会話AIでは年齢が高い人ほど不気味さに敏感だったとする研究がある一方、ロボットでは18〜59歳のほうが60歳以上より不気味に感じやすかった研究もある。
- 不気味さの測り方が研究ごとに違い、結果を比べにくい。
- 不気味さを感じることが、心の健康や日々の疲れにどう関わるかは調べられていない。
04 今日からできるセルフケアAIを気持ち悪いと感じたら、どうすればいい?
まず「どこがちぐはぐか」を言葉にしてみてください。使う必要がなければ無理に慣れなくてよく、使う必要があるなら文字だけに切り替えるか、短いやりとりを数回重ねる方法があります。
「どこがずれているか」を一つ言葉にする
顔・目・声・動き・言葉づかいのどれが人らしく、どれが人らしくないかを探します。研究で不気味さと関わっていたのは、この食い違いでした。理由がわかると、自分の感じ方を落ち着いて受け止めやすくなります。
目安 1分
気になるなら、文字だけのやりとりに切り替える
顔のアバターや合成音声が気になるときは、表示や音声を切って文字で使います。顔と声の食い違いが起きない形にすることで、違和感のもとを減らせます。
目安 設定の変更1回
使う必要があるなら、短いやりとりを3回重ねる
仕事などで避けられないときは、長く向き合うより、短いやりとりを何回かに分けて試します。アンドロイドとの実験では、3回の短いやりとりで不気味さが下がっていました。
目安 数分を3回
AIの返事に気持ちがあるように感じてしまう反対の感覚はAIに心を感じる研究、AIで書かれた文章が人にどう受け取られるかはAIで書いたメッセージの研究にまとめています。人に言えないことをAIに話す心理はAIになら話せる理由の研究が参考になります。
05よくある質問
AIを気持ち悪いと感じるのは、偏見があるから?
偏見とは限りません。不気味の谷は、人に似ているのにどこか違う相手に対して多くの人に起きる反応として研究されてきました。ただし3〜5歳の幼い子どもは大人と同じようには感じない可能性も指摘されており、感じ方には個人差があります。
AIの顔や声は、リアルになるほど不気味になる?
単純にそうとは言えません。研究のレビューでは「リアルなほど不気味」という関係は一貫して確かめられず、不気味さと関わっていたのは、顔と声のように人らしさの度合いが食い違っていることでした。
気持ち悪さを手がかりに、AIが作った顔や偽の動画を見抜ける?
この記事で整理した研究は、見抜けるかどうかは調べていません。AIの顔写真や文章を印象で見分けられるかの研究は、姉妹メディア「AI時代の困りごと」のSNSのボットを見分けられるかの記事でまとめています。
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出典
- Kätsyri, J., Förger, K., Mäkäräinen, M., & Takala, T. (2015). A review of empirical evidence on different uncanny valley hypotheses: support for perceptual mismatch as one road to the valley of eeriness. Frontiers in Psychology, 6, 390. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2015.00390
- Palomäki, J., Kunnari, A., Drosinou, M., Koverola, M., Lehtonen, N., Halonen, J., Repo, M., & Laakasuo, M. (2018). Evaluating the replicability of the uncanny valley effect. Heliyon, 4(11), e00939. https://doi.org/10.1016/j.heliyon.2018.e00939
- Złotowski, J. A., Sumioka, H., Nishio, S., Glas, D. F., Bartneck, C., & Ishiguro, H. (2015). Persistence of the uncanny valley: the influence of repeated interactions and a robot's attitude on its perception. Frontiers in Psychology, 6, 883. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2015.00883
- Cihodaru-Ștefanache, Ș., & Podina, I. R. (2025). The uncanny valley effect in embodied conversational agents: a critical systematic review of attractiveness, anthropomorphism, and uncanniness. Frontiers in Psychology, 16, 1625984. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2025.1625984


