AIとの付き合い方

AIに頼んでばかりで、自分の手で何かを作る充実感がなくなった。イングランドの7,182人の調査では、絵や手芸などを作った人のほうが「人生にやりがいがある」と感じる点数が少し高かった

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わかっている度 ★☆☆ 低研究3本・公的指針0件を整理
毛糸と編み針
Photo: Shisma / CC BY 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

文章も、絵も、献立も、AIに頼めばすぐにできる。便利なはずなのに、気づけば自分の手で何かを作ることがなくなり、毎日がどこか手ごたえのないものに感じる。そう感じている人は少なくないようです。イングランドの7,182人の調査では、この1年に絵や手芸、写真などの作品を作った人のほうが、「人生にやりがいがある」と感じる点数が少し高めでした。

3行でわかる

  1. イングランドの7,182人の調査では、絵・手芸・写真などを作った人ほど、やりがい・幸福感・生活の満足度の点数が少し高かった。不安と孤独には差がなかった。
  2. 手芸を使った19件の研究のまとめでは、どの研究も短期的な改善を報告したが、研究の質はまちまちで、効果が続くかはほぼ調べられていない。
  3. AIに任せることと作る充実感の関係を直接調べた研究はまだない。週1回、15〜30分の手作業から試せる。

01 結論から言うとAIに頼るほど、作る充実感はなくなる?

AIに頼ることで作る充実感が減るかどうかは、まだ研究で確かめられていません。ただ、自分で作品を作る人ほど、人生にやりがいを感じる点数が少し高いという調査があり、作る時間を取り戻すことは試す価値があります。

AIに任せられる作業が増えると、「自分の手で形にする」時間は自然と減っていきます。それ自体は悪いことではありません。面倒な作業を任せて、浮いた時間を大事なことに使えるからです。

一方で、「作った」という手ごたえが暮らしから消えると、物足りなさが残ることがあります。研究では、絵や手芸などの「作る活動」と、気持ちのよさや生活の満足度の関係が調べられてきました。ここでは、その研究から立て直しの手がかりを整理します。

02 研究とデータでわかっていること自分で何かを作ると、心にどう影響する?

作る活動をした人ほど、やりがいや幸福感の点数が少し高いという関連が、イングランドの大規模な調査で見られました。手芸を使った試みのまとめでも、短期的には気分などの改善が報告されています。ただし差は小さく、研究の質もまちまちです。

7,182人作る活動と心の状態の関係を調べたイングランドの16歳以上(2019〜2020年の調査)
37.4%そのうち、この1年に絵・手芸・写真などの作品を1つ以上作った人の割合
19件手芸を使った試みの研究のまとめ。どれも短期的な改善を報告(2025年発表)
93,263人趣味と心の健康の関係を追った16か国の65歳以上(2023年発表)

Keyes ら(2024)[1]

イギリス政府の文化とスポーツの調査データを分析し直した研究です。この1年に、絵・彫刻、作品としての写真や映像、コンピューターでのオリジナル作品、刺しゅうや編み物、木工、書道や陶芸などを1つ以上した人は、年齢・性別・健康状態・仕事の有無などをそろえても、生活の満足度、幸福感、「人生にやりがいがある」と感じる度合いが高めでした。やりがいとの結びつきは、仕事をしているかどうかとの結びつきより大きいものでした。一方、不安と孤独の点数には差が見られませんでした。

対象: イングランドに住む16歳以上の7,182人(コロナ前の2019年4月〜2020年3月の調査) / 限界: 1回の調査なので、作るから気分がよいのか、気分のよい人が作るのかは区別できません。作る活動で説明できる差は、全体のばらつきの0.1〜0.4%とわずかでした。

Bukhave ら(2025)[2]

陶芸、刺しゅう、編み物、紙工作、木工などの手芸を使った試みの効果を調べた19件の研究を集めたまとめです。作業の長さは10分から16週間までさまざまでした。19件すべてが、不安、ストレス、気分、自尊心、生活の満足度などで短期的な改善を報告していました。ただし研究の方法や質にばらつきが大きく、著者らは効果について確かな結論は出せないとしています。

対象: 心の病気や関節の病気、認知症などがある人を含むさまざまな参加者 / 限界: 改善が数週間後も続くかを確かめた研究は1件だけでした。評価する人が参加者の組を知っていたなど、偏りのおそれがある研究も多くありました。

Mak ら(2023)[3]

日本を含む16か国の65歳以上を追った5つの調査をまとめた研究です。趣味がある人は、年齢や収入などをそろえても、落ち込みの症状が少なく、幸福感と生活の満足度が高めでした。趣味を持つようになると、その後の落ち込みが少なくなる時間の順番も見られました。趣味のある人の割合は、スペインの51.0%からデンマークの96.0%まで国によって大きく違いました。

対象: 16か国の65歳以上の93,263人(うち日本は57,051人) / 限界: 観察の研究なので、趣味が原因だとは言い切れません。作る活動に限らず、趣味全般を調べたものです。

AIと一緒に作業したあと、一人の作業に戻ると意欲が下がりやすかった実験は「AIを使うと仕事のやりがいが減る?」で整理しています。この記事は、仕事の外で「作る時間」を取り戻す話です。

03 まだわかっていないことAIで作るのと手で作るのでは、違いがある?

まだわかっていません。AIに作ってもらうことと、作る充実感や心の状態の関係を直接調べた研究は、見当たりませんでした。この記事の内容は、作る活動一般の研究からの推測です。

  • イングランドの調査は「コンピューターでのオリジナル作品」も作る活動に数えていましたが、AIに指示して作ったものが同じように働くかはわかっていません。
  • 作る活動と心の状態の関連は、調査の研究が中心です。作るから気分がよくなるのか、元気な人が作るのかは、まだはっきりしません。
  • 手芸を使った試みでも、効果が何週間も続くかはほとんど確かめられていません。
  • どのくらいの頻度や時間で作ればよいかは、わかっていません。

04 今日からできるセルフケア作る手ごたえを取り戻すには、何から始める?

AIを手放す必要はありません。任せる作業と自分の手でやる作業を分け、上手さを問わない短い手作業の時間を、週に1回つくることから始めます。お金をかけずにできる工夫を3つ挙げます。

1

「自分の手でやる」ものを1つだけ決める

AIに任せている作業を書き出し、楽しかったもの、手ごたえがあったものを1つだけ選んで、自分でやる側に戻します。他の作業は、そのままAIに任せて構いません。

目安 最初に5分

2

完成を目指さない手作業の時間をつくる

落書き、写真を撮る、折り紙、料理の一品、編み物など、家にあるもので手を動かします。調査では、この1年に一度でも作ったかどうかで差が見られていて、上手さは問われていませんでした。

目安 週1回・15〜30分

3

作ったあと「やってよかったか」を点数にする

作業のあと、「やってよかった」と思う度合いを0〜10でメモします。調査で差が見られたのは、やりがいや満足感でした。点数が上がる作業を残し、上がらない作業は別のものに替えます。

目安 作業のあと30秒

疲れて趣味を楽しむ気力が出ないときは「疲れて、趣味を楽しむ気力がなくなった」、頭がいっぱいの日に手軽に手を動かす方法は「画面と情報で頭がいっぱいの日、塗り絵で落ち着く?」も参考になります。

05よくある質問

AIで作った画像や文章も「作ったこと」に入りますか?

調査では、「コンピューターでオリジナルの作品やアニメーションを作った」ことも、作る活動の1つとして数えられていました。ただし、AIに指示して作ったものは調べられていません。自分で手を動かして形にする部分が残っているかどうかで、感じ方が違う可能性はありますが、確かめた研究はまだ見当たりませんでした。

うまくないと意味がありませんか?

研究は上手さを条件にしていません。イングランドの調査は、この1年に一度でも作ったかどうかで比べていました。手芸を使った19件の研究のまとめでも、作業の長さが10分だけの研究がありました。

不安やさびしさも軽くなりますか?

イングランドの7,182人の調査では、作る活動をした人とそうでない人で、不安と孤独の点数に差は見られませんでした。差があったのは、生活の満足度、幸福感、人生にやりがいがあると感じる度合いでした。

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出典

  1. Keyes, H., Gradidge, S., Forwood, S. E., et al. (2024). Creating arts and crafting positively predicts subjective wellbeing. Frontiers in Public Health, 12, 1417997. https://doi.org/10.3389/fpubh.2024.1417997
  2. Bukhave, E. B., Creek, J., Linstad, A. K., & Frandsen, T. F. (2025). The effects of crafts-based interventions on mental health and well-being: A systematic review. Australian Occupational Therapy Journal, 72(1), e70001. https://doi.org/10.1111/1440-1630.70001
  3. Mak, H. W., Noguchi, T., Bone, J. K., et al. (2023). Hobby engagement and mental wellbeing among people aged 65 years and older in 16 countries. Nature Medicine, 29, 2233–2240. https://doi.org/10.1038/s41591-023-02506-1