仕事とAIの不安

上司の評価コメントがAIで書かれたと知ると、同じ内容でももやもやするのはなぜ?ハンガリーの働く人192人の実験では、全部AIが書いたと伝えた評価は人が書いた評価より受け止めが悪く、人が書いてAIで整えた評価では差がなかった

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わかっている度 ★★☆ 中研究3本・公的指針0件を整理
書類の上に置かれた万年筆
Photo: Blogtrepreneur / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

評価面談のコメントを読んで、「これ、AIが書いたのでは」と思ったとたん、内容が頭に入らなくなる。書いてあることは妥当なのに、どこか冷たく感じる。そう感じるのはあなただけではありません。ハンガリーの実験では、同じ文でも「誰が書いたか」を知るだけで、受け止め方が変わっていました。

3行でわかる

  1. ハンガリーの働く人192人の実験では、まったく同じ評価の文でも、「全部AIが書いた」と伝えると、気分・意欲・上司との関係の受け止めが下がっていました。
  2. 上司が自分で書いてAIで整えた評価は、上司が全部書いた評価と差がありませんでした。差が大きかったのは「上司に相談したい気持ち」など関係の面です。
  3. AIの文は相手の時間や手間を感じにくい、という説明があります。中身と書き方を分けて読むと、もやもやに振り回されにくくなります。

01 結論から言うとAIが書いた評価に、もやもやするのはなぜ?

研究者は、評価の中身より「上司が自分のために考えてくれたか」が見えにくくなるためだと考えています。ハンガリーの実験では、同じ文でも全部AIが書いたと伝えると、上司との関係の受け止めがはっきり下がっていました。

仕事の評価コメントは、「何ができて、何を直すか」という情報だけでなく、「上司が自分を見てくれているか」を伝えるものでもあります。研究者は、AIが全部書いたと知ると、この関係のサインが弱く感じられるのではないかと説明しています。

心理学の論文でも、AIは人のように時間や手間を割いて返事をするわけではない点が指摘されています。そうした言葉をどれだけ大切に感じるかは、受け取る側の思い込みや期待で変わるとされています。

02 研究とデータでわかっていることAIが書いた評価と人が書いた評価で、受け止めはどれくらい違う?

ハンガリーの働く人192人の実験では、同じ評価の文でも「全部AIが書いた」と伝えた組は、「上司が自分で書いた」組より、上司との関係・相談したい気持ち・ミスを直す気持ちの受け止めが低くなっていました。

192人実験に参加したハンガリーの働く人(19〜65歳、2025年)
5.31点→3.43点上司に仕事の相談に行きたい気持ち(7段階。上司が書いた評価→全部AIの評価)
6.02点→4.43点指摘されたミスを直そうと思う気持ち(同じ7段階)
差なし上司が書いてAIで整えた評価と、上司が全部書いた評価の比較(どの受け止めでも)

Marótら(2026年)・ハンガリーの実験 [1]

参加者は、架空の上司から評価コメントを受け取る場面を想像しました。コメントの文はみな同じで、「締め切りを守る点は強み」「話し合いでのやりとりにもっと気を配って」というよい点と改善点の両方が入っていました。違うのは、伝えられた書き方だけです。

「上司が全部自分で書いた」組と比べて、「上司がAIの文をそのまま送った」組では、評価を受けた気分(4.76点→3.86点)、上司との関係への影響(4.69点→3.23点)、働く意欲への影響(4.79点→3.66点)などが低くなっていました。一方、評価のことを一日中考え込むかどうかには差がありませんでした。

対象: ハンガリーの働く人192人(平均32.3歳、SNSや研究者の知人を通じて募集) / 限界: 想像した場面への反応で、実際の上司から評価を受けたときの行動は調べていません。著者は、差の大きさを実際より大きく見積もっている可能性も書いています。

Marótら(2026年)・人とAIの組み合わせ [1]

「上司が自分で書いてAIで整えた」評価は、上司が全部書いた評価と比べて、どの受け止めでも統計的な差はありませんでした。「AIの下書きを上司が確認して送った」評価も、全部AIの評価よりは相談したい気持ちや上司との関係の受け止めがよく、両方の組み合わせの間にも差はありませんでした。

限界: AIへの不安が強い人ほど評価を考え込みやすい傾向はありましたが、組ごとの違いのパターンは、AIへの不安の強さを考えに入れても変わりませんでした。

Owensら(2026年)・米国の患者への聞き取り [2]

米国の大きな大学病院の患者40人に、医師への問い合わせの返事をAIが下書きすることについて聞きました。多くの人は、医師が目を通して責任を持つなら、AIの下書きでもかまわないと話していました。AIを使ったことは知らせてほしい、という声も多くありました。

対象: 米国の成人患者40人(2025年4〜8月) / 限界: 職場の評価ではなく病院のメッセージの話で、数を比べる研究でもありません。

03 まだわかっていないことAIの評価への違和感は、慣れれば消える?

まだわかっていません。今回の実験は1回だけの想像の場面での反応で、AIを使った評価を何度も受けたときに受け止めがどう変わるかは調べられていません。日本の職場で同じ結果になるかも確かめられていません。

  • 実験では「AIが書いた」とはっきり知らされていました。現実には、AIが使われたかどうかがわからず、推測するだけの場面も多くあります。その場合の受け止めはまだ調べられていません。
  • 参加者が「本当にAIで書かれた」と信じていたかは確かめられていません。
  • AIへの受け止め方は国や文化で違う可能性があり、著者もハンガリー以外での確認が必要だと書いています。

04 今日からできるセルフケアAIで書かれた評価にもやもやしたら、どうすればいい?

まず、評価の中身と書き方を分けて読みます。次に、気になる点は上司に直接一言聞きます。考え込む時間には区切りをつけます。研究で効果を確かめた方法ではありませんが、実験の結果から考えたお金のかからない工夫です。

1

「続けること」と「直すこと」を2行に書き出す

実験では、文がまったく同じでも、書き方を知るだけで受け止めが変わっていました。評価から「強み」と「改善点」だけを自分の言葉で書き出すと、誰が書いたかと中身を切り離して考えやすくなります。

目安 5分・評価を読んだ日に

2

気になる点を、上司に一つだけ直接聞く

差が大きかったのは「上司に相談したい気持ち」など関係の面でした。「この改善点は、どの場面を見てそう思いましたか」と聞くと、上司自身の見方を確かめられます。

目安 次の面談か1on1で1分

3

考え込む時間を、1日10分に区切る

AIへの不安が強い人ほど、評価を考え込みやすい傾向がありました。気になったら「夕方の10分で考える」と決めてメモし、それ以外の時間は仕事に戻ります。

目安 1日10分まで

心配を時間で区切る方法は 心配を1日30分にまとめる記事、自分がAIを使ったことの伝え方は 仕事でAIを使っていると言いづらい記事、AIで書いたメッセージが相手にわかったときの気持ちは AIで書いたメッセージの記事 にまとめています。

05よくある質問

AIが書いた評価やフィードバックは、受け止め方が変わる?

ハンガリーの働く人192人の実験では、まったく同じ評価の文でも、「上司がAIの文をそのまま送った」と伝えた場合は、「上司が自分で書いた」場合より、気分・意欲・上司との関係の受け止めが低くなっていました。

上司がAIで文章を整えるだけでも、印象は悪くなる?

同じ実験では、上司が自分で書いてAIで整えた評価は、上司が全部自分で書いた評価と比べて、どの受け止めでも統計的な差はありませんでした。

AIが苦手な人ほど、AIの評価に反発しやすい?

同じ実験では、AIへの不安が強い人ほど評価のことを一日中考え込みやすい傾向はありましたが、AIの評価と人の評価で受け止め方が変わるパターン自体は、AIへの不安の強さでほとんど変わりませんでした。

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出典

  1. Marót JL, Palcsó T, Szabó ZP (2026). Source matters, AI anxiety less so: comparing employee reactions to human, AI, and hybrid performance feedback and the limited role of AI anxiety. Frontiers in Psychology, 17, 1924487. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1924487
  2. Owens K, Jayaram A, Chowdhury A, et al. (2026). Patient Perspectives on AI-Drafted Electronic Portal Messages. JAMA Network Open, 9(7), e2622463. https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2026.22463
  3. Boyd RL, Markowitz DM (2026). Artificial Intelligence and the Psychology of Human Connection. Perspectives on Psychological Science, 21(2), 192-220. https://doi.org/10.1177/17456916251404394