作業中に気が散って、集中が戻らない。その場で10分の瞑想は効く?英国の学生117人の実験では、瞑想した組のほうが注意の課題で反応が速く、正確さも高かったが、パズルを解く力は変わらなかった

通知、チャット、AIの返事を待つ間のスマホ。気づくと何をしていたか忘れて、集中が戻らないことがあります。「少し瞑想すると頭が切り替わる」と聞いても、仕事中に10分も使ってよいのか迷うかもしれません。結論から言うと、10分の瞑想のあとに注意の課題の成績が少しよくなった実験はいくつかあります。ただ、どんな作業にも効くわけではありません。
3行でわかる
- 英国の学生117人の実験では、10分の瞑想をした組は、オーディオブックを聞いた組より、注意の課題で反応が速く、気を散らすものに惑わされにくかった。
- カナダの大学生220人がオンラインで参加した実験でも、10分の瞑想のあとに、その場のストレスの感じ方が下がり、見落としのミスが少なかった。
- 一方で、パズルを解く力は変わらず、心配しやすい人では伸びが小さかった。効果がどのくらい続くかもわかっていない。
01 結論から言うと集中が切れたとき、10分の瞑想は効く?
注意を保つ力には、少し効く可能性があります。4つの実験で、10分の瞑想のあと注意の課題の成績がよくなっていました。ただし、アイデアを出す課題では差がなく、人によって効き方が違いました。
ここでいう瞑想は、マインドフルネス瞑想と呼ばれるものです。目を閉じるか視線を落として、呼吸や体の感覚に注意を向けます。考えがそれたら、それに気づいて、責めずに呼吸へ戻ります。この「それたことに気づいて戻る」くり返しが、注意の練習になると考えられています。
8週間ほど続ける瞑想の効果は瞑想で集中力を取り戻す記事で整理しました。この記事では、集中が切れたその場で1回だけ行う、10分の瞑想の研究を見ていきます。
02 研究とデータでわかっていること10分の瞑想のあと、何が変わった?
注意の課題で反応が速くなる、見落としが減る、気を散らすものに惑わされにくくなる、といった変化が、別々の実験で見られた。比べる相手は、同じ10分のオーディオブックや朗読を聞く組などだった。
Hughesら(2025、英国・ランカシャー大学ほか)[1]
学生が、静かな部屋で1人ずつ、10分のマインドフルネスの音声に従うか、10分のオーディオブックを聞きました。そのあと、画面に出る数字に反応し続ける課題(集中を保つ力)と、まわりの矢印に惑わされずに真ん中の矢印の向きを答える課題(気を散らすものを抑える力)をしました。瞑想の組は、数字の課題で正確さを落とさずに反応が速く、矢印の課題では正確さが高く、一部の問題では反応も速くなっていました。一方、絵と文字を組み合わせたパズル(ひらめきを使う問題)の成績には差がありませんでした。
課題の途中で「今、何を考えていたか」を聞くと、課題と関係のない考えごとの割合は、瞑想の組で8%、オーディオブックの組で13%でした。ただし研究者は、この差を統計的には確かめていません。
対象: 英国の大学の学部生・大学院生117人(89人が女性) / 限界: 組分けは申し込み順の番号(奇数・偶数)によるもので、くじ引きのような無作為ではない。もともとの体への気づきの点数が、瞑想の組で高かった。
UeberholzとFiocco(2022、カナダ・トロントメトロポリタン大学)[2]
大学生が自宅のパソコンからオンラインで参加しました。瞑想の組は、呼吸と体の感覚に注意を向ける10分の音声瞑想をし、比べる組はマインドフルネスの説明を読むだけでした。瞑想の組は、その場のストレスの感じ方が下がり、集中を保つ課題で「反応すべきときに反応しそこねる」見落としのミスが少なくなっていました。ただし、正しく反応できた数や、反応してはいけないときに押してしまうミスは、瞑想だけの組では比べる組とはっきりした差がなく、先に瞑想の効果の説明を読んでから瞑想した組で差が出ていました。
対象: カナダの大学生220人(84%が女性、平均20歳) / 限界: 自宅からの参加で、周りの環境や時間帯がそろっていない。参加者の多くが女性の大学生で、ほかの年代や働く人にそのまま当てはまるとは限らない。
Norrisら(2018、米国・スワースモア大学ほか)[3]
瞑想の初心者の大学生が、10分の瞑想の音声か、同じ人が同じ速さで読んだ巨木についての記事の音声を聞きました。1つめの実験では、瞑想の組で矢印の課題の難しい問題の正確さが高く、2つめの実験では、瞑想の組で注意の課題を速く解けていました。ただし、心配や不安を感じやすい性格(神経症傾向)の人では、こうした伸びが小さい傾向がありました。
対象: 米国の大学生37人と56人の2つの実験 / 限界: 人数が少ない。1つめと2つめで、よくなった指標が違った(正確さと速さ)。研究者自身、1回の短い瞑想の効果は一時的かもしれないと書いている。
Sleimen-Malkounら(2023、フランス・エクス=マルセイユ大学)[4]
同じ人が、10分の呼吸の瞑想と、10分の音声を集中して聞く課題の両方を、順番を入れ替えて行いました。10分休んだあとに、文字の色を答える課題(色の名前と文字の色が食い違うと難しくなる)をすると、どちらのあとも最初より反応が速くなっていました。速くなる幅は、瞑想のあとのほうが大きめでした。瞑想の経験がある人とない人で、結果の傾向は同じでした。
対象: フランスの健康な大人42人(瞑想の経験がある22人・ない20人) / 限界: 何もしない組がなく、同じ課題を何度もしたことによる慣れの影響を完全には取り除けていない。
4つの実験を並べると、次のように整理できます。
- 集中を保つ・気を散らすものを抑える: 10分の瞑想のあと、注意の課題の成績がよくなる方向の結果がそろっていた。
- ひらめきを使う問題: パズルの成績は変わらなかった(117人)。
- その場のストレス: 瞑想のあとに、ストレスの感じ方が下がっていた(220人)。
- 人による違い: 心配しやすい人では、注意の伸びが小さい傾向があった(米国の2つの実験)。
03 まだわかっていないこと仕事の集中にも、同じように効く?
まだわかっていません。実験の多くは学生を対象にした実験室の課題で、職場の実際の仕事の進み具合を測った研究ではありません。効果がどのくらい続くかも、まだ確かめられていません。
- 実験の課題は、画面の数字や矢印に反応する数分〜十数分のもの。文章を書く、資料を読むといった仕事の集中に同じ効果があるかは調べられていない。
- 効果が何分・何時間続くかは測られていない。
- 10分より短い瞑想で同じ結果になるかは、これらの研究ではわからない。
- 参加者の多くが若い学生で、働く大人や年配の人で同じ結果になるかは確かめられていない。
04 今日からできるセルフケア気が散って集中が戻らないとき、どうする?
席で10分、呼吸と体の感覚に注意を向ける時間をとります。考えがそれたら、気づいて戻るだけで十分です。ひらめきが必要な作業や、心配が強くて瞑想に入れない日は、別の方法と組み合わせます。
座ったまま、息の出入りに注意を向ける
目を閉じるか、視線を床に落とします。息が鼻から入って出ていく感覚に注意を向け、慣れてきたら足、背中、肩と順に体の感覚へ注意を移します。カナダの実験も、呼吸と体の感覚に注意を向ける瞑想でした。
目安 10分(実験はすべて10分)
考えがそれたら「それた」と気づいて戻る
仕事やAIの返事のことが浮かんでも、追い払おうとせず、「考えごとをしていた」と気づいて呼吸に戻ります。何度それても、戻ることそのものが練習です。
目安 10分の間に何度でも
アイデアを出したいときは、離れて別のことをする
英国の実験では、瞑想でパズルの成績は変わりませんでした。企画や文章のアイデアが煮詰まったときは、いったん課題から離れて別のことをする方法(アイデアが出ないときの記事)が合っています。
目安 煮詰まったときに数分〜
瞑想に入れない日は、体を動かす
心配が強い人では、10分の瞑想のあとの注意の伸びが小さい傾向がありました。そんな日は、立って少し歩くなど、1回の軽い運動を試します(運動と集中力の記事)。
目安 5〜10分
05よくある質問
瞑想をしたことがなくても効く?
この記事の実験の多くは、瞑想の経験がほとんどない学生が対象でした。米国の実験は「初心者」を集めた研究で、フランスの実験でも、経験のある人とない人の両方で、10分のあと反応が速くなっていました。
5分くらいの短い瞑想でもいい?
この記事で紹介した実験は、どれも10分の瞑想でした。もっと短い時間で同じ結果になるかは、これらの研究では確かめられていません。
音楽やオーディオブックを聞いて休むのと、何が違う?
英国と米国の実験では、比べる相手に10分のオーディオブックや記事の朗読を聞く組を置き、瞑想の組のほうが注意の課題の成績がよい結果でした。フランスの実験では、話を集中して聞く10分のあとも反応は速くなっており、瞑想のあとのほうが速くなる幅が大きめでした。
瞑想の効果は、どのくらい続く?
わかっていません。実験は、瞑想の直後か10分ほどあとに課題をしたものでした。米国の研究者も、1回の短い瞑想の効果は一時的かもしれないと書いています。
瞑想しようとすると、かえって考えごとが止まらない
米国の実験では、心配や不安を感じやすい性格の人ほど、10分の瞑想のあとの注意の伸びが小さい傾向がありました。そういう日は、軽く体を動かすなど別の方法を試すのも一つです。
誰かに話しかけられて作業が途切れたときは、中断から戻る方法の記事も参考になります。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Hughes ZD, Ball LJ, Atanasov P, Judge J (2025). Examining the Impact of Brief Mindfulness Practice on Sustained Attention, Attentional Inhibition and Convergent Thinking. Journal of Intelligence, 13(9), 119. https://doi.org/10.3390/jintelligence13090119
- Ueberholz RY, Fiocco AJ (2022). The Effect of a Brief Mindfulness Practice on Perceived Stress and Sustained Attention: Does Priming Matter? Mindfulness, 13(7), 1757–1768. https://doi.org/10.1007/s12671-022-01913-8
- Norris CJ, Creem D, Hendler R, Kober H (2018). Brief Mindfulness Meditation Improves Attention in Novices: Evidence From ERPs and Moderation by Neuroticism. Frontiers in Human Neuroscience, 12, 315. https://doi.org/10.3389/fnhum.2018.00315
- Sleimen-Malkoun R, Devillers-Réolon L, Temprado JJ (2023). A single session of mindfulness meditation may acutely enhance cognitive performance regardless of meditation experience. PLoS ONE, 18(3), e0282188. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0282188


