チャットや通知で何度も中断される日は、中断されていない時間まで作業が進まないのはなぜ?ドイツの大学で学生89人が参加した実験では、中断が最も多い組は作業に戻るのが速くなった一方、中断のない回の反応が遅くなっていた

チャットの返信、通知、急ぎの頼みごと。何度も手を止められた日は、静かになったあとも、なぜか作業がはかどらない。そんな感覚はないでしょうか。研究では、中断が多いと、中断されていない時間の作業まで遅くなることが実験で示されていました。集中できないのは、あなたの力が落ちたからとは限りません。
3行でわかる
- ドイツの大学で学生89人が参加した実験では、中断が最も多い組は、中断されたあとに作業へ戻るのが速くなった一方、中断のない回の反応が、ほかの組より遅くなっていました。
- 研究者は、いつ中断されてもいいように頭が「身構える」やり方に切り替わり、そのぶん中断のない作業が遅くなったと考えています。
- ドイツの事務職492人の記録では中断は1日平均約25回で、中断が多いほど負担感が強く、複雑な作業をしている人ほどその傾向がはっきりしていました。
01 結論から言うと中断が多い日は、なぜ全体の作業が進まない?
中断が多いと、頭がいつ来るかわからない中断に備えて身構えるやり方に切り替わり、中断されていない時間の作業まで遅くなることが、実験で示されています。
中断の害というと、「元の作業に戻るまでに時間がかかる」ことがよく知られています。ところが、中断がとても多い状況では、話が少し変わります。何度も中断されるうちに、人は戻るのがうまくなります。その代わりに、中断がないときの作業が遅くなっていました。
研究者は、これを頭の使い方の切り替えで説明しています。中断がまれなときは、起きてから対処すればすみます。中断がひんぱんだと、頭は「次も来るはず」と前もって備える構えに切り替わります。この備えが、中断のない時間にも負担として残ると考えられています。AIのチャットや社内の連絡が増えた今、多くの人に関わる話です。
02 研究とデータでわかっていること中断の多さで、作業や気持ちはどう変わる?
実験では、中断が最も多い組で、中断のない回の反応が遅くなりました。職場の記録でも、中断が多い日ほど負担感やいら立ちが強いという関連が見られています。
Radović ら / ハレ大学・アーヘン工科大学(2026年)[1]
画面の数字について、5つの判断を決まった順番で行う作業をしてもらいました。ときどき文字を分類する別の作業で中断され、そのあと元の作業の正しい段階に戻ります。中断の合計回数を24回、72回(2組)、214回の4つの組に分けました。中断されたあとの反応は、24回の組の2.34秒に比べ、全体の75%の回で中断された2つの組では1.68〜1.80秒と速くなりました。一方、中断のない回の反応は、214回の組だけ1.46秒と、ほかの組の0.97〜1.11秒より遅くなっていました。
対象: ドイツの大学で参加した学生97人のうち、分析した89人(参加者の平均23歳) / 限界: 実験室での単純な作業で、実際の仕事やスマホの通知で同じことが起きるかは確かめられていません。
Rick ら / アーヘン工科大学(2024年)[2]
ドイツの事務職492人に、1日の仕事中の中断を記録してもらいました。中断は平均約25回で、メールが約12回、電話が約7回でした。中断が多い人ほど「中断が多すぎる」と感じ、それが1日の負担感の大きさにつながっていました。中心の作業が複雑な人ほど、中断の回数と「多すぎる」という感覚の結びつきが強くなっていました。
対象: ドイツの事務職492人 / 限界: 1日だけの記録と自己申告で、中断が負担の原因かどうかまでは言えません。
Derks ら / エラスムス大学ロッテルダムなど(2025年)[3]
オランダの働く人86人に、5日間、仕事の日ごとに答えてもらいました。仕事中に私用のスマホで中断された日ほど、その日にやるべき作業が終わらず、それを通していら立ちが強まっていました。作業が終わらないことと、夜に仕事のことを考え続けることの結びつきは、いら立ちで説明されていました。
対象: オランダのさまざまな職種の86人(平均31.6歳) / 限界: すべて1日の終わりにまとめて答えたもので、思い出すときの偏りが入りえます。
3つの研究は、方法も対象も違います。それでも、中断の影響は「中断された瞬間」だけでは終わらない、という点で向きがそろっていました。中断のない時間の作業、1日の負担感、夜の気持ちにまで及んでいる可能性があります。
03 まだわかっていないこと中断の影響で、まだわからないことは?
中断のない時間まで遅くなる結果は、実験室の単純な作業で示されたものです。実際の仕事やAIのチャット、スマホの通知で同じ大きさの影響があるかは、まだ確かめられていません。
- 中断のない時間まで遅くなったのは、214回という非常に多い中断の組だけでした。どのくらいの回数から影響が出始めるのかは、わかっていません。
- 実験の対象は大学生で、実験は1回きりでした。毎日中断の多い職場で働く人で、同じことが起きるかは確かめられていません。
- 職場の2つの研究は、中断と負担感やいら立ちの関連を調べたもので、中断が原因かどうかまでは言えません。
- AIのチャットやスマホの通知に限った中断を、くじで組を分けて比べた研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。
04 今日からできるセルフケア中断の多い毎日で、集中を守るには?
中断を受ける時間と、受けない時間を分けること。複雑な作業ほど中断の少ない時間に回すこと。作業中は私用のスマホを遠ざけること。この3つから始められます。
チャットを見る時間を決めて、まとめて返す
実験では、中断がひんぱんなほど、中断のない時間の作業も遅くなっていました。チャットや通知はいつでも受けるのをやめ、「毎時0分に見る」など時間を決めて、まとめて返します。
目安 1時間に1回・5分
頭を使う作業は、中断の少ない時間帯に回す
事務職の記録では、中心の作業が複雑な人ほど、中断の多さを負担に感じやすくなっていました。考える作業や文章を書く作業は、会議や連絡の少ない時間帯に入れます。
目安 1日1回・30〜60分
作業中は、私用のスマホを手の届かない場所に置く
オランダの記録では、私用のスマホで中断された日ほど作業が終わらず、いら立ちが強まっていました。研究者も、集中する時間を決めることや、スマホの集中モードを使うことを勧めています。
目安 集中する時間のあいだ
05よくある質問
中断に慣れれば、集中できるようになる?
中断されたあとに作業へ戻る速さは、中断が多い組ほど上がっていました。ただし同じ実験で、中断が最も多い組は、中断のない回の反応が遅くなっていました。慣れて戻るのがうまくなっても、そのぶん別のところで負担が出る可能性があります。
中断の回数は、ふつうどのくらい?
ドイツの事務職492人が1日を記録した研究では、仕事中の中断は平均で約25回、そのうちメールが約12回でした。ただし人による差が大きく、0回の人から数百回の人までいました。
私用のスマホを見るのも「中断」になる?
なります。オランダの働く人86人の5日間の記録では、仕事中に私用のスマホで中断された日ほど、やるべき作業が終わらず、いら立ちが強まっていました。そのいら立ちが、夜になっても仕事のことを考え続けることにつながっていました。
中断されたあと、元の作業に戻りやすくする方法は?
作業を中断されると元に戻れない記事で、離れる前に一行メモを残す方法などを紹介しています。通知を切った日の変化は、通知が気になって集中できない記事にまとめています。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Radović T, Hirsch P, Koch I, Schubert T (2026). Opposite effects of interruption frequency on performance in interrupted and uninterrupted multistep task. Psychological Research, 90(2), 60. https://doi.org/10.1007/s00426-026-02270-0
- Rick VB, Brandl C, Mertens A, Nitsch V (2024). Work interruptions of office workers: The influence of the complexity of primary work tasks on the perception of interruptions. Work, 77(1), 185-196. https://doi.org/10.3233/WOR-220684
- Derks D, van Mierlo H, Kühner C (2025). Unfinished Tasks and Unsettled Minds: A Diary Study on Personal Smartphone Interruptions, Frustration, and Rumination. Behavioral Sciences, 15(7), 871. https://doi.org/10.3390/bs15070871


