友達や家族とのつながりを、ふだんから保っておきたい。感謝はどう伝えるといい?米国の大学生916人の実験では、相手に直接メッセージで感謝を送った組で、つながりと支えの実感がいちばん伸びていた

困ったときに助けてくれた友達、相談に乗ってくれた先輩、いつも気にかけてくれる家族。ありがたいと思っていても、改まって伝えるのは照れくさく、そのままになりがちです。AIやネットで用が足りる日が増えると、人と言葉を交わす機会そのものが減っていきます。感謝を伝えることは、つながりを保つ助けになるのでしょうか。伝えるなら、どんな形がいいのでしょうか。
3行でわかる
- 米国の大学生916人の実験では、感謝の手紙を書く、相手にメッセージを送る、SNSで伝える、のどれでも、記録をつけただけの組よりつながりの実感が伸び、孤独感の下がり方もわずかに大きかった。
- 3つの中で、つながりと支えの実感が最も伸びたのは、相手に直接1対1でメッセージを送った組だった。気分や満足感では、1対1の組がほかより大きく伸びることはなかった。
- 効果はどれも小さく、実験は約1週間だけ。日本のように感謝を言葉にしにくい文化で同じ結果になるかは、まだわかっていない。
01 結論から言うと感謝を伝えると、人とのつながりは保てる?
小さいながら助けになる可能性があります。米国の大学生の実験では、感謝を伝える活動を1週間ほど続けた人で、つながりと支えの実感が増えました。特に、相手に直接メッセージを送る方法で最も伸びました。
感謝の気持ちを思い出して書く練習は、気分をよくする方法として多くの研究で試されてきました。一方で、その気持ちを相手に届けるか、みんなの前で伝えるか、自分の中にとどめるかで、つながりへの効き方が変わるのかは、あまり調べられていませんでした。
実験では、3つの伝え方のどれにも効果がありました。そのうえで、相手と実際にやりとりが生まれる1対1のメッセージで、「大切な人とつながっている」「頼れる人がいる」という感覚が最も強まっていました。
02 研究とデータでわかっていることどんな伝え方で、何が変わった?
米国の大学生916人の実験では、感謝を伝えた3つの組すべてで、記録をつけただけの組よりつながりと支えの実感が増えました。そのうち、相手に1対1でメッセージを送った組で、つながりの実感が最も伸びていました。
Walshら / 米国・カリフォルニア大学リバーサイド校ほか(2023年)[1]
米国の大学生916人(平均19.4歳)を、くじ引きで4つの組に分けました。(1)感謝の手紙を書くが相手には渡さない組、(2)スマートフォンで相手に直接メッセージを送って感謝する組、(3)SNSで相手に向けて感謝を伝える組、(4)その日の活動を記録するだけの組です。約1週間、毎回ちがう相手を選んで、くり返し取り組んでもらいました。
感謝を伝えた3つの組では、記録だけの組と比べて、つながりの実感、支えられている実感、感謝の気持ち、前向きな気分、人生への満足感がよい方向に変わり、孤独感の下がり方もわずかに大きくなっていました。前向きな気分と支えの実感では、記録だけの組が下がっていったのに対し、感謝の組は保たれていました。
3つの伝え方を比べると、相手に1対1でメッセージを送った組で、つながりと支えの実感が最も大きく伸びていました。一方、気分、満足感、孤独感では、1対1のメッセージの組がほかの組より大きく変わることはありませんでした。研究者は、効果の大きさは比較的小さかったと書いています。
対象: 米国の公立大学の学生916人(女性67.7%)。アジア系42.4%、ヒスパニック系33.6%など多様な集団。新型コロナの流行中に実施 / 限界: 約1週間だけで、その後どうなったかは調べていない。取り組んだかどうかは自己申告。
Dinizら / ブラジル・サンパウロ大学ほか(2023年)[2]
感謝の日記、手紙、感謝を伝える訪問などを試した、くじ引きの試験64件をまとめたレビューです。感謝の練習をした人では、感謝の気持ちや人生への満足感が高く、不安と落ち込みの症状の得点がやや低くなっていました。
不安の得点は対照の組より7.76%低く、落ち込みの得点は6.89%低くなっていました(それぞれ3件の試験のまとめ)。
対象: 子どもから高齢者まで、2003〜2021年に発表された試験 / 限界: 多くの試験で偏りの危険が高く、結果の確かさは「低い」「非常に低い」と評価されている。孤独やつながりは主な分析に含まれていない。
堀ら / 筑波大学(2020年)[3]
日本の会社で一緒に働いている(または働いていた)同僚どうし10組20人(平均43.7歳)が、1週間前に書いておいた感謝の手紙を、向かい合って読み合いました。前後で気分を測ると、イライラ、混乱、疲れ、緊張の気分が下がっていました。
対象: 日本の働く人20人(男性14人、女性6人。上司と部下の組が6組) / 限界: 比べる組がなく、人数も少ない。部屋で一緒に過ごしたこと自体の影響と区別できない。
03 まだわかっていないこと日本でも、同じように効く?
まだわかっていません。916人の実験は米国の大学生が対象で、効果が続くかも調べられていません。感謝を言葉にしにくい文化では効きにくいという報告もあり、日本での大規模な検証は見当たりません。
- 916人の実験の論文が紹介している先行研究では、集団を重んじる文化では、感謝の練習の効果が出ない、あるいは逆効果になる可能性があるとされている。
- 実験は約1週間だけで、つながりの実感がその後も続くかは調べられていない。
- メッセージとSNSでは、感謝を伝えた相手(親、恋人、友達など)がちがっていた可能性があり、方法そのものの差かどうかは言い切れない。
- 日本の同僚どうしの実験は20人だけで、比べる組がなかった。
04 今日からできるセルフケア照れずに感謝を伝えるには?
思い出した人に、何に助けられたかを一言添えて、1対1のメッセージで送ってみます。毎回ちがう相手を選び、照れくさい日は渡さない手紙を書くだけでもかまいません。返事を期待しすぎないことも大切です。
感謝したい人を3人書き出す
最近、または昔に助けてくれた人を思い出して、名前と「何をしてくれたか」を1行ずつメモします。実験でも、毎回ちがう相手を選ぶようにしていました。
目安 3分
そのうち1人に、1対1でメッセージを送る
「あのとき資料を見てくれて助かった。ありがとう」のように、何に助けられたかを具体的に書きます。つながりの実感が最も伸びたのは、相手に直接メッセージを送る方法でした。
目安 2〜3文・5分
送るのがためらわれる日は、渡さない手紙を書く
相手に送らない手紙を書いた組を含め、感謝の3つの組のどれでも、人生への満足感などが記録だけの組よりよくなっていました。照れくさい日は、自分のノートに書くだけにします。
目安 10分
週に数回、相手を変えてくり返す
実験では約1週間のあいだに、相手を変えながら数回くり返していました。週の予定に「ありがとうを1通」と書いておきます。
目安 週2〜3回
久しぶりの相手に連絡するのが気まずい人は昔の友達に連絡する研究を、パートナーへの感謝は感謝を少なく見積もる研究を、親しい友達と疎遠になるのが心配な人は友達が離れていく18か月の追跡も参考にしてください。
05よくある質問
感謝は、手紙に書くだけで相手に渡さなくても意味がある?
米国の大学生916人の実験では、論文によると、人生への満足感などは、渡さない手紙を書いた組を含む感謝の3つの組のどれでも、日々の活動を記録しただけの組よりよくなっていました。ただ、つながりや支えの実感が最も伸びたのは、相手に直接メッセージで感謝を送った組でした。
SNSにみんなの前で感謝を投稿するのはどう?
同じ実験の論文では、SNSで感謝を伝えた組も含め、3つの伝え方のどれにも効果があったとまとめられています。ただし、つながりと支えの実感の伸びは、相手に1対1でメッセージを送った組のほうが大きくなっていました。
感謝を伝えるのが照れくさい。日本人にも効果はある?
はっきりとはわかっていません。916人の実験は米国の大学生が対象で、論文が紹介している先行研究では、集団を重んじる文化では効果が出ない、あるいは逆効果になる可能性があるとされています。日本の働く人20人の小さな実験では、同僚と感謝の手紙を読み合ったあと、イライラや緊張、疲れの気分が下がっていました。
何回くらい伝えればいい?
916人の実験では、約1週間のあいだに、毎回ちがう相手に感謝を伝える活動を数回くり返していました。同じ人に何度もではなく、相手を変えたのは、慣れて効果が薄れるのを防ぐためと説明されています。最適な回数はわかっていません。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Walsh LC, Regan A, Twenge JM, Lyubomirsky S (2023). What is the Optimal Way to Give Thanks? Comparing the Effects of Gratitude Expressed Privately, One-to-One via Text, or Publicly on Social Media. Affective Science. https://doi.org/10.1007/s42761-022-00150-5
- Diniz G, Korkes L, Tristão LS, Pelegrini R, Bellodi PL, Bernardo WM (2023). The effects of gratitude interventions: a systematic review and meta-analysis. Einstein (São Paulo). https://doi.org/10.31744/einstein_journal/2023RW0371
- Hori D, Sasahara S, Doki S, Oi Y, Matsuzaki I (2020). Prefrontal activation while listening to a letter of gratitude read aloud by a coworker face-to-face: A NIRS study. PLOS ONE. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0238715


