比べて落ち込む

評価で人より下だとわかって、頑張る気がしぼんだ。ドイツの大学生129人の実験では、下のほうだと伝えられた組で「次はうまくなりたい」気持ちが大きく下がったが、もう一度挑戦した人の割合は変わらなかった

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わかっている度 ★☆☆ 低研究3本・公的指針0件を整理
庭に続く石の階段
Photo: Jim Barton / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

テストの順位、人事評価、社内の成績表。自分が人より下のほうだとわかった瞬間、それまでの頑張る気持ちが急にしぼんで、「もうどうでもいい」と思ってしまうことがあります。そんな自分を情けなく感じる人もいるかもしれません。ドイツの実験では、下のほうだと伝えられた人で、この「しぼみ」がはっきり起きていました。けれど、行動まで止まったわけではありませんでした。

3行でわかる

  1. ドイツの大学生129人の実験では、集中力の課題で「下のほう」と伝えられた組は、いやな気分が強まり、今後うまくなりたい気持ちが大きく下がった。
  2. その組では、課題の出来を大事だと思う気持ちも下がっていた。研究者は、自分を守るための心の動きの可能性があると考えている。
  3. それでも、1分かからない課題にもう一度挑戦した人の割合は、「上のほう」と伝えられた組と差がなかった。直後の「もういい」は、そのまま行動を決めるとは限らない。

01 結論から言うと人より下だとわかって、やる気がしぼむのは普通?

よく起こる反応だと考えられます。ドイツの実験では、下のほうだと伝えられた組で、いやな気分の高まりと、今後への意欲の低下がはっきり見られました。一方で、もう一度挑戦するかどうかの選択には差が出ませんでした。

人は、自分の力を人と比べて確かめようとします。比べた結果が思ったより下だと、心はそれを「脅かし」として受け取ることがあります。そのとき、「こんなの大事じゃない」と思い直すことで、気持ちを守ろうとする動きが起こると考えられています。

ただし、ここで紹介する実験は、オンラインで行った短い課題の研究です。実際の人事評価や受験の順位で同じことが起こるかは、まだ確かめられていません。

02 研究とデータでわかっていること下だと知った直後、心と行動はどう変わる?

ドイツの大学生129人の実験では、下のほうだと伝えられた組で、今後うまくなりたい気持ちが7段階で平均2.27と、上のほうの組の4.11より低くなりました。それでも、もう一度挑戦した人の割合に差はありませんでした。

129人実験に参加し分析されたドイツの大学生(平均24歳前後、2026年発表)
4.11→2.27「今後うまくなりたい」気持ち(7段階)。上のほうと伝えられた組と、下のほうと伝えられた組の平均
76%下のほうと伝えられた組で、1分かからない課題にもう一度挑戦した人の割合(上のほうの組は65%、差は偶然の範囲)

Meyerら / ドイツ・ミュンスター大学(2026年)[1]

大学生に、画面の図形の位置を覚えて答える集中力の課題をしてもらいました。課題は「大学での成績を予測する」と説明され、画面のバーで、ほかの学生と比べた自分の位置が表示されました。途中から、半分の人には位置が上がって見え、もう半分の人には「ほかの学生の2割を上回る程度」を示す位置まで下がって見えるようにしました。表示は実際の成績とは関係なく、研究者が決めたものでした。

下のほうと伝えられた組では、課題の前後でいやな気分が平均2.7点強まり、よい気分は2.7点ほど下がりました。上のほうの組では、いやな気分はほとんど変わらず、よい気分は少し上がりました。「今後うまくなりたい」気持ちの差は特に大きく、効果の大きさを示す値は1.33と、ほかの質問の差(0.45など)よりはっきり大きいものでした。

下のほうの組は、「この課題でよくできたことは大事か」という質問にも低めに答えていました。課題の出来を軽く見ることで、自分を守っている可能性があると研究者は考えています。一方で、「うまくいかなかったのは邪魔が入ったせい」と考える傾向や、「ほかのことをしたい」気持ちには、はっきりした差はありませんでした。

課題の出来そのものも変わりました。表示が分かれる前の前半は2つの組で差がありませんでしたが、下のほうと表示され始めてからの後半は、下のほうの組の正確さが下がっていました。ところが最後に「1分かからない短い課題をもう一度やるか」を選んでもらうと、下のほうの組の76%、上のほうの組の65%が挑戦を選び、統計的な差はありませんでした。

対象: ドイツの大学の学生129人(19〜39歳、うち女性95人)。いま気分の落ち込みが強い人は安全のため除いた / 限界: 事前登録のない最初の試みの研究。気持ちは1問ずつの質問で測った。課題はオンラインの短いもので、実際の評価ほど重くない。

Morina / ドイツ・ミュンスター大学(2021年)[2]

人が自分を人と比べたあと、心がどう動くかを整理した理論の論文です。比べた結果が自分の目標を脅かし、しかも「この差は埋められない」と感じると、いやな気持ちが生まれると考えます。反対に、差があっても「手段はある、届きそうだ」と思えると、その差は挑戦として受け取られ、前向きな気持ちにつながるとしています。

対象: 比べることと自己評価に関する研究を整理した理論の論文 / 限界: 新しい実験の結果ではない。上の実験は、この考え方の一部だけを確かめた最初の研究にあたる。

McCarthy・Morina / ドイツ・ミュンスター大学(2020年)[3]

気分の落ち込みや不安と、人と比べることの関係を調べた54本の研究を集め、そのうち14本の結果をまとめました。うつ病や不安症の診断を受けた人たちでは、比べたときに自分を低く見る人ほど症状が強いという関連が見られ、その関連は不安よりも落ち込みで強めでした。

対象: 54本の研究(大人を対象にした49本、子どもと若者を対象にした5本) / 限界: 主に診断を受けた人の研究で、関連は因果を示さない。実験の研究は内容がまちまちで、まとめての分析ができなかった。

なお、上の実験の論文が紹介している先行研究のまとめ(2018年)では、比べる情報を実験で見せると、自分の能力の見積もりは変わる一方で、気分や行動への影響は平均すると一貫しなかったとされています。比べた結果をどう受け取るかで、その後が変わるためだと考えられています。

03 まだわかっていないことしぼんだやる気は、時間がたてば戻る?

まだわかっていません。今回の実験は、課題の直後の気持ちと選択だけを調べています。数日後や数週間後に意欲が戻るのか、実際の評価や順位で同じことが起こるのかは、これからの研究を待つ必要があります。

  • 実験はオンラインの短い課題で、人事評価や受験のように結果が重い場面ではない。研究者も、重い場面では別の受け止め方が出るかもしれないと書いている。
  • 直後の挑戦は1分かからない手軽なものだった。時間や手間のかかる努力でも、同じように差が出ないかはわからない。
  • 「大事じゃない」と思い直すことで、実際に気持ちが楽になったのかは測られていない。
  • 比べた相手は「ほかの学生全体」で、特定の同僚や友達と比べたときとは違う可能性がある。
  • いま気分の落ち込みが強い人は参加していないため、その人たちに同じことが当てはまるかはわからない。

04 今日からできるセルフケアやる気がしぼんだその場で、何ができる?

直後の「もういい」は反応の一つと受け止め、大きな決断は先に延ばします。手軽な「もう一回」を用意し、差が「どこまでなら届きそうか」を書き出します。大事な作業の直前には、評価や順位を見ないようにします。

1

直後の「もういい」は、反応として受け止める

下だとわかった直後に意欲がしぼむのは、実験でも多くの人に起きていました。「いまは比べた直後だから、気持ちが縮んでいる」と心の中で言葉にして、やめる・あきらめるといった大きな決断は、少なくとも一晩おいてから考えます。

目安 決めるのは翌日以降

2

手軽な「もう一回」を用意する

実験では、1分かからない課題なら、下のほうと伝えられた組でも4人に3人が挑戦していました。大きな目標ではなく、問題を1問だけ解く、資料を1ページだけ直すなど、すぐ終わる一歩を決めます。

目安 1〜5分

3

差が「どこまでなら届きそうか」を書き出す

理論の論文では、差を「埋められない」と感じるといやな気持ちが強まり、「届きそうだ」と思えると挑戦として受け取りやすいと考えられています。相手との差を、届きそうな部分と、いまは届かない部分に分けて紙に書きます。

目安 5分

4

大事な作業の直前には、評価や順位を見ない

実験では、下のほうと表示され始めてから課題の正確さが下がっていました。評価の通知や成績表を開くのは、大事な作業を終えてからにします。

目安 大事な作業の前の1回

上を見て頑張ろうとして逆にしんどくなる人は「上を見て頑張る」が逆効果になった研究を、比べる相手を変えたい人は比べる相手を「前の自分」にする習慣も参考にしてください。

05よくある質問

人より下だとわかった直後に「もうどうでもいい」と思うのは、甘えですか?

甘えとは言えません。ドイツの実験では、下のほうだと伝えられた人の多くで、その課題の出来を大事だと思う気持ちが下がりました。研究者は、自分を守るための心の動きの可能性があると考えています。

やる気が下がったら、もう伸びないということですか?

そうとは限りません。同じ実験では、今後うまくなりたい気持ちは大きく下がった一方、1分かからない課題にもう一度挑戦した人の割合は、上のほうだと伝えられた組と差がありませんでした。

評価を見るのは、大事な作業の前と後のどちらがいいですか?

研究で直接比べたわけではありません。ただ、ドイツの実験では、下のほうだと伝えられ始めてからの課題の出来が下がっていました。選べるなら、大事な作業を終えてから見るのも一つの方法です。

比べる相手は、全体の順位と身近な人のどちらが影響しますか?

この実験では「ほかの学生全体」と比べた位置を見せていました。論文では、全体の順位と身近な一人の結果を同時に知ると、身近な一人との比較のほうが自己評価を左右しやすいという先行研究が紹介されていますが、今回の実験では調べていません。

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出典

  1. Meyer T, Zenses AK, Morina N (2026). Social comparison threat and coping: affective, cognitive and behavioral outcomes in response to false performance-related feedback. BMC Psychology. https://doi.org/10.1186/s40359-026-05536-9
  2. Morina N (2021). Comparisons inform me who I am: A general comparative-processing model of self-perception. Perspectives on Psychological Science. https://doi.org/10.1177/1745691620966788
  3. McCarthy PA, Morina N (2020). Exploring the association of social comparison with depression and anxiety: A systematic review and meta-analysis. Clinical Psychology & Psychotherapy. https://doi.org/10.1002/cpp.2452