比べて落ち込む

人と比べて落ち込んだ日、「上を見て頑張る」は逆効果?日常での実験では、上と比べるよう意識した日ほど気分が沈み、一日の終わりに目標へ近づけた感覚も低かった

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わかっている度 ★★☆ 中研究3本・公的指針0件を整理
秋の林の中へ続く、草におおわれた一本道
Photo: Vovogov90 / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

同僚の成果やSNSの活躍を見て落ち込んだとき、「もっと上を見て頑張らなきゃ」と自分を奮い立たせる人は多いはずです。日常生活で比べる向きを指示した実験では、上と比べるよう意識した日は、その場のやる気は上がったものの、嫌な気持ちが増え、一日の終わりには目標へ近づけた感覚が低くなっていました。落ち込んだ日は、上を見るのをお休みにしてかまいません。

3行でわかる

  1. 日常での実験では、上と比べるよう意識した日はやる気が上がる一方で嫌な気持ちが増え、一日の終わりには目標へ近づけた感覚が低かった。
  2. ドイツの50人の日記の研究では、一日でいちばん悪かった場面に「上との比較」と「こうあるべき」との比較が多く、いちばんよかった場面には「前の自分との比較」が多かった。
  3. 落ち込んだ日は「上を見て頑張る」をお休みにし、「こうあるべき」を「前より進んだこと」に言いかえるのが、研究に合った工夫になる。

01 結論から言うと落ち込んだ日に「上を見て頑張る」は効く?

その場のやる気は上がりますが、落ち込んだ日の立て直しには向きません。日常での実験では、上と比べるよう意識した日ほど嫌な気持ちが増え、一日の終わりには目標へ近づけた感覚が低くなっていました。

「上と比べる」とは、自分よりうまくいっている人を思い浮かべることです。「あの人みたいになりたい」という気持ちは、たしかに背中を押します。けれど同時に、今の自分との差もはっきり見せます。

その差が、その日の気分を重くします。研究では、上を見て奮い立たせる作戦は短い時間ではやる気を生むものの、一日を通すと思ったほどの手応えにつながっていませんでした。

02 研究とデータでわかっていること比べる向きで、その日の気分はどう変わる?

上と比べるよう意識した日は嫌な気持ちが増え、下と比べるよう意識した日はよい気持ちが増えていました。ドイツの日記の研究でも、悪かった場面には上との比較が、よかった場面には下との比較が多く出てきました。

1.30回一日でいちばん悪かった場面の説明に出てきた「上との比較」の、1週間・1人あたりの平均(ドイツの50人、2024年発表)
0.14回同じく、いちばんよかった場面に出てきた「上との比較」の平均。ほとんど出てこなかった
3万6,583人SNSで上と比べることと心の不調の結びつきを調べた、54のデータのまとめの対象(2026年発表)

Dielら(2025年)[1]

参加者は数日間、ふだんの生活の中で人と比べた場面を、1日に何度か記録した。研究者は日によって、「自分より上の人と比べるように」「自分より下の人と比べるように」と比べる向きを指示した。上と比べる日は「もっとよくなりたい」気持ちが高まった一方で、嫌な気持ちが増えた。下と比べる日は、その場のやる気は下がったものの、よい気持ちが増えた。

ところが一日の終わりに振り返ると、結果は逆になった。上と比べた日は目標へ近づけた感覚が低く、下と比べた日は高かった。研究者は、上を見る作戦はその場ではやる気を生むが、一日を通すと思わぬ逆の結果になったとまとめている。

対象: 日常生活の中で比べた場面を記録した大人 / 限界: 1つの研究の結果。この研究の内容は論文の要旨で確認したもので、参加者の国や年齢、効果の大きさは確認できていない。

Meyerら(2024年)[2]

参加者は1週間、毎晩その日の出来事を振り返り、いちばんよかった場面と悪かった場面の気分と、その理由を書いた。研究者が理由の中の比較を数えると、悪かった場面には「上との比較」が1週間・1人あたり平均1.30回出てきたが、よかった場面では0.14回だった。「下との比較」は逆に、よかった場面で0.90回、悪かった場面で0.10回だった。

比べる相手の種類にも違いがあった。悪かった場面には「こうあるべき」という基準との比較がいちばん多く(0.82回)、よかった場面では0.24回だった。よかった場面には、前の自分との比較が多かった。こうした傾向は、心の不調で相談に来た人にも、そうでない人にも見られた。

対象: ドイツの大学の外来に心理療法を求めて来た25人と、年齢・性別・学歴をそろえたそうでない25人(平均25歳前後) / 限界: 50人と少なく、気分と比較の結びつきを見た研究で、比較が気分の原因とは言えない。ここでの「上・下」には、人だけでなく前の自分や理想との比較も含まれる。

Leiら(2026年)[3]

SNSで自分より上の人と比べることと、心の不調の結びつきを調べた54のデータ(合わせて3万6,583人)をまとめた。上と比べる人ほど、不安・落ち込み・人の目を気にする嫌な気持ちが強く、結びつきの強さは平均0.33(0〜1の目安で中くらい)だった。年齢や文化による違いは見られなかった。

対象: 各国の54のデータ / 限界: ほとんどが結びつきを見た研究で、上と比べることが不調の原因かまではわからない。

03 まだわかっていないこと「下と比べる」をすすめていいの?

まだ言い切れません。下と比べた日はよい気持ちが増えましたが、その場のやる気は下がっていました。人を見下す形の比較が長い目で人間関係や自分にどう響くかは、調べられていません。

  • 比べる向きを指示した実験は1つで、数日間の結果。何週間も続けたときに同じ結果になるかはわからない。
  • 日本の働く人や学生で同じ結果になるかは、確かめられていない。
  • 下と比べた日の「よい気持ち」が、人を見下したことによるのか、自分を責めずに済んだことによるのかは、分けて調べられていない。
  • 日記の研究は50人と小さく、気分が悪いから上と比べたのか、上と比べたから気分が悪くなったのか、向きはわからない。

04 今日からできるセルフケア比べて落ち込んだ日、何をすればいい?

落ち込んだ日は「上を見て頑張る」をお休みにします。「こうあるべき」と比べていたら、前より進んだことを1つ探し、誰と何を比べたかを1行メモして、比べ方のくせに気づきます。

1

落ち込んだ日は「上を見て頑張る」をお休みにする

落ち込んでいる日に、すごい人の投稿や成果をわざわざ見に行って自分を奮い立たせるのはやめます。上と比べた日は、一日の終わりの手応えがかえって低くなっていました。

目安 その日いっぱい

2

「こうあるべき」を「前より進んだこと」に言いかえる

「もっとできているはずなのに」と思ったら、1か月前の自分と比べて進んだことを1つ書き出します。悪かった場面には「こうあるべき」との比較が、よかった場面には前の自分との比較が多く出ていました。

目安 1回1分

3

誰と何を比べたかを、1行メモする

落ち込んだら「誰と・何を比べたか」を1行書き、「上の人」「こうあるべき」「前の自分」のどれだったかに印をつけます。比べ方のくせに気づくと、比べる向きを選び直しやすくなります。

目安 1回30秒、落ち込んだときに

前の自分と比べる習慣は「前の自分」と比べる習慣の記事に、友達の成功に焦ったときの考え方は妬みを前向きな力に変える研究に、SNSで上を見ると落ち込むしくみは上と比べると落ち込む理由にまとめています。

05よくある質問

上を見て頑張るのは、やる気につながらないの?

その場のやる気にはつながっていました。日常での実験では、上と比べるよう意識した日は「もっとよくなりたい」気持ちが高まりました。ただ、同じ日は嫌な気持ちも増え、一日の終わりには目標へ近づけた感覚が低くなっていました。

自分より大変な人と比べて安心するのは、性格が悪い?

性格の問題とは言えません。ドイツの50人の日記の研究では、一日でいちばんよかった場面の説明に、自分より下との比較がよく出てきました。ここでの「下」には、前の自分より進んだという比較も含まれます。人を見下すのが気になるなら、比べる相手を前の自分にする方法があります。

人と比べるのをやめられないのは、心が弱いから?

心が弱いからではありません。ドイツの日記の研究では、心の不調で相談に来た人にも、そうでない人にも、比べる考えが同じように見られました。SNSでの比較を調べた54のデータのまとめでも、年齢や文化による違いは見られませんでした。

比べて落ち込んだとき、いちばん手軽にできることは?

「こうあるべき」と比べていないかに気づき、前より進んだことを1つ探すことです。日記の研究では、いちばん悪かった場面に「こうあるべき」との比較が多く、いちばんよかった場面には前の自分との比較が多く出てきました。

つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。

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出典

  1. Diel K, Hofmann W, Grelle S, Boecker L, Friese M (2025). Prepare to Compare: Effects of an Intervention Involving Upward and Downward Social Comparisons on Goal Pursuit in Daily Life. Personality and Social Psychology Bulletin, 51(9), 1523-1537. https://doi.org/10.1177/01461672231219378
  2. Meyer T, Sickinghe M, Matera V, Morina N (2024). Comparison standards shape everyday judgments of low and high wellbeing in individuals with and without psychopathology: a diary-based investigation. Scientific Reports, 14, 4063. https://doi.org/10.1038/s41598-024-54681-x
  3. Lei Y, Hu S, Sun Y, Zheng L (2026). "Looking up" linked to feeling down: a meta-analysis of online upward social comparison and psychological maladjustment. Frontiers in Psychology, 17, 1825169. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1825169