つい自分の話ばかりしてしまうのはなぜ?米国の実験では、自分のことを話すと脳の報酬に関わる部分が働き、人はもらえたはずのお金の約17%を手放してでも自分について答えるほうを選んでいた

飲み会や雑談のあと、「今日も自分の話ばかりしていた」と気づいて落ち込む。相手の話を聞こうと思っていたのに、気づけば口が止まらない。これは性格の問題だけではないようです。米国の実験では、自分のことを話すと、おいしいものやお金をもらったときと同じ脳の部分が働き、人は少しのお金を手放してでも自分の話を選んでいました。
3行でわかる
- 米国の実験では、自分の考えや好みを話すとき、他人について考えるときより、脳の「報酬」に関わる部分がよく働いていた。
- お金がもらえる別の課題を選べる場面でも、人は自分について答える課題を選び、もらえたはずの額の約17%を手放していた。誰かに伝えられるときは約25%だった。
- 自分の話をしたくなるのは、人に共通する自然な傾向と考えられる。ただし、それが「話しすぎ」につながるかを直接調べた研究はまだない。
01 結論から言うとつい自分の話ばかりしてしまうのはなぜ?
自分のことを話すのは、人にとってそれ自体が「ごほうび」のように感じられるからだと考えられています。米国の実験では、自分について話すときに脳の報酬に関わる部分が働き、人はお金を少し手放してでも自分の話を選んでいました。
この実験を行ったハーバード大学の研究者らは、論文の中で、ふだんの会話の30〜40%は自分の体験や気持ち、身近な人間関係を伝えることに使われているという先行研究を紹介しています。自分の話が多くなるのは、多くの人に共通する傾向です。
大事なのは、この気持ちは相手も同じように持っているということです。自分が話して心地よいとき、相手も話す機会をほしがっているかもしれません。「話したい気持ちが悪い」のではなく、「お互いに話す番がある」と考えると、次の会話で何を変えればいいかが見えてきます。
02 研究とデータでわかっていること自分の話をすると、脳と気持ちに何が起きる?
自分について話すと、脳の報酬に関わる部分が働き、人はそのためにお金を手放すこともありました。誰かに伝えられるときは、その傾向がさらに強まりました。上手に聞いてもらうと、話し手と聞き手の両方があたたかさを感じやすいという実験もあります。
Tamir・Mitchell(2012年)[1]
脳の働きを画像で調べる装置(fMRI)の中で、自分の意見や性格について答える場合と、ほかの人について考える場合を比べた。78人と117人の2つの実験で、自分について答えるときのほうが、食べものやお金などの報酬に反応することで知られる脳の部分(側坐核など)がよく働いていた。
別の37人の実験では、「自分について答える」「ほかの人について考える」「クイズに答える」のどれかを、1回につき1〜4セントの報酬つきで195回選んだ。報酬が同じときは、自分についての質問を、ほかの人についての質問より69%、クイズより66%の割合で選んだ。結果として、もらえたはずの額の平均17%を手放していた。41人の実験では、答えがほかの人に伝わる場合、手放す額は約25%に増えた。誰にも見られない場合でも、自分について考えることは選ばれやすかった。
対象: 米国で行われた5つの実験(17〜117人) / 限界: 1回あたり数セントという小さな額での選択で、実際の会話を調べたものではない。脳の部分が働くことが、そのまま「快い」と感じていることを示すとは限らない。
Meshiら(2013年)[2]
ドイツの19〜31歳の31人に、自分についてのよい評価を受け取ってもらい、そのときの脳の働きを調べた。ほかの人がよい評価を受けるのを見たときと比べて、自分への評価で報酬に関わる部分(側坐核)がより強く働く人ほど、フェイスブックをよく使っていた。お金をもらったときの脳の反応は、使い方とは関係がなかった。
対象: ドイツの19〜31歳の31人 / 限界: 人数が少なく、一度に調べた関係で、脳の反応がSNSの使い方の原因なのかはわからない。
Moinら(2024年)[3]
初対面の2人を組にし、片方が自分の強みについて話し、もう片方が聞く役になった。聞き役の半分には、よい聞き方を示す短い動画を見てもらい、残りの半分にはふだん程度の聞き方の動画を見てもらった。その組では、話し手と聞き手の両方が会話の中で「あたたかさを分かち合えた」と感じる度合いが、わずかに高かった。不安や「自分らしくいられた」感覚には差がなかった。役割で比べると、話し手のほうが聞き手より「自分らしくいられた」と感じていた。
対象: 英国の大学で集めた303組606人(事前に計画を登録した実験) / 限界: 効果は小さく、第三者が録画を見て判定した聞き方の質では、2つの組にはっきりした差が出なかった。
03 まだわかっていないこと自分の話が多いのは、悪いこと?
まだわかっていません。自分の話をしたくなる仕組みは調べられていますが、どのくらい話すと相手にいやがられるのか、話しすぎをどう減らせるのかを直接確かめた研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。
- 紹介した実験は、短い質問に答える課題で調べたもので、飲み会や雑談のような実際の会話で同じことが起きているかは確かめられていない。
- 「会話の30〜40%が自分の話」という数字は論文が紹介している昔の研究のもので、国や場面による違いはわからない。
- 自分の話が多いことが、相手との関係を悪くするのか、かえって親しくなるきっかけになるのかは、場面によって違う可能性がある。
- AIに自分の話を聞いてもらうことが、人と話したい気持ちを満たすのか、減らすのかは、まだ研究がほとんどない。
04 今日からできるセルフケア自分の話ばかりになるのを変えたいときは?
話したい気持ちを否定せず、「話す番」を交代する工夫から始められます。自分が話し終えたら1つ質問を返す、聞くときはうなずきと短い要約を入れる、どうしても話したいことは先に書き出しておく、の3つです。
話し終えたら、同じ話題で1つ質問を返す
実験では、自分の話をする機会は誰にとっても価値がありました。自分の話のあとに「〇〇さんはどう?」と同じ話題を相手に渡すと、相手にも話す番が回ります。
目安 1つの話題につき質問1つ
聞くときは、うなずきと短い要約を入れる
英国の実験では、よい聞き方を学んだ組で、話し手と聞き手の両方があたたかさを感じやすくなっていました。この論文は、うなずきなどで注意を向けていることを示す、相手の話を短くまとめて理解を伝える、といった行動をよい聞き方の要素に挙げています。相手の話の区切りで「〜ということですね」と一言返してみます。
目安 会話の中で2〜3回
話したいことは、会う前にメモに書き出す
実験では、誰にも見られない場面でも、自分について考えることは選ばれやすいものでした。どうしても話したい出来事は、会う前に3行ほど書き出しておくと、会話の中で話す話題を1つに絞りやすくなります(この方法の効果を直接確かめた研究はありません)。
目安 会う前に3分
会話のあとに「話しすぎた」と一人反省会が止まらないときは相手は思うより好意的だったという研究を、質問の仕方を知りたいときは掘り下げる質問をする人ほど好かれていた研究を、聞き役のときの返し方は悩みを打ち明けられたときの返事の研究も読めます。
05よくある質問
自分の話ばかりしてしまうのは、性格のせい?
性格だけのせいではなさそうです。米国の実験では、自分について話すときに脳の報酬に関わる部分が働き、多くの人がお金を少し手放してでも自分の話を選んでいました。自分の話をしたくなるのは、多くの人に共通する傾向と考えられます。
人に話すと気持ちいいのはなぜ?
研究では、自分について考えることと、それを誰かに伝えることの両方に、別々に「ごほうび」の働きがあると考えられています。41人の実験では、答えがほかの人に伝わるときのほうが、人はより多くのお金を手放して自分の話を選んでいました。
SNSで自分のことを投稿したくなるのも同じ仕組み?
関係があるかもしれません。ドイツの31人の研究では、自分へのよい評価に脳の報酬に関わる部分が強く反応する人ほど、フェイスブックをよく使っていました。ただし人数が少なく、どちらが原因なのかはわかっていません。
聞き役ばかりで疲れるときはどうすればいい?
話したい気持ちは聞き役の人にもあります。英国の実験では、話し手のほうが聞き手より「自分らしくいられた」と感じていました。聞くばかりで疲れるときは、自分も話す番をもらってかまわないと考えてみてください。
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出典
- Tamir, D. I., & Mitchell, J. P. (2012). Disclosing information about the self is intrinsically rewarding. Proceedings of the National Academy of Sciences, 109(21), 8038–8043. https://doi.org/10.1073/pnas.1202129109
- Meshi, D., Morawetz, C., & Heekeren, H. R. (2013). Nucleus accumbens response to gains in reputation for the self relative to gains for others predicts social media use. Frontiers in Human Neuroscience, 7, 439. https://doi.org/10.3389/fnhum.2013.00439
- Moin, T., Weinstein, N., Itzchakov, G., et al. (2024). The effects of listening on speaker and listener while talking about character strengths: an open science school-wide collaboration. Royal Society Open Science, 11, 221342. https://doi.org/10.1098/rsos.221342


