最近、人と笑っていない。動画では笑うのに、どこか寂しいのはなぜ?ドイツの5,000人の調査では、人との会話で笑う人ほど孤独が少なく、動画などで笑うことには関連が見られなかった

仕事も調べものも一人で済み、夜は動画を見て声を出して笑う。それなりに楽しいはずなのに、ふと「最近、誰かと一緒に笑ったのはいつだろう」と寂しくなる。そんな人は少なくないかもしれません。ドイツの大人5,000人の調査では、笑う場面によって孤独との関わり方が違い、人との会話で笑う人ほど孤独が少なかった一方、動画などで笑うことには関連が見られませんでした。
3行でわかる
- ドイツの18〜74歳5,000人の調査では、よく笑う人ほど孤独や人づきあいの少なさ、ひきこもりがちな傾向が少なく、とくに人との会話で笑うことが関わっていた。
- 動画などデジタルメディアを見て笑うことには、孤独との関連が見られなかった。笑えば何でも同じ、ではない可能性がある。
- ただし一度きりの調査で、因果の向きはわからない。笑わせる実験では一緒に笑うと近さが増した結果と、変わらなかった結果があり、結論はまだ出ていない。
01 結論から言うと人と笑う機会が減ると、寂しくなるの?
人との会話で笑う人ほど孤独が少ないという関連は見られています。ただ、笑いが減ったから寂しくなるのか、寂しいから笑わなくなるのかは、研究ではまだ区別できていません。
笑いは、人どうしの距離を縮める行動の一つと考えられてきました。だれかと同じところで笑うと、それだけで「わかり合えた」感じがすることがあります。
ドイツの調査で興味深いのは、笑う回数だけでなく、どんな場面で笑うかによって結果が分かれていたことです。人との会話や、文化的な催しの場で笑う人では孤独が少なかったのに対し、スマホやテレビなどで笑うことには、孤独との関連が見られませんでした。動画で笑えているのに寂しさが残る感覚は、この結果と重なる部分があるかもしれません。
02 研究とデータでわかっていること一緒に笑うことと、つながりの研究は?
会話で笑う人ほど孤独が少ない関連があり、同じ動画でも大勢で見ると笑いが起きやすいことがわかっています。一緒に笑うと近さが増したという実験もありますが、男女で違いがあったり、笑わせようとしただけでは変わらなかったりと、結果はそろっていません。
Hajek ら(2025)[1]
笑う頻度と、どんな場面で笑うかを尋ね、孤独、人づきあいの少なさ、ひきこもりがちな傾向との関連を調べました。「ほとんど毎日笑う」と答えた人は36.3%、「ほとんど笑わない」は10.2%でした。よく笑う人ほど、孤独、人づきあいの少なさ(実際の人数と本人の感じ方の両方)、ひきこもりがちな傾向が少なくなっていました。場面別では、人との会話や文化的な催しで笑うことは、どの指標とも一貫して関連していましたが、動画などデジタルメディアで笑うことは、どの指標とも関連が見られませんでした。研究者らは、一人でメディアを見ていると一人であることを意識しやすい可能性を挙げつつ、さらに研究が必要だとしています。
対象: ドイツのオンライン調査に答えた18〜74歳の5,000人(平均46.9歳、2023年夏の終わり) / 限界: 一度きりの調査のため、因果の向きはわかりません。孤独が強い人ほど笑いにくい、という逆向きの可能性もあると著者らは書いています。
Dunbar ら(2021)[2]
1つめの実験では、約20分のお笑い動画を1人で見る組、4人で見る組と、ゴルフの教則動画を1人で見る組を比べました。笑いは、4人で見たときに1人のときの約4倍起きやすくなっていました。お笑い動画で笑ったあとは痛みに耐えられる時間が延びており、研究者らは脳内のエンドルフィン(気分をよくする物質)の働きを示すと考えています。2つめの実験では、初対面の3〜4人で同じお笑い動画を見たところ、女性ではグループへの近さの感じ方が増しましたが、男性では変化が小さく、全体としての差ははっきりしませんでした。
対象: 英国の大学の実験。1つめは友達と参加した62人(平均24.6歳)、2つめは初対面どうしの52人(平均21.3歳) / 限界: 参加者は学生のみで、人数も少なめです。笑いが気前のよさ(ほかの人にお金を分けるか)を高めるかは、はっきりしませんでした。
Schäfer ら(2025)[3]
初対面の2人組に、面白い動画か笑いの起きにくい動画を、一緒にまたは別々に見てもらい、そのあと10分間自由に話してもらいました。笑わせる動画を見せたかどうかでは、相手への好意や近さの感じ方に差は見られませんでした。一方で、実際に笑っていた量は、好意、近さ、相手を助けたい気持ちと関連していました。研究者らは、初対面どうしの笑いには愛想笑いのようなものも含まれ、親しい人との笑いとは働きが違う可能性を挙げています。
対象: オーストリアの大学で募った18〜25歳の196人(98組、同性どうしの初対面のペア) / 限界: 実験室の短い出会いで、笑う量は人によって大きくばらつきました。笑いが好意を生んだのか、気が合うからよく笑ったのかは区別できません。
ちょっとした会話そのものの効果は「AIやネットで用が足りて、人と話さない日が増えた」、ひとりの時間との付き合い方は「ひとりの時間は好きだけど、孤独にならないか心配」で整理しています。
03 まだわかっていないこと人と笑えば、孤独はやわらぐの?
まだ結論は出ていません。会話で笑う人ほど孤独が少ない関連はありますが、人と笑う機会を増やすことで孤独が減るかを、一般の大人で確かめた研究は見当たりませんでした。
- ドイツの調査は一度きりで、笑うから孤独が少ないのか、孤独が少ないからよく笑うのかは区別できていません。
- 動画で笑うことと孤独に関連が見られなかった理由はわかっていません。研究者らは、だれかと一緒に見ているかどうかで違う可能性を挙げています。
- オンラインの通話やチャットで笑い合うことが、対面と同じ働きをするかは確かめられていません。
- 笑わせる実験は学生が中心で人数も少なく、結果も男女や研究でそろっていません。
04 今日からできるセルフケア人と笑う機会を、無理なく増やすには?
笑う回数そのものを目標にするより、だれかと同じ時間を過ごす場面を一つ足すほうが、研究の結果に沿っています。面白いものを一人で見終わらせず、だれかと一緒に見る・話すことから始められます。
面白かった動画は、一人で見終わらせず話題にする
笑った動画や記事を、家族や友達に「これ見た?」と送る、次に会ったときに話す。英国の実験では、同じお笑い動画でも4人で見ると笑いが約4倍起きやすくなっていました。
目安 1日1回、1分
会話の場を、週に一つだけ足す
ランチを誰かと食べる、通話で近況を話すなど、短くてよいので人と話す場面をつくります。ドイツの調査では、笑いのうち孤独の少なさと一貫して関わっていたのは、人との会話で笑うことでした。
目安 週1回、15〜30分
人が集まる催しに、たまに出かけてみる
演芸、映画の上映会、地域のイベントなど、同じものをその場で一緒に見る機会を選びます。ドイツの調査では、文化的な催しで笑うことも、孤独や人づきあいの少なさが少ないことと関連していました。
目安 月1回
無理に笑おうとしない
笑わなきゃ、と力むより、相手の話を聞いて自然に笑えたらそれで十分です。オーストリアの実験では、笑わせる動画を見せるだけでは好意は変わらず、関わっていたのは実際に笑っていた量でした。
目安 会話のたびに
05よくある質問
動画を見て一人で笑うのは、意味がないのですか?
意味がないとは言えません。ドイツの調査で見られなかったのは、動画などで笑うことと孤独との関連で、気分転換になるかどうかは別の話です。研究者らは、一人で見ているときに一人であることを意識しやすい可能性を挙げていますが、確かめられてはいません。
笑う回数を増やせば、孤独は減りますか?
まだわかっていません。ドイツの調査は一度きりの調査で、よく笑うから孤独が少ないのか、孤独が少ないからよく笑うのかは区別できないと著者らも書いています。孤独が強い人ほど笑いにくいという逆向きの関係も考えられます。
人といても、うまく笑えないときはどうすればいいですか?
無理に笑う必要はありません。オーストリアの初対面の2人組の実験では、面白い動画を見せて笑わせようとしただけでは好意や近さは変わらず、関係していたのは実際に笑っていた量のほうでした。研究者らは、愛想笑いと心からの笑いでは働きが違う可能性も挙げています。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Hajek, A., Sutin, A. R., Veronese, N., Soysal, P., Jacob, L., Luchetti, M., Gyasi, R. M., Kostev, K., Pengpid, S., Peltzer, K., Terracciano, A., & König, H.-H. (2025). Laughing During Conversations, But Not in Response to Digital Media, Is Associated With Less Loneliness, Social Isolation, and Social Withdrawal: A Cross-Sectional Study of German Adults in 2023. Health Science Reports, 8(11), e71354. https://doi.org/10.1002/hsr2.71354
- Dunbar, R. I. M., Frangou, A., Grainger, F., & Pearce, E. (2021). Laughter influences social bonding but not prosocial generosity to friends and strangers. PLoS ONE, 16(8), e0256229. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0256229
- Schäfer, V. T., Hoehl, S., & Pletti, C. (2025). In sync through laughter? An fNIRS hyperscanning study on neural synchrony and social connection. Frontiers in Neuroscience, 19, 1697100. https://doi.org/10.3389/fnins.2025.1697100


