疲れて何もする気が起きない日が続く。小さな楽しみを予定に入れる方法は、研究のまとめで幸福感を中くらい高めていた

AIのニュースや仕事のチャットに追われた日々のあと、休日になっても何もする気が起きない。気力が戻るのを待っているうちに、また一週間が終わってしまう。そんな状態が続いている人は少なくありません。結論から言うと、気分が戻るのを待たずに、楽しめる小さな活動を先に予定に入れる「行動活性化」という方法は、研究のまとめで幸福感を中くらい高めていました。ただし、効果がどのくらい続くかはまだわかっていません。
3行でわかる
- 楽しめる活動を予定に入れて増やす「行動活性化」は、2010年のまとめで、何もしない群などと比べて幸福感を中くらい高めていた(10件・465人の分析)。
- この効果は、気分の落ち込みが少ない人でも、落ち込みの症状が強めの人でも、同じくらいだった。
- ただし、質の高い研究は少なく、効果が続くかはまだはっきりしない。ほかの心理的な方法より優れているという結果も出ていない。
01 結論から言うとやる気が戻るのを待つべき?
待つより、小さな活動を先に予定に入れる方法に研究の裏づけがあります。楽しめる活動を増やす方法は、研究のまとめで幸福感を中くらい高めていました。ただし効果の続き方はまだわかっていません。
何もする気が起きないとき、多くの人は「元気になったら動こう」と考えます。行動活性化は、その順番を逆にする方法です。もとはうつ病の治療の研究から生まれ、気分の落ち込みが強くない人の幸福感を高める目的でも試されてきました。
やり方の中心は、以前に楽しかったことや意味を感じたことを思い出し、それを日々の予定に組み込むことです。取り組んだあとに、楽しさや達成感を点数で記録する方法もよく使われてきました。休んでも疲れが抜けない人は、疲れが何週間も抜けないときの記事もあわせて読むと、回復には時間がかかることがわかります。
02 研究とデータでわかっていること楽しみを予定に入れると気分は変わる?
2010年のまとめでは、行動活性化をした人は対照群より幸福感が中くらい高くなっていました。うつ病の人を対象にした2021年のまとめでも、活動量が増えていました。
Mazzucchelliら(2010)[1]
行動活性化と幸福感を調べた20件のランダム化比較試験(1,353人)を集めたまとめです。何もしない群や待機群などと比べられた10件(11の比較・465人)では、終了時の幸福感の差は効果量0.52で、中くらいでした。気分の落ち込みが少ない人(0.53)と、落ち込みの症状が強めの人(0.51)で、効果はほぼ同じでした。
対象: 1970年〜2008年に発表された研究。参加者は主に大学生で、地域や医療機関で募集された大人、高齢者、子どもも含む / 限界: 研究の数が少なく、小規模な研究が多い。質が高いと判定された1件(19人)では効果はほぼなかった(0.04)。ほかの心理的な方法との差(0.09)は統計的に意味のある差ではなかった。
Steinら(2021)[2]
うつ病の人を対象に行動活性化を調べた28件の研究をまとめると、何もしない群などと比べて、落ち込みの症状(効果量0.83)と不安(0.37)が減り、活動量(0.64)が増えていました。一方、ほかの心理的な方法と比べると、どの結果にも統計的に意味のある差はありませんでした。
対象: うつ病の人を対象にしたランダム化比較試験 / 限界: 研究の質はおおむね低く、出版バイアス(よい結果の研究ほど発表されやすい偏り)の兆候があった。内容は論文の要旨で確認した範囲。
Kumarら(2024)[3]
前向きな気分が少ない大学生60人を2つに分け、一方は行動活性化に「よかったことを味わう練習」を加えたオンライン2回の方法、もう一方は感情に気づく練習を受けました。21日間、毎日の気分を記録すると、前者では前向きな気分が高まり、後者では変わりませんでした。
対象: 前向きな気分が少ない大学生60人 / 限界: 人数が少ない。毎日の気分の変わり方について、2つのグループの差(時間との交互作用)は統計的に意味のある差ではなかった。追跡は終了の1週間後まで。
3つの研究をまとめると、楽しめる活動を意識して増やすことは、気分のよい面を少し押し上げる方向でした。ただし、ほかの方法より特別に効くわけではなく、「数ある方法の一つ」と考えるのが研究に沿った見方です。
03 まだわかっていないことこの方法は誰にでも長く効く?
まだわかっていません。効果が続くかを確かめた研究は少なく、AIや情報による疲れに絞って調べた研究も見当たりません。
- 効果がどのくらい続くか。2010年のまとめで追跡して比べられたのは3件・78人だけで、差ははっきりしなかった。
- 質の高い研究での効果。2010年のまとめでは質の高い研究は1件だけで、その研究では効果がほぼなかった。
- どんな活動を、どのくらいの量で増やすとよいか。2010年のまとめでは、活動の増え方と幸福感の高まりの関係ははっきりしなかった。
- AIの情報や仕事のチャットによる疲れが続く人に、この方法が合うか。直接調べた研究は見当たらない。
04 今日からできるセルフケア気力がない日でもできることは?
以前に楽しかったことを1つ選び、10〜15分の小さな形にして予定に入れます。終わったら楽しさを点数でつけ、よかった瞬間を少し思い返します。
「前に楽しかったこと」を書き出す
好きだった散歩道、料理、音楽、人との短い会話など、以前に楽しかったことや意味を感じたことを紙に5つ書きます。行動活性化は、こうした活動を予定の候補にするところから始まります。
目安 5分、1回
1つを小さくして、時間ごと予定に入れる
「土曜の10時に近所を15分歩く」のように、日時と中身を決めてカレンダーに書きます。気分が乗るのを待たないのがこの方法の考え方です。歩くことと気分の研究は散歩と気分の記事にまとめています。
目安 1回10〜15分、週2〜3回から
終わったら、楽しさと達成感を0〜10でつける
活動のあとに、楽しさと「やれた感じ」をそれぞれ0〜10で記録します。行動活性化でよく使われるやり方で、どの活動が自分に合うかが見えてきます。
目安 1回30秒
よかった瞬間を、少しだけ思い返す
活動の中でよかった瞬間を1つ選び、寝る前などに思い返して味わいます。大学生の研究では、行動活性化にこうした「味わう練習」を組み合わせていました。
目安 1日1分
2010年のまとめが紹介している先行研究では、慣れて楽しさが薄れるのを避けるために、始めることは習慣にしつつ、やり方や時間は変えていくことが提案されていました。趣味から離れてしまった人は、趣味を楽しむ気力がなくなったときの記事も参考になります。
05よくある質問
やる気が出るまで待ったほうがいい?
行動活性化という方法では、やる気が戻るのを待たずに、小さな活動を先に予定に入れます。この方法は、20件の研究を集めたまとめのうち、何もしない群などと比べた10件・465人の分析で、幸福感を中くらい高めていました。ただし、強い疲れが続くときは休むことも大切です。
どんな活動を予定に入れればいい?
研究で使われた方法の多くは、楽しめる活動を増やすように促すものでした。以前に楽しかったこと、意味を感じたことから、10〜15分でできる小さなものを選びます。
効果はどのくらい続く?
まだよくわかっていません。2010年のまとめで、後から追跡して比べられた研究は3件・78人しかなく、差ははっきりしませんでした。
ほかの方法より効く?
ほかの心理的な方法と比べると、はっきりした差は見られていません。2010年のまとめでも2021年のまとめでも、ほかの方法との差は小さく、統計的に意味のある差ではありませんでした。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Mazzucchelli TG, Kane RT, Rees CS (2010). Behavioral activation interventions for well-being: A meta-analysis. The Journal of Positive Psychology, 5(2), 105–121. https://doi.org/10.1080/17439760903569154
- Stein AT, Carl E, Cuijpers P, Karyotaki E, Smits JAJ (2021). Looking beyond depression: a meta-analysis of the effect of behavioral activation on depression, anxiety, and activation. Psychological Medicine, 51(9), 1491–1504. https://doi.org/10.1017/S0033291720000239
- Kumar D, Corner S, Kim R, Meuret A (2024). A randomized controlled trial of brief behavioral activation plus savoring for positive affect dysregulation in university students. Behaviour Research and Therapy, 177, 104525. https://doi.org/10.1016/j.brat.2024.104525


