頭を使う作業でぐったりして、気分まで沈む。呼吸法で立て直せる?日本の大学生20人の実験では、吐く息を長くする20分の呼吸で前向きな気分が保たれたが、疲れの感じ方はただ休んだときと同じくらい戻った

資料を読み込み、AIの答えを確かめ、細かい判断を続けた午後。頭がぐったりして、なんとなく気分まで沈んでいる。そんなとき「深呼吸すると回復する」とよく聞きますが、頭の疲れにも効くのでしょうか。調べてみると、頭を使って疲れた直後に呼吸法を試した実験が、日本で発表されたばかりでした。
3行でわかる
- 日本の大学生20人が30分の頭を使う課題のあと、吐く息を長くする呼吸を20分した日と、ただ横になって休んだ日を比べた。休んだあとの前向きな気分は、呼吸法の日のほうが高かった。
- 一方、「疲れた」「集中できない」という感じ方は、呼吸法でもただ休むだけでも同じくらい大きく戻った。ストレスホルモンや心拍のゆらぎにも差は出なかった。
- 呼吸法の研究のまとめでも、ストレスを下げる効果は小さめ〜中くらい。まず作業から離れて休み、その時間に吐く息を長くする呼吸を足すのが、研究の条件に近いやり方。
01 結論から言うと頭が疲れたとき、呼吸法は効く?
疲れの感じ方を戻す点では、ただ休むのと差がありませんでした。違いが出たのは気分のほうで、呼吸法をしたときは前向きな気分が下がったままになりにくかった、という小さな実験が1つあるだけです。
長く頭を使い続けたあとの「ぐったり感」は、研究では精神的な疲れ(メンタル・ファティーグ)と呼ばれます。注意が続かなくなる、反応が遅くなる、やる気が落ちる、といった状態です。
今回の実験からわかるのは、まず「作業から離れて休むこと」自体に、疲れの感じ方を大きく戻す力があったということです。呼吸法は、その休み時間の気分を下がりにくくする上乗せのような位置づけでした。ただし参加者は20人だけで、まだ確かとは言えません。
02 研究とデータでわかっていること呼吸法と、ただ休むのでは何が違った?
日本の実験では、休んだあとの前向きな気分が呼吸法の日に高く、疲れや集中の感じ方は両方で同じように戻りました。12件の試験のまとめでは、呼吸法はストレスを小さめ〜中くらい下げていました。
Uemoriら / 立命館大学(2026年)[1]
画面に出る色の名前を見てキーを押し続ける課題を30分して、頭を疲れさせた。そのあと、1週間以上あけた別々の日に、吐く息を長くする呼吸を20分する回と、20分あおむけで静かに休む回の両方を、順番をランダムに決めて行った。
呼吸法は、鼻から5秒吸い、口から10秒かけて吐き、5秒止める、を音のリズムに合わせてくり返すもの。前半10分はあおむけ、後半10分は座って、両手をわき腹とお腹に当てた。前向きな気分の点数は、課題の前は34.8点で、課題のあとは両方の回で約29点に下がった。休んだあとは呼吸法の回が31.0点、ただ休んだ回が27.1点で、この差ははっきりしていた。ただ休んだ回は、課題の前より低いままだった。
一方、「疲れた」の点数は呼吸法の回で56.1→23.0、休んだ回で60.9→20.9と、どちらも大きく下がった。「集中できる」「やる気」の感じ方も両方で戻り、変化の仕方にはっきりした差はなかった。唾液のストレスホルモンや、心拍のゆらぎ(リラックスの目安)にも差は出なかった。
対象: 日本の大学生20人(男女10人ずつ、平均20.8歳)。呼吸法や瞑想の経験がない健康な人 / 限界: 人数が少ない。測定前24時間は食事とカフェインを控えるなど、ふだんの生活とは違う実験室の条件だった。課題の前の気分は別の日に測った値を使っていた。
Finchamら(2023年)[2]
呼吸法と、呼吸法をしない組を比べたランダム化比較試験をまとめた。ストレスの点数では12件・785人で、呼吸法の組のほうがストレスが低く、効果の大きさは小さめ〜中くらいだった。不安(20件)や落ち込み(18件)でも同じくらいの効果が見られた。ゆっくりした呼吸を中心にした方法では効果があり、速い呼吸を中心にした方法でははっきりしなかった。
対象: 大人を対象にした試験 / 限界: 多くの試験は偏りの危険が中程度と評価された。著者らは、期待が先走らないよう慎重な解釈を求めている。頭を使った疲れのあとに限った分析ではない。
Balbanら / スタンフォード大学(2023年)[3]
3種類の呼吸法と、マインドフルネス瞑想のどれかを、毎日5分・1か月、家で続けてもらった。吐く息を長くする呼吸の組では、気分のよさの上がり方が瞑想の組より大きく、続けた日数が多いほど上がる傾向もあった。
対象: 米国の108人(大学の心理学の授業の学生が中心) / 限界: オンラインで行い、毎日どれだけ指示どおりにできたかは確かめきれていない。頭の疲れを測った研究ではない。
03 まだわかっていないこと仕事の合間の短い呼吸でも同じ?
まだわかっていません。頭を使った疲れのあとに呼吸法を試した実験は、見つかった範囲では今回の1つだけです。短い時間や、職場で座ったまま行う形での効果は調べられていません。
- 参加者は健康な大学生20人だけ。毎日長く画面に向かう働く人や、疲れが何日も続いている人で同じ結果になるかはわからない。
- 呼吸法は20分で、うち10分はあおむけ。5分ほどの短い呼吸や、机で座ったまま行った場合の結果はわからない。
- 決められたリズムは1分に約3回だったが、測った呼吸の回数は1分に6〜7回ほどで、どこまで指示どおりだったかははっきりしない。
- 休んだあとに作業の成績は測っておらず、集中の成績そのものが戻るかはわからない。
04 今日からできるセルフケア頭がぐったりしたら、何をすればいい?
まず作業と画面から離れて休みます。その時間に、吐く息を長くする呼吸を足してみます。ふだんから1日5分続ける形もあります。どれもお金をかけずにできます。
まず画面から離れて、目を閉じて休む
日本の実験では、20分あおむけで静かに休むだけでも「疲れた」の点数が約61から約21に下がりました。横になれないときは、座って画面から目を離し、通知を切って休みます。
目安 できれば15〜20分
鼻から5秒吸って、口から10秒かけて吐く
休む時間に、両手をお腹に当てて、吐く息を吸う息の倍くらいの長さにします。実験では吐いたあと5秒止めていましたが、苦しければ止めずにかまいません。くらっとしたら、ふつうの呼吸に戻します。
目安 1回5〜20分
吐く息を長くする呼吸を、毎日5分続ける
疲れたときだけでなく、決まった時間に5分だけ行います。米国の実験では、毎日5分を1か月続けた組で気分のよさが上がり、続けた日数が多いほど上がる傾向がありました。
目安 1日5分
仕事中に焦ったときの呼吸はゆっくりした呼吸でストレスを下げる記事に、作業の途中で気が散ったときの方法は短い瞑想で集中を戻す記事にまとめています。
05よくある質問
頭が疲れたとき、呼吸法とただ休むのはどちらがいい?
日本の大学生20人の実験では、疲れの感じ方は、呼吸法でも横になって静かに休むだけでも同じくらい戻りました。違いが出たのは前向きな気分で、呼吸法をしたときのほうが高く保たれていました。まずは作業から離れて休むことが土台で、呼吸法はその休み方の一つと考えるのが研究に近い読み方です。
実験の呼吸法は、どんなやり方?
鼻から5秒吸い、口から10秒かけて吐き、5秒止める、を音のリズムに合わせてくり返していました。前半10分はひざを曲げてあおむけで、後半10分は座って、両手をわき腹とお腹に当てていました。息を止めるのが苦しい人は、止めずに吐く息を長くするだけでもかまいません。
20分も時間がとれない。短くても意味はある?
今回の実験は20分で、短い時間で同じ結果になるかは調べていません。別の研究では、吐く息を長くする呼吸を1日5分、1か月続けた組で、気分のよさが瞑想の組より大きく上がっていました。短い時間を毎日続ける形も選べます。
呼吸法で集中力そのものは戻る?
この実験では、集中できる感じ(自己評価)は、呼吸法でもただ休むだけでも大きく戻りました。呼吸法だけが特別に集中を戻したとは言えません。作業の成績は休んだあとに測っておらず、実際の集中の成績が戻るかはわかっていません。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Uemori K, Shimozawa Y, Suga T, Isaka T, Terada M (2026). Effects of Brief Breathwork Under a State of Cognitive Fatigue on Subjective Well-Being and Diaphragm Function: A Randomized Crossover Design. Stress and Health, 42(5), e70234. https://doi.org/10.1002/smi.70234
- Fincham GW, Strauss C, Montero-Marin J, Cavanagh K (2023). Effect of breathwork on stress and mental health: A meta-analysis of randomised-controlled trials. Scientific Reports, 13, 432. https://doi.org/10.1038/s41598-022-27247-y
- Balban MY, Neri E, Kogon MM, et al. (2023). Brief structured respiration practices enhance mood and reduce physiological arousal. Cell Reports Medicine, 4(1), 100895. https://doi.org/10.1016/j.xcrm.2022.100895


