仕事とAIの不安

AIで作業は速くなったのに、仕事がラクにならない。中国の会社員550人の調査では、AIに頼る人ほど上司の期待を高く感じ、それが不安や「周りに負けられない」競争の感覚とつながっていた

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わかっている度 ★☆☆ 低研究3本・公的指針0件を整理
観葉植物のそばに置かれたノートパソコン
Photo: Shixart1985 / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

AIのおかげで資料づくりもメールも速くなった。それなのに、仕事は前よりむしろ忙しく、気が休まらない。そう感じている人は少なくありません。研究では、浮いた時間に難しい仕事や確認作業が入りやすいこと、AIに頼る人ほど上司の期待を高く感じ、不安や競争の感覚とつながっていることが見えてきました。ただし、まだ数の少ない研究からの手がかりです。

3行でわかる

  1. 中国の会社員550人の調査では、AIに頼る人ほど「上司に高い成果を期待されている」と感じ、その感じ方が不安と、周りに負けられない競争の感覚につながっていた。
  2. 若手社員15人へのインタビューでは、5人が「仕事を速く・長くこなさざるを得ない負担」が当てはまると答えた。簡単な作業が減り、難しい仕事やAIの出力の確認が増えたという声もあった。
  3. どれも因果関係は確かめられていない。浮いた時間の使い道と、同時に抱える仕事の数を先に決めておくことから始められる。

01 結論から言うとAIで速くなったのに忙しいのはなぜ?

浮いた時間に、別の仕事や難しい仕事、AIの出力の確認が入りやすいからだと考えられています。中国の調査では、AIに頼る人ほど上司の期待を高く感じ、それが不安と競争の感覚につながっていました。

道具で作業が速くなると、「速くできるなら、もっとできるはず」という期待が生まれやすくなります。期待は上司から来ることもあれば、自分の中から来ることもあります。

技術による負担を調べる研究では、仕事を「もっと速く、もっと長く」せざるを得ないと感じることを「テクノ・オーバーロード(技術による過負荷)」と呼びます。AIでも同じことが起きていないかが、研究され始めています。

02 研究とデータでわかっていることAIに頼ることと仕事の負担は、どうつながる?

中国の会社員550人の調査では、AIに頼る人ほど上司の期待を高く感じていました。期待の感じ方と不安を通じて、周りに負けられない競争の感覚とつながり、AIに頼ること自体との直接のつながりは見られませんでした。

550人AIへの頼り方と職場の競争の感覚を調べた中国の会社員(2025年後半の調査)
15人中5人生成AIを使う職場で「速く・長く働かざるを得ない負担」が当てはまると答えた若手社員
21本技術による負担と心身・仕事の結果の関係を調べた研究のまとめで、条件に合った論文の数

Huang(中国・福州の大学、2026)[1]

仕事でAIに頼る度合いが強い会社員ほど、「上司から高い成果を期待されている」と感じ、仕事への不安も強い関連がありました。期待を高く感じる人ほど、また不安が強い人ほど、「周りの人が必要以上に頑張り続けている」という過剰な競争の感覚(中国で「内巻」と呼ばれるもの)が強くなっていました。AIに頼ること自体と競争の感覚の直接のつながりは、はっきりしませんでした。

対象: 中国の会社員550人(女性62%、86%が21〜40歳、オンラインで募集) / 限界: 1回きりのアンケートで、因果関係はわかりません。期待は本人が感じている期待で、上司が実際に求めた量ではありません。

Högemann ら(オスナブリュック大学、2025)[2]

生成AIを使い始めた職場の若手社員15人に、技術による負担を聞いたインタビューです。「仕事を速く・長くこなさざるを得ない負担」が当てはまると答えたのは15人中5人で、マーケティングの人は前向きな声が中心でした。研究開発の人はほぼ全員が、簡単な作業が減って難しい仕事の割合が増えたと話しました。「AIで早く終わると、そのぶん仕事が増えるかもしれない」「自分で作るより見張る役になると、同時に10件の案件を抱えるかもしれない」という声もありました。一方で、作業が速くなった、新しいことを学べたという前向きな声もありました。

対象: 研究開発、IT、金融、マーケティングの若手社員15人 / 限界: 少人数への聞き取りで、数としての傾向を示すものではありません。

Borle ら(シャリテ・ベルリン医科大学、2021)[3]

パソコンやスマホなど仕事の情報技術による負担と、心身や仕事の結果の関係を調べた研究のまとめです。条件に合った21本の論文で、最もよく調べられていたのは「技術による過負荷」と「いつでもつながる負担」でした。こうした負担は、ストレスや疲れ切った状態などの悪い結果と一貫して関連していました。一方、仕事への熱意とは前向きな関連が見られました。

対象: 働く人を対象にした21本の量的研究(2020年6月までの検索) / 限界: 生成AIが広がる前の研究です。負担と結果の測り方が重なっている研究が多いと著者自身が指摘しています。

会社にAIが入ってからのしんどさは「会社にAIが導入されてから、なんとなくしんどい」、AIについていけない焦りは「AIについていけない焦りがつらい」で整理しています。

03 まだわかっていないことAIは本当に仕事を増やしている?

まだわかっていません。紹介した研究は1回きりのアンケートと少人数への聞き取りです。AIを使い始めた人を追いかけて、仕事の量や心の負担がどう変わるかを調べた研究は見当たりませんでした。

  • AIに頼るから期待や不安が高まるのか、もともと期待や不安が高い人がAIに頼るのか、向きはわかりません。
  • 日本の職場で同じことが起きているかを調べた研究は、見当たりませんでした。
  • インタビューでは職種によって受け止め方が大きく違いました。どんな仕事で負担が増えやすいかは、まだ整理されていません。

04 今日からできるセルフケアAIで浮いた時間に押しつぶされないためには?

浮いた時間の使い道を先に決め、同時に抱える仕事の数に上限を置き、AIで何が速くなったかを上司と言葉にすることです。研究で負担と結びついていた点をもとにした、お金をかけずにできる工夫です。

1

AIで浮いた時間の一部を、先に「休む・整える」に予約する

たとえば浮いた30分のうち10分を、休憩や簡単な片付けに使うと決めておきます。インタビューでは、簡単な作業が減って難しい仕事ばかりになり、頭が回らなくなるという声がありました。

目安 1日10分

2

同時に進める案件の数に上限を決める

「同時に動かすのは3件まで」のように、自分で上限を書いておきます。AIの出力を見張る役が増えると、抱える案件が一気に増えるという声がありました。

目安 週1回・5分で見直す

3

AIで速くなったことと、速くならないことを上司に伝える

「下書きは速くなったが、確認には同じ時間がかかる」と具体的に話します。調査では、上司の期待の感じ方が不安とつながっていました。論文の著者も、現実的な成果の期待を伝え合うことの大切さを挙げています。

目安 月1回の面談で1分

在宅で仕事を切り上げられないときは「在宅勤務の日は、夜まで仕事を切り上げられない」、昼休みまで画面の前にいるときは「昼休みもパソコンの前で食べてしまう」も参考になります。

05よくある質問

AIを使うのをやめれば、ラクになりますか?

そうとは言えません。紹介した調査は1回きりのアンケートで、AIを使うことが負担を増やしたという因果関係は確かめていません。同じインタビューでは、作業が速くなった、新しいことを学べたという前向きな声もありました。やめるより、浮いた時間の使い方を決めるほうが現実的です。

上司の期待が上がった気がするのは、思い込みですか?

調査で測ったのは、本人が感じている上司の期待で、上司が実際に求めた量ではありません。思い込みかどうかは区別できないため、AIで何がどれだけ速くなったかを上司と言葉にしてすり合わせると、ずれが見えやすくなります。

周りがみんな前より頑張っているように見えて焦ります。

調査では、周りが必要以上に頑張り続けていると感じる「競争の感覚」は、AIに頼ること自体とは直接つながらず、上司の期待の感じ方や不安を通じてつながっていました。周りを見る前に、自分が引き受けている量を書き出すと、焦りと実際の量を分けて考えられます。

つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。

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出典

  1. Huang R (2026). Transforming work or eroding social capital? How reliance on artificial intelligence drives workplace involution. Frontiers in Psychology, 17, 1842907. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1842907
  2. Högemann M, Hein L, Britsche JO, Thomas O (2025). Technostress and generative AI in the workplace: a qualitative analysis of young professionals. Frontiers in Artificial Intelligence, 8, 1728881. https://doi.org/10.3389/frai.2025.1728881
  3. Borle P, Reichel K, Niebuhr F, Voelter-Mahlknecht S (2021). How Are Techno-Stressors Associated with Mental Health and Work Outcomes? A Systematic Review of Occupational Exposure to Information and Communication Technologies within the Technostress Model. International Journal of Environmental Research and Public Health, 18(16), 8673. https://doi.org/10.3390/ijerph18168673