考える力・集中

頭が疲れて、集中力が戻らない。42件の研究のまとめでは、自然の中で過ごしたあと記憶と切り替えの力が少しよくなっていた

約7分で読めます

わかっている度 ★★☆ 中研究4本・公的指針0件を整理
木々に囲まれた公園の小道
Photo: John Phelan / CC BY 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

休んだはずなのに、画面に戻ると頭が働かない。そんな日が続くと、集中力が元に戻らない気がしてきます。結論から言うと、緑の多い場所で過ごしたあとに、頭の中で情報を保つ力や切り替える力が少しよくなることが、42件の研究のまとめで示されています。ただし効果は小さく、自然の動画を見る短い休憩では、作業の成績は普通の休憩と変わらなかった実験もあります。

3行でわかる

  1. 42件の研究をまとめたレビュー(2018年)では、自然の中で過ごしたり自然の景色を見たりしたあと、作業記憶と切り替えの力がよくなっていた。効果の大きさは「小さい〜中くらい」。
  2. 31件の研究をまとめた別のレビュー(2016年)では、13の指標のうち効果がはっきりしたのは3つだけで、注意のどの部分が戻るのかはまだはっきりしない。
  3. 動画や写真より、実際に外に出るほうが効果が大きめだった。5分の自然の動画では、作業の成績は何もない画面を見る休憩と変わらなかった(日本の大学生25人の実験)。

01 結論から言うと疲れた頭は、自然の中で過ごすと回復する?

緑の多い場所で過ごすと、疲れた頭の働きが少し戻る可能性があります。42件の研究のまとめで、作業記憶と切り替えの力がよくなっていました。ただ効果は小さく、どの力が戻るかはまだ研究で分かれています。

この考え方は「注意回復理論」と呼ばれます。仕事や勉強で「気を散らさないように」と意識して使う注意は、使い続けると消耗する、という説です。

木の葉の揺れや水の流れは、がんばらなくても自然に目が向きます。その間に、意識して使う注意が休める。理論ではそう説明されています。

一方、人や車の多い街中では、ぶつからないように注意を使い続けます。そのため、同じ散歩でも回復しにくいと考えられています。気分への効果は自然と気分の記事で、運動で集中を戻す方法は運動と集中の記事でまとめています。

02 研究とデータでわかっていること自然で戻るのは、頭のどんな働き?

自然の中で過ごしたあとによくなっていたのは、頭の中で数字などを一時的に保つ「作業記憶」と、やり方を切り替える力でした。気を散らすものを抑える注意のコントロールは、結果がやや不安定でした。

42件自然と頭の働きを比べた研究のまとめ(2013年7月以降の研究、2018年発表)
13のうち3別のまとめ(31件、2016年発表)で、自然の効果がはっきりした指標の数
5分・25人自然の動画で休んだ日本の実験の休憩時間と人数(大学生・大学院生、2021年発表)

Stevensonら(2018、デンマーク・コペンハーゲン大学ほか)[1]

自然の環境や景色と、それ以外の環境を比べ、頭の働きを検査で測った42件の研究をまとめました。8つの領域を分析した結果、自然のあとには作業記憶と切り替えの力がよくなっていました。気を散らすものを抑えて注意をコントロールする力も上がっていましたが、結果の確かさはやや低めでした。効果の大きさは「小さい〜中くらい」でした。

対象: 2013年7月以降に発表された研究。実際に外に出る研究と、写真や動画を見る研究を含む / 限界: 実際の自然のほうが効果が大きめだったが、外に出る研究は時間も長い傾向があり、その差のせいかもしれない。もともと疲れていた人で効果が大きいかは、はっきりしなかった。

Ohlyら(2016、英国エクセター大学ほか)[2]

自然の環境と、それ以外の環境での注意の働きを比べた31件の研究をまとめました。13の指標を分析し、はっきりした効果があったのは、数字を順に覚えて言う検査、逆の順に言う検査、線をつなぐ切り替えの検査の3つでした。残りの10の指標では、目立った効果は見られませんでした。

対象: 自然の体験・景色と、街中などを比べた実験や前後比較の研究 / 限界: 1つの分析に入る研究の数も人数も少なく、研究の質の書き方や測り方がばらばらだった。

Bermanら(2008、米国ミシガン大学)[3]

自然の中を歩いた場合と街中を歩いた場合、また自然の写真と街の写真を見た場合を比べた2つの実験です。自然の中を歩いたり自然の写真を見たりしたあと、数字を逆の順に言う検査や注意の検査の成績がよくなっていました。注意回復理論を広めた代表的な研究です。

対象: 歩く実験と写真を見る実験の2つ / 限界: 検査の成績で測った結果で、仕事での集中がどう変わるかは調べていない。

Kimuraら(2021、大阪大学)[4]

約10分の注意の作業の合間に、5分の休憩をとってもらった実験です。森や小さな滝、揺れる葉の動画を見る休憩と、何も映っていない画面を見る休憩を比べました。どちらの休憩のあとも反応は速くなりましたが、作業の成績と「疲れた感じ」には休憩の種類による差がありませんでした。皮膚の汗の反応(緊張の目安)は、自然の動画のほうで下がっていました。

対象: 日本の大学生・大学院生25人 / 限界: 人数が少なく、1回の短い作業での比較。実際の自然の中には出ていない。

研究を並べると、次のように整理できます。

03 まだわかっていないこと何分いれば、どれくらい戻るの?

どのくらいの時間、どんな自然の中にいれば、どの程度戻るのかは、まだわかっていません。研究の多くは学生を対象にした短い実験で、長く続く集中の低下が自然で立て直せるかを追った研究は少ないのが現状です。

  • 研究によって、自然の中にいる時間も、測る検査もばらばらで、「何分で効く」という目安は出せていない。
  • 検査の成績の小さな変化が、仕事や勉強の集中がどれだけ続くかにつながるかは、はっきりしていない。
  • AIや画面を長く使う生活で落ちた集中が、自然の中で戻るかを直接調べた研究は見当たらない。

04 今日からできるセルフケア自然の力で集中を立て直すには?

画面から目を離し、緑のある場所で少し過ごしてから作業に戻ります。外に出られない日は、窓の外の木や空を眺めるだけでも構いません。効果は小さいので、ほかの休み方と組み合わせて使います。

1

頭が止まったら、木のある道を歩いてから戻る

人や車の多い大通りより、公園や街路樹の多い道を選びます。研究では、街中より自然の中を歩いたほうが、注意の検査の成績がよくなっていました。

目安 昼休みや区切りに1回15〜20分

2

外に出られない日は、窓の外を眺める

休憩のたびにスマホを開くかわりに、窓の外の木や空、遠くの景色をぼんやり眺めます。スマホを見ない休み方は画面作業の休憩の記事でも紹介しています。

目安 1時間に1回、数分

3

週末に、少し長く緑の中で過ごす

まとめた研究では、実際に外に出るほうが効果が大きめでした。近くの公園や川沿いなど、行きやすい場所を1つ決めておきます。

目安 週1回、30分〜1時間

4

自分に効いたかを、一言メモで確かめる

効果は人によって違います。緑の中で休んだ日とそうでない日で、午後に集中できた時間を一言ずつメモし、自分に合うかを確かめます。

目安 1日1行、1〜2週間

05よくある質問

自然の写真や動画を見るだけでも、集中力は戻る?

効果があったという研究もありますが、42件の研究のまとめでは、実際に外に出るほうが効果が大きめでした。日本の大学生25人の実験では、5分の自然の動画を見る休憩と、何もない画面を見る休憩で、作業の成績に差はありませんでした。外に出られないときの補助と考えるのが現実的です。

街中を散歩するのと、公園を歩くのでは違う?

2008年の米国の実験では、街中より自然の中を歩いたあとのほうが、数字を逆の順に言う検査などの成績がよくなっていました。人や車をよけるために注意を使い続ける街中は、回復しにくいと考えられています。

何分くらい自然の中にいればいい?

研究ごとに時間がばらばらで、「何分で効く」という目安はまだ出ていません。まとめた研究では、実際に外に出る研究ほど時間も長い傾向がありました。まずは昼休みの15〜20分など、続けやすい長さから試すのが無理のない方法です。

集中力が何週間も戻らないときは?

自然の中で過ごす効果は小さく、それだけで長引く不調が解決するとは言えません。睡眠や運動など、ほかの面も見直してみてください。つらさが続くときは、下にある相談先も使えます。

つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。

無料ツール
セルフチェックで「今日やること」をまとめる
当てはまる悩みを選ぶだけ。診断はせず、記事の対策を一覧にします。
研究早見表でほかの悩み105件も見る

出典

  1. Stevenson MP, Schilhab T, Bentsen P (2018). Attention Restoration Theory II: a systematic review to clarify attention processes affected by exposure to natural environments. Journal of Toxicology and Environmental Health, Part B, 21(4), 227-268. https://doi.org/10.1080/10937404.2018.1505571
  2. Ohly H, White MP, Wheeler BW, Bethel A, Ukoumunne OC, Nikolaou V, Garside R (2016). Attention Restoration Theory: A systematic review of the attention restoration potential of exposure to natural environments. Journal of Toxicology and Environmental Health, Part B, 19(7), 305-343. https://doi.org/10.1080/10937404.2016.1196155
  3. Berman MG, Jonides J, Kaplan S (2008). The cognitive benefits of interacting with nature. Psychological Science, 19(12), 1207-1212. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2008.02225.x
  4. Kimura T, Yamada T, Hirokawa Y, Shinohara K (2021). Brief and Indirect Exposure to Natural Environment Restores the Directed Attention for the Task. Frontiers in Psychology, 12, 619347. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2021.619347