スマホで落ちた集中力は、スマホを減らせば戻る?オランダの大学生76人の1週間の実験では注意のテストは変わらず、米国とカナダの467人がスマホのネットを2週間止めた実験では注意を保つ力が少し上がっていた

本を数ページ読むと手がスマホに伸びる。仕事の資料も、気づくと別の画面を開いている。「スマホのせいで集中力が落ちた。減らせば元に戻るのだろうか」と考える人は少なくありません。研究では、減らし方と期間が違う実験で、結果が分かれていました。
3行でわかる
- オランダの大学生76人がSNSや動画アプリの時間を1週間減らした実験では、注意のテストの成績は変わらず、「集中できた感じ」だけが上がっていました。
- 米国とカナダの467人がスマホのネットを2週間止めた実験では、注意を保つテストの成績が少し上がりました。上がった人は58.5%でした。
- 研究はまだ少なく、結果も分かれています。体感だけで判断せず、2週間を1区切りにして、同じ作業で確かめるのが現実的です。
01 結論から言うとスマホを減らせば、集中力は戻る?
戻る可能性はありますが、確かな答えはまだありません。スマホのネットを2週間止めた実験では、注意を保つ力が少し上がりました。一方、SNSを1週間減らした実験では、テストの成績は変わりませんでした。
ここでいう集中力は、研究では「注意を保つ力」として測られています。画面に次々と出る数字や絵を見て、決まった1つのときだけ反応を変える、といった単調な課題を何分も続けてもらい、どれだけ正確にこなせたかを見ます。
この記事で紹介する2つの実験は、どちらもこうしたテストを使っています。ただ、「どれだけ減らしたか」と「何日続けたか」が違いました。その違いが、結果の違いにつながっている可能性があります。
スマホが近くにあるだけで集中できるかはスマホが近くにあるだけで集中できない?で、心の健康への効果と終わったあとの戻り方はデジタルデトックスは本当に効く?でまとめています。この記事は「落ちた集中力を立て直す」ことに絞ります。
02 研究とデータでわかっていることスマホを減らした実験で、注意の成績は上がった?
スマホのネットを2週間止めた467人の実験では、注意を保つテストの成績が少し上がりました。SNSなどを1週間減らした76人の実験では、成績は変わらず、「集中できた」という自己評価だけが上がっていました。
Casteloら(2025年)[1]
スマホのネット(Wi-Fiとモバイル通信)を2週間止め、電話とSMS、パソコンでのネットは使えるようにしました。止めた組では、注意を保つテストの正確さが少し上がり、同じ期間ネットを使っていた組では変化がありませんでした。あとから2週間止めた組でも、同じくらいの改善が見られました。
1日のスマホの利用時間は、止めた組で平均314分から161分に減っていました。著者らは、注意の伸びを「年齢による注意の低下のおよそ10年分」に当たる大きさだと説明しています。止めている間は、人と直接会う、運動する、自然の中で過ごす時間が増えていました。ただし、こうした時間の使い方の変化は、気分や心の健康の改善は説明できたものの、注意の改善は説明できませんでした。
対象: 米国とカナダのiPhone利用者467人(平均32歳、63%が女性) / 限界: 参加者は実験の目的を知っていて、スマホを減らしたい気持ちが強い人が多く参加しました。最後まで回答した人は、もともと注意のテストの成績が良い傾向がありました。
van Wezelら(2021年)[2]
オランダの大学で、学生を2組に分け、4つのSNS・動画アプリの時間を1週間、一方は50%、もう一方は10%減らすよう、利用時間の制限機能を設定しました。どちらの組でも、2種類の注意のテストの成績は1週間後も変わりませんでした。減らした割合が大きかった人ほど成績が上がる、という関係も見られませんでした。
ところが、「ぼんやりして注意がそれた」「うっかりミスをした」という自己評価は、組に関係なく減っていました。いやな気分の自己評価も下がりましたが、前向きな気分は増えていませんでした。10%の組も実際には平均38%減らしてしまい、2組の比較は計画どおりにはいきませんでした。
対象: オランダの大学生76人(平均約21歳) / 限界: 人数が少なく、組の比較が崩れたため、著者ら自身が慎重な解釈を求めています。
Böttgerら(2023年)[3]
スマホを使うことや、近くに置いておくことの影響を調べた22件の研究(43の結果)をまとめた分析です。全体では成績を小さく下げる方向でしたが、分野別に見ると、はっきりした低下は記憶だけでした。注意の課題では、はっきりした差は出ていませんでした。
対象: 22件の研究 / 限界: 研究によって結果のばらつきが大きく、国や地域によっても違いがありました。
まとめると、「SNSを少し減らした1週間」では注意のテストに変化は出ず、「スマホのネットを丸ごと止めた2週間」では小さな改善が出ていました。どちらの実験でも、集中できた感じや気分の面は、テストの数字より先に良くなっていました。
03 まだわかっていないこと集中力の回復について、まだ不明な点は?
注意の改善がどのくらい続くのか、何日・どの程度減らせば十分なのか、働く大人や日本の人にも当てはまるのかは、まだわかっていません。研究の数が少なく、結果も分かれています。
- ネットを止めるのをやめたあとも、注意を保つ力が保たれるか(気分や心の健康は高めのままでしたが、注意については同じようには示されていません)
- SNSだけを止める、時間帯を区切るなど、もっとゆるい方法でも同じ効果があるか(著者らも今後の課題に挙げています)
- 「良くなるはず」という期待が、自己評価だけでなく結果全体をどのくらい押し上げているか
- 大学生や、スマホを減らしたい気持ちの強い人以外でも、同じ結果になるか
04 今日からできるセルフケア落ちた集中力を立て直すには、何から始める?
2週間を1区切りにして、作業する時間帯だけスマホのネットを切り、覚える作業ではスマホを別の部屋に置きます。戻ったかどうかは気分ではなく、同じ作業を続けられた時間で確かめます。
作業する時間帯だけ、スマホのネットを切る
集中したい時間帯(たとえば午前の2時間)に、スマホのWi-Fiとモバイル通信をオフにします。研究でも、電話とメッセージは使える状態でした。完全にできない日があっても、やめずに翌日また続けます。
目安 1日1〜2時間・2週間
覚える作業のときは、スマホを別の部屋へ
研究のまとめで、スマホの影響がはっきり出ていたのは記憶でした。資料を覚える、勉強するなどの時間は、スマホを見えない場所に置きます。
目安 作業のたびに10秒
体感ではなく、同じ作業で確かめる
「集中できた感じ」はテストの成績より先に良くなりやすいことがわかっています。読書なら同じくらいの本を何ページ続けて読めたか、仕事なら1つの作業を中断せずに何分続けられたかを、1日1行メモします。
目安 1日1分の記録・2週間
2週間たったら、メモを見返して、続ける時間帯を決め直します。ネットを止める実験でも、止めるのをやめたあと利用時間は増えましたが、最初ほどには戻っていませんでした。全部を元に戻すより、効果を感じた時間帯だけ残すほうが続けやすいはずです。
05よくある質問
スマホを減らしたら、集中力はどのくらいで戻る?
何日で戻るという決まった答えはありません。米国とカナダの467人がスマホのネットを2週間止めた実験では、注意を保つテストの成績が少し上がっていました。一方、オランダの大学生76人が1週間SNSなどの時間を減らした実験では、注意のテストの成績は変わっていませんでした。
SNSだけ減らすのと、スマホのネットを全部止めるのでは、どちらがいい?
同じ人たちで直接比べた研究は、まだ見当たりません。ネットを2週間止めた実験の著者らも、SNSだけを止める方法や、時間帯を区切る方法との比較を今後の課題に挙げています。
完全にやめられないなら、減らしても意味がない?
そうとは限りません。ネットを2週間止めた実験では、決めた基準どおり止め続けられた人は約4人に1人でしたが、続けられなかった人も含めた分析でも、注意を保つ力は少し上がっていました。著者らは、完全に止めなくても減らすだけで役立つ可能性があると述べています。
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出典
- Castelo, N., Kushlev, K., Ward, A. F., Esterman, M., & Reiner, P. B. (2025). Blocking mobile internet on smartphones improves sustained attention, mental health, and subjective well-being. PNAS Nexus, 4(2), pgaf017. https://doi.org/10.1093/pnasnexus/pgaf017
- van Wezel, M. M. C., Abrahamse, E. L., & Vanden Abeele, M. M. P. (2021). Does a 7-day restriction on the use of social media improve cognitive functioning and emotional well-being? Results from a randomized controlled trial. Addictive Behaviors Reports, 14, 100365. https://doi.org/10.1016/j.abrep.2021.100365
- Böttger, T., Poschik, M., & Zierer, K. (2023). Does the Brain Drain Effect Really Exist? A Meta-Analysis. Behavioral Sciences, 13(9), 751. https://doi.org/10.3390/bs13090751


