人と会わない生活が長くて、人に会うのが怖くなった。イスラエルの大学1年生99人の研究では、ふつうの年は秋から春にかけて人づきあいの不安が下がったが、外出制限があった年は下がらなかった

在宅の仕事、ネットの買い物、AIとのやりとり。人と会わなくても暮らせる日が続いたあと、いざ人に会う予定が入ると、前よりずっと緊張する。そんな変化に戸惑う人は少なくありません。イスラエルの大学1年生99人の研究では、人づきあいの不安が強い学生の不安は、ふつうの年には秋から春にかけて下がっていましたが、外出制限があった年は下がりませんでした。
3行でわかる
- 人づきあいの不安が強い大学1年生99人の研究では、ふつうの年は秋から春にかけて不安が下がったが、外出制限のあった年は高いままだった。
- オーストラリア・米国・英国の1,562人の調査では、外出の制限がゆるむにつれて、人づきあいへの不安がむしろ上がっていた。
- 会う機会を急に増やすより、短い対面のやりとりから少しずつ戻し、「思ったより大丈夫だったか」を確かめていくことが手がかりになる。
01 結論から言うと人に会わない時期が続くと、会うのが怖くなる?
なりうると考えられます。人と会う機会が減った時期には、人づきあいの不安が下がりにくく、会う生活に戻るときに不安が一時的に強まった調査もあります。おかしなことではなく、慣れが途切れたときに起こりやすい反応です。
人前で話す、知らない人と会う、といった場面への不安は、その場面を避けるほど続きやすいと考えられています。避けると、「思ったより大丈夫だった」という経験をする機会がなくなるからです。
ふだんの生活では、授業や職場、買い物などで、人と顔を合わせる場面に自然と出会います。研究では、こうした日常のやりとりそのものが、不安を少しずつ下げる働きをしている可能性が示されています。
02 研究とデータでわかっていること人と会う機会が減ると、不安はどう変わる?
人と会う機会が減った時期には、人づきあいの不安が下がりにくくなっていました。一方で、会う機会が戻るときにも不安が上がった調査があり、対面のやりとりには、その場の気分を上げる結果も出ています。
Arad ら(2021)[1]
人づきあいの不安を測る質問票で点数が高かった大学1年生を、秋学期と春学期の始めに調べた研究です。外出制限のなかった2016〜2019年度の学生は、春までに不安の点数がはっきり下がっていました。一方、春学期が2か月の外出制限とオンライン授業になった2019〜2020年度の学生は、点数が下がらず高いままでした。感染への不安と関係しにくい場面の質問だけで比べても、落ち込みの点数をそろえても、同じ傾向でした。
対象: テルアビブ大学の1年生99人(多くが女性) / 限界: くじ引きで組を分けた実験ではなく、年度で比べた研究です。コロナ禍のほかのストレスの影響は取り除けていません。ふつうの年に下がった学生も、点数は高めのままでした。
Lim ら(2022)[2]
コロナ禍の最初の半年に、同じ人を3回調べた研究です。外出の制限がゆるむにつれて、孤独感は下がり、人づきあいへの不安の点数は上がっていました。制限が早くゆるんだところほど、不安の上がり方が速い結果でした。18〜25歳の人と、仕事のない人で、不安の上がり方が速めでした。
対象: オーストラリア・米国・英国の地域に住む大人1,562人 / 限界: 2020年の半年だけの調査です。制限がゆるんだから不安が上がったと言い切ることはできません。
Forbes ら(2023)[3]
外出制限の間、1日5回、7日間、直前の人とのやりとりと、ストレスや気分をスマホで記録してもらった研究です。人とやりとりした直後は気分がよくなっていました。とくに対面のやりとりは、電話や文字などのやりとりと比べて、その場のストレスを下げ、気分を上げていました。やりとりの楽しさや、相手との親しさをそろえても同じでした。
対象: オーストリア・イタリア・ドイツの18歳以上732人(2020年春)と、そのうち281人(2020年秋冬) / 限界: 気分のよいときに人と会っていた可能性もあり、やりとりが気分を変えたとは言い切れません。人づきあいの不安が強い人に限った研究ではありません。
誰とも話さない日が続くときの小さな一歩は「今日も誰とも話していない」、店員とのひとことのような「ゆるいつながり」の研究は「AIやネットで用が足りて、人と話さない日が増えた」で整理しています。
03 まだわかっていないことまた会うようになれば、不安は元に戻る?
元に戻るかどうか、どのくらいかかるかは、まだはっきりしていません。紹介した研究はコロナ禍の外出制限を調べたもので、自分から人と会わなくなった場合に同じことが起きるかも、確かめられていません。
- 外出制限の時期には、感染への不安や生活の変化も重なっていて、人と会わなかったことだけの影響は分けられていません。
- 在宅勤務やAIとのやりとりが増えて、少しずつ人と会わなくなった場合の研究は、見当たりませんでした。
- 会う機会が戻ったあと、不安が何か月で下がるかを長く追った研究は少ない状態です。
- 日本の人を対象にした同じ研究は、見当たりませんでした。
04 今日からできるセルフケア人に会う怖さをやわらげるには、何から始める?
いきなり大きな集まりに出るより、短い対面のやりとりから少しずつ増やします。会ったあとに「思ったより大丈夫だったか」を確かめると、避けていた場面に戻りやすくなります。お金をかけずにできる工夫を3つ挙げます。
1日1回、短い対面のやりとりをする
レジでお礼を言う、近所の人にあいさつするなど、数秒で終わるやりとりから始めます。外出制限中の記録では、対面のやりとりのあとに、その場の気分がよくなっていました。
目安 1日1回・数秒〜1分
避けている場面を、楽な順に並べる
「電話をかける」「友達とお茶をする」「飲み会に出る」など、避けている場面を書き出し、怖さを0〜10で点数にします。点数の低いものから、週に1つずつ試します。
目安 書き出し10分・週1つ
会う前の予想と、会ったあとの実際を比べる
会う前に「どのくらい気まずくなりそうか」を0〜10で書き、会ったあとに実際の点数を書きます。避けていると、思ったより大丈夫だったと知る機会がなくなると考えられています。
目安 前後に1分ずつ
人と会ったあとにどっと疲れるときは「人と会うと、あとからどっと疲れる」、会ったあとの一人反省会が止まらないときは「会議のあと「変なこと言ったかも」と一人反省会が止まらない」も参考になります。
05よくある質問
久しぶりに人と会うと緊張するのは、自分だけですか?
自分だけではないと考えられます。オーストラリア・米国・英国の1,562人の調査では、2020年に外出の制限がゆるむにつれて、人づきあいへの不安の点数がむしろ上がっていました。人と会う生活に戻るときに、不安が強まる人は少なくないようです。
オンラインやチャットでのやりとりでも、慣れることになりますか?
はっきりとはわかっていません。オーストリアなどの732人の記録では、対面のやりとりのほうが、電話や文字などのやりとりより、その場のストレスを下げ、気分を上げていました。ただし、オンラインのやりとりで人づきあいの不安が下がるかどうかを確かめた研究ではありません。
怖さが強くて、外に出ること自体がつらいときは?
この記事は、人づきあいの不安が強い人を対象にした研究の紹介で、治療の代わりにはなりません。イスラエルの研究でも、ふつうの年に不安が下がった学生も、春学期の始めの点数は高めのままでした。著者らは、強い不安には専門の支援が必要だと書いています。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Arad, G., Shamai-Leshem, D., & Bar-Haim, Y. (2021). Social distancing during a COVID-19 lockdown contributes to the maintenance of social anxiety: A natural experiment. Cognitive Therapy and Research, 45, 708–714. https://doi.org/10.1007/s10608-021-10231-7
- Lim, M. H., Qualter, P., Thurston, L., et al. (2022). A global longitudinal study examining social restrictions severity on loneliness, social anxiety, and depression. Frontiers in Psychiatry, 13, 818030. https://doi.org/10.3389/fpsyt.2022.818030
- Forbes, P. A. G., Pronizius, E., Feneberg, A. C., et al. (2023). The effects of social interactions on momentary stress and mood during COVID-19 lockdowns. British Journal of Health Psychology. https://doi.org/10.1111/bjhp.12626


