同級生と比べて、自分の人生だけ遅れている気がする。235件の研究のまとめでは、届かない目標から新しい目標に切り替えられる人ほど、落ち込みが少ない傾向があった

同級生の結婚や昇進、転職の知らせを聞くたびに、自分の人生だけが遅れている気がする。比べないようにしても、焦りが何年も消えない。そう感じている人は少なくありません。結論から言うと、235件の研究をまとめた分析では、届かなくなった目標から新しい目標に切り替えられる人ほど、落ち込みが少ない傾向がありました。ただし多くは一時点の調査で、切り替えれば必ず楽になるとまでは言えません。
3行でわかる
- 目標の調整を調べた235件の研究のまとめでは、新しい目標に向かえる人ほど落ち込みが少なく、関連の強さ(相関)は−0.24で「中くらい」だった。
- 届かない目標を手放すことだけでも落ち込みとの関連はあったが、小さめ(−0.14)だった。米国の大人292人の追跡でも、気持ちの支えになっていたのは「手放す力」より「新しい目標に向かう力」だった。
- 追跡や実験の研究は約36%で、残りの多くは一時点の調査。研究者自身が証拠の質を「低〜中」としている。人と比べる気持ちそのものを測った研究ではない点にも注意がいる。
01 結論から言うと人生が遅れている焦りは、目標を切り替えると軽くなる?
軽くなる可能性はありますが、まだ確かではありません。235件の研究のまとめでは、届かない目標から新しい目標に気持ちを移せる人ほど、落ち込みやストレスが少ない傾向がありました。多くは一時点の調査で、因果ははっきりしていません。
「同級生より遅れている」という焦りの裏には、たいてい「この年までにこうなっていたかった」という目標があります。比べる相手がいることで、その目標に届いていない自分が目に入りやすくなります。
心理学では、届かなくなった目標への取り組みをやめることを「目標の手放し」、別の目標に力を向け直すことを「目標の再設定」と呼びます。この記事では、この2つの研究を、比べて焦る気持ちの立て直しの手がかりとして紹介します。人と比べる気持ちそのものを測った研究ではありません。
周りがみんな順調に見える理由は、周りはみんな楽しそうに見えるときの記事で整理しています。
02 研究とデータでわかっていること目標を手放す・切り替えると、落ち込みとどう関係する?
新しい目標に向かえる人ほど、落ち込み(−0.24)やストレス(−0.32)が少ない傾向がありました。届かない目標を手放すこと自体の関連は小さめ(−0.14)でした。追跡や実験の研究に絞っても、新しい目標との関連は残っていました。
Riddellら(2026、オーストラリア・英国・デンマークの研究チーム)[1]
目標がうまくいかないときの調整を調べた235件の研究をまとめました。新しい目標に向かう力は、落ち込み(相関−0.24)、ストレス(−0.32)の少なさと結びつき、人としての成長の感覚(0.50)や生活の満足度(0.25)とも結びついていました。届かない目標を手放す力は、落ち込み(−0.14)や不安(−0.21)の少なさと結びついていた一方、目標の進み具合とはマイナスの関係(−0.15)でした。追跡や実験の研究だけに絞っても、新しい目標に向かう力と心の不調の少なさ(−0.17)、幸福感(0.29)の関係は残っていました。
対象: 1,421の結果を含む235件の研究(2025年5月までに発表) / 限界: 約36%しか追跡や実験の研究がなく、研究ごとのばらつきや、効果が出た研究ばかり発表される偏りのおそれもある。研究者は全体の証拠の質を「低〜中」としている。
Hammら(2022、米国ノースダコタ州立大学ほか)[2]
コロナ禍の初め、米国の大人を2か月間に3回調べました。気持ちの安定とつながっていたのは、目標を手放す力ではなく、新しい目標に向かう力でした。新しい目標に向かいやすい人ほど、ストレスや落ち込みが少なく、生活の満足度や人生の意味の感覚が高い状態でした。この傾向は、自分の目標を思いどおりに進められなくなったと感じていた人で、よりはっきりしていました。
対象: 米国の18〜80歳の大人292人(平均45歳、年齢・性別・人種が全国の構成に近くなるよう集めた) / 限界: 特定の目標ではなく、ふだんの目標との向き合い方を質問紙で聞いた。追跡は2か月と短い。
HubleyとScholer(2022、カナダ・ウォータールー大学)[3]
コロナ禍で止まった目標について調べました。参加者の目標のうち、平均28%が止まっていました。止まった目標の割合が大きい人ほど、ストレスや落ち込み、不安が強い傾向がありました。中でも、止まった目標を「ぐるぐると思い返す」ことが、生活の満足度の低さや心の負担の強さと結びついていました。目標のことを考える回数や、目標へのこだわりの強さでは、こうした関係は見られませんでした。
対象: 米国在住のオンライン調査の参加者226人(平均38.6歳、2021年5月) / 限界: 一時点の調査で、因果はわからない。参加者はネットの仕事の登録者に限られる。
3つを並べると、届かない目標をただ捨てるより、次に向かう目標を持つことと、同じ目標をぐるぐる思い返さないことが、気持ちの立て直しと結びついているように見えます。思い返しから距離をとる方法は、比べて落ち込んだことを何日も思い返してしまうときの記事にまとめています。
03 まだわかっていないこと目標を切り替えれば、比べる焦りは消える?
消えるとまでは言えません。研究の多くは一時点の調査で、目標を切り替えたから楽になったのか、気持ちに余裕のある人が切り替えやすいのかは区別しきれていません。人と比べる気持ちを直接測った研究も見当たりません。
- まとめた研究のうち、追跡や実験の研究は約36%で、残りの多くは一時点の調査。追跡や実験に絞っても関係は残ったが、数は限られる。
- 「手放す力」「向かう力」は多くの研究で、ふだんの傾向として質問紙で測られている。特定の目標を切り替える練習をした効果は、まだよくわかっていない。
- 同級生や友人と比べて「遅れている」と感じる人だけを対象にした研究はない。
- 紹介した追跡と調査はどちらも米国のコロナ禍のもので、日本の働く人や学生に同じ結果が当てはまるかはわからない。
04 今日からできるセルフケア遅れている焦りから立て直すには?
焦りの裏にある目標を書き出し、今の自分に届くかを見直します。手放すなら、代わりに向かう目標を1つ決めます。研究では、手放すことより、新しい目標に向かうことのほうが、気持ちの安定と強く結びついていました。
焦りの裏にある「いつまでに、こうなりたかった」を書く
同級生を見て焦ったときに、自分が持っていた目標を一文にします。「30歳までに管理職」のように、時期と中身を分けて書くと、どこが届いていないのかが見えやすくなります。
目安 5分、目標1〜3つ
手放すなら、代わりに向かう目標を1つ決める
時期を延ばす、形を変える、別の目標にするなど、次に力を向ける先を1つだけ決めます。米国の追跡では、気持ちの安定とつながっていたのは手放す力より新しい目標に向かう力でした。
目安 10分、まず1つ
新しい目標の、今週できる一歩を決める
新しい目標は、小さな行動まで落として初めて「向かっている」感覚になります。資料を1つ調べる、1人に話を聞くなど、今週中にできることを1つ予定に入れます。
目安 週1回、15分
止まった目標を思い返していると気づいたら、区切る
止まった目標をぐるぐる思い返すことは、心の負担の強さと結びついていました。気づいたら「今は新しい目標の一歩のほうを考える」と言葉にして、手元の作業に戻ります。
目安 気づくたびに30秒
比べる相手を「前の自分」に変える方法は、前の自分と比べる習慣の記事で紹介しています。
05よくある質問
人と比べて人生が遅れていると感じるのはおかしい?
おかしなことではありません。人と比べることは誰にでも起こります。研究では、届かない目標を思い返し続けるほど、心の負担が強い傾向がありました。焦りは、自分が大切にしてきた目標があるしるしとも言えます。
目標をあきらめるのは、逃げにならない?
研究では、届かない目標を手放す力は、落ち込みの少なさと小さく結びついていました。一方で、目標の進み具合とはマイナスの関係もありました。まだ届く目標なら続け、届かないなら別の目標に向かう、と見極めることが手がかりになりそうです。
新しい目標が思いつかないときはどうする?
時期を延ばす、形を変えるなど、元の目標を少し変えるだけでもかまいません。研究で気持ちの安定と結びついていたのは、新しい目標に力を向け直すことでした。大きな目標でなく、今週できる小さな一歩から決めると始めやすくなります。
人と比べて自分の毎日に意味がないと感じるときは?
人生の意味を短く書き出す方法を調べた研究は、比べて自分の毎日に意味がないように思えるときの記事で紹介しています。同年代の転職や昇進を見て焦るときは、SNSでキャリアに焦るときの記事も参考になります。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
無料ツール
セルフチェックで「今日やること」をまとめる
当てはまる悩みを選ぶだけ。診断はせず、記事の対策を一覧にします。
研究早見表でほかの悩み221件も見る
出典
- Riddell H, Sedikides C, Sivaramakrishnan H, Wan P, Maltagliati S, Jackson B, Thøgersen-Ntoumani C, Gucciardi DF, Ntoumanis N (2026). A meta-analytic review and conceptual model of the antecedents and outcomes of goal adjustment in response to striving difficulties. Nature Human Behaviour, 10(2), 317–332. https://doi.org/10.1038/s41562-025-02312-4
- Hamm JM, Tan JXY, Barlow MA, Delaney RL, Duggan KA (2022). Goal adjustment capacities in uncontrollable life circumstances: Benefits for psychological well-being during COVID-19. Motivation and Emotion, 46. https://doi.org/10.1007/s11031-022-09941-6
- Hubley C, Scholer AA (2022). Melting COVID-frozen goals: How goal disengagement supports well-being during the COVID-19 pandemic. Motivation and Emotion, 46(6), 752–768. https://doi.org/10.1007/s11031-022-09959-w


