SNSで同年代の転職や昇進を見て、自分のキャリアに焦る。日本の会社員の調査では、焦りが強まったのは上と比べたときで、何気ない雑談の楽しさが焦りの低さと結びついていた

同年代の転職の報告や昇進のお知らせ、AIを使いこなして成果を出した話。SNSで見るたびに、自分の仕事はこのままでいいのかと焦ることがあります。日本の会社員を7日間追った調査では、焦りが強まったのは「上と比べた」ときでした。その場では、比べたと気づいて画面を閉じ、仕事と関係ない雑談をすることが手がかりになります。
3行でわかる
- 日本の会社員111人の7日間の記録では、SNSで人の仕事の投稿を見るたびに比べることが増え、焦りと結びついていたのは上と比べたときだった。
- 同じ記録で、仕事と関係ない雑談が長いほど楽しいやりとりになり、楽しいやりとりは焦りの低さと結びついていた。
- 実験では、仕事の成果のような「能力」の投稿は、意見の投稿よりも気分と自信を下げた。見る時間を決め、焦ったら閉じて誰かと話す、から始められる。
01 結論から言うと同年代の活躍を見て焦るのはなぜ?
SNSで人の仕事の投稿を見ると、自分のキャリアと比べることが増えるからです。日本の会社員の調査では、比べた中でも「上と比べた」ときに、行き詰まった感じや焦りが強まっていました。
仕事の投稿には、成果や昇進、年収など、順番をつけやすい情報が並びます。そのぶん、自分の位置を測りやすくなります。見た相手のほうが上だと感じると、「自分は遅れている」と思いやすくなります。
焦りを感じるのは、意志が弱いからではありません。人と比べるのは、誰にでも起きる心の働きです。大切なのは、焦りに気づいたときに何をするかです。
02 研究とデータでわかっていることSNSの仕事の投稿は、焦りとどうつながる?
日本の会社員の7日間の記録では、仕事の投稿を見るたびに比べることが増えていました。焦りと結びついていたのは上と比べたときで、雑談が楽しかった人ほど焦りは小さい傾向がありました。
Fukubayashi・Fuji(筑波大学、2021)[1]
日本の会社員309人の調査では、SNSで人の仕事の投稿をよく見る人ほど、キャリアを人と比べる傾向が強く、比べる人ほど「行き詰まっている」「今の状況から抜け出したい」という焦りが強い関連がありました。続く7日間の記録(111人、1,254回分)では、投稿を見ると、上とも下とも同じくらい比べていました。同じ人の中で焦りが強まったのは、上と比べて自信をなくしたときだけでした。仕事と関係ない雑談が長いほどやりとりは楽しく、楽しいやりとりは焦りの低さと結びついていました。
対象: 日本の会社員(勤続3年以上、パートや派遣を除く。26〜49歳)。最初の調査309人、7日間の記録は111人 / 限界: 質問紙と日々の記録による調査で、比べることや雑談が焦りを変えたという因果関係までは確かめていません。
Ozimek ら(ルール大学ボーフム、2023)[2]
インスタグラムに似せた投稿を4枚見せる実験です。参加者をランダムに2つに分け、一方には何かができる「能力」の投稿、もう一方には「意見」の投稿を見せました。能力の投稿を見た人は、意見の投稿を見た人より、否定的な気分が強く、生活への満足と自信(自尊感情)が低くなっていました。前向きな気分の差は、はっきりしませんでした。
対象: ドイツ語圏の409人(平均24.3歳、女性82.6%) / 限界: 「投稿を見ない」比較グループはありません。若い女性が多く、仕事の投稿に限った実験でもありません。
Meyer ら(ミュンスター大学、2026)[3]
学業成績を予測するという集中力テストで、成績が他の学生より下だと(実際の成績とは関係なく)伝える実験です。下だと伝えられたグループは、否定的な気分が強まり、「この課題はそれほど大事じゃない」と考えやすく、次も頑張ろうという気持ちが下がっていました。一方、もう一度テストに挑むかを選ばせると、下と伝えられたグループで76.1%、もう一方で64.5%が挑み、はっきりした差はありませんでした。
対象: ドイツの大学生129人(19〜39歳。うつ症状が強い人は除外) / 限界: SNSではなく実験室でのテストの話です。事前登録のない、最初の検証です。
同期や友達の成功を素直に喜べないときの研究は「同期や友達の成功を素直に喜べない」で、AIを使いこなす同僚と比べて焦る研究は「AIを使いこなす同僚と比べて焦る」で整理しています。
03 まだわかっていないこと雑談をすれば、焦りは本当に減る?
まだ確かめられていません。雑談の楽しさと焦りの低さの結びつきは、日々の記録から見えた関連です。雑談を増やす実験で焦りが減るかは、調べられていません。
- 雑談をしている時間はSNSを見ていない時間でもあります。焦りが小さかった理由が雑談そのものなのか、SNSから離れたことなのか、論文の著者もその可能性を挙げています。
- 日本の会社員の調査はフェイスブックの利用者が対象です。ほかのSNSや、学生・フリーランスで同じ結果になるかはわかりません。
- AIを使った仕事の成果の投稿に限って、心への影響を調べた研究は見当たりませんでした。
04 今日からできるセルフケアSNSを見て焦ったとき、その場でできることは?
焦りに気づいたら「上と比べた」と名前をつけて画面を閉じ、その日のうちに仕事と関係ない雑談をすることです。仕事の投稿を見る時間を決めること、投げ出したい気持ちを一晩おくことも役に立ちます。
「今、上と比べた」と心の中で言って、画面を閉じる
焦りを感じた瞬間に、何が起きたかを短い言葉にします。7日間の記録では、焦りと結びついていたのは上と比べたときでした。比べたこと自体を責めず、気づいたら閉じるだけで十分です。
目安 10秒
その日のうちに、仕事と関係ない雑談を10分する
同僚との昼食、家族との夕食、店の人との一言など、仕事の話ではない会話をします。記録では、雑談が長いほどやりとりが楽しくなり、楽しいやりとりは焦りの低さと結びついていました。相手は職場の人でもかまいません。
目安 1日1回・10分
仕事の投稿を見る時間と場所を決める
「昼休みに5分だけ」「寝る前は見ない」と先に決めます。記録では、仕事の投稿を見るたびに比べることが増えていました。実験では、能力の投稿のほうが意見の投稿より気分と自信を下げていました。
目安 1日1回・5分まで
「もうどうでもいい」と思ったら、決めるのは翌日にする
下だと知った直後は、目標を投げ出したくなります。実験では、やる気の自己評価は大きく下がっても、もう一度挑むかの選択には差がありませんでした。転職や目標の見直しは、気持ちが落ち着いてから考えます。
目安 一晩おく
SNSからしばらく離れたいときは「SNSで友達の近況を見ると、自分だけ取り残された気がする」、比べる相手を前の自分にする方法は「人と比べて落ち込むのを、日頃から減らしたい」も参考になります。
05よくある質問
仕事のSNSを見るのは、やめたほうがいいですか?
やめるべきとまでは言えません。日本の会社員の記録では、仕事の投稿を見ると上とも下とも同じくらい比べていて、焦りと結びついていたのは上と比べたときでした。見る時間と場所を決め、焦ったときに閉じられるようにしておくのが現実的です。
自分より下の人と比べて安心するのは、悪いことですか?
この調査では、下と比べることが多い人ほど焦りは小さい関連がありました。ただしその時々の記録では、下と比べても焦りは下がっていませんでした。安心を下との比較に頼るより、雑談や休息など別の支えを持つほうが確かです。
雑談の相手は、仕事の人でもいいですか?
この調査では、雑談の相手で最も多かったのは職場の同僚や仕事関係の人(43.1%)でした。それでも、雑談の楽しさは焦りの低さと結びついていました。話す内容が仕事と関係なければ、相手は職場の人でもかまいません。
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出典
- Fukubayashi N, Fuji K (2021). Social Comparison on Social Media Increases Career Frustration: A Focus on the Mitigating Effect of Companionship. Frontiers in Psychology, 12, 720960. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2021.720960
- Ozimek P, Brandenberg G, Rohmann E, Bierhoff HW (2023). The Impact of Social Comparisons More Related to Ability vs. More Related to Opinion on Well-Being: An Instagram Study. Behavioral Sciences, 13(10), 850. https://doi.org/10.3390/bs13100850
- Meyer T, Zenses AK, Morina N (2026). Social comparison threat and coping: affective, cognitive and behavioral outcomes in response to false performance-related feedback. BMC Psychology, 14, 1318. https://doi.org/10.1186/s40359-026-05536-9


