加工した自撮りを見慣れて、素顔の自分に自信がなくなるのはなぜ?ドイツの403人の調査では、写真をよく加工する人ほど見た目を人と比べがちで、自分の見た目への評価が低かった

AIの美肌加工やフィルターを通した自分の顔を見慣れると、鏡や加工なしの写真の自分が見劣りして感じることがあります。加工した写真に満足しやすいのは、ごく自然な反応です。ドイツの調査では、よく加工する人ほど見た目を人と比べがちで、自分の見た目への評価が低い傾向がありました。ただ関連は弱く、加工が原因かはまだわかっていません。
3行でわかる
- 中国の100人の実験では、同じ自撮りでも加工後の満足度は100点中66.1点で、加工前の54.8点より高かった。
- ドイツの403人の調査では、写真をよく加工する人ほど見た目を人と比べがちで、自分の見た目への評価が低い傾向があった(関連は弱い)。
- 加工した顔は他人からも魅力的に見られやすく、知的・信頼できるとも評価されやすい。加工したくなる気持ちには理由がある。
01 結論から言うと加工した自撮りに慣れると、素顔に自信がなくなるのはなぜ?
加工した自分は「少しだけ理想に近い自分」なので、素顔と比べる基準になりやすいと研究者は考えています。調査でも、よく加工する人ほど見た目を人と比べがちで、見た目への自己評価が低い傾向がありました。ただし原因かはわかっていません。
芸能人やモデルとの比較なら「別世界の人」と割り切れます。ところが加工した自撮りは、自分にそっくりです。ドイツの研究者らは、そのぶん「あと少しで届きそうな理想」として、素顔の自分と比べてしまいやすいのではないかと考察しています。
また、写真を加工するときは、自分の顔を外から眺めて「ここを直したい」と点検することになります。見た目を外からの目で評価するくせが強いほど、自分の見た目への評価は低くなりやすいことも、調査で示されていました。
02 研究とデータでわかっていること写真の加工と、見た目への自信の関係は?
加工すると、その写真への満足はその場で上がります。一方、ふだんよく加工する人ほど、見た目を人と比べがちで、自分の見た目への評価も低いという弱い関連が見つかっています。
Ozimekら(2023年)[1]
Instagramを使う403人に、写真の加工の頻度や、見た目を人と比べる頻度などを尋ねました。よく加工する人ほど、見た目を人と比べがちで、自分の体を外からの目で評価する傾向が強く、自分の見た目への評価が低い傾向がありました。加工と自尊心の間には直接の関連は見られず、「見た目を人と比べる」などを通した間接的なつながりだけが見られました。
対象: ドイツのInstagram利用者403人(78.4%が女性、平均27.6歳、86.6%が学生) / 限界: 一時点のアンケートで、加工が原因かはわかりません。加工と見た目への評価の関連は弱いものでした。参加者の加工の頻度は全体に低めでした。
Hungら(2025年)[2]
参加者がスタジオで自撮りをし、アプリで目・鼻・口を加工しました。満足度は加工前の54.8点から加工後の66.1点に上がり、上がり方に男女の差はありませんでした。一方、女性では、素顔の写真をすばやく「自分」と見分けるのに加工した写真のほうに満足している人ほど、生活への満足度が低い傾向がありました。男性では、この関連は見られませんでした。
対象: 中国の100人(女性46人、男性54人) / 限界: 人数が少なく、加工は研究室での1回だけです。生活への満足度との関係は相関で、原因ははっきりしません。
Gulatiら(2024年)[3]
462人分の顔写真に人気の美肌フィルターをかけ、加工前と加工後の写真を2,748人に評価してもらいました。同じ人でも、加工後のほうが魅力的と評価され、知的さや信頼できる感じの評価も高くなりました。加工して魅力の評価が下がった写真は1枚もありませんでした。
対象: 米国・英国の英語を母語とする大人2,748人(18〜88歳、男女ほぼ半々) / 限界: 他人の写真を見た評価で、自分の写真を加工したときの気持ちを調べたものではありません。評価した人の多くは白人でした。
03 まだわかっていないこと加工を続けると、自信は下がっていくの?
まだわかっていません。今ある研究は、一時点の調査や1回きりの実験です。加工を続けるうちに自信が下がるのか、もともと見た目に自信がない人ほど加工するのかは、区別できていません。
- 同じ人を長く追いかけて、加工と見た目への自信の変化を調べた研究は見当たりません。
- ドイツの調査は女性と学生が多く、男性や年代の高い人に当てはまるかはわかりません。
- 加工した自分と素顔の自分を比べることが、落ち込みにつながるという考えは、研究者の考察にとどまっています。
- AIで顔全体を作り変えるような強い加工を、ふつうの加工と分けて調べた研究は少ない状態です。
04 今日からできるセルフケア素顔の自分と比べて落ち込まないためには?
加工した写真に満足すること自体は自然な反応です。落ち込みと関わっていたのは「人と比べる」「見た目を外から点検する」くせでした。そこを少し緩める工夫から始められます。どれも効果を確かめた研究はまだない、考え方の工夫です。
加工した写真は「作品」、素顔は「自分」と分けて考える
加工した写真は、髪を整えたりメイクをしたりするのと同じ、見せるための作品だと考えます。素顔の自分と並べて採点する相手ではない、と言葉にしておきます。
目安 写真を見返すたびに5秒
加工の手を止めて、「誰かと比べていないか」を1つ問う
直したい所を探し始めたら、その基準が誰の顔かを考えます。友だちや有名人の顔が浮かんだら、そこで加工を止めて保存します。
目安 1回10秒
見た目以外で、自分のいいところを3つ書く
調査では、見た目を外から評価するくせが強い人ほど、見た目への評価が低い傾向がありました。今週がんばったこと、人にほめられたことなど、見た目以外の自分をメモに残します。
目安 週1回・3分
ほかの人のきれいな写真と比べて落ち込むときは SNSのきれいな写真と比べて、自分の見た目が気になる、前もって備えたいときは SNSで見た目を比べて落ち込むのを、前もって防ぎたい、比べる相手を変えたいときは 比べる相手を「前の自分」にする習慣 の記事も参考になります。
05よくある質問
自撮りを加工すると、自己肯定感が下がる?
下がると言い切れる研究はまだありません。ドイツの403人の調査では、よく加工する人ほど自分の見た目への評価が低い傾向がありましたが、関連は弱く、一時点の調査なので加工が原因かはわかりません。加工と自尊心の直接の関連も見られず、「人と見た目を比べる」などを通した間接的なつながりにとどまっていました。
加工した写真のほうが気に入るのは普通?
普通のことです。中国の100人の実験では、同じ自撮りでも加工後の満足度は100点中66.1点で、加工前の54.8点より高く、男女で差はありませんでした。美肌フィルターをかけた顔は、他人から見ても魅力的と評価されやすいこともわかっています。
加工アプリやフィルターは使わないほうがいい?
使うこと自体を否定する研究結果はありません。加工した写真に満足しやすいのは自然な反応です。気になるのは、加工した自分と素顔の自分を比べて落ち込むときです。そう感じたら、比べる回数を減らす工夫から始められます。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Ozimek P, Lainas S, Bierhoff HW, Rohmann E (2023). How photo editing in social media shapes self-perceived attractiveness and self-esteem via self-objectification and physical appearance comparisons. BMC Psychology, 11, 99. https://doi.org/10.1186/s40359-023-01143-0
- Hung K, Feldborg M, Moseley R, Peng K, Sui J (2025). Digital selfie editing shows sex specific associations between processing biases and life satisfaction. Scientific Reports, 15, 14235. https://doi.org/10.1038/s41598-025-99056-y
- Gulati A, Martínez-Garcia M, Fernández D, Lozano MA, Lepri B, Oliver N (2024). What is beautiful is still good: the attractiveness halo effect in the era of beauty filters. Royal Society Open Science, 11(11), 240882. https://doi.org/10.1098/rsos.240882


