人とのつながり

定年退職して、人と話す機会が減って寂しい。欧州とイスラエルの約2万人の分析では、退職直後の孤独ははっきり増えず、4〜6年後には「孤立している」と感じる人が減っていた

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わかっている度 ★★☆ 中研究3本・公的指針0件を整理
庭に置かれた木のベンチ
Photo: Basile Morin / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

定年や早期退職で職場を離れたら、毎日だれかと話していた日々が急になくなった。このまま孤独になっていくのでは、と心配になる人は少なくありません。結論から言うと、欧州とイスラエルの約2万人の分析では、退職した直後の孤独ははっきり増えず、4〜6年後には「孤立している」と感じる人がむしろ減っていました。ただし、国や退職のしかたによって結果は分かれます。

3行でわかる

  1. 欧州13か国とイスラエルの50〜80歳19,699人の分析では、退職した直後の孤独にはっきりした変化はなく、4〜6年後には孤独が下がっていました。退職後は新しい活動の数が増えていて、時間をかけて人との接点を作り直していたと研究者は見ています。
  2. イングランドの3,758人の追跡でも、退職した人と働き続けた人で、孤独を感じる人の割合は同じ19.5%でした。退職すると孤独になる、とは言い切れません。
  3. 一方、米国では退職した人のほうが孤独な人の割合がやや高く、米国とオーストラリアでは、自分で選ばずに退職した人で孤独がいちばん多くなっていました。

01 結論から言うと定年退職すると、孤独になりやすい?

平均すると、退職そのものが孤独を大きく増やすという結果は出ていません。欧州などの分析では、退職直後ははっきりした変化がなく、4〜6年たつと孤独が減っていました。ただし国や退職のしかたで差があり、わかっている度は中くらいです。

退職すると、同僚との毎日の会話や、決まった時間に人と会う場が一度になくなります。寂しさを感じるのは自然なことです。

けれども研究を見ると、退職した人がそのまま孤独になっていくとは限りません。退職後は新しい活動が少しずつ増え、人との接点が作り直されていく様子が見えてきました。いま寂しいのは「立て直しの途中」かもしれません。

02 研究とデータでわかっていること退職したあと、孤独はどう変わっていった?

欧州とイスラエルの分析では、退職から4〜6年後に「孤立している」と感じる確率が11.4ポイント下がると推定されました。イングランドでは、退職した人と働く人で孤独な人の割合に差はありませんでした。米国では退職者のほうがやや高めでした。

11.4ポイント退職から4〜6年後に「孤立している」と感じる確率が下がった推定値。欧州13か国とイスラエルの50〜80歳、2013〜2020年の調査
19.5%イングランドの50歳以上3,758人で、孤独と判定された人の割合。新たに退職した人と働き続けた人で同じだった
19.3%と15.7%米国の50歳以上で、孤独な人の割合の推定値(退職した人と、退職していない人)。2008〜2018年の調査

Guthmullerら(2024年) [1]

欧州の50歳以上の調査(SHARE)を使い、国や性別ごとに違う「年金を受け取れる年齢」を手がかりに、退職そのものが孤独を変えるかを調べました。退職した直後は孤独にはっきりした変化がなく、4〜6年後には孤独が下がっていました。孤独の中身を分けると、「孤立している」と感じる確率が11.4ポイント、「親しい相手がいない」と感じる確率が8.6ポイント下がると推定されました(後者は統計的な確かさがやや弱め)。退職した人は、年に平均0.5個のペースで新しい活動を始め、グループでの活動に参加する見込みも高まっていました。

対象: オーストリア、ベルギー、チェコ、デンマーク、エストニア、フランス、ドイツ、イタリア、ルクセンブルク、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、イスラエルの50〜80歳19,699人(2013年、2015年、2019〜2020年の調査) / 限界: 年金の年齢をきっかけに退職した人についての推定です。女性では、パートナーがまだ働いているとき、退職直後に「親しい相手がいない」感覚が強まっていました。

Kennyら(2025年) [2]

イングランドの50歳以上の追跡調査(ELSA)で、新たに退職した766人と、働き続けた2,992人を比べました。孤独と判定された人の割合はどちらも19.5%で、退職の直後も数年後も、退職と孤独の間に関連は見られませんでした。友人・子ども・親戚との連絡が月1回より少ないかどうかなどで測った「社会的な孤立」は、退職した直後にはむしろ少なめでしたが、長い目で見ると差はなくなっていました。

対象: 2008〜2017年のイングランドの50歳以上3,758人(平均58.4歳) / 限界: 退職した人と働き続けた人の比較で、退職を選んだ理由の違いまでは取り除けていません。

Haganiら(2024年) [3]

オーストラリア・中国・米国の50歳以上の全国調査を、同じ方法で分析しました。孤独な人の割合の推定値は、オーストラリアで退職した人19.4%・していない人17.0%(差ははっきりしない)、米国で19.3%・15.7%(退職した人のほうが高い)でした。中国では反対に、退職した人のほうが10.0%と、していない人の17.1%より低くなっていました。米国とオーストラリアでは、自分で選んで退職した人の孤独がいちばん少なく、自分で選ばずに退職した人がいちばん多くなっていました。

対象: オーストラリア(2008〜2019年)、中国(2011〜2015年)、米国(2008〜2018年)の50歳以上 / 限界: 孤独は「孤独を感じたか」の1問で測っています。友人や家族と会う頻度は、退職と孤独の関係を変えていませんでした。

03 まだわかっていないこと日本の定年退職でも、同じことが言える?

まだわかっていません。今回の研究は欧州・イスラエル・英国・米国・オーストラリア・中国のもので、国によって結果が分かれていました。日本の定年退職と孤独の変化を、同じ方法で調べた研究は見つかりませんでした。

  • 国によって結果が逆になることもあり、研究者は、文化の違いを踏まえて考える必要があると述べています。日本の暮らしにどれが近いかは、はっきりしません。
  • 欧州の分析で孤独が下がっていたのは平均の話です。新しい活動を始めにくい人や、健康に不安がある人でも同じように下がるかは、まだ十分に調べられていません。
  • 新しい活動が孤独を減らしたのか、孤独が減った人が活動を始めたのか、順番はまだはっきりしません。
  • AIなど仕事の変化をきっかけにした早期退職と孤独の関係は、まだ研究が見つかりませんでした。

04 今日からできるセルフケア退職後の寂しさから、どう立て直す?

数年かけて変わるものと考え、焦らずに新しい活動を一つずつ足していきます。会う回数と寂しさを分けて見直し、パートナーとの時間も予定に入れます。どれも研究の結果をもとにした、お金のかからない工夫です。

1

「数年かけて戻るもの」と考える

欧州の分析では、退職直後には変化がなく、4〜6年後に孤独が下がっていました。退職して1年目の寂しさを「この先ずっと続く」と決めつけず、立て直しの途中と考えます。

目安 考え方を変えるだけ・0分

2

新しい活動を、年に1つだけ足す

退職した人は、年に平均0.5個のペースで新しい活動を始めていました。地域の講座、運動の集まり、ボランティアなど、定期的に同じ人と会えるものを一つ選びます。

目安 年に1つ・週1回の参加

3

友人・子ども・親戚に、月1回は連絡する

イングランドの研究では、それぞれとの連絡が月1回より少ないかどうかで「孤立」を測っていました。電話・メッセージ・会うのどれでもよいので、3つの相手に月1回ずつ連絡しているかを確かめます。

目安 月3回・各5分

4

パートナーがまだ働いているなら、一緒の時間を予定に入れる

欧州の分析では、パートナーがまだ働いている女性で、退職直後に「親しい相手がいない」感覚が強まっていました。週末の食事や散歩など、一緒に過ごす時間をあらかじめ決めておきます。

目安 週1回・1時間

新しい活動として何を選べばいいか迷うときは、ボランティアと孤独の研究をまとめた記事や、近くの活動やグループでつながり直す実験の記事が参考になります。新しく知り合った人と打ち解けるまでの時間は、大人の友達づくりの記事にまとめています。

05よくある質問

定年退職すると、孤独になるのは普通?

退職直後に寂しさを感じる人はいますが、平均すると孤独が大きく増えるという結果は出ていません。欧州13か国とイスラエルの50〜80歳19,699人の分析では、退職直後の孤独にはっきりした変化はなく、4〜6年後には下がっていました。イングランドでも、孤独な人の割合は退職した人と働き続けた人で同じ19.5%でした。

退職後の寂しさは、どのくらいで落ち着く?

欧州の分析では、退職から4〜6年後に孤独が下がっていました。退職した人は年に平均0.5個のペースで新しい活動を始めていて、研究者は時間をかけて人との接点を作り直していたと見ています。人によって差があり、何年で落ち着くと決まったものではありません。

自分で望まずに退職した場合は、孤独になりやすい?

米国とオーストラリアの分析では、自分で選ばずに退職した人で孤独がいちばん多く、自分で選んで退職した人でいちばん少なくなっていました。望まない形で仕事を離れたときは、寂しさが強く出やすいと知っておき、早めに話せる相手や場を探しておくと安心です。

人と会う回数が減ると、それだけで孤独になる?

そうとは限りません。イングランドの研究では、友人や家族との連絡の少なさで測った孤立と、本人が感じる孤独を分けて調べていて、結果は同じではありませんでした。米国・オーストラリア・中国の分析でも、人と会う頻度は退職と孤独の関係を変えていませんでした。

つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。

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出典

  1. Guthmuller S, Heger D, Hollenbach J, Werbeck A (2024). The impact of retirement on loneliness in Europe. Scientific Reports, 14, 26971. https://doi.org/10.1038/s41598-024-74692-y
  2. Kenny L, Doherty N, Doherty AS, Lawlor B, O'Sullivan R, Leavey G (2025). The relationship between retirement, social isolation and loneliness: A longitudinal analysis using the English Longitudinal Study of Ageing. BMC Public Health, 25, 3733. https://doi.org/10.1186/s12889-025-24472-8
  3. Hagani N, Clare PJ, Luo M, Merom D, Smith BJ, Ding D (2024). Effect of retirement on loneliness: a longitudinal comparative analysis across Australia, China and the USA. Journal of Epidemiology and Community Health, 78(10), 602-608. https://doi.org/10.1136/jech-2023-221606