仕事のストレスで、つい甘いものに手が伸びる。31件の研究のまとめでは、糖質をとっても気分はよくならず、とってから1時間以内はかえって疲れを感じやすかった

仕事やAIの導入で気が張りつめると、気づけば机の引き出しのお菓子に手が伸びている。食べた直後は少しほっとするのに、あとで「また食べてしまった」と落ち込む人もいるかもしれません。結論から言うと、研究のまとめでは、糖質をとっても気分がよくなる効果は見られず、とってから1時間以内はかえって疲れを感じやすくなっていました。好きなおやつの「なぐさめ効果」も、ほかの食べ物や何も食べない場合と差がなかった実験があります。食べたくなるのはよくあることなので責める必要はありませんが、気分を戻す手段としては、少し歩くなど別の方法も試す価値があります。
3行でわかる
- 54件の研究(合わせて11万9,820人)のまとめでは、ストレスが強いほど、お菓子などの体によくない食べ物を多く食べる関連があった。ただしその関連は小さかった。
- 31件の研究(1,259人)のまとめでは、糖質をとっても、気分のどの面もよくなっていなかった。とってから1時間以内は、比較用のものより疲れを感じやすく、頭のさえも低かった。
- 定期的にチョコを食べる78人の実験では、15分の早歩きをした組がパソコン作業の休憩中に食べたチョコは平均15.6g、静かに休んだ組は28.8gだった。
01 結論から言うとストレスで甘いものを食べると、気分は戻る?
研究からは、戻るとは言えません。糖質をとっても気分はよくならず、1時間以内はかえって疲れを感じやすかったという研究のまとめがあります。好きなおやつも、何も食べない場合と気分の戻り方に差がなかった実験があります。
ストレスを感じると甘いものが欲しくなる、という人は少なくありません。実際、ストレスと食べ方の関係を調べた研究のまとめでも、ストレスが強いほど体によくない食べ物を多く食べる関連が見られています。
ただ、「食べたら気分がよくなった」という感覚は、時間がたって自然に気分が戻った分を、食べ物の効果だと思い込んでいる可能性があります。ある実験では、好きなおやつを食べたときも、何も食べなかったときも、同じように気分は戻っていました。この記事では、食べたくなる気持ちを責めずに、気分を戻す別の手を一緒に考えます。
02 研究とデータでわかっていること甘いものと気分について、研究で何がわかった?
ストレスと甘いものを食べることには小さな関連があります。一方、糖質で気分がよくなる効果は見られず、好きなおやつも特別ななぐさめにはなっていませんでした。短い早歩きでチョコを食べる量が減った実験があります。
Hillら(2022年)[1]
ストレスと食べ方の関係を調べた54件の研究(合わせて11万9,820人の健康な大人)をまとめました。ストレスが強いほど食べる量全体が少し多く、体によくない食べ物を多く、体によい食べ物を少なく食べる関連がありました。
ただし、関連の大きさは3つとも「小さい」ものでした。研究ごとのばらつきも大きく、その理由は調べた条件では説明しきれませんでした。
対象: 健康な大人を対象にした54件の研究(合わせて11万9,820人) / 限界: 関連の大きさは小さい。研究ごとの差が大きく、誰がどんなときに食べやすいかはまだはっきりしない。
Mantantzisら(2019年)[2]
糖質(砂糖やでんぷん)をとったあとの気分を調べた31件の研究(合わせて1,259人)をまとめました。その結果、糖質をとっても、気分のどの面にも、どの時点でも、よくなる効果は見られませんでした。
むしろ、とってから1時間以内は、糖質を含まない比較用のもの(プラセボ)と比べて、疲れを強く感じ、頭のさえ(覚醒の感じ)が低くなっていました。
対象: 31件の研究の参加者、合わせて1,259人 / 限界: 多くは実験室で糖質を一度とる研究で、仕事のストレスの最中に食べた場合を直接調べたものではない。
Wagnerら(2014年)[3]
悲しい映像で気分を落ち込ませたあと、自分が「なぐさめになる」と答えていた好きなおやつを食べる回と、別の食べ物を食べる回、何も食べない回を比べた4つの実験です。
好きなおやつを食べると気分はよくなりましたが、同じくらい好きな別の食べ物、ふつうの食べ物、何も食べない場合と比べて、気分の戻り方に差はありませんでした。研究者らは、時間がたてば戻る気分を、おやつの手柄だと思い込んでいる可能性を指摘しています。
対象: 4つの実験の、映像で気分を落ち込ませた参加者 / 限界: 気分の落ち込みは映像で起こしたもので、仕事のストレスとは違う。食べた量や体の中の変化は調べていない。
OhとTaylor(2012年)[4]
定期的にチョコを食べる78人(平均約25歳)に2日間チョコを控えてもらい、職場を模した実験をしました。15分の早歩きか静かに休むかに分け、そのあと難しいかやさしいパソコン課題を、休憩をはさんで3回行いました。机には自由に食べられるチョコの器を置きました。
早歩きをした組が食べたチョコは平均15.6g、静かに休んだ組は28.8gでした。課題の難しさ(ストレスの強さ)による差は見られませんでした。早歩きをした組は、気分の活気も高まっていました。
対象: 定期的にチョコを食べる78人(平均約25歳) / 限界: 1回の実験室の研究。課題の難しさでチョコの量は変わらず、強いストレスの場面に当てはまるかはわからない。
03 まだわかっていないこと甘いものと心について、まだわかっていないことは?
実際の職場で、強いストレスの最中に甘いものを食べたときの気分の変化は、ほとんど調べられていません。早歩きの効果も1回の実験で、続けたときの効果はわかっていません。
- 気分を調べた研究の多くは、実験室で糖質を一度とるものです。仕事中のストレスや、毎日の食べ方の習慣とは条件が違います。
- ストレスと食べ方の関連は小さく、研究ごとの差も大きいため、どんな人がどんな場面で食べやすくなるのかは、まだはっきりしていません。
- 15分の早歩きでチョコの量が減った結果は、78人の1回の実験です。ほかのおやつや、ほかの気分転換の方法でも同じかは確かめられていません。
- この記事の研究は、食事や体重の管理を目的にしたものではありません。食べ方に強い悩みがある場合の対処は、この記事の範囲を超えます。
04 今日からできるセルフケア甘いものに手が伸びたとき、何をすればいい?
食べたくなる自分を責めず、「食べれば気分が戻る」と思い込まないことから始めます。手を伸ばす前に、少し歩く・時間を置くなど、気分を戻す別の手を1つ試してみます。
お菓子の前に、まず10〜15分歩く
作業の合間に甘いものが欲しくなったら、先に建物の中や外を早歩きで回ります。歩いた組でチョコを食べる量が少なかった実験があります。
目安 10〜15分・1日1回から
「食べたら戻る」ではなく「時間がたてば戻る」と考える
落ち込んだ気分は、何も食べなくても時間とともに戻っていた実験があります。手を伸ばす前に、飲み物を1杯飲んで少し待ってみます。
目安 5〜10分
食べた日も、自分を責めない
ストレスで食べたくなるのはよくあることで、関連の大きさも小さいものでした。「食べた」と気づけたら十分です。次に試す手を1つだけ決めます。
目安 1分
体を動かす気分転換は歩くと気分は変わる?、その場で落ち着く方法はゆっくりした呼吸の研究でも紹介しています。昼休みも机で過ごしがちな人は昼休みの過ごし方の記事も参考になります。
05よくある質問
ストレスで甘いものが食べたくなるのは、意志が弱いから?
そうとは言えません。54件の研究のまとめで、ストレスと体によくない食べ物を食べることの間には関連が見られましたが、その大きさは小さく、多くの人に起こりうることです。自分を責めるより、別の気分転換を1つ用意しておくほうが現実的です。
チョコや甘いものを食べると、本当に気分はよくならない?
研究のまとめでは、糖質をとって気分がよくなる効果は見られませんでした。好きなおやつを食べたあとの気分の戻り方も、何も食べなかった場合と差がなかった実験があります。ただし、味わう楽しみまで否定するものではありません。
甘いものを食べると眠くなるのはなぜ?
理由ははっきりしていませんが、31件の研究のまとめでは、糖質をとってから1時間以内は、比較用のものよりも疲れを感じやすく、頭のさえが低くなっていました。午後の大事な作業の直前は、ほかの気分転換を選ぶのも一つの方法です。
歩くと、お菓子を食べる量が減るの?
定期的にチョコを食べる78人の実験では、15分の早歩きをした組が食べたチョコは平均15.6gで、静かに休んだ組の28.8gより少なくなっていました。1回の実験の結果なので、毎日続けたときの効果はまだわかっていません。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Hill D, Conner M, Clancy F, Moss R, Wilding S, Bristow M, O'Connor DB (2022). Stress and eating behaviours in healthy adults: a systematic review and meta-analysis. Health Psychology Review, 16(2), 280-304. https://doi.org/10.1080/17437199.2021.1923406
- Mantantzis K, Schlaghecken F, Sünram-Lea SI, Maylor EA (2019). Sugar rush or sugar crash? A meta-analysis of carbohydrate effects on mood. Neuroscience & Biobehavioral Reviews, 101, 45-67. https://doi.org/10.1016/j.neubiorev.2019.03.016
- Wagner HS, Ahlstrom B, Redden JP, Vickers Z, Mann T (2014). The myth of comfort food. Health Psychology, 33(12), 1552-1557. https://doi.org/10.1037/hea0000068
- Oh H, Taylor AH (2012). Brisk walking reduces ad libitum snacking in regular chocolate eaters during a workplace simulation. Appetite, 58(1), 387-392. https://doi.org/10.1016/j.appet.2011.11.006

