AIに仕事を任せるほど、打たれ弱くなりそうで不安。中国の経理・財務の332人を2週間おきに3回調べた研究では、AIをよく使う人ほど仕事で立ち直る力が高く、その約半分は「仕事に意味を感じること」で説明されていた

集計も照合もAIがこなしてくれるようになり、ふと「自分はこの先、困ったときに踏ん張れるのだろうか」と不安になる。そんな声は少なくありません。中国の経理・財務の働く人を調べた研究では、AIをよく使う人ほど仕事で立ち直る力が高い、という逆の結びつきが見られました。ただ、研究はまだ少なく、結果は条件で変わります。
3行でわかる
- 中国の経理・財務の働く人332人を2025年10〜12月に2週間おきに3回調べた研究では、仕事用のAIをよく使う人ほど、仕事の困難から立ち直る力(レジリエンス)が高い傾向があった。
- その結びつきの約半分(50.3%)は、「自分の仕事には意味がある」と感じる度合いで説明され、この結びつきは仕事が複雑でない人ほど強かった。
- 一方、合計3,562人の実験では、AIと作業したあと一人の作業に戻ると、意欲が下がり退屈が増えていた。AIと心の研究はまだ偏っていて、結論は出ていない。
01 結論から言うとAIに仕事を任せると、打たれ弱くなる?
打たれ弱くなるとは言えません。中国の経理・財務の332人の研究では、仕事用のAIをよく使う人ほど、仕事で立ち直る力が高い傾向がありました。ただし一度の調査で、因果関係は確かめられていません。
ここでいう「立ち直る力(レジリエンス)」は、仕事で予想外の困りごとが起きたときに、周りと協力して乗り切れると感じる度合いです。心の病気の有無を測ったものではありません。
研究者は、AIが単調な作業を引き受けることで、人が判断や分析など意味を感じやすい仕事に向き合えるようになり、それが立ち直る力につながる、という見方を示しています。一方で、AIと一緒に作業した後に一人の作業へ戻ると意欲が下がる、という実験結果もあります。AIの使い方や場面によって、受ける影響は一つではなさそうです。
02 研究とデータでわかっていることAIをよく使う人の心には、何が起きていた?
中国の332人の研究では、仕事用のAIをよく使う人ほど仕事に意味を感じ、立ち直る力も高く、その結びつきの約半分は仕事の意味で説明されました。一方、別の実験では、AIの後に一人の作業へ戻ると意欲が下がっていました。
JiとWu / 中国・合肥財経学院、安徽財経大学(2026年)[1]
中国のさまざまな業界で経理・財務の仕事をする人に、オンラインで3回答えてもらいました。1回目に仕事でのAIの使用、2回目に仕事の複雑さと「仕事に意味を感じるか」、3回目に仕事で立ち直る力を聞いています。AIは、決算書の自動作成や自動照合、不正の検知など、仕事用のものに限り、一般的な用途のAIは除いています。
AIをよく使う人ほど、仕事に意味を感じ(相関0.42)、立ち直る力も高い(相関0.44)傾向がありました。AIの使用と立ち直る力の結びつきのうち50.3%は、仕事に意味を感じる度合いを通したものでした。仕事に意味を感じる度合いを通した結びつきは、仕事が複雑でない人で0.132、複雑な人で0.055と、複雑でない人のほうが強く出ていました。
対象: 中国の経理・財務の働く人332人(女性72%、21〜40歳が約9割) / 限界: 本人の回答だけにもとづく調査で、AIを使うと立ち直る力が上がるという因果関係は確かめていません。1つの国・1つの職種に限られます。
Wuら / 中国・浙江大学ほか(2025年)[2]
合計3,562人が参加した4つのオンライン実験で、文章作成やアイデア出しなどの課題に取り組んでもらいました。AIと一緒に作業すると、その課題の出来はよくなりました。しかし、その後に一人で別の課題に取り組むと、出来のよさは続かず、意欲が下がり、退屈を感じる度合いが増えていました。自分でコントロールしている感覚は、逆に高まっていました。
対象: オンラインで集めた参加者(4つの実験の合計3,562人) / 限界: 短い課題での実験で、実際の職場で何か月も続けた場合はわかりません。
Alsudays / サウジアラビア・イマーム・ムハンマド・イブン・サウード・イスラム大学(2026年)[3]
働く人のAIへの不安を数量的に調べた研究30本(参加者の合計11,638人)を整理したレビューです。14本が中国、6本がトルコで行われていました。多く調べられていたのは「AI全般への不安」で、仕事を置き換えられる不安や、AIを学ぶことへの不安などは、まだ研究が少ないとまとめています。
対象: 2025年12月までに発表された30本の研究 / 限界: 研究の結果を数値でまとめた分析(メタ分析)ではありません。
AIとの作業のあとに意欲が下がる実験は「AIを使うと仕事のやりがいが減る?」で詳しく紹介しています。
03 まだわかっていないことAIを使うと、本当に心が強くなる?
まだわかっていません。立ち直る力が高い人ほどAIを使いこなしている可能性もあり、AIを使うことで立ち直る力が上がるかは、実験では確かめられていません。
- 332人の研究は本人の回答だけによる調査で、向きのある因果関係は言えません。回答を3回に分けても、もともと前向きな人がAIもよく使い、意味も感じている可能性があります。
- 対象は中国の経理・財務の職種だけです。日本の職場や、ほかの職種で同じ結果になるかはわかりません。
- 仕事用のAIに限った研究で、チャット型の生成AIを相談や雑談に使う場合とは別の話です。
- 働く人のAI不安の研究は中国とトルコに偏っていて、仕事を置き換えられる不安そのものを調べた研究はまだ少数です。
04 今日からできるセルフケアAIに任せながら、仕事の手応えを保つには?
AIに任せた分で空いた時間を、意味を感じる仕事に回せているかを確かめるのが手がかりになります。研究で立ち直る力と結びついていたのは、AIの使用そのものより、仕事に意味を感じる度合いでした。
AIに任せたことと、自分が判断したことを分けて書く
1日の終わりに「AIに任せた作業」と「自分が考えて決めたこと」を1行ずつ書きます。自分の役割が見えると、仕事の意味を感じやすくなります。
目安 1日2分
空いた時間の使い道を1つ決めておく
AIで短くなった作業の時間を、確認や相談、改善の提案など、自分がやる意味を感じる作業に充てます。週の初めに1つだけ決めます。
目安 週1回・5分
AIのあとに一人の作業へ戻るときは、小さく始める
実験では、AIと作業した後に一人の作業へ移ると意欲が下がり、退屈が増えていました。戻る最初の10分は、取りかかりやすい部分から手をつけます。
目安 切り替えのたび・10分
AIで自分の役割があいまいになったと感じるときは「AIを使うようになって、自分の役割がわからなくなった」、仕事の組み直し方は「AIで仕事が変わって、やりがいを見失った」も参考になります。
05よくある質問
AIに頼ると、仕事で打たれ弱くなる?
研究からは、そうとは言えません。中国の経理・財務の332人の調査では、仕事用のAIをよく使う人ほど、仕事で立ち直る力が高い傾向がありました。ただし一度の調査で、AIが立ち直る力を高めたかどうかは確かめられていません。
AIを使うと、仕事のやる気は下がる?
場面によります。合計3,562人の実験では、AIと作業した後に一人の作業に戻ると意欲が下がり、退屈が増えていました。一方、332人の調査では、仕事用のAIをよく使う人ほど仕事に意味を感じていました。
AIに悩みを相談して頼るのとは、違う話?
違う話です。ここで紹介した研究は、決算書の自動作成など仕事用のAIの使用を調べたものです。気持ちの面でAIに頼る場合については「AIに頼るようになって、落ち込むと立ち直りにくくなった気がする」で整理しています。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Ji Y, Wu H (2026). From threat to strength: how AI usage is paradoxically associated with resilience among accounting and finance employees. Frontiers in Psychology, 17, 1820550. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1820550
- Wu S, Liu Y, Ruan M, Chen S, Xie XY (2025). Human-generative AI collaboration enhances task performance but undermines human's intrinsic motivation. Scientific Reports, 15, 15105. https://doi.org/10.1038/s41598-025-98385-2
- Alsudays S (2026). Dimensions of artificial intelligence anxiety among employees in the age of innovation: a systematic review. Frontiers in Psychology, 17, 1824525. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1824525


