仕事とAIの不安

AIの不安が消えるのを待っていたら、何も手につかない。不安を抱えたまま大切なことに動く練習は、10件の試験のまとめで心の負担を少し減らしていた

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わかっている度 ★★☆ 中研究7本・公的指針0件を整理
机の上に置かれたノートとペン
Photo: www.Pixel.la Free Stock Photos / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

AIで自分の仕事がどうなるのか。その不安が何か月も消えず、「落ち着いたら動こう」と思ううちに、何も手につかなくなる。そんな状態が続く人もいます。結論から言うと、不安を消すことより、不安を抱えたまま自分が大切にしたいことに沿って動く練習(ACT)が、職場の研究で心の負担を少し減らしていました。ただし、多くは医療職の研究で、AIの不安を直接調べたものではありません。

3行でわかる

  1. 医療職を対象にしたACTの10件のランダム化比較試験のまとめでは、心の負担を減らす効果は小さいながらあった(効果量0.39)。
  2. 英国の医療機関の職員98人の試験では、講座の4週間後に、受講した人の48%で心の負担が測定の誤差を超えて軽くなっていた(待機した人では22%)。
  3. 効果は「いやな気持ちを受け入れる」「大切なことに沿って動く」力の変化を通じて現れていた。一方、日本の24人の小さな研究では改善は確かめられなかった。

01 結論から言うと不安が消えるまで待つべき?

待たなくてよい、というのが研究の示す方向です。不安を消すことより、不安があっても大切なことに一歩動く練習が、心の負担を少し減らしていました。

ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)は、心理療法の一つです。いやな考えや気持ちを無理に追い払わず、そのまま置いておく。そのうえで、自分が大切にしたいこと(価値)に沿った行動を選ぶ。この2つを練習します。

AIの将来は、自分一人の力では決められません。不安が消えることを動く条件にすると、動けない時間が長くなりがちです。立ち直る力を育てる練習全般の研究はAIで仕事を失う不安が続くときの記事に、心配の時間をまとめる方法は心配を1日30分にまとめる記事にまとめています。

02 研究とデータでわかっていることACTで心の負担はどのくらい減る?

医療職の10件の試験のまとめでは、効果は小さいながらありました。会社員の試験でも心の負担が減り、その効果は「受け入れる力」の変化を通じて現れていました。

0.39ACTによる心の負担の軽さの効果量(小さい。医療職の10件のランダム化比較試験のまとめ、2021年発表)
48%講座の4週間後に、心の負担が測定の誤差を超えて軽くなった受講者の割合。待機した人は22%(英国の医療機関の職員98人、2022年発表)
8時間上の試験の講座の合計時間(2時間×4週。仕事のあとの夜に実施)
24人日本の若手会社員のオンライン講座の研究。幸福感の改善は確かめられなかった(2025年発表)

Prudenziら(2021)[1]

医療職を対象にしたグループで行うACTの研究22件を集め、10件のランダム化比較試験をまとめました。ACTを受けた人は、比べたグループより、講座直後の心の負担が少し軽くなっていました(効果量0.39)。仕事に関わる負担も、追跡の時点で少し軽くなっていました(0.30)。講座の回数によって、心の負担への効果の大きさが変わっていました。

対象: 医療で働く人 / 限界: 著者らは、含まれた研究の質が低く、改善が必要だと述べている。ACTがめざす「柔軟に受け止める力」の測定値では、はっきりした差が見られなかった。

Prudenziら(2022)[2]

英国リーズの医療機関の職員98人を、ACTの講座を受けるグループと、順番を待つグループにランダムに分けました。講座は1回2時間を4週続ける形でした。講座の4週間後、受講した人の48%(52人中25人)で、心の負担が測定の誤差を超えて軽くなっていました。待機したグループでも22%(46人中10人)が自然に軽くなっていました。効果は、今に注意を向ける力と、大切なことに沿った行動が増えたことを通じて現れていました。

対象: 英国の医療機関の職員(約2割は患者と接しない管理・事務の職員) / 限界: 講座の10週間後の追跡では、グループ間の差がはっきりしなかった。途中で回答をやめた人が多く、比べた相手は何もしない待機グループだった。

Zhangら(2024)[3]

中国の医療職108人を、6週間のオンラインのACTを受けるグループと、待機するグループに分けました。講座は、10〜15分の解説動画、5〜8分の音声による注意の練習、書き出しの課題を組み合わせ、専門家とのオンラインの集まりもありました。受けたグループは待機したグループに比べて、ストレス・不安・落ち込みの合計点がはっきり改善し(効果量0.82)、講座の4週間後も続いていました(1.08)。

対象: 中国の医療職108人(女性が多い) / 限界: 10週目まで回答したのは63%。参加者は自分で応募した人で、追跡は講座後4週間だけだった。

BondとBunce(2000)・FlaxmanとBond(2010)[4][5]

メディア企業の90人の試験では、ACTの講座(3か月で合計9時間)を受けた人の心の健康と仕事に関わる指標が改善し、その変化は「いやな考えや気持ちを受け入れられるようになったこと」だけで説明されていました。平均より負担の強い会社員107人の試験では、半日の講座2回のACTが、ストレス対処の訓練と同じくらい、3か月にわたって心の負担を減らしていました。

対象: 会社員(国は要旨に書かれていない) / 限界: どちらも効果の大きさは要旨に書かれておらず、内容は要旨で確認した範囲。

Tozawaと土屋(2025)[7]

日本の会社で働く、大学・大学院の卒業後3年以内の24人に、1回90分・計3回のオンラインのACT講座を行いました。分析の条件を満たした人では、幸福感や仕事への熱意、ストレス反応などの改善は確かめられませんでした。

対象: 日本の若手会社員24人 / 限界: 比べるグループを置かない小さな研究で、人数も少ない。

医療・福祉・公共サービスなどの職場でACTを試した比較試験を集めた別のまとめでも、14件のうち13件で、少なくとも1つの指標にACTに有利な効果が見られました[6]。ただし、どの研究も人数が少なめでした。全体として、不安を抱えたまま大切なことに動く練習は、心の負担を少し軽くするが、大きな効果や日本での効果はまだ確かではないと言えます。仕事そのものの組み立て方を変える方法はAIで仕事のやりがいを見失ったときの記事にまとめています。

03 まだわかっていないことAIの不安にもACTは効く?

まだわかっていません。AIで仕事を失う不安を対象にしたACTの研究は、今回調べた範囲では見当たりませんでした。

  • AIや技術の変化による仕事の不安に、ACTが同じように効くか。
  • 日本の働く人に効くか。日本の24人の研究では改善が確かめられなかった。
  • 一人で書き出しなどをするだけで効くか。今回の研究は、講師や専門家の支えがついた講座だった。
  • 効果がどのくらい続くか。英国の試験では、10週間後にはグループ間の差がはっきりしなくなっていた。

04 今日からできるセルフケア不安を抱えたまま、何から始めればいい?

講座で使われた練習のうち、紙とペンでできるものから試します。大切にしたいことを書き出し、それに沿った小さな行動を1つ決めます。

1

大切にしたいことを書き出して、順位をつける

仕事、家族、学び、健康など10の分野ごとに、自分が大切にしたいことを短く書き、上位3つを選びます。英国と中国の講座で使われた、価値を整理する練習をもとにしています。

目安 15分、月に1回見直す

2

80歳の誕生日に、友人が話してくれる言葉を書く

80歳の誕生会で友人がスピーチをしてくれる場面を想像し、聞こえてくる言葉を書きます。中国の講座の書き出し課題の一つで、自分が大切にしたいことに気づく手がかりになります。

目安 10分

3

「動きを止める考え」を書き、それでも一歩を選ぶ

「AIに勝てない」「今さら学んでも遅い」など、大切なことから遠ざける考えや気持ちを書き出します。消そうとせず「そう考えている」と認めたうえで、大切なことに沿った行動を1つ選びます。

目安 1日1回、5分

4

5分だけ、呼吸と体に注意を向ける

呼吸と体の感覚に注意を向けます。不安な考えが浮かんだら、川を流れる葉っぱに一つずつ乗せて見送る想像をします。講座では5〜8分の音声による注意の練習が使われていました。

目安 1日5分

05よくある質問

不安が消えないと、前向きに動けないのでは?

必ずしもそうではありません。ACTという方法は、不安を消すことより、不安があっても大切なことに沿って動くことをめざします。職場の試験では、ACTの効果は「いやな考えや気持ちを受け入れられるようになったこと」を通じて現れていました。

ACTとはどんな方法?

アクセプタンス&コミットメント・セラピーの略で、心理療法の一つです。いやな考えや気持ちを無理に消そうとせず、今に注意を向けながら、自分が大切にしたいこと(価値)に沿った行動を選ぶ練習をします。職場向けの短い講座の研究もあります。

一人で本を読んだり書き出したりするだけでも効く?

まだわかっていません。今回の研究は、講師がいるグループの講座や、専門家の支えがついたオンライン講座でした。この記事の書き出しの練習は講座で使われた内容ですが、一人で行ったときの効果は確かめられていません。

つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。

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出典

  1. Prudenzi A, Graham CD, Clancy F, Hill D, O'Driscoll R, Day F, O'Connor DB (2021). Group-based acceptance and commitment therapy interventions for improving general distress and work-related distress in healthcare professionals: A systematic review and meta-analysis. Journal of Affective Disorders, 295, 192-202. https://doi.org/10.1016/j.jad.2021.07.084
  2. Prudenzi A, Graham CD, Flaxman PE, Wilding S, Day F, O'Connor DB (2022). A workplace Acceptance and Commitment Therapy (ACT) intervention for improving healthcare staff psychological distress: A randomised controlled trial. PLoS One, 17(4), e0266357. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0266357
  3. Zhang L, Huang S, Liu S, Huang Y, Chen S, Hu J, Xu M (2024). Effectiveness of an Internet-Based Acceptance and Commitment Therapy Intervention for Reducing Psychological Distress in Health Care Professionals: Randomized Controlled Trial. Journal of Medical Internet Research, 26, e59093. https://doi.org/10.2196/59093
  4. Bond FW, Bunce D (2000). Mediators of change in emotion-focused and problem-focused worksite stress management interventions. Journal of Occupational Health Psychology, 5(1), 156-163. https://doi.org/10.1037/1076-8998.5.1.156
  5. Flaxman PE, Bond FW (2010). A randomised worksite comparison of acceptance and commitment therapy and stress inoculation training. Behaviour Research and Therapy, 48(8), 816-820. https://doi.org/10.1016/j.brat.2010.05.004
  6. Towey-Swift KD, Lauvrud C, Whittington R (2023). Acceptance and commitment therapy (ACT) for professional staff burnout: a systematic review and narrative synthesis of controlled trials. Journal of Mental Health, 32(2), 452-464. https://doi.org/10.1080/09638237.2021.2022628
  7. Tozawa A, Tsuchiya M (2025). Effects of an online group program based on acceptance and commitment therapy for young employees on well-being: single-case A-B design. Environmental and Occupational Health Practice, 7(1), 2024-0015-FS. https://doi.org/10.1539/eohp.2024-0015-FS