寂しさを日頃からためないために、毎日の中でできることは?米国の大人の22日間の日記研究では、「すごい」と心を動かされた日ほど、その日の孤独感が少なかった

在宅の仕事やAIとのやりとりが増えて、人と話さない日が続く。大きな悩みではないけれど、夜になるとなんとなく寂しい。そんな寂しさを日頃からためないために、毎日の中でできることはあるのでしょうか。米国の22日間の日記研究では、空や自然、人の親切などに「すごい」と心を動かされた日ほど、その日の孤独感が少なくなっていました。ただし、これは同じ人の日ごとの変化を見た関連で、実験で確かめられた効果ではありません。
3行でわかる
- 米国の医療職171人と地域の大人306人が22日間つけた日記では、ふだんより「すごい」と心を動かされた日ほど、孤独感が少なくなっていました。
- この結びつきは、感謝など他の前向きな気持ちを差し引いても残り、その日に自然とのつながりを感じたかどうかが、間をつないでいました。
- 一方で、動画や作文で心を動かす実験を確かめ直した研究では、満足度などが高まるという以前の結果は、ほとんど再現されませんでした。
01 結論から言うと「すごい」と感じる時間は、寂しさの予防になる?
予防になるとはまだ言い切れません。日記研究では「すごい」と感じた日ほど孤独感が少なかったものの、関連は小さく、心を動かす体験を人工的に作る実験では効果が再現されにくいためです。
研究者が注目しているのは「畏敬の念」です。とても大きなもの、すぐには理解しきれないものに出会ったときの、「すごい」と圧倒される気持ちを指します。英語では「オー(awe)」と呼ばれます。
畏敬の念は、特別な旅先だけで起きるものではありません。研究では、自然、音楽、大勢で一緒に動く場、芸術、そして人の勇気や親切に触れたときにも起きるとされています。[2]この気持ちには「自分は大きなものの一部だ」と感じさせる働きがあり、それが寂しさをやわらげるのではないか、というのが研究者の考えです。[3]
人と話す機会そのものを増やす工夫は、人と話さない日が増えたときの「ゆるいつながり」の記事にまとめています。この記事は、ひとりの時間の中でもできる工夫に絞って見ていきます。
02 研究とデータでわかっていること「すごい」と感じた日は、孤独感がどう違った?
22日間の日記では、同じ人の中で、畏敬の念がふだんより強かった日ほど孤独感が少なくなっていました。結びつきの強さは小さめで、医療職と地域の大人の2つのグループで同じ結果でした。
Ugurlu ら / カリフォルニア大学バークレー校など(2026年)[1]
米国の医療職と地域の大人が、22日間、毎晩その日の気持ちを5段階で答えました。同じ人の中で比べると、畏敬の念がふだんより強かった日ほど、孤独感が少なくなっていました。感謝の気持ちの強さを差し引いても、この結びつきは残りました。また、その日に植物や自然の映像・音などで「自然とつながった」と感じた度合いが、畏敬の念と孤独感の間をつないでいました。
対象: 米国の医療職171人と地域の大人306人(ともに約8割が女性) / 限界: 新型コロナの外出制限の時期で、くじで組を分けた実験ではありません。どちらが先かは区別できず、孤独感は1つの質問で測っています。
Monroy ら / カリフォルニア大学バークレー校など(2023年)[2]
同じ研究チームが同じ時期に集めた日記で、地域の大人269人と医療職145人を調べました。畏敬の念がふだんより強かった日ほど、ストレスと体の不調が少なく、心の健やかさが高くなっていました。また、22日間のあいだに、畏敬の念は全体として少しずつ増えていました。
対象: 米国の地域の大人269人と医療職145人 / 限界: 研究者自身が、参加者の多様さが少ないことと、すべてが自己申告であることを限界に挙げています。
Monroy と Keltner / カリフォルニア大学バークレー校(2023年)[3]
畏敬の念と心と体の健康の研究を整理したレビューです。畏敬の念は、体の反応の変化、自分へのとらわれが小さくなること、人への思いやり、社会とのつながりの感覚、人生の意味の5つを通じて、健康に役立つ可能性があるとまとめています。地震や洪水のような、恐れをともなう畏敬の念は、この恩恵は期待しにくいとも書いています。
対象: 実験・日記研究・自然の中での研究など、これまでの研究 / 限界: 研究チーム自身の考えをまとめた論文で、効果の大きさを数字でまとめたものではありません。
Graziosi ら / ジョンズ・ホプキンス大学など(2026年)[4]
動画、思い出して書く課題、VRで畏敬の念を引き起こす実験を、合わせて9つ行いました。畏敬の念そのものは多くの実験で引き起こせましたが、人への親切や生活の満足度が高まるという以前の研究の結果は、ほとんど再現されませんでした。元の研究の2.5倍の人数で行った確かめ直しでも同じでした。
対象: オンラインと実験室で参加した大人 / 限界: 研究者は、短い動画や作文では気持ちの動きが弱すぎた可能性も挙げています。孤独感は測っていません。
03 まだわかっていないこと畏敬の念と孤独について、まだわからないことは?
「すごい」と感じる体験を意識して増やしたとき、寂しさが本当に減るのかは、まだ確かめられていません。日記研究の結果は関連で、実験での再現も弱いのが今の状態です。
- 日記研究は、孤独感が少ない日だから心が動きやすかった、という逆の向きも区別できません。
- 畏敬の念を増やす練習で孤独感が減るかを、くじで組を分けて確かめた研究は、この記事で調べた範囲では見当たりませんでした。
- 研究は新型コロナの外出制限の時期の米国が中心です。日本の人や、ふだんの暮らしで同じ結果になるかはわかっていません。
- 結びつきは小さめでした。強い孤独を抱えている人に、どれくらい役立つかは調べられていません。
04 今日からできるセルフケア寂しさをためないために、毎日できることは?
寝る前に「今日すごいと思ったこと」を1行書く、空や木など自然を5分眺める、心を動かされたことを誰かに1つ話す、の3つです。お金はかからず、人と会う予定とも両立できます。
寝る前に「今日すごいと思ったこと」を1行書く
研究の参加者は、毎晩その日の気持ちを答えていました。夕焼けの色、知らない人の親切、音楽の一節など、小さなことで十分です。思いつかない日は「なし」と書いて終わります。
目安 1日1分
昼休みか帰り道に、空や木を5分眺める
日記研究では、自然とつながったと感じた度合いが、畏敬の念と孤独感の間をつないでいました。スマホをポケットに入れて、雲の形や木の葉の動きを眺めます。景色の動画で心を落ち着ける研究は、雄大な景色の動画の記事で紹介しています。
目安 1日5分
心を動かされたことを、誰かに1つ話す
畏敬の念は、人の勇気や親切に触れたときにも起きるとされています。見たこと・聞いたことを家族や友人に1つ話すと、人とやりとりするきっかけにもなります。この効果そのものは研究で確かめられていないため、話すことは負担にならない範囲で十分です。人と笑う時間の研究は、最近、人と笑っていない記事にあります。
目安 週に1〜2回
05よくある質問
畏敬の念とは、どんな気持ち?
とても大きなもの、すぐには理解しきれないものに出会ったときの、「すごい」と圧倒される気持ちです。自然や音楽、芸術のほか、人の勇気や親切に触れたときにも起きるとされています。地震のような恐れをともなうものは、健康への恩恵は期待しにくいとされています。
寂しいとき、景色を見れば孤独は消える?
消えるとは言えません。米国の日記研究では、畏敬の念が強い日ほど孤独感が少ない関連がありましたが、強さは小さめでした。また、動画などで心を動かす実験では、以前の研究の結果がほとんど再現されていません。人とのつながりを補う工夫の1つとして考えるのが現実的です。
自然の動画や写真でもいい?
日記研究で「自然とつながった」度合いを聞いた質問には、植物だけでなく、自然の映像・写真・音も含まれていました。ただし、動画で畏敬の念を引き起こす実験では、満足度などの変化が再現されにくいことがわかっています。外で実物を眺められる日は、そちらも試してみてください。
人と会う代わりになる?
代わりになるかは、研究で確かめられていません。この記事の研究は、ひとりの時間の中での気持ちの動きと孤独感の関連を見たものです。人と話す機会を増やす工夫は、ゆるいつながりの記事を参考にしてください。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Ugurlu Ö, Zerwas F, Monroy M, Corona R, Amster M, Eagle J, Keltner D (2026). Experiencing awe in daily life is linked to lower loneliness. Scientific Reports, 16. https://doi.org/10.1038/s41598-025-34864-w
- Monroy M, Uğurlu Ö, Zerwas F, Corona R, Keltner D, Eagle J, Amster M (2023). The influences of daily experiences of awe on stress, somatic health, and well-being: a longitudinal study during COVID-19. Scientific Reports, 13, 9336. https://doi.org/10.1038/s41598-023-35200-w
- Monroy M, Keltner D (2023). Awe as a Pathway to Mental and Physical Health. Perspectives on Psychological Science, 18(2), 309–320. https://doi.org/10.1177/17456916221094856
- Graziosi M, Chirico A, Clifton JDW, Rohde JS, Chhabra R, Yaden DB (2026). A series of replication attempts of experimental awe-induction effects. PLoS One, 21(9), e0356728. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0356728


