比べて落ち込む

人と比べて「自分は下のほうだ」と落ち込んだとき、雄大な景色の動画は効く?中国の151人の実験では3分の動画で落ち込みが小さかったが、追試で再現しない実験も多かった

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わかっている度 ★☆☆ 低研究3本・公的指針0件を整理
雪をかぶった山と谷の景色
Photo: Vyacheslav Argenberg / CC BY 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

同期の成果、友達の近況、AIのほうが上手な仕事。「自分は下のほうだ」と感じた直後は、気持ちが沈んだまま次のことが手につかないことがあります。その場で試せる方法の一つとして研究されているのが、星空や山並みのような雄大な景色に触れることです。ただし、まだ研究は少なく、結果も分かれています。

3行でわかる

  1. 知能テストで「下位10%」と告げられた中国の151人の実験では、雄大な景色の動画を3分見た人は、ふつうの動画の人より落ち込みが小さかった。
  2. 見た目の欠点を書いた180人の実験では、楽しい動画は効かず、雄大な景色の動画だけで落ち込みが小さかった。「自分は小さな存在だ」という感覚が間をつないでいた。
  3. 一方、畏敬の念(圧倒される気持ち)を呼び起こす実験の多くは、別の研究者の追試で再現されていない。確かな方法とはまだ言えない。

01 結論から言うと比べて落ち込んだ直後、景色の動画は効く?

短い実験では、雄大な景色の動画を3分見た人は落ち込みが小さくなっていました。ただし同じ研究チームの4つの実験が中心で、畏敬の念の実験は追試で再現しないものも多く、効くと言い切れる段階ではありません。

研究者が注目しているのは「畏敬の念」です。とても大きなもの、すぐには理解しきれないものに出会ったときの、圧倒されるような気持ちのことです。

このとき人は、「自分は小さな存在だ」と感じやすくなります。人と比べて傷ついた「自分」の比重が小さくなり、落ち込みがやわらぐのではないか。これが研究者の考えです。

02 研究とデータでわかっていること雄大な景色で、落ち込みは小さくなる?

中国の研究チームの4つの実験では、知能・見た目・立場で「劣っている」と感じさせたあと、畏敬の念を感じた人のほうが落ち込みが小さくなっていました。高齢者が8週間続けた散歩の研究では、日々のつらさが下がっていました。

2.02 対 3.46「下位10%」と告げられたあとの落ち込みの点数(1〜7点)。雄大な景色の動画の組と、ふつうの動画の組(中国の151人、2023年発表)
3分実験で見た動画の長さ。雪山や砂漠、草原などの景色だった
6件畏敬の念の実験を確かめ直した研究の数。33の結果のうち、元の結果が再現されたものはほとんどなかった(2026年発表)

Sunら(2023年)[1]

151人に難しい知能テストを75秒で解いてもらい、全員に「あなたの知能は参加者の中で下位10%」と伝えた。そのあと、新疆の雪山や砂漠、草原などの雄大な景色の動画か、男性が板に絵を描くだけの動画を3分見て、その場にいると想像して5つの文を書いた。知能のことでの落ち込み(1〜7点)は、景色の組が2.02点、絵の組が3.46点だった。

同じ論文の別の実験では、見た目の欠点を書いた180人が、オーロラや星空の動画、楽しい動画、ふつうの動画を3分見た。落ち込みが小さかったのは星空などの組だけで(3.08点)、楽しい動画(3.96点)はふつうの動画(3.90点)と差がなかった。別の147人の実験では、同じ景色の動画を見たあと、雄大なものに圧倒された体験を思い出して書いた組のほうが、机の掃除を思い出して書いた組より落ち込みが小さかった。

対象: 中国の151人(平均27.1歳)と北京大学の147人、ネットの調査サービスで集めた180人と252人 / 限界: どれも実験室やネットでの1回の短い結果で、落ち込みは本人の申告。「下位10%」は実験用の作り話で、実際の比較の場面ではない。

Graziosiら(2026年)[2]

ほかの研究者が報告した「畏敬の念で生活の満足度が上がる」「人に親切にしやすくなる」などの結果を、動画・書く課題・VRで確かめ直した6件の実験。畏敬の念は呼び起こせたが、33の結果のうち元の結果が再現されたものはわずかだった。元の研究の2.5倍の人数で同じ手順をくり返しても、再現されなかった。

対象: 米国の大学生と、ネットの調査サービスの参加者 / 限界: 「劣っていると感じたときの落ち込み」をやわらげる効果そのものは調べていない。畏敬の念を強く感じた人ほど結果がよい傾向は、関連として見られていた。

Sturmら(2022年)[3]

健康な60〜90歳の60人が、8週間、週1回15分の散歩をした。半分は「広々とした場所や初めての場所で、驚く気持ちに目を向けて」と伝えられた「畏敬の念の散歩」の組だった。この組では、散歩以外の日々のつらさ(悲しさやこわさ)が、ふつうの散歩の組より下がっていった。

対象: 米国サンフランシスコ周辺の健康な高齢者(分析は52人、年齢の中央値75歳) / 限界: 不安や落ち込みの質問票の点数は、どちらの組も変わらなかった。畏敬の念の組は、はじめから日々のつらさがやや高かった。人と比べることは調べていない。

03 まだわかっていないことこの方法は、確かな効果があると言える?

まだ言えません。落ち込みがやわらいだ結果は主に1つの研究チームによるもので、別の研究者が同じ効果を確かめた研究は、今回の調査では見つかりませんでした。畏敬の念のほかの効果は、追試で再現されないものが多くありました。

  • 実際にSNSや職場で人と比べて落ち込んだ場面で、同じ結果になるか。実験では「下位10%」という作られた知らせを使っていた。
  • 効果がどのくらい続くか。実験は動画を見た直後の気持ちだけを測っていた。
  • 画面の動画と、実際の空や山を見ることで違いがあるか。
  • くり返したときに、人と比べやすい傾向そのものが変わるか。

04 今日からできるセルフケア比べて落ち込んだ直後に、何をすればいい?

比べた画面を閉じて、星空や山並みなど雄大な景色を3分ほど眺めます。その場にいると想像し、感じたことを短く書きます。合わなければ深追いせず、ほかの方法に切り替えます。

1

雄大な景色を3分眺めて、その場にいると想像する

比べたSNSや資料を閉じ、星空や山並み、海の映像や写真を見ます。実験では、景色の中にいると想像して、感じたことを5つの文に書いていました。

目安 3分+書くのに2分

2

圧倒された体験を思い出して書く

景色を眺めたあと、大きな山や夜空、広い海を前に圧倒された自分の記憶を思い出し、そのときの気持ちを書きます。実験では、動画のあとにこの体験を書いた組で、落ち込みが小さくなっていました。

目安 5分、5つの文

3

散歩で「大きいもの・初めてのもの」を探す

落ち込みが長引く日は、外に出て空や大きな木、初めて通る道に目を向けて歩きます。高齢者の研究では、週1回の散歩を8週間続けていました。

目安 15分、週1回から

比べて自分を責める気持ちが強いときは自分への思いやりの研究を、何日も思い返してしまうときは少し離れた視点で振り返る方法を読めます。景色や自然の効果は自然の中で過ごす研究のまとめ、比べる回数そのものを減らすならSNSを「減らす」研究も参考になります。

05よくある質問

人と比べて落ち込んだとき、すぐに気持ちを切り替える方法はある?

一つの候補が、雄大な景色に触れることです。中国の151人の実験では、「あなたは下位10%」と告げられたあとに3分の雄大な景色の動画を見た人は、ふつうの動画を見た人より落ち込みが小さくなっていました。ただし実験室での短い結果で、確かな方法とはまだ言えません。

楽しい動画やおもしろい動画ではだめ?

ある実験では、楽しい動画は効きませんでした。自分の見た目の欠点を書いたあとに動画を見た180人の実験では、落ち込みが小さかったのは雄大な景色の動画だけで、楽しい動画はふつうの動画と差がありませんでした。

「畏敬の念」とは何?

とても大きなもの、すぐには理解しきれないものに出会ったときの、圧倒されるような気持ちのことです。研究では、星空や山並み、オーロラの映像などで呼び起こされます。このとき「自分は小さな存在だ」と感じやすいことが知られています。

毎日続ければ、比べて落ち込みにくくなる?

わかっていません。60〜90歳の60人が8週間、週1回15分の「畏敬の念の散歩」を続けた研究では、日々のつらさは下がっていきましたが、不安や落ち込みの質問票の点数は変わりませんでした。人と比べる癖そのものが変わるかは調べられていません。

つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。

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出典

  1. Sun, Z., Hou, Y., Song, L., Wang, K., & Yuan, M. (2023). The Buffering Effect of Awe on Negative Emotions in Self-Threatening Situations. Behavioral Sciences, 13(1), 44. https://doi.org/10.3390/bs13010044
  2. Graziosi, M., Chirico, A., Clifton, J. D. W., Rohde, J. S., Chhabra, R., & Yaden, D. B. (2026). A series of replication attempts of experimental awe-induction effects. PLOS ONE. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0356728
  3. Sturm, V. E., Datta, S., Roy, A. R. K., Sible, I. J., Kosik, E. L., Veziris, C. R., Chow, T. E., Morris, N. A., Neuhaus, J., Kramer, J. H., Miller, B. L., Holley, S. R., & Keltner, D. (2022). Big smile, small self: Awe walks promote prosocial positive emotions in older adults. Emotion, 22(5), 1044–1058. https://doi.org/10.1037/emo0000876