仕事中にかわいい動物の写真を見ると、集中できる?日本の大学生の実験では細かい作業の成績が上がったが、画面の反応課題では差がなかった

画面とAIの答えを見続けて集中が切れたとき、つい子犬や子猫の写真を開いてしまう。それはサボりなのか、気分転換なのか。研究の答えは分かれています。日本の大学生の実験では、かわいい写真を見たあと細かい作業の成績が上がりました。一方、オンラインで行われた計262人の実験では、画面で素早く反応する課題に差は出ませんでした。短い休憩として見るのはよいですが、集中力を上げる方法として頼るには、まだ根拠が足りません。
3行でわかる
- 日本の大学生48人の実験では、子犬や子猫の写真を1分半見たあと、ピンセットで部品を取る作業の成績が平均43.9%上がった。大人の犬や猫の写真では11.9%だった。
- ただし、オンラインで行われた2つの実験(計262人)では、画面で素早く反応する課題の成績に差はなかった。効果は作業の種類で変わる可能性がある。
- 10分以内の短い休憩の研究のまとめでは、休憩で元気さが少し上がり、疲れが少し下がっていた。写真は「短い休憩のきっかけ」として使い、見続けないのが現実的。
01 結論から言うとかわいい動物の写真で集中力は上がる?
かわいい動物の写真で集中力が上がるかは、まだ結論が出ていません。細かい作業や数字を探す作業で成績が上がった実験がある一方、画面で素早く反応する課題では差がなかった実験もあります。
「かわいい写真を見ると仕事がはかどる」という話は、2012年に広島大学の研究チームが発表した実験から広まりました。子犬や子猫の写真を見たあと、注意深さが必要な作業の成績が上がったという結果です。
ただ、その後に海外で行われた、より人数の多い実験では、同じような効果は見られませんでした。どちらも限られた条件の実験で、仕事の成果が上がるかを確かめた研究はまだありません。
02 研究とデータでわかっていることかわいい写真を見たあと、作業の成績はどうだった?
日本の大学生の実験では、子犬や子猫の写真を見たあと、細かい作業と数字を探す作業の成績が上がりました。一方、オンラインの2つの実験では、画面で反応する課題の成績は、子犬の写真と大人の犬の写真で変わりませんでした。
入戸野(Nittono)ら / 広島大学(2012年)[1]
ピンセットで小さな部品を穴から取り出す作業を、休憩の前後で2回行った。休憩の1分半で、子犬や子猫の写真7枚を見た組は、2回目の成功数が平均43.9%上がった。大人の犬や猫の写真を見た組は11.9%だった。かわいい写真の組は、作業にかける時間も12.2%長くなっており、ゆっくり丁寧に作業したと考えられている。
2つめの実験では、数字の並びから指定の数字を探す作業を使った。子犬や子猫の写真の組は正答数が15.7%上がった。大人の犬や猫の組は1.4%、ステーキやすしなど好きな食べ物の写真の組は1.2%で、ほとんど変わらなかった。3つめの実験では、かわいい写真のあと、ものの全体を先にとらえる傾向が弱まり、細かい部分に注意が向きやすくなっていた。
対象: 日本の大学生(実験1は48人、実験2は48人、実験3は36人。18〜22歳) / 限界: 1組16〜24人と少人数。写真を見た直後の数分の作業だけを調べており、仕事の成果は測っていない。
Yoshikawa・入戸野・Masaki(2020年)[2]
同じようなピンセットの作業で、子どもの動物の写真7枚を見た組は、作業の正確さが上がった。人に見られ、成績で得をしたり損をしたりすると伝えた緊張する場面でも、正確さは上がっていた。大人の動物の写真の組では、こうした変化は見られなかった。
対象: 日本の大学生28人 / 限界: 人数が少なく、作業はピンセットを使う細かい手の作業だけ。
ZivとFox / イスラエルの大学(2022年に2本発表)[3][4]
オンラインで参加者を集め、事前に計画を登録したうえで実験した。1本目では98人、2本目では164人が、画面に出る合図に素早くキーで答える2つの課題を、写真を見る前後に行った。どちらの実験でも、子犬・子猫の写真を見た組と、大人の犬・猫の写真を見た組で、正答や反応の速さに差はなかった。
1本目では、ペットを飼っている人だけ、子犬や子猫の写真のあとに課題を速く切り替えられていた。研究者は、ペットを飼っているかどうかで結果が変わる可能性を挙げている。
対象: オンラインの調査会社に登録した大人(1本目は98人で平均23〜24歳、2本目は164人で平均26.1歳) / 限界: 家のパソコンで行ったため、指示どおりに取り組んだかは確かめにくい。課題が簡単すぎた可能性も研究者が挙げている。
Albulescuら(2022年)[5]
10分以内の短い休憩の効果を調べた実験22件(2335人)をまとめた。休憩のあと、元気さが少し上がり(効果の大きさ0.36)、疲れが少し下がった(0.35)。作業の成績全体でははっきりした差はなかった(0.16)。休憩が長いほど、成績が上がる傾向があった。
対象: 実験・準実験の研究22件 / 限界: 写真を見る休憩だけを調べたものではない。休憩の中身や長さは研究ごとにばらばらだった。
03 まだわかっていないことなぜ実験によって結果が分かれるの?
理由はまだわかっていません。成績が上がったのは手先を使う作業や数字を探す作業で、差がなかったのは画面で素早く反応する課題でした。作業の種類、実験の場所、写真への好みの違いが理由として考えられています。
- 成績が上がった実験は、どれも日本の大学生が実験室で行ったもの。働く大人や、ほかの国の人で同じ結果になるかはわかっていない。
- かわいい写真で注意が細かい部分に向くなら、全体を見渡す必要がある作業ではかえって不利になる可能性を、2012年の研究者自身が挙げている。まだ確かめられていない。
- 写真を何分見るとよいか、動画でも同じか、毎日見続けても効果が続くかを調べた研究は見当たらなかった。
- 文章を書く、資料を読むなど、ふだんの仕事に近い作業で調べた研究もまだない。
04 今日からできるセルフケア集中が切れたとき、写真はどう使えばいい?
かわいい写真は、集中力を上げる道具というより、短い休憩のきっかけとして使います。見る時間を先に決め、休憩のあとは作業に戻る最初の一手を決めておくと、見続けてしまうのを防げます。
見る時間を1〜2分と決めてから開く
実験で写真を見た時間は1分半ほどでした。動画やSNSを流し見すると止めどきを失うので、手元のお気に入りの写真を数枚だけ見て閉じます。
目安 1回1〜2分、集中が切れたときに
細かい確認作業の前に試してみる
成績が上がったのは、ピンセットの作業や数字を探す作業など、注意深さが必要な作業でした。数字の確認や誤字のチェックの前に見て、ミスの数を前の日と比べます。
目安 3日ほど、見る日と見ない日を比べる
頭が疲れたら、画面から離れる休憩も入れる
短い休憩の研究では、休憩で元気さが上がり、疲れが下がっていました。写真を見る休憩とは別に、窓の外を見る、立って体を伸ばすなど、画面から離れる休憩も1時間に1回入れます。
目安 1時間に1回、5分ほど
休憩の取り方は休憩のタイミングの研究と画面作業の合間の休憩の研究に、自然の景色を見て頭を休める方法は自然と注意の回復の研究にまとめています。
05よくある質問
かわいい動物の写真を見ると、集中力は上がる?
まだ結論は出ていません。日本の大学生の実験では、子犬や子猫の写真を見たあと、ピンセットで部品を取る作業や数字を探す作業の成績が上がりました。一方、オンラインで行われた計262人の実験では、画面で素早く反応する課題の成績に差はありませんでした。
仕事中に動物の写真や動画を見るのはサボりになる?
短い休憩として見るなら、研究で問題とされた例は見当たりません。10分以内の短い休憩の研究を集めたまとめでは、休憩のあと元気さが少し上がり、疲れが少し下がっていました。ただし作業の成績が上がるとまでは言えず、見続けると作業から離れる時間が長くなります。
大人の犬や猫の写真や、好きな食べ物の写真でも同じ?
日本の大学生の実験では、大人の犬や猫、ステーキやすしなど好きな食べ物の写真では、数字を探す作業の成績はほとんど変わりませんでした。成績が上がったのは、子犬や子猫など「かわいい」と感じる写真のあとでした。
ペットを飼っている人のほうが効果がある?
はっきりしていません。オンラインの実験の1本目では、ペットを飼っている人だけ、子犬や子猫の写真のあとに課題を速く切り替えられていた結果がありました。ただ、全体では差がなく、ペットを飼っているかどうかの影響は、まだ確かめている途中の段階です。
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出典
- Nittono, H., Fukushima, M., Yano, A., & Moriya, H. (2012). The power of Kawaii: Viewing cute images promotes a careful behavior and narrows attentional focus. PLoS ONE, 7(9), e46362. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0046362
- Yoshikawa, N., Nittono, H., & Masaki, H. (2020). Effects of viewing cute pictures on quiet eye duration and fine motor task performance. Frontiers in Psychology, 11, 1565. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2020.01565
- Ziv, G., & Fox, O. (2022). Viewing cute images does not affect performance of computerized reaction time tasks. Frontiers in Psychology, 12, 800543. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2021.800543
- Fox, O., & Ziv, G. (2022). The effects of viewing cute images on the performance of simple computerized tasks in dog owners and non-dog owners. PeerJ, 10, e14439. https://doi.org/10.7717/peerj.14439
- Albulescu, P., Macsinga, I., Rusu, A., Sulea, C., Bodnaru, A., & Tulbure, B. T. (2022). "Give me a break!" A systematic review and meta-analysis on the efficacy of micro-breaks for increasing well-being and performance. PLoS ONE, 17(8), e0272460. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0272460


