メールを何度も確かめて、一日が細切れになって疲れる。オランダの金融機関の実験では、1日3回にまとめて見る試みをした組で終了直後の疲れ切った感じが減ったが、2週間後には差がはっきりしなくなっていた

資料を作っている途中でメールの通知が鳴り、開いて返事を考え、元の作業に戻る。これを一日に何度も繰り返すと、夕方には何をしていたのかわからないほど疲れていることがあります。AIの要約や自動の通知が増えて、届く連絡はむしろ多くなったと感じる人もいるでしょう。メールを見る時間を決めてまとめると、この疲れは防げるのでしょうか。
3行でわかる
- オランダの金融機関で、メールを1日3回までにまとめて見る試みを1か月したチームは、いつも通りのチームより、終了直後の疲れ切った感じが減っていた。
- 効果が大きかったのは、1日25通以上のメールを受け取る人。すぐ返信することを職場で求められていると感じる人では、効果は小さかった。
- 終了から2週間後には、疲れの差ははっきりしなくなっていた。まとめて見る習慣を続ける仕組みと、周りとの取り決めがカギになりそう。
01 結論から言うとメールをまとめて見ると、疲れは防げる?
ある程度は防げる可能性があります。オランダの職場の実験では、1日3回までにまとめて見る試みをしたチームで、疲れ切った感じが減りました。ただし効果は一時的で、メールの量や職場の返信の決まりによって大きく変わりました。
メールが届くたびに作業を止めると、元の作業で何をしようとしていたかを思い出し直す手間がかかります。研究者たちは、この切り替えが繰り返されることで頭の力が少しずつ削られ、疲れにつながると考えてきました。まとめて見れば、この切り替えの回数を減らせます。
一方で、見ていない受信箱が気になったり、いつもの習慣を変えること自体がストレスになったりする可能性もあります。これまでの研究の結果が分かれてきたのは、そのためだと考えられています。
02 研究とデータでわかっていることまとめて見ると、何がどう変わった?
オランダの金融機関の実験では、まとめて見たチームで、メールに作業を邪魔された感覚がやや少なく、疲れ切った感じは終了直後に減っていました。仕事への熱意は変わりませんでした。終了後も53%の人がまとめて見る習慣を続けていました。
Wijngaardsら / オランダ・エラスムス大学ロッテルダム(2022年)[1]
オランダの金融機関の地方支店で、会社の取り組みとして行われた実験です。4つのチームには、仕事のメールを1日3回までにまとめて見る試みを1か月続けてもらいました。通知をまとめて届く設定に変え、メールを処理する時間を予定表に最大3つ入れるよう勧めました。3つのチームは、いつも通りに働きました。
まとめて見たチームは、メールに作業を邪魔された感覚が7段階で平均2.90と、いつも通りのチームの3.38よりやや低めでした(統計的にはぎりぎり差があるとは言えない程度)。仕事で疲れ切った感じは、試みが終わった直後に、いつも通りのチームより減っていました。仕事への熱意には差がありませんでした。
効果は人によって違いました。1日に25通以上のメールを受け取る人では、疲れの減り方がより大きくなっていました。反対に、「職場ではすぐ返信することが求められている」と感じている人ほど、効果は小さくなっていました。試みの前後の変化で比べた分析では、終了から2週間後には、疲れの差ははっきりしなくなっていました。
決めた回数を守れなかった理由で最も多かったのは、お客さんに関わる事情(72%)で、自分がつい見てしまう(31%)、同僚の事情(28%)が続きました。終了後も53%がまとめて見る習慣を続け、続けたい工夫として多かったのは、通知を切ったままにすること(66%)と、時間を決めてまとめて処理すること(56%)でした。
対象: オランダの金融機関で働く人(試みの前の調査に答えたのは79人。参加者の68%が男性、70%が45歳以上)。新型コロナの時期で、ほぼ全員が在宅勤務だった / 限界: チームを場所で振り分けたため、くじ引きの実験ではない。途中で答えなくなった人が多く、メールが特に多い人が抜けやすかった。1つの会社の結果。
Russellら / 英国・キングストン大学ほか(2017年)[2]
4つの組織で働く52人に、半日(4時間)のあいだ、通知が来たメールを処理するたびに記録をつけてもらいました。届いたメールは1人あたり2〜20通、合計376通でした。通知が来てから開くまでの時間の中央値は0秒で、半分以上のメールはすぐに開かれていました。
通知が来たメールを後回しにした時ほど、処理したあとのいやな気分が少し強くなっていました。この傾向は、まじめで計画的な性格の人ではっきりしていました。後回しにしても、作業がはかどった感覚は高まっていませんでした。研究者は、まじめな人ほど通知そのものを切ったほうがよいかもしれないと書いています。
対象: 英国の研究者が集めた、製造業・IT・大学などで働く52人(女性54%) / 限界: 人数が少なく、記録は半日だけ。通知を切った場合と比べた実験ではない。
Kernら / ドイツ・カッセル大学ほか(2024年)[3]
ドイツの働く人444人(平均43歳)に、2週間あけて2回、メールの負担感と心の状態を答えてもらいました。メールが多すぎて手に負えないと感じていた人ほど、2週間後にイライラなどの心の負担がわずかに強まっていました。時間に追われる感じや、作業を中断される多さの影響を差し引いても、この関係は残っていました。
別の257人の調査では、負担感と結びついていたのは、受け取った連絡のためのメールの数でした。作業の依頼のメールの数や、処理したメールの総数とは、はっきりした関係はありませんでした。
対象: ドイツの働く人444人と257人 / 限界: 調査の研究で、実験ではない。関係の強さは小さく、気分のよさとの関係は見られなかった。
なお、オランダの実験の論文が紹介している先行研究では、メールを1日3回だけ見た日はストレスが低かったという実験がある一方、まとめて見る習慣とストレスに関係が見られなかった調査もあり、結果は分かれていました。
03 まだわかっていないこと何回にまとめるのがいちばんいい?
まだわかっていません。オランダの実験は「1日3回まで」の1通りだけを試したもので、2回や5回と比べてはいません。効果が2週間で薄れた理由も、はっきりしていません。
- オランダの実験はくじ引きでチームを分けておらず、1つの会社の在宅勤務の時期の結果だった。
- メールが特に多い人ほど途中で答えなくなっていて、本当の効果はもっと小さい可能性があると研究者自身が書いている。
- 不安が強い性格の人では、まとめて見ることでかえってストレスが増えたという先行研究もあり、誰に合うかはまだ整理されていない。
- メールの中身(急ぎか、連絡か、依頼か)を分けて扱うとどうなるかは、調べられていない。
04 今日からできるセルフケアメール疲れをためないために、何ができる?
メールを見る時間を1日数回に決めて予定に入れ、その間は通知を切ります。急ぎの連絡の手段を周りと決めておき、続けるための声かけや目印を用意します。メールが多い人ほど試す価値があります。
メールを見る時間を、予定表に入れる
朝・昼・夕方など、メールを処理する時間を予定表に入れます。オランダの実験では、1日最大3つの枠を入れるよう勧められていました。枠の外では受信箱を開かないことにします。
目安 1日3回まで
我慢するより、通知を切る
通知が鳴ってから見ないように我慢すると、それ自体が負担になる可能性があります。パソコンとスマホのメールの通知を切るか、まとめて届く設定にします。終了後も続けたい工夫として最も多かったのが、通知を切ったままにすることでした。
目安 設定は5分・一度だけ
急ぎの連絡の手段を、周りと決めておく
すぐ返信することが求められる職場では、効果が小さくなっていました。「本当に急ぐときは電話か声かけで」など、急ぎの連絡の方法をチームや取引先と決めておきます。メールの返信が数時間後になることも伝えておきます。
目安 チームで1回話す
続けるための目印をつくる
効果は2週間で薄れていました。参加者からは、毎週届く確認のメールが試みを続ける助けになったという声もありました。週に1回、守れた日を振り返る時間を予定表に入れておきます。
目安 週1回・5分
メール以外のアプリの通知が気になる人は通知をオフにした1日の実験を、返事を待つあいだ何度も確かめてしまう人は既読を待つ心の研究も参考にしてください。
05よくある質問
メールを1日3回しか見ないと、急ぎの連絡を見逃しませんか?
その心配はもっともです。オランダの実験でも、決めた回数を守れなかった理由で最も多かったのは、お客さんに関わる事情でした(72%)。急ぎの連絡は電話や別の手段で受けるなど、周りと決めておくことが前提になります。
通知を我慢して見ないようにするのでは、だめですか?
我慢そのものが負担になる可能性があります。英国の52人の記録では、通知が来たメールを後回しにした時ほど、その後のいやな気分が少し強く、まじめな性格の人でその傾向がはっきりしていました。研究者は、まじめな人ほど通知を切ったほうがよいかもしれないと書いています。
チャットも同じようにまとめたほうがいいですか?
オランダの実験では、メールに加えてチャットも1日3回にまとめた人たちがいましたが、疲れの減り方はメールだけの人たちと変わりませんでした。チャットまでまとめるかは、仕事の中身に合わせて決めてよさそうです。
メールが少ない人でも、まとめて見る意味はありますか?
オランダの実験では、1日に受け取るメールが25通未満の人では、疲れの減り方が小さくなっていました。研究者は、もともと届く数が少なければ、いつも通り見る場合との違いが小さいためだと考えています。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Wijngaards I, Pronk FR, Burger MJ (2022). For whom and under what circumstances does email message batching work? Internet Interventions. https://doi.org/10.1016/j.invent.2022.100494
- Russell E, Woods SA, Banks AP (2017). Examining conscientiousness as a key resource in resisting email interruptions: Implications for volatile resources and goal achievement. Journal of Occupational and Organizational Psychology. https://doi.org/10.1111/joop.12177
- Kern M, Ohly S, Ďuranová L, Friedrichs J (2024). Drowning in emails: investigating email classes and work stressors as antecedents of high email load and implications for well-being. Frontiers in Psychology. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2024.1439070


