筋トレや運動の「やる気が出る」投稿なら、見ても落ち込まない?中国の女子大学生414人の実験では、引き締まった体の写真でも、風景の写真を見た組より自分の体を大切に思う気持ちが下がっていた

筋トレやランニングの投稿は、「健康のため」「自分もがんばろう」と思えて、ダイエットの投稿より安心して見られる気がします。けれど、見終わったあとに鏡の前で、自分の体ばかり気になってしまうことはないでしょうか。研究の答えは、運動の「やる気が出る」投稿でも、見た直後に自分の体を前向きに受け止める気持ちは下がりやすい、というものでした。落ち込むのは、意志が弱いからではありません。
3行でわかる
- 中国の女子大学生414人の実験では、引き締まった体で運動する写真を10枚見た組は、風景の写真を見た組より、自分の体を大切に思う気持ちが低くなっていました。
- ドイツの女性131人の実験では、運動の投稿30件を見たあと、体への不満がどれだけ強まるかと関わっていたのは、ふだん自分より魅力的な人と比べやすいかどうかでした。
- 英国の274人の実験では、運動の短い動画を3本見たあと体への満足度が下がりました。満足度は、男性より女性のほうが低い結果でした。
01 結論から言うと運動のやる気が出る投稿なら、見ても落ち込まない?
落ち込まないとは言えません。運動を勧める投稿でも、引き締まった体が中心だと、見た直後に自分の体を前向きに受け止める気持ちが下がる実験結果がそろっています。
こうした投稿は、英語で「フィットスピレーション」と呼ばれます。「フィット(健康で引き締まった)」と「インスピレーション(刺激)」を合わせた言葉です。もともとは、やせることを目指す投稿より健康的な代わりになる、と考えられていました。
ところが、研究で使われた投稿の多くは、運動の様子よりも、やせて筋肉のついた体を見せるものでした。見る側は、知らないうちに自分の体とその体を比べます。運動を勧める言葉が添えられていても、比べる相手が「理想の体」であることは変わらない、というのが研究者の見方です。
SNSのきれいな写真全般との比べ方は、SNSのきれいな写真と比べて見た目が気になる記事にまとめています。この記事は、運動や筋トレの投稿に絞って見ていきます。
02 研究とデータでわかっていること運動の投稿を見ると、体の受け止め方はどう変わる?
3つの実験で、運動の投稿や動画を見た直後に、体を前向きに受け止める気持ちや満足度が下がっていました。不満の強まり方は、ふだん人と比べやすい人ほど大きい傾向でした。
Song ら / マラヤ大学など(2026年)[1]
中国の3つの大学の女子学生414人を、くじで3組に分けました。それぞれ、やせた体を見せる写真、引き締まった体で運動する写真、風景の写真を10枚ずつ、1枚30秒以上見てもらいました。見る前の点数をそろえて比べると、「今、自分の体を大切に思う気持ち」は風景の組が39.13点、運動の写真の組が36.99点、やせた体の写真の組が32.56点でした。体が「できること」をありがたく思う気持ちも、同じ順に低くなっていました。運動の写真は、やせた体の写真ほどではないものの、風景より低い結果でした。
対象: 中国の大学に通う18〜26歳の女性414人(写真は中国のSNSから選び、顔はぼかしてありました) / 限界: 見た直後の変化だけで、どれくらい続くかはわかりません。見る前の点数が組によって少し違っていたため、統計でそろえて比べています。
Ladwig ら / オスナブリュック大学(2025年)[2]
ドイツ語を話す女性131人に、運動を勧める言葉が添えられたInstagramの投稿30件を見てもらいました。体への不満の点数は、見る前の平均5.57から見たあと6.07へ上がっていました(1〜9点、高いほど不満)。見たあとの不満の強さを、見る前の不満の強さと合わせて説明できたのは、「自分より魅力的な人とふだん比べやすいか」だけでした。食事や体型の悩みの強さや、筋肉をつけたい気持ちは、関わっていませんでした。
対象: 18〜57歳の女性131人(平均28.4歳。摂食の悩みを自分で報告した人と、報告していない人の両方を含む) / 限界: 比べる組がない実験で、見る前と見たあとの差を見ています。比べやすさは、ふだんの傾向を質問紙で答えてもらったものです。
Limniou ら / リバプール大学(2025年)[3]
英国に住むTikTok利用者274人(女性169人・男性105人)が、ジムで運動しながら体を見せる短い動画を3本見ました。合計は約50秒です。見たあと、体への満足度は見る前より下がりました。一方で、その場の自尊感情(自分を価値ある人だと感じる気持ち)は変わりませんでした。女性のほうが、男性より満足度と自尊感情が低い結果でした。
対象: 英国に住む18〜62歳の274人(平均21.8歳) / 限界: 全員が同じ順番で見ていて、比べる組がありません。ふだんのように「いいね」やスクロールをしながら見たわけではありません。
3つの研究は国も見せ方も違いますが、「見た直後に体の受け止め方が悪くなる」向きはそろっていました。中国の研究が紹介している20件の研究のまとめでも、運動の投稿を見ることは、体への不満や落ち込んだ気分、見た目を比べる傾向と関わっていたとされています。
03 まだわかっていないこと運動の投稿の影響で、まだわからないことは?
見た直後の変化は確かめられていますが、毎日見続けたときの長い影響や、体の動きや記録に注目した投稿なら違うのかは、まだはっきりしていません。
- どの研究も、見た直後の数分間の変化を測っています。毎日見続けると、慣れて影響が小さくなるのか、積み重なるのかはわかっていません。
- 研究で使われたのは、体を見せる写真や動画でした。走り方の解説や記録の共有など、見た目を見せない運動の投稿でも同じことが起きるかは、確かめられていません。
- 対象は若い女性が中心です。男性や中高年、日本の人で同じ結果になるかは、研究が少ない状態です。
- 運動の投稿を見て、実際に運動を始める人が増えるのかどうかも、この3つの研究では測られていません。
04 今日からできるセルフケア運動の投稿で落ち込まないためには、どうすればいい?
見ている投稿が「体の見た目」中心か「体の動き」中心かを分けること、比べやすい日は見る時間を短くすること、自分の体ができたことを書き出すことの3つです。
保存している運動の投稿を「見た目」と「やり方」に分ける
研究で使われたのは、引き締まった体を見せる投稿でした。保存やフォローの中から、体を見せることが中心のものと、動き方や記録が中心のものを分け、運動の参考には後者を使います。
目安 10分・1回
比べやすい日は、5分で閉じる
ドイツの実験では、ふだん人と比べやすい人ほど、見たあとの不満が強まっていました。疲れている日や自信がない日は、タイマーを5分にしてから開きます。
目安 1回5分まで
運動したら、体ができたことを1行書く
中国の実験で下がっていたのは、体が「できること」をありがたく思う気持ちでした。「20分歩けた」「階段で息が上がらなかった」など、見た目ではなく体の働きを1行だけ書きます。運動と体の受け止め方の研究は、見た目を比べ続けて体に自信が持てない記事で紹介しています。
目安 1日1行・30秒
運動アプリのランキングで友達と比べてしまう場合は、運動アプリのランキングの記事も参考になります。
05よくある質問
健康のための運動の投稿なのに、見ると落ち込むのはなぜ?
投稿の多くが、運動の様子よりも、やせて筋肉のついた体を見せているためと考えられています。中国の実験では、運動の写真を見た組は、風景の写真を見た組より、自分の体を大切に思う気持ちが低くなっていました。見る人は、知らないうちにその体と自分を比べています。
男性でも、運動の投稿で落ち込む?
英国の実験には男性105人も参加し、男性向けの運動の動画を見ました。全体では体への満足度が下がりましたが、満足度と自尊感情は女性のほうが低い結果でした。中国とドイツの実験は女性だけが対象で、男性の研究はまだ少ない状態です。
運動の投稿のフォローは、全部やめたほうがいい?
フォローをやめた場合の効果は、この記事の研究では確かめられていません。研究でわかっているのは、引き締まった体を見せる投稿を見た直後に、体の受け止め方が悪くなりやすいことです。まずは見た目が中心の投稿だけを減らし、やり方や記録が中心の投稿を残すのが現実的です。
人と比べやすい性格は、変えられる?
比べやすさそのものを変える方法は、この記事の研究では調べていません。比べたことに気づいたときの考え方や、自分への声のかけ方は、SNSで見た目を比べて不安になるのを日頃から減らす記事で紹介しています。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Song S, Du J, Wei H, Ibrahim MS, Adnan HM (2026). Rethinking fitspiration in social media: Experimental insights from young Chinese women. PLoS One, 21(9), e0357611. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0357611
- Ladwig G, Schönhals K, Tanck JA, Quittkat HL, Vocks S (2025). Upward comparison predicts an increase in state body dissatisfaction after fitspiration exposure. Scientific Reports, 15, 42936. https://doi.org/10.1038/s41598-025-29830-5
- Limniou M, Duckett H, Mitchell E (2025). TikTok fitspiration and fitness ideal internalisation: gender differences in self-esteem and body satisfaction. Frontiers in Psychology, 16, 1578510. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2025.1578510


