集中力が落ちた気がする。ゲームで取り戻せる?63件の試験のまとめでは注意の成績が少し上がっていたが、効果は確かめられないとする分析もあった

画面の前にいる時間は長いのに、ひとつのことに集中できない。そんな日が続くと、「ゲームで頭を鍛えれば戻るのでは」と考える人もいます。研究の答えは「少し伸びた」という分析と「効果は確かめられない」という分析に分かれています。頭を鍛える道具としてより、楽しく気分を切り替える時間として使うのが、今の研究に合った付き合い方です。
3行でわかる
- 63件の試験をまとめた2023年の分析では、ゲームで練習した前後で注意や考える力の成績が少し上がっていた。
- ただし2018年の別のまとめでは、ゲームが考える力を高める因果関係の証拠は見つからず、結論はまだ分かれている。
- 10分のパズルゲームで元気さの感覚が上がった実験もある。鍛えるより「楽しんで切り替える」使い方が無理がない。
01 結論から言うと落ちた集中力は、ゲームで取り戻せる?
ゲームで集中力が取り戻せるかは、研究ではまだ結論が出ていません。成績が少し上がったという分析と、効果は確かめられないという分析の両方があります。
研究で調べられているのは、ゲームで練習したあとに、ゲームとは別の注意力のテストの成績が上がるかどうかです。練習したゲームそのものがうまくなるのは当然なので、別の課題にも力が広がるか(専門用語で「転移」)が問われてきました。
脳トレのアプリについても同じ問いがあり、脳トレで集中力を取り戻せるかの記事では、練習したゲームだけが上達していた大規模な実験を紹介しています。ゲームも、今のところ「頭を鍛える道具」として頼り切れるほどの証拠はありません。
02 研究とデータでわかっていることゲームの練習で、注意の成績は上がる?
63件の試験のまとめでは、ゲームで練習した前後で注意の成績が少し上がっていました。ただ、効果を大きく見せる偏りも見つかり、別のまとめでは効果が確かめられていません。
Smithら(2023) [1]
ゲームで練習した前後を比べると、考える力全体の成績が少し上がっていました(効果量0.25)。注意や知覚の課題(0.27)と、推論などの高度な課題(0.31)でも伸びが見られました。一方、記憶の課題と、気持ちや心の状態の指標では、はっきりした伸びは見られませんでした。
対象: ゲームで練習するランダム化比較試験63件・2,079人(病気や障害のある人の研究は除外) / 限界: 練習の前後の伸びを集めた分析で、よい結果ほど論文になりやすい偏り(出版バイアス)が見つかりました。著者らは補正したものの、効果が大きく見えている可能性があると述べています。比べる側として遊んだゲームでは、伸びがより小さかったと報告されています。
Salaら(2018) [2]
ゲームのうまさと考える力の関係、よく遊ぶ人と遊ばない人の差、ゲームで練習する試験の効果を、3つのメタ分析で調べました。どれも効果は小さいか、ほぼゼロでした。ゲームで遊ぶことが考える力を高めるという、因果関係の証拠は見つかりませんでした。
対象: ゲームと考える力に関する研究を3つの方法でまとめた分析 / 限界: 2018年に発表された分析で、上の2023年の分析とは、集めた研究や計算の方法が違います。
Collinsら(2019) [4]
15分の計算の作業のあと、10分間パズルゲームをした組では、元気が出た感覚が上がっていました。マインドフルネスのアプリを使った組と、手で回すおもちゃで過ごした組では、この感覚は下がっていました。ただ、「休めた」と感じる度合いには、3つの組で差がありませんでした。
対象: 英国の大学生45人(19〜36歳)の実験と、働く人20人の5日間の調査 / 限界: 人数が少なく、測ったのは本人の感覚で、注意力のテストの成績ではありません。
2つの大きなまとめの結論が分かれているのは、集めた研究や計算の方法が違うためです。2023年の分析は「練習の前後での伸び」を集め、出版バイアスを補正しても少し伸びが残ったと報告しています。今言えるのは「伸びるとしても小さく、確かとは言えない」ところまでです。
03 まだわかっていないことゲームと集中力で、わかっていないことは?
ゲームの練習が、仕事や勉強での集中のしやすさまで変えるかは、まだわかっていません。ストレスや疲れで集中力が落ちた人で確かめた研究も、ほとんどありません。
- テストの成績の伸びが、仕事や勉強での集中のしやすさにつながるか
- ストレスや疲れで集中力が落ちたと感じている人でも、同じ結果になるか(多くは健康な人の研究)
- どれくらいの時間や期間遊べばよいか(63件のまとめでは、練習時間の長さと伸びに関係は見られませんでした)
- どんな種類のゲームがよいか(「アクション」「パズル」といったジャンル分けでは、伸びの差を説明できませんでした)
04 今日からできるセルフケア集中力を戻したいとき、ゲームはどう使う?
ゲームは頭を鍛える道具として頼るより、作業の合間に楽しんで気分を切り替える時間として使うのが、今の研究に合っています。時間の長さより、楽しんでいるかが大切です。
大人の3万8,935人を6週間追った研究では、遊んだ時間の長さと幸福感の関係はほぼ見られず、1日1時間増やしても、本人が気づけるほどの変化にはならないと見積もられていました [3]。それより、楽しいから遊ぶ人で幸福感が高く、やらされている感じで遊ぶ人で低い傾向がありました。
作業の区切りに、短いゲームで切り替える
ひとつの作業が終わったら、パズルなど短く終わるゲームを1回だけ遊んでから次に移ります。英国の実験では、10分のパズルゲームのあとに元気が出た感覚が上がっていました。
目安 作業の区切りに10分以内
「楽しいか」で続けるかを決める
頭を鍛えるために義務のように遊ぶのはやめ、楽しいと感じるときだけ遊びます。遊び終わったあとに「楽しかった」「なんとなく続けていた」のどちらだったかを、ひと言メモします。
目安 遊んだあとに10秒
体を動かす休み方とも組み合わせる
ゲームだけに頼らず、ほかの休み方も1つ選んでおきます。1回の運動のあとに注意の働きが少しよくなっていた研究や、自然の中で過ごす研究もあります。
目安 1日1回・10〜20分
05よくある質問
ゲームをすると集中力は上がるの?
研究の結果は分かれています。63件の試験をまとめた2023年の分析では、ゲームで練習した前後で注意の成績が少し上がっていました。一方、2018年の別のまとめでは、ゲームが考える力を高めるという因果関係の証拠は見つかりませんでした。
スマホの短いパズルゲームでもいいの?
63件の試験のまとめでは、短い時間で遊ぶゲームと長く遊び込むゲームで、成績の伸びに意味のある差は見られませんでした。英国の大学生の実験では、10分のパズルゲームのあとに元気さの感覚が上がっていました。
ゲームをする時間が長いと、心に悪い?
大人の3万8,935人を6週間追った研究では、遊んだ時間と幸福感の関係はほぼ見られませんでした。それより、楽しいから遊ぶ人で幸福感が高く、やらされている感じで遊ぶ人で低い傾向がありました。やめたくてもやめられないと感じるときは、やめられない行動の記事も参考になります。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Smith, E. T., & Basak, C. (2023). A game-factors approach to cognitive benefits from video-game training: A meta-analysis. PLoS ONE, 18(8), e0285925. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0285925
- Sala, G., Tatlidil, K. S., & Gobet, F. (2018). Video game training does not enhance cognitive ability: A comprehensive meta-analytic investigation. Psychological Bulletin, 144(2), 111-139. https://doi.org/10.1037/bul0000139
- Vuorre, M., Johannes, N., Magnusson, K., & Przybylski, A. K. (2022). Time spent playing video games is unlikely to impact well-being. Royal Society Open Science, 9(7), 220411. https://doi.org/10.1098/rsos.220411
- Collins, E., Cox, A., Wilcock, C., & Sethu-Jones, G. (2019). Digital Games and Mindfulness Apps: Comparison of Effects on Post Work Recovery. JMIR Mental Health, 6(7), e12853. https://doi.org/10.2196/12853


