仕事のやる気が戻らないまま、毎日が過ぎていく。日本の働く人の12日間の実験では、感謝したことを書いた人で、仕事に向かう前向きさの点数が少し上がっていた

AIの導入や担当の変化が続くうちに、仕事に向かう気持ちがすり減って、なかなか戻らない。朝になると体が重く、ただこなすだけの日が続いている。そう感じている人は少なくありません。結論から言うと、日本の働く人の実験では、感謝したことを12日間書いた人で、仕事に向かう前向きさの点数が少し上がっていました。ただし効果は小さく、どのくらい続くかもまだわかっていません。
3行でわかる
- 日本の30〜40代の働く人67人の実験では、感謝したことを12日間書いた人で、仕事への前向きさ(ワーク・エンゲイジメント)の点数が6点中2.81から3.14に上がった。出来事を書いただけの人では変わらなかった。
- 働く人の試験9件をまとめた研究では、感謝を書き出す方法でストレスや落ち込みがよくなった報告がある一方、書く回数が4回以下の研究では、はっきりした変化はなかった。
- 1.5か月後まで効果が続いたかははっきりせず、やる気が落ちた人だけを集めた研究でもない。小さな手がかりの一つとして試すのが現実的。
01 結論から言うと感謝日記で、仕事のやる気は戻る?
少し戻る可能性があります。日本の働く人の実験では、感謝したことを12日間書いた人で、仕事への前向きさの点数が少し上がりました。ただ、効果の大きさは小さく、1.5か月後まで続いたかははっきりしていません。
研究で測られたのは「ワーク・エンゲイジメント」です。仕事に活力を感じ、熱意を持ち、没頭している状態を指します。燃え尽きの反対側にある状態と考えられています。
感謝を書くと、なぜ仕事への気持ちが動くのでしょうか。研究者は、同僚の助けや家族の支えなど、すでに手元にある「支え」に気づきやすくなるためだと考えています。仕事そのものを変えなくても、見え方が少し変わるということです。
仕事の中身を自分で組み直す方法は、AIで仕事が変わってやりがいを見失ったときの記事で整理しています。
02 研究とデータでわかっていること感謝を書いた人で、何がどのくらい変わった?
日本の実験では、12日間感謝を書いた人で、仕事への前向きさが6点中2.81から3.14に上がりました。働く人の試験のまとめでは、ストレスや落ち込みがよくなった報告がある一方、書く回数が少ないと変化は見られませんでした。
Yamagishiら(2025、立命館大学・情報通信研究機構ほか)[1]
日本の正社員を、くじで2つの組に分けました。片方は12日間、毎日スマホで「今日ありがたかったこと」を1つ以上(できれば3つほど)書きました。思いつかない日は、この1年のことでもよいとされました。もう片方は「今日あった出来事」を書きました。感謝を書いた組では、仕事への前向きさの点数が6点中2.81から3.14に上がり、「没頭」の点数も2.52から2.92に上がりました。出来事を書いた組では変わりませんでした。感謝の日記には「ありがとう」「同僚」「子ども」といった言葉が多く出ていました。
対象: 日本で働く30〜49歳の正社員。100人を集め、分析したのは最後まで回答した67人(感謝の組34人、出来事の組33人)。参加者は謝礼を受け取っていた / 限界: 差が確かめられたのは12日間の直後で、1.5か月後は、はじめとの差がはっきりしなかった。比べる組は気持ちに目を向けない書き方だったため、感謝に限った効果かはわからない。
Komaseら(2021、東京大学ほか)[2]
健康な働く人を対象に、感謝の取り組みを試したランダム化比較試験9件をまとめました。8件は感謝したことを書き出す方法でした。ストレスや落ち込みの点数がよくなったという報告があった一方、幸福感への効果はまちまちでした。感謝を書く回数が合計4回以下の研究では、どの指標にもはっきりした変化はありませんでした。
対象: 米国4件、香港3件、日本1件、オーストラリア1件の試験。医療職や教員が多い / 限界: 測り方がばらばらで、数字をまとめた分析(メタ分析)はしていない。効果が出なかった研究が発表されていない可能性がある。
Knightら(2017、英国シェフィールド大学)[3]
仕事への前向きさを高める職場の取り組みを調べた20件の研究をまとめました。取り組みは、本人の力を育てるもの、仕事の支えや裁量を増やすもの、リーダーシップの研修、健康づくりの4種類でした。全体の効果は0.29で、小さいながら前向きな結果でした。グループで行う取り組みでは効果が大きめ(0.51)でした。
対象: 職場で比べる組を置いて行われた20件の研究 / 限界: 研究ごとの結果のばらつきが大きく、取り組みがきちんと行われたかを確かめた研究は少なかった。
3つを並べると、感謝を書く習慣は、仕事への前向きさを少し押し上げる手がかりになるが、効果は小さく、回数を重ねることが前提だと見えてきます。自分を責めがちなときの振り返り方は、仕事の自信をなくしたまま戻らないときの記事も参考になります。
03 まだわかっていないこと感謝日記の効果は、どのくらい続く?
続く期間はわかっていません。日本の実験で差が確かめられたのは12日間の直後だけで、1.5か月後は、はじめとの差がはっきりしませんでした。やる気が大きく落ちた人を対象にした研究も見当たりません。
- 日本の実験は、やる気が落ちた人を選んで集めたわけではない。やる気が長く戻らない人で同じ結果になるかはわからない。
- 比べる組は出来事を書くだけだったため、前向きなことを書けば何でも効くのか、感謝に限るのかは区別できない。
- 参加者は30〜49歳の日本の正社員で、謝礼を受け取っていた。
- AIの導入で仕事が変わった人に絞った研究はない。仕事の成果まで変わるかも測られていない。
04 今日からできるセルフケア感謝日記は、どう書けば続けやすい?
寝る前に、今日ありがたかったことを1〜3個書きます。まず12日間を目安にし、思いつかない日は最近のことでかまいません。出来事の記録ではなく、ありがたかったことに絞るのがポイントです。
今日ありがたかったことを1〜3個書く
スマホのメモや手帳に、短い一文で書きます。日本の実験でも、毎日1つ以上、できれば3つほどを書く形でした。書く回数が4回以下の研究では変化が見られなかったので、回数を重ねます。
目安 1日3〜5分、まず12日間
思いつかない日は、この1年のことでよい
仕事以外のことでもかまいません。実験でも、最近1年のことや家族のことを書いてよいとされ、日記には同僚や子どもの話が多く出ていました。
目安 1つ書けたら、その日は十分
出来事の羅列ではなく「ありがたかった」に絞る
「会議があった」ではなく「会議で同僚が資料を直してくれて助かった」のように書きます。出来事だけを書いた組では、仕事への前向きさは変わらず、人生の目的の感覚が一時的に下がっていました。
目安 1つにつき1〜2文
職場にグループの取り組みがあれば使う
ひとりで書くだけでなく、研修や少人数の話し合いなど、職場のグループの取り組みがあれば参加してみます。20件のまとめでは、グループで行う取り組みの効果が大きめでした。
目安 月1回の機会があれば参加
05よくある質問
感謝日記は何日くらい続ければいい?
日本の実験では、12日間で仕事への前向きさの点数が上がっていました。働く人の試験のまとめでは、書く回数が合計4回以下の研究では、はっきりした変化はありませんでした。まず12日間を目安に、毎日少しずつ書くのが研究の条件に近いやり方です。
感謝することが何も思いつかない日はどうする?
最近1年のことを思い出して書いてもかまいません。日本の実験でも、思いつかない日はこの1年のことでよいとされていました。仕事に限らず、家族や友人、身の回りのことでも大丈夫です。
仕事のことだけを書いたほうが効果がある?
仕事のことに限らなくてよいと考えられます。日本の実験では、何に感謝してもよいという書き方で、仕事への前向きさが上がっていました。日記には同僚の話だけでなく、子どもや家族の話も多く出ていました。
感謝日記は、人と比べて落ち込むときにも効く?
比べて落ち込むときの研究は、感謝を書き出す習慣の記事で整理しています。そちらで紹介した研究のまとめでは、幸福感が少し高まっていました。AIを使うと仕事のやりがいが減るのかという研究は、AIと仕事のやりがいの記事にまとめています。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Yamagishi N, Nawa NE, Isomura S (2025). Enhanced work engagement in Japanese employees following a 12-day online gratitude journal intervention. BMC Psychology, 13, 1098. https://doi.org/10.1186/s40359-025-03494-2
- Komase Y, Watanabe K, Hori D, Nozawa K, Hidaka Y, Iida M, Imamura K, Kawakami N (2021). Effects of gratitude intervention on mental health and well-being among workers: A systematic review. Journal of Occupational Health, 63(1), e12290. https://doi.org/10.1002/1348-9585.12290
- Knight C, Patterson M, Dawson J (2017). Building work engagement: A systematic review and meta-analysis investigating the effectiveness of work engagement interventions. Journal of Organizational Behavior, 38(6), 792–812. https://doi.org/10.1002/job.2167


