比べて落ち込む

優秀な人ばかりの学校やクラスに入ったとたん、自分ができない人に思えるのはなぜ?33本・約128万人分の研究のまとめでは、同じくらいの成績でも周りの平均が高い集団にいる人ほど、自分の力を低く見積もりやすかった

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わかっている度 ★★★ 高研究3本・公的指針0件を整理
池に咲くハスの花
Photo: Daftation / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

がんばって入った学校やクラスで、周りが優秀に見えて、急に自分ができない人に思えてくる。前の環境では得意だったはずなのに、と落ち込む人は少なくありません。教育心理学では、この現象は「小さな池の大きな魚効果」として何十年も研究されてきました。同じくらいの成績でも、周りの平均が高い集団にいるほど、自分の力を低く見積もりやすいことがわかっています。

3行でわかる

  1. 33本の研究(のべ約128万人の児童・生徒・学生)をまとめた分析では、周りの平均の成績が高い集団にいる人ほど、自分の勉強の力を低く感じていました。
  2. この傾向は高校生でいちばん強く、地域ではアジアで強く、北米で弱く出ていました。
  3. 自分の力が落ちたというより、比べる相手の平均が上がったことで自己評価が下がる、と考えられています。

01 結論から言うと周りが優秀だと、なぜ自信をなくす?

人は自分の力を、成績だけでなく周りの人の平均と比べて判断するからです。同じ実力でも、平均が高い集団に入ると自分が「下のほう」に見え、自分の力を低く見積もりやすくなります。

研究者は、これを「小さな池の大きな魚効果」と呼んでいます。小さな池では大きな魚でいられても、大きな池に移ると同じ大きさの魚が小さく見える、というたとえです。学校の研究では、成績が同じくらいの生徒どうしで比べると、優秀な生徒が集まる学校にいる生徒のほうが、自分の勉強の力を低く感じていました。

つまり、新しい環境で自信がなくなるのは、あなたの力が急に落ちたからとは限りません。比べる相手が変わったことで、見え方が変わっている可能性があります。

02 研究とデータでわかっていることこの現象は、どれくらい確かで、誰に強く出る?

33本の研究のまとめで、周りの平均が高いほど自己評価が下がる関係が一貫して見られました。強さは年齢や地域で違い、高校生とアジアで強く出ていました。

約128万人まとめに含まれた児童・生徒・学生ののべ人数(33本の研究、2018年発表)
−0.28周りの平均の成績が自分の力の感じ方に与える影響の平均(マイナスは周りが高いほど自己評価が下がる向き)
−0.35と−0.20同じ影響の強さ(アジアと北米)
689人クラスで自分がどの位置にいると感じるかを調べたイタリアの高校3年生(平均18歳、2022年発表)

Fang ら / 華南師範大学(2018)[1]

33本の研究から得た56の結果をまとめると、クラスや学校の平均の成績が高いほど、そこにいる生徒が自分の勉強の力を低く感じる関係が見られ、影響の平均は−0.28でした。小学生(−0.21)より中学生(−0.28)、高校生(−0.32)で強く、大学生(−0.23)でも見られました。

地域ではアジアが−0.35でいちばん強く、ヨーロッパ−0.30、オセアニア−0.27、北米−0.20でした。研究者たちは、アジアでは成績が重んじられ、同級生との競争が強調されやすいことが関係しているのではないかと考えています。比べる相手がクラスの平均でも学校の平均でも、強さはほとんど変わりませんでした。

対象: 小学生から大学生まで、のべ1,276,838人を含む33本の研究 / 限界: 大学生の結果は2件だけです。ほとんどが学校の研究で、職場で同じことが起きるかは調べていません。

Hoferichter ら / グライフスヴァルト大学ほか(2018)[2]

ドイツの進学校の中学2年生779人(47クラス)を調べると、クラスの平均の成績が高いほど、自分の力の感じ方が低くなる関係が見られました。4つの見方のうち、関係がもっとも強かったのは「クラスのほかの人と比べて自分はできるか」という見方でした。

「前の自分と比べてどうか」という見方も、クラスの平均と関係していました。研究者たちは、この結果が、周りと比べることがこの現象の中心にあることを示していると考えています。

対象: ドイツ・ブランデンブルク州の進学校の8年生779人(平均13歳、2011年) / 限界: 1回の調査で、成績は統一テストではなく先生がつけた成績です。

Cecalupo ら / ローマ・ラ・サピエンツァ大学(2022)[3]

イタリアの高校3年生689人では、クラスの平均の成績が高いほど「自分はクラスの中で上のほう」と感じにくく、そう感じにくい人ほど「同級生よりよい将来がありそう」とも思いにくくなっていました。クラスでの位置の感じ方と将来の見通しの相関は0.67でした。

「人よりよくできたい」「人より劣りたくない」という目標を持つ生徒ほど、クラスで下のほうだと感じても、将来の見通しが下がりにくくなっていました。「自分の力を伸ばしたい」という目標では、そうした違いは見られませんでした。

対象: イタリア各地の9校の高校3年生689人 / 限界: 1回の調査で、自分と同級生の成績は本人の申告です。原因と結果の向きはわかりません。

03 まだわかっていないことこの現象について、まだ何がわかっていない?

研究のほとんどは学校の生徒が対象で、大人の職場で同じことが起きるかは、ほとんど調べられていません。どうすれば自己評価の下がり方を小さくできるかも、確かめた研究はまだ少ない状態です。

  • 大学生を対象にした研究は、まとめの中で2件だけでした。転職や異動で優秀な人の多い職場に移った大人を調べた研究は、ここでは見つかっていません。
  • まとめの論文の研究者たちは、もともと成績の高い人のほうが影響を受けにくいかどうかは、まだ確かめる必要があると書いています。
  • 「人よりよくできたい」という目標が支えになるという結果は、イタリアの1回の調査からのもので、試して確かめた研究ではありません。
  • SNSやAIの完璧な出来と比べる場面でも同じ仕組みが働くのかは、直接調べられていません。

04 今日からできるセルフケア周りが優秀で落ち込むとき、どう考える?

まず「比べる相手が変わっただけ」と仕組みを言葉にすることです。そのうえで、実際の記録を見返す、集団に入れたこと自体を書き出す、負けたくない気持ちを責めない、といった工夫ができます。

1

「比べる相手の平均が上がっただけ」と言葉にする

自信がしぼんだときは、研究で何十年も確かめられてきた、よくある反応だと思い出します。「力が落ちた」ではなく「周りの平均が変わった」と、頭の中か紙に書き直します。

目安 落ち込んだときに1分

2

感じ方でなく、実際の記録を見返す

この現象は、成績が同じでも自己評価だけが下がるというものです。点数、こなした量、できるようになったことなど、数字や事実で残っている記録を週に1回見返します(詳しくは前の自分と比べる習慣)。

目安 週に1回5分

3

その集団に入れたこと自体を書き出す

ドイツの研究の論文では、優秀な集団に属している誇りが自己評価を支える面もあると紹介されています。どんな努力をしてここに来たのかを3つ書き出します。

目安 1回5分

4

「負けたくない」気持ちを悪者にしない

イタリアの調査では、人よりよくできたいという目標を持つ生徒ほど、クラスで下のほうだと感じても将来の見通しが下がりにくくなっていました。比べてしまう自分を責めず、次の目標に使える気持ちとして扱います。

目安 気づいたときに毎回

「自分の実力じゃない気がする」という感覚についてはインポスター感情の研究、年収など似た立場の人と比べて落ち込む仕組みは同期や友達の年収を知って落ち込むのはなぜ?で整理しています。

05よくある質問

レベルの高い学校や職場を選ぶのは、やめたほうがいい?

研究からそうは言えません。ここで紹介した研究は自分の力をどう感じるかを調べたもので、どこを選ぶとよいかは調べていません。ドイツの研究の論文では、優秀な集団に属している誇りが自己評価を支える面もあると紹介されています。下がりやすい仕組みを知ったうえで選ぶのが現実的です。

周りより下だと感じるのは、本当に実力が低いから?

そうとは限りません。この現象は「同じくらいの成績の人どうしでも、周りの平均が高い集団にいる人ほど自分を低く見積もる」というものです。成績そのものより、比べる相手の平均が変わったことで、自己評価が下がっている可能性があります。

大人になって職場が変わったときにも起きる?

大人の職場を直接調べた研究は、今回のまとめにはありません。大学生を対象にした研究は2件だけでしたが、そこでも同じ向きの関係が見られました。この論文が紹介している先行研究では、高校卒業から2年後や4年後にもこの現象が見られていました。

つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。

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出典

  1. Fang J, Huang X, Zhang M, Huang F, Li Z, Yuan Q (2018). The Big-Fish-Little-Pond Effect on Academic Self-Concept: A Meta-Analysis. Frontiers in Psychology, 9, 1569. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2018.01569
  2. Hoferichter F, Lätsch A, Lazarides R, Raufelder D (2018). The Big-Fish-Little-Pond Effect on the Four Facets of Academic Self-Concept. Frontiers in Psychology, 9, 1247. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2018.01247
  3. Cecalupo A, Marini M, Scarci F, Livi S (2022). Individual Strivings in Social Comparison Processes: Achievement Motivation Goals in the Big-Fish-Little-Pond Effect. Frontiers in Psychology, 13, 677997. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2022.677997