考える力・集中

寝不足だと頭が回らないのはなぜ?1万人超のテストでは、ふだんの睡眠が7〜8時間より短い人ほど推論と言葉の力の成績が低く、短い記憶の力では差がなかった

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わかっている度 ★★☆ 中研究3本・公的指針0件を整理
本棚に置かれた古い目覚まし時計
Photo: Nenad Stojkovic / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

夜遅くまで作業した次の日、メールの文章がうまく組み立てられない。会議で話を追えても、自分の考えをまとめる段になると頭が止まる。AIに下書きを頼めば何とかなる日もありますが、「最近、考える力そのものが落ちたのでは」と不安になる人もいるでしょう。寝不足の日に頭が回らないのは、何が起きているのでしょうか。

3行でわかる

  1. 1万人超がオンラインで受けたテストでは、ふだんの睡眠が7〜8時間から短くても長くても、推論(筋道を立てて考える力)と言葉の力の成績が低かった。
  2. 一方で、短い時間だけ覚えておく力は、睡眠時間と関係がなかった。寝不足は頭の働きをまんべんなく下げるのではなく、考える作業に出やすい。
  3. オーストラリアの実験では、3時間睡眠を3晩続けると、作業をこなす力は保たれていたのに、頭を使う大変な作業を選ぶ意欲だけが下がっていた。

01 結論から言うと寝不足で頭が回らないのは、気のせい?

気のせいではない可能性が高いです。大規模な調査と実験の両方で、睡眠が足りないと推論や言葉の力が落ち、頭を使う作業への意欲も下がることが示されています。ただし落ちやすい力と、ほとんど変わらない力があります。

寝不足の日の「頭が回らない」には、いくつかの違う中身が混ざっています。ぼんやりして反応が遅れること、筋道を立てて考えにくくなること、そして「考えるのがおっくう」で大変な作業を避けたくなることです。

研究からは、このうち筋道を立てて考える力や、言葉を扱う力が睡眠時間と関係しやすいことがわかってきました。また、能力は残っていても、頭を使う作業を引き受ける意欲が先に下がる、という実験もあります。

02 研究とデータでわかっていること寝不足だと、どの力がどれくらい落ちる?

1万人超の調査では、ふだん4時間しか眠らない人の全体の成績は、最もよい睡眠時間の人より、年齢が約8歳上の人に相当するほど低めでした。影響は推論と言葉の力に出て、短い記憶の力には出ていませんでした。

約7.4時間1万886人のテストで、全体の成績が最もよかった、ふだんの睡眠時間(2018年発表)
約8歳分ふだん4時間睡眠の人の成績の低さを、年齢の差に置き換えた大きさ
48.9%同じ調査で、ふだんの睡眠が6.3時間未満と答えた人の割合

Wildら / カナダ・ウェスタン大学(2018年)[1]

世界からオンラインで参加した1万886人(平均41.7歳)が、記憶・推論・言葉などを測る12種類のテストを受け、この1か月のふだんの睡眠時間と、前の晩の睡眠時間を答えました。ふだんの睡眠が7〜8時間から離れるほど、推論と言葉の力、全体の成績が低くなっていました。

成績が最もよかったのは、全体で約7.4時間(推論で約7.2時間、言葉の力で約7.4時間)でした。全体の成績では、睡眠が約6.3時間より短くなると、最もよい人との差がはっきりしていました。ふだん4時間しか眠らない人の全体の成績は、最もよい人より年齢が約8歳上の人に相当するほど低めでした。

一方、短い時間だけ覚えておく力は、睡眠時間との関係が見られませんでした。睡眠と成績の関係は、若い人と年配の人で変わりませんでした。また、テスト前の晩にふだんより約1.2時間長く眠った人で、全体の成績が最もよい傾向がありました。

対象: SNSなどで集まった18歳以上の1万886人。95%が主に英語を話す人 / 限界: 1回だけ調べた調査の研究で、睡眠が原因だとは言い切れない。睡眠時間は自己申告で、短く眠る人ほど多めに答えやすいとされる。

Jurgelisら / オーストラリア・モナシュ大学(2022年)[2]

健康な大人24人(平均26.8歳)が、実験室に2回泊まりました。1回は毎晩9時間眠れる条件、もう1回は1晩目のあと3晩続けて3時間しか眠れない条件です。そのあと、頭を使う課題と、握力を使う課題で、「大変だが報酬が多いほう」を選ぶかどうかを調べました。

寝不足の条件では、頭を使う課題で、大変なほうを選ぶ割合が下がっていました。握力を使う課題では、選び方は変わりませんでした。どちらの条件でも、参加者は課題をすべてこなせていました。研究者は、できなくなったからではなく、頭を使う大変さを避けたくなる意欲の低下だと考えています。

対象: オーストラリアの健康な大人24人(女性11人、21〜45歳) / 限界: 人数が少なく、3時間睡眠はふだんの寝不足より極端な条件。

Rabatら / フランス軍生物医学研究所ほか(2016年)[3]

健康な男性12人(20〜37歳)が実験室で過ごし、ベッドにいる時間を8時間から4時間に減らした生活を7晩続けました。眠気の自己評価は、9段階で平均3.22から4.73へ上がりました。

それでも、合図への反応が大きく遅れる回数と、押してはいけない場面で押してしまう誤りは増えていました。8時間の睡眠に戻したあと、反応の遅れは3晩目で元の水準に戻りましたが、押してはいけない場面での誤りは、3晩目のあとも多いままでした。

対象: フランスの健康な男性12人 / 限界: 人数が少なく、女性や年配の人は含まれていない。

03 まだわかっていないことふだんの寝不足でも同じことが起きる?

はっきりとはわかっていません。大規模な調査は1回きりの記録で因果までは言えず、実験は少人数で極端な睡眠不足の条件でした。ふだんの1〜2時間の不足がどれだけ響くかは、まだ研究が必要です。

  • 1万人超の調査は自己申告の睡眠時間で、睡眠が短いことと、ストレスや体調など別の理由が重なっている可能性がある。
  • 意欲が下がった実験は24人、回復を調べた実験は男性12人で、結果がどこまで一般化できるかはわからない。
  • 必要な睡眠時間には個人差があり、誰にとっても7〜8時間が最適とまでは言えない。
  • AIに作業を頼る日が増えることと、寝不足のときの考える力の関係は、まだ調べられていない。

04 今日からできるセルフケア寝不足の日に、頭を守るには?

寝不足の日は、筋道を立てて考える作業や大事な判断を後ろにずらし、確認を一手間増やします。「おっくう」は能力の低下ではなく意欲の低下かもしれないと知っておき、夜は睡眠時間を少し取り戻します。

1

考える仕事と、こなす仕事を入れ替える

寝不足の日は、文章の構成や企画など筋道を立てる作業を翌日に回し、整理や返信など決まった手順の作業を先にします。影響が出やすいのは推論と言葉の力でした。

目安 朝に5分、今日の予定を並べ替える

2

「押してはいけない」場面で一呼吸おく

寝不足では、押してはいけない場面で押してしまう誤りが増え、回復の睡眠のあとも続いていました。送信や提出の前に、宛先と添付を声に出して確かめる時間を取ります。

目安 送信前に10秒

3

おっくうさを、自分の力不足と結びつけない

寝不足のときは、できるのに大変な作業を選びたくなくなることが実験で示されています。「今日は意欲が下がる日」と名前をつけ、大きな作業は最初の5分だけ手をつけます。

目安 最初の5分だけ

4

今夜は、ふだんより早めに寝床に入る

調査では、前の晩にふだんより1時間余り長く眠った人で成績がよい傾向がありました。今夜は寝る準備を30分〜1時間早めに始めます。

目安 30分〜1時間早く

寝る時間を早めて睡眠を取り戻す方法は寝床に入る時間を早めた4週間の実験で、寝る時間のばらつきと集中の関係は寝る時間が毎日バラバラな人の研究で詳しく紹介しています。午後の眠気には短い昼寝の研究も参考になります。

05よくある質問

寝不足のとき、どんな作業から先に影響が出やすい?

1万人超のテストでは、影響が見られたのは推論(筋道を立てて考える力)と言葉の力で、短い時間だけ覚えておく力では差がありませんでした。フランスの実験では、ぼんやりして反応が遅れる回数と、押してはいけない場面で押してしまう誤りが増えていました。

寝不足のあと、何日眠れば頭は元どおり働く?

眠気が少しおさまったように感じても、成績まで戻っているとは限りません。フランスの12人の実験では、ベッドにいる時間を4時間にした生活を7晩続けたあと、8時間の睡眠に戻しても、押してはいけない場面で押す誤りは3晩目のあとも多いままでした。

1晩よく眠れば、次の日は頭が働く?

1万人超の調査では、テスト前の夜にふだんより約1.2時間長く眠った人で、全体の成績が最もよい傾向がありました。ただし調査の研究で、1晩の睡眠で成績が上がることを実験で確かめたものではありません。

何時間眠れば十分?

1万人超の調査では、成績が最もよかったのは、ふだんの睡眠が約7.4時間の人でした(推論は約7.2時間、言葉の力は約7.4時間)。8時間を大きく超えて眠る人でも成績は低めでした。ただし必要な睡眠は人によって違い、自己申告の睡眠時間をもとにした結果です。

つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。

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出典

  1. Wild CJ, Nichols ES, Battista ME, Stojanoski B, Owen AM (2018). Dissociable effects of self-reported daily sleep duration on high-level cognitive abilities. Sleep. https://doi.org/10.1093/sleep/zsy182
  2. Jurgelis M, Boardman JM, Coxon JP, Drummond SPA, Chong TTJ (2022). Sleep Restriction Reduces Cognitive but Not Physical Motivation. Nature and Science of Sleep. https://doi.org/10.2147/NSS.S368335
  3. Rabat A, Gomez-Merino D, Roca-Paixao L, et al. (2016). Differential Kinetics in Alteration and Recovery of Cognitive Processes from a Chronic Sleep Restriction in Young Healthy Men. Frontiers in Behavioral Neuroscience. https://doi.org/10.3389/fnbeh.2016.00095