職場のAIやデジタル化で、心がすり減らないか心配。スペインの働く人10万人の調査では、体を動かす習慣と食事の習慣がある人ほど、テクノストレスが強い人が少なかったが、原因かどうかはまだわからない

職場にAIが入り、使う道具や仕事の進め方が次々に変わる。慣れたころにまた新しい仕組みが来る。そんな毎日で、心がじわじわすり減らないか心配になる人は少なくありません。研究では、技術にまつわる負担が心の健康と関わることがわかってきました。生活習慣との関係も調べられ始めていますが、まだ「関連があった」という段階です。
3行でわかる
- 96件の研究のまとめでは、AIなどの技術で仕事を失う不安が強い人ほど、仕事のストレスが強く、心の健康が低めでした。
- スペインの働く人10万4,175人の調査では、体を動かす習慣と、野菜や魚の多い食事の習慣がある人ほど、テクノストレスが強い人の割合が低めでした。
- ただし1回だけの調査で、習慣がストレスを減らしたのか、ストレスが強いと習慣を続けにくいのかは区別できません。
01 結論から言うと生活習慣で、技術のストレスに備えられる?
備えになる可能性はありますが、まだ証拠は弱い段階です。運動や食事の習慣がある人ほどテクノストレスが少なかったという調査はあるものの、習慣を変えたら減るかは試されていません。
テクノストレスとは、パソコンやスマホ、AIなどの技術にまつわる仕事の求めが、自分の力や余裕を超えたときに感じるストレスです。仕事量が増える、休みの時間まで仕事が入り込む、使い方が複雑、仕事を失う不安、変化が速すぎる、といった面があるとされています。
運動が不安や落ち込みの症状を軽くすることは、世界保健機関(WHO)の指針でも認められています。技術のストレスに限った研究はまだ少ないため、「体を動かすことは心にとって損のない備え」と考えておくのが、今わかっている範囲に近い見方です。
02 研究とデータでわかっていることどんな習慣の人で、テクノストレスが少なかった?
スペインの調査では、3つの習慣のうち2つ以上がある人で、テクノストレスが強い人の割合が大きく下がっていました。特に関連が強かったのは、体を動かす習慣でした。
González Rivas ら / スペインのバレアレス諸島の大学・医療機関ほか(2026)[1]
「体を動かす習慣」「地中海式の食事(野菜・果物・豆・魚・オリーブ油など)をよく守っている」「たばこを吸わない」を1つ1点として数えました。テクノストレスが強い・とても強い人は、0点の人で50.8%、1点の人で50.7%、2点の人で7.5%、3点の人で7.2%でした。
1点の人は0点の人と差がなく、2点以上で急に少なくなる形でした。習慣を1つずつ見ると、体を動かす習慣と食事の習慣はテクノストレスの少なさと関連していましたが、たばこを吸わないことは、ほかの2つを考えに入れると関連していませんでした。性別、年齢、学歴、職業の階層を考えに入れたうえでの結果です。
対象: スペインの10地域で職場の健康診断を受けた働く人10万4,175人 / 限界: 1回だけの調査で、習慣も自己申告です。テクノストレスが強い人ほど運動や食事に気を配る余裕がない、という逆向きの可能性があり、「健康的な習慣がテクノストレスを減らす証拠と解釈すべきではない」と著者たち自身が書いています。
Liang・Wong(2026)[2]
AIやロボットなどの技術で仕事を失う不安について、2000年〜2025年6月に発表された96件の研究(計4万3,104人)をまとめました。不安が強い人ほど、仕事のストレスや緊張が強く、燃え尽きや不安などを含む心の健康が低めでした。
測定の誤差を補正した相関は、ストレスや緊張とで0.41(15件・7,502人)、長い目で見た心の健康とでマイナス0.33(31件・1万1,857人)でした。一方で、研究によって結果の幅が大きく、影響は一様ではないと著者たちは書いています。
対象: 世界の働く人を対象にした96件の研究 / 限界: もとの研究の多くは関連を調べたもので、不安が心の不調を起こしたとまでは言えません。
Bull ら / 世界保健機関(WHO)の指針(2020)[3]
大人は1週間に、中くらいの強さの運動を150〜300分、または強めの運動を75〜150分行うことがすすめられています。少しでも体を動かすことは、まったく動かないよりよいとされています。
指針をまとめる過程では、運動が不安や落ち込みの症状を減らすことに、中程度から高い確かさの証拠があったとされています。
対象: 世界の大人を対象にした研究の整理 / 限界: 技術にまつわるストレスに限った指針ではありません。
03 まだわかっていないこと習慣を変えたら、技術のストレスは減る?
まだわかっていません。今ある研究は1回だけの調査で、運動や食事を変えた人のテクノストレスが下がるかを試した実験は見当たりません。
- 習慣がストレスを減らすのか、ストレスが強いと習慣が崩れるのか、向きが区別できていません。
- 習慣が1つの人と0の人で差がなく、2つで急に下がる形が、ほかの国や集団でも見られるかは確かめられていません。
- スペインの食事の習慣は地中海式で、日本の食事に当てはめたときに同じかはわかりません。
- AIを使う仕事に限った負担と、生活習慣の関係を調べた研究はまだ少ないままです。
04 今日からできるセルフケア忙しくても続けられる備えは?
まずは今の運動量を数え、少しずつ足すことです。テクノストレスへの効果は未確認でも、運動は不安や落ち込みを軽くすることが確かめられており、損のない備えになります。
1週間の「体を動かした分」を数える
早歩きや自転車など、少し息がはずむくらいの運動をした時間を1週間メモします。WHOの目安の週150分に届いていなくても、少し動くことはまったく動かないよりよいとされています。
目安 1日1回・30秒のメモ
10分の早歩きを1日の予定に入れる
昼休みや帰り道に、10分だけ早歩きをする時間を先に決めておきます。忙しい時期ほど運動は後回しになりやすいため、予定として確保しておくのがこつです。
目安 1日10分・週5日で週50分
1日1品、野菜か豆か魚のおかずを足す
スペインの調査で関連していたのは、野菜・果物・豆・魚などの多い食事でした。献立を大きく変えず、いつもの食事に1品足すところから始めます。
目安 1日1品
AIについていけない焦りとの付き合い方はAIについていけない焦りがつらい、仕事の外の時間を確保する研究はAIで仕事が速くなっても、働きすぎがやめられないで整理しています。
05よくある質問
テクノストレスとは何ですか?
パソコンやスマホ、AIなどの技術にまつわる仕事の求めが、自分の力や余裕を超えたときに感じるストレスです。仕事量が増える、休みの時間まで仕事が入り込む、使い方が複雑、仕事を失う不安、変化が速すぎる、といった面があるとされています。
運動をすれば、テクノストレスは減りますか?
まだわかっていません。スペインの調査では運動の習慣がある人ほどテクノストレスが強い人が少なめでしたが、1回だけの調査です。ストレスが強い人ほど運動する余裕がない、という逆向きの可能性もあると研究者自身が書いています。
たばこをやめると、テクノストレスは軽くなりますか?
この調査では、運動と食事の習慣を一緒に考えに入れると、たばこを吸わないことはテクノストレスの低さと関連していませんでした。たばこと技術のストレスの関係は、この研究からははっきり言えません。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
無料ツール
セルフチェックで「今日やること」をまとめる
当てはまる悩みを選ぶだけ。診断はせず、記事の対策を一覧にします。
研究早見表でほかの悩み332件も見る
出典
- González Rivas, M., López-González, Á. A., González Carrasco, D., Busquets-Cortés, C., Rodas Cañellas, L., & Ramírez-Manent, J. I. (2026). Healthy Lifestyle Behaviors and Technostress: A Combined Lifestyle Score Analysis in 104,175 Spanish Workers. Nutrients, 18(17), 2754. https://doi.org/10.3390/nu18172754
- Liang, J., & Wong, C. H. (2026). Navigating the Digital Storm: A Systematic Review and Meta-Analysis of Technology-Induced Job Insecurity, Its Outcomes and Moderators. Behavioral Sciences, 16(9), 1474. https://doi.org/10.3390/bs16091474
- Bull, F. C., Al-Ansari, S. S., Biddle, S., et al. (2020). World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour. British Journal of Sports Medicine, 54(24), 1451–1462. https://doi.org/10.1136/bjsports-2020-102955


