AIで仕事が速くなっても、働きすぎがやめられない。米国の働く人367人の調査では、運動や休暇など仕事以外の時間が多い人ほど、働きすぎとストレスの結びつきが弱かった

AIで作業が速くなったのに、空いた時間にまた仕事を入れてしまう。休みの日も、気づけば仕事のことを考えている。働きすぎで心と体がすり減る前に、ふだんからできる備えはあるのでしょうか。働きすぎ(ワーカホリック)と余暇の時間を調べた米国の調査を中心に、研究のまとめと日本の調査から整理します。
3行でわかる
- 米国の働く人367人の調査では、運動・マインドフルネス・休暇の時間が多い人ほど、働きすぎとストレスの結びつきが弱めでした。
- 働きすぎに当てはまる人は、23か国・53件の研究のまとめで平均15.2%。日本の9,716人の調査では、白か黒かで考えるくせが強い人ほど、競争の強い職場と働きすぎの結びつきが強めでした。
- 仕事以外の予定を先に入れる、まとまった休みを年に1回は取る、「〜しなければ」という考えに気づく。どれも1回だけの調査からの手がかりで、効果を確かめた実験ではありません。
01 結論から言うと働きすぎのストレスは、余暇で和らぐ?
米国の働く人367人の調査では、仕事以外の時間が多い人ほど、働きすぎとストレスの結びつきが弱い関係が見られました。ただし1回だけの調査で、余暇を増やせばストレスが減ると確かめたものではありません。わかっている度は低めです。
研究でいう「働きすぎ(ワーカホリズム)」は、長く働くことだけではありません。仕事から離れられず、休んでいても仕事が頭から離れない状態を指します。米国の研究で使われた質問には「仕事のことが気になって、家でくつろげない」があります。
仕事が好きで熱中していることとは区別されます。「やらなければ」という気持ちに押されて働き続けるのが、働きすぎの特徴です。在宅勤務で仕事を切り上げにくい場合は 在宅勤務で夜まで仕事を終えられないときの記事 も参考になります。
02 研究とデータでわかっていること働きすぎと余暇の関係は、どう調べられた?
米国の調査では、余暇が少ない人ほど働きすぎとストレスの結びつきが強く、多い人ほど弱めでした。53件の研究のまとめでは、働きすぎに当てはまる人は平均15.2%でした。日本の調査では、考え方のくせとの関係が見られました。
Azizら(2023年) [1]
働きすぎの点数が高い人ほど、仕事のストレスも強い関係がありました(相関0.42)。その結びつきの強さは、余暇の時間で違いました。余暇が少ない人(下から16%の位置)では0.51、真ん中の人で0.41、多い人(上から16%の位置)では0.31と、余暇が多いほど弱くなっていました。余暇は、運動・家事や庭仕事などの体を動かす時間、瞑想やヨガなどのマインドフルネスの時間、休暇中に楽しんだ時間を合わせたものです。
対象: 米国のネットの調査サイトで集めた、週40時間以上働く367人(女性が多く、平均約40歳) / 限界: 1回だけの調査で、答えは自己申告です。余暇そのものとストレスの関係は、統計的にはっきりしませんでした。
Azizら(2023年) [1]
同じ調査で、80.4%の人が過去1年に4日以上の休暇を1回以上取っていて、19.6%は取っていませんでした。3種類の余暇のうち、働きすぎの点数と単独で関連していたのは休暇中の余暇だけで、休暇中に楽しむ時間が長い人ほど働きすぎの点数が低めでした(相関−0.20)。瞑想や休暇を選んだ理由で最も多かったのは「心の健康のため」でした。
対象: 上と同じ367人 / 限界: 休暇を取れる人は、もともと仕事に余裕があるのかもしれません。どちらが先かはわかりません。
Andersenら(2023年) [2]
働きすぎに当てはまる人の割合を調べた53件の研究を集めたメタ分析です。平均は15.2%で、発表されにくい研究の影響を補正すると14.1%でした。国全体を代表するように集めた調査ほど、割合は低めに出ていました。
対象: 23か国、合計7万1,625人 / 限界: 働きすぎの測り方や「当てはまる」の線引きが研究ごとに違い、割合の差の多くは説明できていません。
Akutsuら(2022年) [3]
日本の働く人9,716人の調査です。「結果が出ないと肩身がせまい」と感じる競争の強い職場ほど働きすぎの点数が高く、働きすぎを通じて体の不調の感じ方とも関連していました。白か黒かで考える、「絶対」「〜すべき」と言い切る、1つの失敗を全部に広げる、といった考え方のくせが強い人ほど、競争の強い職場と働きすぎの結びつきが強めでした。
対象: 2019年11月にネットで調べた18〜89歳の働く人(平均46歳、性別・年齢などを国の統計に合わせて募集) / 限界: 1回だけの調査で、原因と結果は区別できません。
03 まだわかっていないこと余暇を増やせば、働きすぎは防げる?
まだわかっていません。紹介した研究はどれも1回だけの調査で、余暇を増やしてもらい、働きすぎやストレスが減るかを確かめた実験は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。
- 余暇が多い人のストレスの結びつきが弱かったのは、余暇のおかげなのか、もともと仕事に余裕がある人だったからなのか、区別できていません。
- 米国の調査は3種類の余暇を合わせて分析しています。運動・瞑想・休暇のどれが一番よいかは、この研究からは決められません。
- AIの導入で仕事のペースが変わったことと、働きすぎの関係を直接調べた研究は、今回の範囲では見つかりませんでした。
04 今日からできるセルフケア働きすぎを日頃から防ぐには?
仕事以外の予定を先にカレンダーに入れ、年に1回はまとまった休みを計画します。「〜しなければ」と思ったら、本当にそうかを一度書き出します。どれもお金をかけずにでき、研究から考えた工夫です。
仕事以外の予定を、先にカレンダーに入れる
散歩や家事、ストレッチ、静かに座る時間など、体を動かすか気持ちを落ち着ける時間を、会議と同じように予定として先に入れます。米国の調査では、こうした時間が多い人ほど、働きすぎとストレスの結びつきが弱めでした。
目安 1日20〜30分・週に5日
4日以上の休みを、年に1回は先に決める
連休や有給休暇を組み合わせて、仕事から離れる日を先に押さえます。米国の調査では、休暇中に楽しむ時間が長い人ほど、働きすぎの点数が低めでした。休み明けに仕事の考えごとがぶり返すのが心配なら、連休明けの考え込みを防ぐ記事 も参考になります。
目安 年1回・4日以上(計画は10分)
「〜しなければ」と思ったら、紙に書いて見直す
「全部今日中にやらなければ」「1つ失敗したら終わり」と浮かんだら、その文を書き出し、「本当に全部?」「1つだけなら?」と書き直します。日本の調査では、白か黒かで考えるくせが強い人ほど、競争の強い職場と働きすぎの結びつきが強めでした。
目安 浮かんだときに1〜3分
昼休みも画面の前で過ごしがちなら 昼休みの過ごし方の記事、疲れて趣味を楽しむ気力がないときは 趣味と気分の回復の記事 も参考になります。
05よくある質問
働きすぎ(ワーカホリック)はどのくらいの人に見られる?
23か国・7万1,625人分、53件の研究のまとめでは、働きすぎに当てはまる人の割合は平均15.2%でした。発表されにくい研究の影響を補正すると14.1%です。ただし、国全体を代表するように集めた調査ほど、割合は低めに出ていました。
仕事以外の時間を増やせば、働きすぎは治る?
そうとは言えません。米国の367人の調査で見られたのは、余暇が多い人ほど、働きすぎとストレスの結びつきが弱いという関係でした。働きすぎの度合いそのものが減るかは、確かめられていません。1回だけの調査なので、原因と結果も区別できません。
運動と瞑想と休暇、どれがいい?
この研究からは決められません。3つを合わせた余暇の時間で分析しているためです。働きすぎの点数と単独で関連していたのは、休暇中の余暇だけでした(相関−0.20)。ストレスとは、運動の時間と休暇中の余暇がわずかに関連していました。
「〜しなければ」と考えるくせは関係ある?
日本の働く人9,716人の調査では、白か黒かで考える、「絶対」「〜すべき」と言い切る、1つの失敗を全部に広げる、といった考え方のくせが強い人ほど、競争の強い職場と働きすぎの結びつきが強めでした。1回だけの調査で、くせを変えたら働きすぎが減るかは確かめられていません。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Aziz S, Meier B, Wuensch K, Dolbier C (2023). Take a break! Leisure participation moderates the workaholism–work stress relationship. Career Development Quarterly, 71(4), 315–329. https://doi.org/10.1002/cdq.12336
- Andersen FB, Djugum MET, Sjåstad VS, Pallesen S (2023). The prevalence of workaholism: a systematic review and meta-analysis. Frontiers in Psychology, 14, 1252373. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2023.1252373
- Akutsu S, Katsumura F, Yamamoto S (2022). The Antecedents and Consequences of Workaholism: Findings From the Modern Japanese Labor Market. Frontiers in Psychology, 13, 812821. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2022.812821


