仕事で生成AIを使うようになってから、なぜか気持ちが重い。中国の会社員424人の調査では、AIをよく使う人ほど職場で孤独を感じやすく、その孤独が心のつらさと強く結びついていた

文章の下書きも、資料のまとめも、生成AIに頼めばすぐ終わる。仕事は前より速く進むのに、なぜか気持ちが重く、ひとりで働いているような感じがする。そんな違和感を抱えている人は少なくありません。中国の会社員424人の調査では、AIをよく使う人ほど職場での孤独と、仕事を失う不安を感じやすく、それが心のつらさとつながっていました。
3行でわかる
- 中国の会社員424人の調査では、仕事で生成AIをよく使う人ほど、職場での孤独と、仕事を失うかもしれない不安の両方が強い関連があった。
- 心のつらさとのつながりは、仕事を失う不安を通る道すじより、職場の孤独を通る道すじのほうが4倍ほど大きかった。
- 一度きりの調査なので、AIを使うから孤独になるのか、孤独な人がAIをよく使うのかは区別できない。働く場での孤独の研究233件をまとめたレビューも、向きはまだわからないとしている。
01 結論から言うと仕事でAIを使うと、気持ちが重くなるのはなぜ?
研究では、職場での孤独が大きな手がかりとして挙がっています。中国の会社員424人の調査では、生成AIをよく使う人ほど職場で孤独を感じやすく、その孤独が心のつらさと強く結びついていました。
AIに聞けば済むことが増えると、同僚に声をかけたり、相談したりする場面は減っていきます。働く場での孤独の研究をまとめたレビューでも、人とのやりとりを伴わない技術との関わりは、人とつながりたい気持ちを満たしにくい、と考えられています。
もう1つの道すじは、仕事を失う不安です。AIを使うほど「この仕事は自分でなくてもいいのでは」と感じやすくなり、それも心のつらさと関わっていました。ただ、つながりの大きさは孤独のほうが大きいという結果でした。
どちらも、AIそのものが悪いという話ではありません。AIを使う働き方の中で、人とのやりとりや自分の役割の感覚が薄れていないかを見直す、という手がかりになります。
02 研究とデータでわかっていることAIをよく使う人は、職場で孤独になりやすい?
中国の会社員424人の調査では、生成AIをよく使う人ほど職場の孤独と仕事を失う不安が強い関連がありました。心のつらさとのつながりは、孤独を通る道すじで0.087、不安を通る道すじで0.020でした。
Liuら / 中国・天津商業大学(2026年)[1]
中国・雲南省昆明市の20の会社(IT、製造、教育・研究、公共サービス、行政など)で働く424人に、オンラインの質問票で答えてもらいました。仕事で生成AIを使う頻度が高い人ほど、仕事を失う不安(関連の強さ0.284)と、職場での孤独(0.322)が強い関連がありました。
職場での孤独は、心のつらさと強く結びついていました(0.461)。仕事を失う不安も心のつらさと関わっていましたが、結びつきは小さめでした(0.122)。AIの使用から心のつらさへの間接的なつながりは、孤独を通る道すじで0.087、不安を通る道すじで0.020でした。
情報を探して使いこなす力(情報リテラシー)が高い人では、AIの使用と仕事を失う不安の結びつきが弱くなっていました(低い人で0.318、高い人で0.140)。反対に、AIの倫理面のリスク(間違い、偏り、個人情報など)を強く気にする人では、AIの使用と孤独の結びつきが強くなっていました(気にしない人で0.127、気にする人で0.359)。
対象: 中国・昆明市の20社で働く424人(女性71.0%、36〜45歳が73.8%、一般の社員が77.1%) / 限界: 一度きりの調査で、因果の向きはわからない。AIの使用と心のつらさの直接の相関は0.087と小さく、モデルの当てはまりも一部の指標で基準に届いていない。
McCarthyら / カナダ・トロント大学ほか(2026年)[2]
働く場での孤独について、経営学、組織心理学、社会学、医学などの213本の論文(233件の実証研究)をまとめたレビューです。在宅勤務、技術ストレス、AIの導入など、今の職場の特徴が孤独を強めうるものとして挙げられています。
論文が紹介している先行研究には、AIシステムとやりとりする頻度が高い社員ほど孤独が強まる、という報告があります。一方でレビューは、技術を使うから孤独になるのか、孤独な人が技術に頼るのかは、まだはっきりしないとしています。
孤独を減らす取り組みとして有望なものに、ストレスへの対処、人づきあいの練習、ボランティア、マインドフルネスが挙げられ、職場での友人関係を育てることもすすめられています。
対象: 213本の論文に含まれる233件の研究 / 限界: 数値をまとめ直したメタ分析ではなく、研究の流れを整理したレビュー。多くの研究が一度きりの調査。
Liangら / 中国・北京大学(2026年)[3]
AIやロボットなどの技術に仕事を奪われる不安について、96件の研究(4万3,104人)をまとめたメタ分析です。この不安が強い人ほど、緊張や不安などのその場のストレス反応が強く(関連の強さ0.41)、燃え尽きなどを含む長い目で見た心の元気さは低い(−0.33)関連がありました。
学ぶ力が高い集団(学歴の高い人の割合で推定)では、不安とストレス反応の結びつきが弱くなっていました。
対象: 96件の研究、計4万3,104人 / 限界: もとになった研究の多くは一度きりの調査で、因果はわからない。学ぶ力は学歴の割合から推定したもので、一人ひとりの力を測ったものではない。
03 まだわかっていないことAIを使うから孤独になる、と言える?
言えません。424人の調査は一度きりで、孤独な人がAIをよく使うのかもしれません。日本の職場で、生成AIの使用と孤独を追いかけた研究も見当たりません。
- 424人の調査は一時点のもので、AIの使用、孤独、心のつらさのどれが先に起きたかはわからない。
- 対象は中国の1つの都市の20社で、女性が7割、36〜45歳が7割以上と偏りがある。
- AIをどんな仕事に、1日どれくらい使ったかは測られていない。
- 働く場での孤独のレビューも、技術と孤独の向きはまだ確かめられていないとしている。
- 日本の働く人で、生成AIの使用と職場の孤独を調べた研究は見当たらない。
04 今日からできるセルフケアAIと働きながら、孤独をためないには?
AIに任せて浮いた時間の一部を、人とのやりとりに回すのが一つの手です。1日1回は同僚に直接たずねる、AIの使い方を学ぶ時間をとる、気になるAIのリスクは一人で抱えず話す、と決めておきます。
1日1回は、AIではなく同僚にたずねる
AIでも答えが出る小さな疑問を1つ選び、あえて同僚に「これ、どうしてます?」と聞いてみます。調査では、AIの使用と心のつらさのつながりは、職場の孤独を通る道すじのほうが大きくなっていました。
目安 1日1回・2分
AIの使い方を学ぶ時間を、週に1回とる
得意なこと・苦手なこと、確かめ方など、AIの使い方を1つずつ調べます。情報を使いこなす力が高い人ほど、AIの使用と仕事を失う不安の結びつきが弱くなっていました。
目安 週1回・15分
気になるAIのリスクは、一人で抱えずに話す
「この答え、本当に合っている?」「この情報を入れていい?」という心配は、チームで話して決めます。リスクを強く気にする人ほど、AIの使用と孤独の結びつきが強くなっていました。
目安 週1回・5分
AIで浮いた時間に、人と話す予定を1つ入れる
作業が早く終わった日は、同僚との短い打ち合わせや雑談、昼食の約束を1つ入れます。孤独の研究のレビューでも、職場での友人関係を育てることがすすめられています。
目安 週1〜2回・15分
会社にAIが入ってからのしんどさは韓国の375人の調査を、AIの使い方を知ることと不安の関係は中国の583人の調査を、在宅勤務の孤独は日本の13,468人の調査を、人に聞くのがこわい人は頼まれた側の受け止め方の研究も参考にしてください。
05よくある質問
仕事でAIを使うと、うつになりやすい?
そうとは言えません。中国の会社員424人の調査は病気の診断を調べたものではなく、「心のつらさ」の点数を測ったものです。AIの使用と心のつらさの直接の相関は0.087と小さく、つながりの多くは職場の孤独を通る道すじで説明されていました。一度きりの調査なので、因果もわかりません。
AIを使うのをやめたほうがいい?
研究はそれを示していません。424人の調査で心のつらさとより強く関わっていたのは、AIの使用そのものより、職場での孤独でした。AIを使いながらも、同僚とのやりとりを残す工夫のほうが、研究の結果には沿っています。
AIのリスクを気にする人ほど孤独になりやすいのはなぜ?
424人の調査では、AIの倫理面のリスクを強く気にする人ほど、AIの使用と職場の孤独の結びつきが強くなっていました。研究者は、リスクを気にする人ほど同僚との会話を控えたり、AIの話題を避けたりしやすく、それが職場での孤立につながる、と考えて調べていました。ただ、こうした行動そのものは測られていません。
仕事を失う不安と孤独、どちらが心に響きやすい?
424人の調査では、心のつらさとのつながりは孤独のほうが大きく、職場の孤独と心のつらさの結びつきは0.461、仕事を失う不安との結びつきは0.122でした。ただ、技術に仕事を奪われる不安の96件のメタ分析では、不安が強い人ほどストレス反応も強い関連があり、どちらも無視できません。
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出典
- Liu M, Li Y, Li J (2026). The impact of generative AI use on employees' psychological distress: a moderated mediation model. Frontiers in Public Health. https://doi.org/10.3389/fpubh.2026.1798423
- McCarthy JM, Erdogan B, Bauer TN, Kudret S, Campion E (2026). All the Lonely People: An Integrated Review and Research Agenda on Work and Loneliness. Journal of Management. https://doi.org/10.1177/01492063241313320
- Liang J, Wong CH (2026). Navigating the Digital Storm: A Systematic Review and Meta-Analysis of Technology-Induced Job Insecurity, Its Outcomes and Moderators. Behavioral Sciences. https://doi.org/10.3390/bs16091474


