夜まで画面と明かりの中で過ごし、寝る時間が遅いまま戻らない。米国の8人の実験では、電気の明かりのない1週間のキャンプで、体内時計が約2時間早まっていた

夜遅くまでパソコンやスマホの画面を見て、部屋の明かりもつけたまま。気づけば寝る時間がどんどん遅くなり、早く寝ようとしても眠くならない。そんな状態が何か月も続いている人は少なくありません。結論から言うと、米国の小さな実験では、電気の明かりのない1週間のキャンプで、体内時計が約2時間早まっていました。昼の光を増やし、夜の光を減らすことが、リズムを立て直す手がかりになりそうです。
3行でわかる
- 米国コロラド州の大人8人が、電気の明かりのない夏のキャンプを1週間すると、体内時計の目印が約2時間早まり、寝る時間と起きる時間も約1.2時間早くなった。
- 冬の1週間のキャンプ(5人)では約2.6時間、夏の週末2日だけのキャンプ(9人)でも約1.4時間早まった。家で週末を過ごした人は逆に約1時間遅くなった。
- どの実験も人数が少なく、元気な若い大人だけが対象だった。家に戻ったあと効果が続くかはわかっていない。専門家は、昼は明るく、寝る3時間前から暗くする目安を示している。
01 結論から言うと遅くなった体内時計は、光で戻せる?
戻せる可能性があります。米国の実験では、昼の光を浴びて夜は電気の明かりを使わない1週間で、体内時計が約2時間早まりました。ただ、人数は8人と少なく、日常の生活で同じことが起きるかは確かめられていません。
体内時計は、眠気や体温のリズムを約1日の周期で刻む仕組みです。その時計を合わせる一番の手がかりが、目に入る光です。
現代の生活では、昼は室内にいて光が少なく、夜は照明や画面の光を浴びます。研究者は、この「昼に暗く、夜に明るい」生活が、体内時計を遅らせていると考えています。キャンプの実験は、この光の条件を自然に近づけると時計がどう動くかを調べたものです。
寝る時間が毎日ばらばらなときの影響は、寝る時間と起きる時間がバラバラなときの記事で整理しています。
02 研究とデータでわかっていることキャンプで、体内時計はどのくらい早まった?
夏の1週間のキャンプで約2時間、冬の1週間で約2.6時間、夏の週末2日だけでも約1.4時間早まりました。昼に浴びる光は、ふだんの生活の4倍以上になっていました。
Wrightら(2013、米国コロラド大学ボルダー校)[1]
大人8人が、ふだんの生活を1週間送ったあと、ロッキー山脈で1週間テント生活をしました。使えたのは日光とたき火だけで、懐中電灯や電子機器は使いませんでした。キャンプのあと、眠りのホルモン(メラトニン)が出始める時刻など、体内時計の目印はどれも約2時間早まり、日没のころになりました。寝る時間と起きる時間も約1.2時間早まりましたが、睡眠時間は6.7時間と6.8時間で変わりませんでした。ふだんの生活では夜型の人ほど体内時計が遅かったのに、キャンプのあとはその差が小さくなっていました。夜型の人ほど大きく早まっていたためです。
対象: 米国コロラド州の大人8人(女性2人、平均30歳)、7月の調査 / 限界: 人数がとても少なく、真夏の1か所だけの結果。何日で時計が合うのかは調べていない。
Stothardら(2017、米国コロラド大学ボルダー校ほか)[2]
冬(12月)に1週間キャンプをした5人では、浴びた光がふだんの13倍を超え、眠りのホルモンが出始める時刻が約2.6時間早まりました。寝る時間も約2.5時間早まり、睡眠は平均7.6時間から9.9時間に延びていました。夏(7月)の調査では、週末の2日間をキャンプで過ごした9人と、家で過ごした5人を比べました。キャンプの人はこの時刻が約1.4時間早まり、家の人は約1時間遅くなっていました。家の人は、週末に寝る時間も起きる時間も約1.1時間遅くなっていました。
対象: 米国コロラド州の、体をよく動かす健康な大人(冬5人・夏14人) / 限界: 人数が少なく、夏の調査はくじで組を分けていない。冬はテントの中で長く過ごしたことも睡眠に影響した可能性がある。
Brownら(2022、英国マンチェスター大学ほか18人の専門家)[3]
体内時計と睡眠の専門家が、健康な大人に向けた室内の光の目安をまとめた推奨です。昼は目に届く光を一定以上(体内時計に効く光の量で250以上)に保つこと。寝る3時間前からは10以下に抑えること。寝ている間は1以下にすることを勧めています。現代の生活では昼の光が足りない人が多く、寝る時間が遅い人で特にその傾向があると述べています。
対象: 健康な大人向けの照明の推奨(専門家の合意) / 限界: 単位はふだんの照明の「ルクス」とは測り方が違い、家で正確に測るのは難しい。睡眠の病気がある人向けではない。
3つを並べると、昼に明るい光を浴び、夜は暗くするほど、体内時計は早まる方向に動くと見えてきます。キャンプそのものより、光の浴び方を変えたことが大事だったと考えられています。
03 まだわかっていないことキャンプで早まった体内時計は、帰ったあとも続く?
続くかどうかはわかっていません。どの実験もキャンプ中の変化を測っただけで、家の明かりの生活に戻ったあと、どのくらいで元に戻るかは調べていないためです。
- 実験の参加者は8人・5人・14人と少なく、コロラド州の元気な若い大人だけだった。
- 疲れや気分がよくなったかは測っていない。測ったのは体内時計の目印と睡眠の時刻。
- 夏の週末の調査は、くじで組を分けていない。キャンプを選ぶ人と家で過ごす人で、もともと違いがあった可能性がある。
- 夜の画面を見る時間が長い人や、日本の都市の生活で同じ結果になるかは確かめられていない。
04 今日からできるセルフケアキャンプに行けないとき、どう光を変えればいい?
昼に外の光を浴びる時間を増やし、寝る3時間前から部屋の明かりを落とします。週末も起きる時間を大きくずらさず、昼は外に出ます。どれもお金をかけずに、明日から始められます。
朝か昼に、外で過ごす時間をつくる
通勤の一駅を歩く、昼休みに外で過ごすなど、日光の下にいる時間を増やします。キャンプの実験では、昼に浴びる光がふだんの4倍以上になっていました。
目安 朝か昼に15〜30分、毎日
寝る3時間前から、部屋の明かりを落とす
天井の明るい照明を消し、手元の小さな明かりだけにします。画面を見るなら明るさを下げます。専門家の推奨では、寝る3時間前から目に入る光を抑えることを勧めています。
目安 寝る時刻の3時間前から
週末も、起きる時間を平日とそろえる
週末に家で過ごした人は、寝る時間も起きる時間も約1.1時間遅くなり、体内時計も約1時間遅れていました。休みの日も起きる時間は平日に近づけ、午前中に外に出ます。
目安 平日との差を1時間以内に
休みの日に、自然の中で昼を過ごす
泊まりのキャンプでなくても、公園や河原で昼の時間を長く過ごします。週末2日だけのキャンプでも体内時計が早まっていました。夜は早めに明かりを落とすところまでがセットです。
目安 月に1〜2回、昼の2〜3時間
05よくある質問
夜型の生活は、キャンプに行かないと戻らない?
キャンプでなくても、光の浴び方を近づけることはできます。実験で体内時計が早まった理由は、昼に浴びる光が増え、夜の電気の明かりがなくなったことだと考えられています。昼に外へ出る時間を増やし、夜は部屋を暗くすることから始められます。
週末だけキャンプに行っても意味はある?
米国の夏の調査では、週末の2日間だけのキャンプでも、眠りのホルモンが出始める時刻が約1.4時間早まっていました。家で過ごした人は約1時間遅くなっていました。ただし、9人と5人の小さな比較で、平日に戻ったあとどうなるかは調べていません。
夜のスマホをやめれば、寝る時間は早くなる?
夜の光を減らすことは手がかりの一つですが、それだけで十分かはわかっていません。キャンプの実験では、夜の光が減っただけでなく、昼の光も4倍以上に増えていました。寝る前のスマホと睡眠の研究は、夜のスマホのブルーライトの記事とリベンジ夜更かしの記事で整理しています。
早く寝ようとしても眠れないのはなぜ?
体内時計が遅れていると、早く布団に入っても眠気が来にくいと考えられています。米国の実験では、ふだんの生活では夜型の人ほど体内時計が遅く、キャンプでその差が小さくなっていました。朝の時間に頭が回らないときの研究は、夜型の人の朝の集中の記事にまとめています。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Wright KP Jr, McHill AW, Birks BR, Griffin BR, Rusterholz T, Chinoy ED (2013). Entrainment of the human circadian clock to the natural light-dark cycle. Current Biology, 23(16), 1554–1558. https://doi.org/10.1016/j.cub.2013.06.039
- Stothard ER, McHill AW, Depner CM, Birks BR, Moehlman TM, Ritchie HK, Guzzetti JR, Chinoy ED, LeBourgeois MK, Axelsson J, Wright KP Jr (2017). Circadian entrainment to the natural light-dark cycle across seasons and the weekend. Current Biology, 27(4), 508–513. https://doi.org/10.1016/j.cub.2016.12.041
- Brown TM, Brainard GC, Cajochen C, et al. (2022). Recommendations for daytime, evening, and nighttime indoor light exposure to best support physiology, sleep, and wakefulness in healthy adults. PLOS Biology, 20(3), e3001571. https://doi.org/10.1371/journal.pbio.3001571


