仕事用のSNSで人の経歴を見るたび、自分の目標を下げたくなる。ドイツの188人の調査では、よく使う人ほどキャリアを比べ、目標との差を感じ、目標を下げる気持ちにつながっていた

同年代の昇進、資格の取得、AIを使った新しい仕事。仕事用のSNSを開くたびに、人の経歴がまぶしく見えて、「自分の目標は高すぎたのかも」と思うことがあります。ドイツの188人の調査では、キャリアを人と比べるほど目標との差を感じ、目標を下げる気持ちにつながっていました。比べる前に、自分の目標を自分の言葉で確かめておくことが予防の手がかりになります。
3行でわかる
- ドイツの仕事用のSNSの利用者188人の調査では、よく使う人ほどキャリアを人と比べる傾向が強く、比べる人ほど自分の目標との差を大きく感じていた。
- 目標との差を感じる人ほど目標を見直す気持ちが強く、目標を「下げる」気持ちはこの比べる流れで説明できた。一方、目標を「上げる」気持ちはこの流れでは説明できなかった。
- 1回きりのアンケートで、因果関係はわかっていない。見る前に自分の目標と理由を書いておく、見る目的と時間を決める、から始められる。
01 結論から言うと人の経歴を見ると、目標を下げたくなるのはなぜ?
人の経歴と比べることで、自分の目標との差が大きく見えるためと考えられます。ドイツの調査では、比べる人ほど目標との差を感じ、差を感じる人ほど目標を下げる気持ちが強い、というつながりが見られました。
仕事用のSNSのプロフィールには、学歴や職歴、成果が整った形で並びます。研究者は、こうした場では失敗や回り道が表に出にくく、うまくいった話ばかりが目に入りやすいと指摘しています。
うまくいった話と自分の今を比べると、「自分の目標には届きそうにない」と感じやすくなります。届かない気がする目標は、がっかりやストレスのもとになります。そこで目標そのものを低く見直したくなる、という流れです。
目標を見直すこと自体は悪いことではありません。この記事では、人と比べた勢いで目標を下げてしまう前にできる、日頃の備えを扱います。
02 研究とデータでわかっていること仕事のSNSと目標の見直しは、どうつながる?
ドイツの188人の調査で、よく使う、比べる、目標との差を感じる、目標を下げたくなる、という順のつながりが見られました。日本の会社員の調査でも、仕事の投稿で上と比べることが焦りと結びついていました。
Vogtら(ドイツ・ルール大学ボーフムなど、2026年)[1]
仕事用のSNS(LinkedIn)をよく使う人ほど、キャリアを人と比べる傾向が強くありました(相関0.35)。比べる人ほど目標との差を大きく感じ(相関0.33)、差を感じる人ほど目標を見直す気持ちが強くありました(相関0.50)。分けて調べると、目標を下げる気持ちは「比べる→差を感じる」の流れで説明できました。目標を上げる気持ちは、使う量と直接結びついていましたが、この流れでは説明できませんでした。
対象: ドイツの利用者188人(19〜58歳、平均26.5歳、約68%が学生) / 研究デザイン: 1回きりのアンケート調査 / 限界: 因果関係はわからず、目標を見直している人がSNSをよく見るようになった可能性もあります。キャリアの初めの段階の若い人が中心です。
Fukubayashi・Fuji(2021年)[2]
日本の会社員309人の調査では、SNSで人の仕事の前向きな投稿を見ることが、キャリアを人と比べることを通して「行き詰まっている」という焦りと結びついていました。7日間の記録(1,254回分)では、焦りを強めていたのは上と比べたときでした。
対象: 日本の会社員(最初の調査309人、7日間の記録は111人) / 限界: 調査による関連で、比べることが焦りを生んだという因果関係までは確かめていません。
Ozimekら(2026年)[3]
仕事用のSNSを見るだけで使うことが多い人ほど、「やりとりが多すぎる」と感じる負担が大きく、その負担はSNS疲れと結びついていました。ただし、見るだけの使い方とSNS疲れの直接の関連は見られませんでした。
対象: ネット調査に答えた利用者137人(21〜62歳、平均32.0歳) / 限界: 人数が少ない1回きりの調査で、研究者自身も予備的な結果としています。
Leiら(2026年)[4]
ネット上で自分より上の人と比べることは、心の不調のさまざまな指標と関連していました(平均の相関0.330)。いちばん強かったのは、ねたみや人からの評価へのおそれなど、人との関係で生じるつらい気持ちでした(相関0.438)。
対象: 54の集団・3万6,583人分の研究のまとめ / 限界: 関連をまとめたもので、比べることが不調を生むという因果関係は確かめられていません。
03 まだわかっていないこと見るのを控えれば、目標を守れる?
まだ結論は出ていません。仕事用のSNSと目標の関係を調べた研究は少なく、使い方を変えて目標や気持ちが守られるかを確かめた実験は、まだ見つかっていません。
- 紹介した研究はどれも1回きりの調査で、比べることが目標を下げさせたのか、もともと迷っている人が比べやすいのかは区別できていません。
- ドイツの調査では、参加者の平均の意向はむしろ「目標を上げる」側でした。仕事用のSNSが目標を下げさせる、とは言えません。
- 目標を下げることが、その人の心の健康にとって良いのか悪いのかは、この研究では調べられていません。
- キャリアの長い人や、日本の仕事用のSNSの利用者で同じ結果になるかはわかっていません。
04 今日からできるセルフケア比べて目標を下げる前に、日頃できることは?
見る前に自分の目標と理由を書いておくこと、見る目的と時間を決めること、成功の投稿の「見えない部分」を思い出すことです。研究者が勧める工夫で、どれもお金をかけずに始められます。
自分の目標と、その理由を3行で書いておく
「何を目指すか」「なぜそれが大事か」「今月やること」を書き、見る前に読み返します。ドイツの研究者は、目標を人との比較ではなく、自分の価値観に照らして見直すことを勧めています。
目安 最初に5分、見る前に30秒
開く目的と時間を決めてから見る
「求人を1件確かめる」「知り合いに返信する」など目的を1つ決め、終わったら閉じます。見るだけの使い方が多い人ほど、やりとりの多さを負担に感じていたという調査もあります。
目安 1回10分まで
まぶしい経歴を見たら「載っていない部分」を1つ想像する
不採用、回り道、時間がかかった時期など、プロフィールに書かれない部分を思い浮かべます。研究者は、仕事用のSNSが成功を中心に見せる場だと知っておくことが、比べ方を現実に近づけると述べています。
目安 1回10秒
目標を変えたくなったら、1日おいてから決める
見た直後に目標を書き換えず、翌日に1の3行を読み返してから決めます。比べた勢いではなく、自分の基準で見直せているかを確かめるためです。
目安 1日おく
SNSで同年代の活躍を見て焦ったその場での対処は キャリアに焦るときの記事、届かない目標から切り替えるときの考え方は 人生が遅れている気がするときの記事 で紹介しています。比べる相手を前の自分にする習慣は 前の自分と比べる記事 にあります。
05よくある質問
仕事用のSNSを見ると落ち込むのは、自分に実力がないから?
実力の問題とは言えません。仕事用のSNSには、成果や昇進など、うまくいった話が集まりやすい場です。ドイツの188人の調査では、よく使う人ほどキャリアを人と比べる傾向が強く、比べる人ほど自分の目標との差を大きく感じていました。
目標を下げるのは悪いこと?
悪いとは限りません。状況に合わせて目標を見直すのは自然なことです。気をつけたいのは、自分で考えた結果ではなく、人の経歴と比べた勢いで下げてしまうことです。見直すときは、自分の基準で確かめてから決めるのがおすすめです。
仕事用のSNSはやめたほうがいい?
やめる必要があるかどうかは、研究ではわかっていません。同じ調査では、よく使う人ほど目標を上げる意向も強いという結果もありました。見る目的と時間を決め、見る前に自分の目標を確かめておく使い方から試せます。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Vogt M, Rohmann E, Bierhoff HW, Ozimek P (2026). Revising Career Goals on LinkedIn: The Role of Career-Related Social Comparison and Goal Discrepancy. Behavioral Sciences, 16(8), 1271. https://doi.org/10.3390/bs16081271
- Fukubayashi N, Fuji K (2021). Social Comparison on Social Media Increases Career Frustration: A Focus on the Mitigating Effect of Companionship. Frontiers in Psychology, 12, 720960. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2021.720960
- Ozimek P, Spannenkrebs AH, Bohl E, Rohmann E, Hoffmann D, Bierhoff HW (2026). When Professional Networking Becomes Exhausting: Passive LinkedIn Use, Communication Overload, and Social Media Fatigue. Behavioral Sciences, 16(9), 1512. https://doi.org/10.3390/bs16091512
- Lei Y, Hu S, Sun Y, Zheng L (2026). "Looking up" linked to feeling down: a meta-analysis of online upward social comparison and psychological maladjustment. Frontiers in Psychology, 17, 1825169. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1825169


