親しい友達の幸せな投稿ほど、心がざわつくのはなぜ?ドイツの146人の実験では、親しい相手ほど一緒にうれしくなり、憧れに近いうらやましさも強かったが、相手を悪く思う妬みは親しさと関係がなかった

知らない人の旅行写真は流せるのに、仲のいい友達の投稿だと心がざわつく。大切な友達なのに、と自分が嫌になるかもしれません。研究では、親しい相手の投稿ほど一緒にうれしくなり、「いいな、自分も」という憧れに近い気持ちも強くなっていました。相手を悪く思う妬みは、親しさとは関係がありませんでした。
3行でわかる
- ドイツの146人の実験では、友達の旅行の投稿を読んだとき、親しい相手ほどうれしさが強く、憧れに近いうらやましさも強かった。
- 相手を悪く思う妬みは、親しさで差がなく、もともとの妬みやすさなど本人の側の特徴と結びついていた。
- 主に米国の207人が読んだ友達の投稿598件では、心地よさを感じたのが64.2%、うらやましさは12.4%だった。
01 結論から言うと親しい友達の投稿ほど、心がざわつくのはなぜ?
親しい相手の出来事は、自分ごととして響きやすいからです。研究では、親しい友達の投稿ほど一緒にうれしくなり、「自分もそうなりたい」という憧れに近い気持ちも強くなっていました。
心理学では、うらやましさを2つに分けて考えることがあります。1つは「いいな、自分もがんばろう」という憧れに近いうらやましさ。もう1つは「ずるい」「失敗すればいいのに」と相手を悪く思う妬みです。
親しい友達の投稿でざわつくとき、その多くは前者かもしれません。研究で親しさと結びついていたのは、うれしさと憧れに近いうらやましさのほうでした。相手を悪く思う妬みは、親しさとは関係がなく、本人がもともと持つ妬みやすさと結びついていました[1]。
つまり、親しい友達の投稿で心が動くのは、相手を大切に思い、相手の世界を自分に近く感じているしるしでもあります。ざわつく自分を「性格が悪い」と決めつける必要はありません。
02 研究とデータでわかっていること親しさで、うらやましさはどう変わる?
ドイツの実験では、親しい友達の旅行の投稿ほど、うれしさと憧れに近いうらやましさが強く、相手を悪く思う妬みは親しさで変わりませんでした。うらやましさ全体は、親しさより本人の特徴と結びついていました。
Lin と Utz(2015)[1]
1つめの調査では、主に米国の207人が自分のFacebookで最近の投稿を読み、そのときの気持ちを答えました。友達の投稿598件のうち、心地よさを感じたのは64.2%、うらやましさは12.4%でした。親しい友達のよい知らせほどうれしさが強く、悪い知らせほど悲しさが強くなっていました。うらやましさは親しさとは関係がなく、自分への評価が低い人ほど強い傾向でした。
2つめの実験では、ドイツの146人(主に大学生)が、親しい友達・中くらいの友達・あまり親しくない友達のどれかが投稿したことにした、旅行とスマホの新機種の2つの投稿を読みました。旅行の投稿では、親しい相手ほどうれしさが強く、憧れに近いうらやましさは、親しい・中くらいの相手で、あまり親しくない相手より強くなりました。相手を悪く思う妬みは、どの組でも差がありませんでした。
対象: 主に米国の大人207人(平均41.7歳)と、ドイツの主に大学生146人(平均25歳)、どちらも2014年 / 限界: 1つめは相関の調査。気持ちはすべて本人の申告で、悪い感情は少なめに答えられた可能性がある。スマホの投稿の場面では、親しさによる差は見られなかった。
Carraturo ら(2023)[2]
SNSでの比較、うらやましさ、落ち込みを調べた9本の研究を整理したレビューです。このレビューが紹介している319人の調査では、自分より上の人と比べることは、相手が親しい友達のとき、憧れや希望のような気持ちとの結びつき(β=0.46)が、ねたみや恥ずかしさのような気持ちとの結びつき(β=0.28)より強くなっていました。
対象: 2012〜2022年に発表された9本の研究 / 限界: 研究の数が少なく、多くは一時点の調査。向きを確かめられた2本では、もともとの落ち込みが、のちの比較やうらやましさを予測していた。
Zhang ら(2021)[3]
中国の大学生30人が、まず信頼ゲームで「感じのいい相手」か「感じの悪い相手」とやりとりし、そのあと自分と相手の勝ち負けを同時に見る課題をしました。感じのいい相手の勝ちは、自分も勝ったときに限って、負けより満足されていました。感じの悪い相手の場合は、いつも相手の負けのほうが満足されていました。
対象: 中国の大学生30人 / 限界: 人数が少ない実験室の課題で、SNSの投稿や現実の友達で確かめたものではない。
3つの研究を合わせると、相手との関係は、比べたときの気持ちの種類を変えるようです。好きな相手、親しい相手の成功は、うれしさや憧れにつながりやすい。一方で、相手を悪く思う妬みは、親しさより、そのときの自分の状態やもともとの傾向と結びついていました。
03 まだわかっていないこと日本のSNSや今の使い方でも同じ?
まだわかっていません。中心の研究は2014年のFacebookを対象にしたもので、人数も多くありません。日本の人や、写真や短い動画が中心の今のSNSで確かめた研究はほとんどありません。
- 中心の研究は2014年の米国とドイツのFacebookの研究です。日本の人や、今の写真・動画中心のSNSで同じ結果になるかは確かめられていません。
- 気持ちはすべて本人の申告です。相手を悪く思う妬みは、正直に答えにくい気持ちのため、少なめに出ている可能性があります。
- スマホの新機種の投稿では、親しさによる差が見られませんでした。どんな話題のときに親しさが効くのかは、まだはっきりしていません。
- 親しい友達の投稿が、長い目で見て気分をよくするのか悪くするのかは、調べられていません。
04 今日からできるセルフケア親しい友達の投稿でざわついたら、どう受け止める?
まず、その気持ちが「自分もそうなりたい」憧れか、「相手が憎い」妬みかを見分けます。憧れなら、自分にとって大事なことを知る手がかりにできます。気分が沈んでいる日は見る量を減らします。
気持ちに「憧れ」か「妬み」かの名前をつける
ざわついたら、「いいな、自分も」に近いか、「ずるい、うまくいかなければいい」に近いかを心の中で一言にします。研究では、親しい友達の投稿で強まっていたのは、前者の憧れに近い気持ちでした。
目安 1分
「何がうらやましかったか」を1行で書く
旅行なのか、休みの取れる働き方なのか、一緒に行く人がいることなのか。実験では、自分に関係が深いと感じる話題ほど、憧れに近いうらやましさが強くなっていました。書いた1行は、自分が大事にしたいことの手がかりになります。
目安 2〜3分
気分が沈んでいる日は、見る時間を決めておく
レビューでは、もともとの落ち込みが、のちの比較やうらやましさを予測していました。疲れている日や気分が重い日は、SNSを開く時間を短く決めておきます。
目安 1日1回、10分まで
友達の成功を素直に喜べずに苦しいときは妬みを前向きな力に変える研究を、「その人のために喜ぶ」練習を知りたいときは人の幸せを一緒に喜ぶ練習の研究を、SNSとの距離を見直したいときはSNSを「減らす」研究を読めます。
05よくある質問
親しい友達の投稿ほどうらやましくなるのは、性格が悪いから?
研究からは、そうとは言えません。ドイツの146人の実験では、親しい友達の旅行の投稿で強まっていたのは、うれしさと憧れに近いうらやましさでした。相手を悪く思う妬みは、親しさでは変わらず、もともとの妬みやすさと結びついていました。
友達の投稿を見て、いやな気持ちになることは多い?
主に米国の207人が読んだ友達の投稿598件では、心地よさを感じたのが64.2%、うらやましさを感じたのが12.4%でした。いやな気持ちの中ではうらやましさがいちばん多かったものの、全体ではよい気持ちのほうが多くなっていました。
あまり親しくない人の投稿なら、うらやましくならない?
ドイツの実験では、あまり親しくない友達の旅行の投稿では、親しい・中くらいの友達の投稿より、憧れに近いうらやましさが弱くなっていました。うれしさも弱くなっていました。相手を悪く思う妬みは、親しさで差がありませんでした。
うらやましさで落ち込むのは、SNSのせい?
はっきりとは言えません。SNSでの比較とうらやましさ、落ち込みを調べた9本の研究のレビューでは、3つに関連が見られましたが、向きを確かめられた2本では、もともとの落ち込みが、のちの比較やうらやましさを予測していました。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Lin R, Utz S (2015). The emotional responses of browsing Facebook: Happiness, envy, and the role of tie strength. Computers in Human Behavior, 52, 29-38. https://doi.org/10.1016/j.chb.2015.04.064
- Carraturo F, Di Perna T, Giannicola V, et al. (2023). Envy, Social Comparison, and Depression on Social Networking Sites: A Systematic Review. European Journal of Investigation in Health, Psychology and Education, 13(2), 364-376. https://doi.org/10.3390/ejihpe13020027
- Zhang H, Gu R, Yang M, Zhang M, Han F, Li H, Luo W (2021). Context-based interpersonal relationship modulates social comparison between outcomes: an event-related potential study. Social Cognitive and Affective Neuroscience, 16(4), 439-452. https://doi.org/10.1093/scan/nsaa167


