比べて落ち込む

人と比べて「自分はダメだ」と思ったとき、「自分はできる」と唱えるのは効く?自信が低い人では前向きな言葉で気分が下がった実験があり、「精一杯やる」と唱えたオランダの小学生212人では、自信のない子の成績が下がらなかった

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わかっている度 ★☆☆ 低研究3本・公的指針0件を整理
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Photo: Dana Marin amsterdamian / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

同僚や友だちと比べて、「自分はダメだ」と思ってしまう。そんなとき、「自分はできる」「自分は素晴らしい」と唱えるとよい、という助言をよく見かけます。研究では、自信が低い人ほど、こうした言葉でかえって気分が下がる結果がありました。オランダの子ども212人の実験では、「精一杯やる」と心の中でくり返した組で、自信のない子の成績が下がりませんでした。

3行でわかる

  1. 心理学の実験では、自信(自尊心)が低い人が「私は愛される人間だ」とくり返すと、くり返さなかった人より気分が悪くなっていた。
  2. オランダの小学生212人の実験では、「精一杯やる!」と心の中で唱えた組だけ、自信のない子の算数の成績が下がらなかった。「自分はとても得意だ」と唱えた組では、この効果はなかった。
  3. 比べて落ち込んだ直後は、自分の価値を言い聞かせるより、「次の10分を精一杯やる」のように、これからの努力や手順についての短い言葉にするのが手がかりになる。

01 結論から言うと比べて落ち込んだとき、「自分はできる」と唱えるのは効く?

自信が低いときに「自分はできる」「自分は素晴らしい」と唱えると、かえって気分が下がることがあります。研究で役に立っていたのは、能力ではなく「精一杯やる」のような努力についての短い言葉でした。

前向きな言葉を自分にかけることは、気分を上げる方法として広く勧められてきました。ところが、自信が低い人がそうした言葉をくり返すと、気分が悪くなったという実験があります。研究者らは、前向きな言葉は、それを最も必要としている人にかえって逆効果になりうる、と書いています。

一方で、自分の能力ではなく「これからどうするか」を言い聞かせる言葉は、自信のない子どもの成績を支えていました。ここで紹介する研究は、人と比べた直後の気分を測ったものではありません。比べて落ち込む場面への当てはめは、研究からの推測です。

02 研究とデータでわかっていること自分にかける言葉で、結果は変わる?

変わっていました。自信が低い人では、自分の価値を言い聞かせる言葉で気分が下がり、努力についての言葉では成績の落ち込みが防がれていました。手順や目標についての言葉は、大人の大規模な実験で成績と気分をわずかに上げていました。

212人「精一杯やる」と唱える効果を調べた、オランダの小学4〜6年生(2020年発表)
約30秒テストの途中で、言葉を心の中でくり返した時間(同じ実験)
44,742人自分にかける言葉などを試した、英国のオンライン実験の参加者(16〜91歳、2016年発表)

Wood ら(2009)[1]

調査と2つの実験からなる研究です。調査では、多くの人が前向きな言葉を自分にかけ、効果があると信じていました。実験では、自尊心が低い人のうち「私は愛される人間だ」とくり返した人や、その言葉が正しい理由に目を向けた人は、そうしなかった人より気分が悪くなっていました。自尊心が高い人では、くり返した人のほうが気分がよくなっていましたが、その差は小さいものでした。

対象: 調査1つと実験2つ(参加者の人数などは、確認できた要旨に書かれていないため省いています) / 限界: 人と比べた場面での実験ではありません。この論文は本文が無料公開されておらず、要旨で確認できた内容だけを紹介しています。

Thomaes ら(2020)[2]

小学生が算数のテストの前半を解いたあと、くじで3組に分かれました。「精一杯やる!」を心の中でくり返す組、「自分はとても得意だ!」をくり返す組、何もしない組です。何もしない組と「得意だ」の組では、もともと自分の力に自信がない子ほど、後半の成績が下がっていました。「精一杯やる」の組では、自信の高さと成績の変化に関係がなくなっていました。この効果がはっきり見られたのは、自信が真ん中あたり(下から49%)以下の子でした。

対象: オランダの小学4〜6年生212人(平均10.6歳) / 限界: 子どもの算数の成績を調べた実験で、気分は測っていません。1回だけの実験で、大人や比べて落ち込む場面で同じ効果があるかはわかりません。

Lane ら(2016)[3]

英国の公共放送のサイトで行われた、大規模なオンライン実験です。参加者は、数字を探すゲームでコンピューターの対戦相手と競いました。「今回はもっと早く反応できる」(手順)や「自己ベストを超えられる」(目標)のような言葉を自分にかけた組は、何もしない組より成績がわずかによくなり、心地よい気分も強めでした。一方、「1つずつの数字に集中する」のような指示の言葉は効果がありませんでした。

対象: 英国の16〜91歳の44,742人(平均34.8歳) / 限界: 効果はとても小さいものでした。参加者がどんな環境で受けたか、言葉を本当に心の中で唱えたかはわからない、と著者らは書いています。

自分を名前で呼んで語りかける方法は「仕事の焦りで頭がいっぱいになる」、「才能がない」という思い込みについては「人と比べて「自分には才能がない」と思い込んでしまう」で整理しています。

03 まだわかっていないこと大人が比べて落ち込んだときにも、同じ効果がある?

まだ確かめられていません。努力についての言葉の効果を示したのは子どもの算数の実験で、人と比べた直後の大人の気分を調べた研究は見当たりませんでした。

  • 人と比べて落ち込んだ直後に、どんな言葉をかけると気分が戻るかを直接調べた研究は見当たりませんでした。
  • 「精一杯やる」の効果は、子どもの成績で確かめられたもので、大人の気分に同じ効果があるかはわかりません。
  • 大人の大規模な実験の効果はとても小さく、毎日の生活でどのくらい役に立つかははっきりしません。
  • 日本の人で、言葉の中身による違いを調べた研究は見当たりませんでした。

04 今日からできるセルフケア比べて落ち込んだとき、自分に何と言えばいい?

信じられない褒め言葉を無理に唱えるのはやめます。代わりに、「次の10分を精一杯やる」のように、これからの努力や手順についての短い言葉を心の中で30秒ほどくり返し、目の前の作業に戻ります。

1

信じられない褒め言葉は、無理に唱えない

「自分は素晴らしい」が今の自分にうそっぽく響くなら、使わなくてかまいません。自尊心が低い人がこうした言葉をくり返すと、気分が悪くなった実験があります。

目安 その場ですぐ

2

「精一杯やる」の一言を、30秒ほど心の中でくり返す

「次の10分、ここだけ精一杯やる」のように、能力ではなく努力についての言葉にします。小学生の実験では、約30秒くり返した組で、自信のない子の成績が下がりませんでした。

目安 30秒

3

比べる相手ではなく、自分の次の一手を言葉にする

「前回より一つ早く仕上げる」「自分のベストを超える」のように、相手ではなく自分の手順や目標を言葉にして、作業に戻ります。英国の大規模な実験では、こうした言葉で成績と気分がわずかによくなっていました。

目安 1分

比べて自分を責めてしまうときの方法は「人と比べて自分を責めてしまう」も参考になります。

05よくある質問

アファメーション(前向きな言葉を唱えること)は逆効果ですか?

人によって違う、というのが研究の結果です。ある実験では、自尊心が低い人が「私は愛される人間だ」とくり返すと、気分が悪くなっていました。自尊心が高い人ではわずかに気分がよくなっていました。研究者らは、最も必要としている人にこそ逆効果になりうると書いています。

「精一杯やる」と言うのは、ただの気休めではありませんか?

オランダの小学生212人の実験では、気休め以上の差がありました。何も唱えない組や「得意だ」と唱えた組では、自信のない子ほど成績が下がっていましたが、「精一杯やる」と唱えた組では、そうした下がり方が見られませんでした。ただし、大人の気分で確かめた研究ではありません。

大切にしていることを書く方法とは、何が違いますか?

大切にしていることを書く方法は、「自分は素晴らしい」と言い聞かせるのではなく、家族や仕事など自分にとって大事なものを振り返る練習です。67本の論文のまとめでは、幸福感が少し高まっていました。詳しくは「人と比べて落ち込む日に備えたい」で整理しています。

つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。

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出典

  1. Wood, J. V., Perunovic, W. Q. E., & Lee, J. W. (2009). Positive self-statements: Power for some, peril for others. Psychological Science, 20(7), 860–866. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2009.02370.x
  2. Thomaes, S., Tjaarda, I. C., Brummelman, E., & Sedikides, C. (2020). Effort self-talk benefits the mathematics performance of children with negative competence beliefs. Child Development, 91(6), 2211–2220. https://doi.org/10.1111/cdev.13347
  3. Lane, A. M., Totterdell, P., MacDonald, I., Devonport, T. J., Friesen, A. P., Beedie, C. J., Stanley, D., & Nevill, A. (2016). Brief online training enhances competitive performance: Findings of the BBC Lab UK psychological skills intervention study. Frontiers in Psychology, 7, 413. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2016.00413