比べて落ち込む

人と比べるくせが何年も直らない。中国の10代243人の研究では、比べること自体より「比べすぎ」と、自分を受け入れる気持ちの低さが、落ち込みの強さと結びついていた

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わかっている度 ★☆☆ 低研究3本・公的指針0件を整理
夕暮れの静かな海と石の多い岸辺
Photo: Derk29 / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

SNSを閉じても、職場でも、同窓会の話を聞いても、気づけば人と比べて落ち込んでいる。「比べるのをやめよう」と何年も思っているのに、くせは抜けない。そんなとき、目標を「比べるのを完全にやめる」に置くと、かえって苦しくなりがちです。研究から見えてくるのは、比べること自体より「比べすぎ」と、自分を受け入れる気持ちの低さのほうが、落ち込みの強さと結びついていたという姿でした。そして、自分を受け入れる気持ちは、練習で少しずつ高められる可能性があります。

3行でわかる

  1. 中国の病院の心の相談に来た10代243人の研究では、自分を受け入れる気持ちが強い人ほど落ち込みが軽く(相関-0.75)、人と比べることは、ほどほどなら落ち込みとの結びつきが目立たず、比べすぎると落ち込みが強まる曲線の関係だった。
  2. ルーマニアの教員100人の研究では、「自分の価値は成果や人との比較で決まらない」という考え方を学ぶ週1回・全6回のグループの講座のあと、自分を条件なしに受け入れる気持ちの点数が上がり、6か月後も保たれていた(くじで組を分けてはいない)。
  3. 中国の大学1年生149人の研究では、自分の長所を仲間から伝えてもらうなどの体験型の授業6回で、自分を受け入れる気持ちが上がり、講義だけの授業では上がらなかった。比べるくせを消すより、自分を受け入れる力を育てるほうが現実的な立て直しになりうる。

01 結論から言うと比べるくせが直らないと、落ち込みも続く?

そうとは限りません。研究では、ほどほどに比べることより「比べすぎ」と、自分を受け入れる気持ちの低さが、落ち込みの強さと結びついていました。比べるくせを消すより、自分を受け入れる気持ちを育てるほうが立て直しの近道になりえます。

人と比べることは、自分の立ち位置を知るための自然な心の働きです。研究の著者らも、比べることを完全になくすのではなく、比べすぎない、比べ方のバランスをとることを目標にするよう書いています。

ここでいう「自分を受け入れる気持ち」は、よいところも足りないところも含めて、今の自分をまるごと認める感覚のことです。うまくいったときだけ自分を認める自信とは少し違い、人より劣っている部分を見つけても、自分の価値まで下がったとは考えない土台になります。

02 研究とデータでわかっていること自分を受け入れる気持ちは、あとから育てられる?

育てられる可能性を示す研究があります。ルーマニアの教員と中国の大学生の研究では、6回の講座や授業のあと、自分を受け入れる気持ちの点数が上がっていました。ただ、どちらも小規模で、比べるくせへの効果は直接調べていません。

-0.75自分を受け入れる気持ちと、落ち込みの強さの結びつき(相関)。中国で心の相談に来た12〜18歳の243人(2022年に調査、2025年発表)
84→90点条件なしに自分を受け入れる気持ちの点数(20〜140点)。講座を受けたルーマニアの教員50人の平均。6か月後も89点(2023年発表)
149人体験型の授業と講義型の授業に、クラスごとに分かれた中国の大学1年生(平均18歳、2022年発表)

Ruanら(2025年)[1]

中国・温州の精神科の病院に心の相談で訪れた10代に、自分を受け入れる気持ち、人と比べる傾向、落ち込みの強さをたずねた。自分を受け入れる気持ちが強い人ほど、落ち込みが軽く(相関-0.75)、人と比べる傾向も弱かった(-0.32)。

人と比べる傾向と落ち込みの関係は一直線ではなく、ほどほどの範囲では落ち込みが低めで、比べすぎると落ち込みが強まる曲線の形だった。自分を受け入れる気持ちと比べる傾向の組み合わせにも意味のある関係があり、著者らは、自分を受け入れる気持ちが強いと、比べすぎの影響が和らぐ可能性があると解釈している。

対象: 12〜18歳の243人(平均14.95歳、男性33.7%) / 限界: 1回のアンケートによる研究で、原因と結果は言えない。病院に相談に来た若者が対象で、大人や一般の人にあてはまるかはわからない。

Samfira・Sava(2023年)[2]

「人は成果や評価と関係なく、人であるだけで価値がある」という考え方(論理療法という心理療法の考え方)を学ぶグループの講座を、教員が週1回・全6回(1回90〜120分)受けた。自分の考えのくせに気づいて言い直す練習や、宿題もあった。使われた質問には「自分の価値は、人と比べてどうかで大きく決まる」という項目も含まれる。

講座を受けた組では、条件なしに自分を受け入れる気持ちの点数が、平均84.18点から講座後90.16点に上がり、6か月後も89.32点だった。受けなかった組では、はっきりした変化はなかった。一方、完璧主義の点数には、組によるはっきりした差は出なかった。

対象: ルーマニア・ティミショアラ周辺の小中高の教員100人(女性8割強) / 限界: くじで組を分けておらず、2つの組は学校の種類や経験年数が違った。組と時期の組み合わせの検定は、分析によっては有意の手前(p=0.06)だった。

Qianら(2022年)[3]

必修の心の健康の授業を、クラスごとに、講義型か体験型のどちらかで週1回・全6回受けた。体験型では、自分の生い立ちを絵に描く、いろいろな角度から自分を評価する、仲間から自分の長所を次々に伝えてもらう、自分を受け入れる練習をする、といった活動をした。

自分を大切に思う気持ち(自尊心)はどちらの授業でも上がった。自分を受け入れる気持ちは、体験型の組で平均20.95点から23.16点に上がり、講義型の組では、はっきりした変化がなかった。

対象: 中国の高等職業学校の1年生149人(約9割が男性、平均約18歳) / 限界: 個人ではなくクラスごとに組を分けた。授業の直後だけの測定で、続くかはわからない。人と比べるくせや落ち込みは測っていない。

03 まだわかっていないこと自分を受け入れられれば、比べても平気になる?

まだ確かめられていません。自分を受け入れる気持ちを高める練習で、比べたあとの落ち込みが実際に軽くなるかを試した研究は、今回見つかりませんでした。

  • 自分を受け入れる気持ちが落ち込みを防ぐのか、落ち込みが軽いから自分を受け入れられるのかは、1回の調査では区別できない。
  • 「ほどほど」と「比べすぎ」の境目が、具体的にどのくらいかは示されていない。
  • 講座や授業の研究はどちらも小規模で、くじで個人を分けた試験ではない。一人で本やメモを使って練習した場合の効果はわからない。
  • 日本の大人で同じ結果になるかはわからない。

04 今日からできるセルフケア比べて落ち込む状態から立て直すには?

比べるのを無理にやめようとせず、比べた結果と自分の価値を切り離す言い直しをします。長所と短所を両方書き出し、信頼できる人と長所を伝え合うのも一つの方法です。どれもお金はかかりません。

1

「比べた」ことは責めず、「比べすぎ」にだけ気づく

比べたこと自体は自然な心の働きとして流します。同じ相手のことを何度も考えている、SNSを閉じたあとも頭から離れない、と気づいたときだけ「今は比べすぎている」と心の中で言い、別の作業に移ります。

目安 気づいたときに10秒

2

「あの人のほうが○○ができる。それと私の価値は別」と言い直す

比べて落ち込んだら、比べた事実と自分の価値を分けて、短い文にします。ルーマニアの講座で学ばれていたのは、人の価値は成果や比較で決まらないという考え方でした。

目安 1回1分・落ち込んだときに

3

長所と短所を1つずつ書き、両方を「自分の一部」と認める

紙に「得意なこと」「苦手なこと」を1つずつ書き、最後に「どちらも今の自分」と添えます。中国の大学の授業でも、いろいろな角度から自分を評価し、受け入れる練習が行われていました。

目安 週1回・5分

4

信頼できる人と、お互いのいいところを1つずつ伝え合う

家族や友人と「最近のあなたのいいところ」を1つずつ言い合います。中国の研究では、仲間から長所を伝えてもらう活動を含む体験型の授業で、自分を受け入れる気持ちが上がっていました。

目安 週1回・5分

比べるのをやめようとするほど比べてしまう仕組みは比べるのをやめようと思うほど比べてしまうときの研究で、自分を責めてしまうときの工夫は人と比べて自分を責めてしまうときの「自分への思いやり」で整理しています。つらい出来事のあとで比べてしまうときは、自分よりつらい人がいるのに落ち込む自分が情けないときも参考になります。

05よくある質問

人と比べるくせは、直さないといけない?

完全になくす必要はなさそうです。中国の10代243人の研究では、ほどほどに比べる範囲では落ち込みが低めで、比べすぎると落ち込みが強まる曲線の関係でした。著者らも、比べることをなくすより、比べ方のバランスをとることをすすめています。

自分を受け入れることと、自信を持つことは違う?

研究では別のものとして扱われています。自信(自尊心)はうまくいったときに上がりやすい一方、自分を受け入れる気持ちは、足りないところも含めて自分を認める感覚です。中国の大学生の研究では、自尊心は講義でも上がりましたが、自分を受け入れる気持ちは体験型の授業でだけ上がっていました。

自分を受け入れるのは、あきらめることにならない?

研究で使われた考え方は、足りないところを認めつつ、自分の価値まで下げないというものです。ルーマニアの講座では、成果や比較と自分の価値を切り離すことが学ばれていました。成長をあきらめることとは別の話です。

一人でも、自分を受け入れる練習はできる?

できる工夫はありますが、効果を確かめた研究は今回見つかりませんでした。紹介した2つの研究は、どちらも講師のいるグループで行われたものです。中国の研究の著者らは、仲間とのやりとりが自分を受け入れる助けになった可能性を挙げています。

つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。

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出典

  1. Ruan QN, Shen GH, Wu YW, Xu D, Yan WJ (2025). Linear self-acceptance and nonlinear social comparison: interacting influences on adolescent depression. BMC Psychiatry, 25, 485. https://doi.org/10.1186/s12888-025-06873-6
  2. Samfira EM, Sava FA (2023). The effectiveness of a rational-emotive intervention on teachers’ unconditional self-acceptance, perfectionism, and pupil control ideology. Frontiers in Psychology, 14, 1240269. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2023.1240269
  3. Qian Y, Yu X, Liu F (2022). Comparison of Two Approaches to Enhance Self-Esteem and Self-Acceptance in Chinese College Students: Psychoeducational Lecture vs. Group Intervention. Frontiers in Psychology, 13, 877737. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2022.877737