人と比べるのをやめようと思うほど、かえって比べてしまう。31件の実験のまとめでは、考えを押さえ込んだあとにその考えが戻りやすかったが、3日間の練習で押さえ込みが身につき、気分が軽くなった実験もあった

「もう人と比べるのはやめよう」と決めたのに、SNSを開くたび、同僚の話を聞くたびに、また比べている自分に気づく。そして「比べちゃだめだ」と思うほど、そのことが頭から離れなくなる。そんな悪循環に疲れていないでしょうか。考えを押さえ込むことの研究は数十年あり、答えは思ったより分かれていました。
3行でわかる
- 31件の実験のまとめでは、ある考えを押さえ込もうとした人は、そのあとでその考えが戻ってきやすい「リバウンド」が見られました。頭が忙しいときは、押さえ込んでいる最中から浮かびやすくなっていました。
- 一方、16か国の大人120人の実験では、将来の恐れを思い浮かべないよう3日間練習した組で、不安や落ち込みの点数が下がっていました。
- どちらの研究も、人と比べる考えそのものを調べたものではありません。比べる考えへの効き方は、まだわかっていません。
01 結論から言うと比べるのをやめようとすると、かえって比べてしまう?
そうなりやすい場面はあります。押さえ込んだ考えが戻りやすいことは多くの実験で見られ、頭が忙しいときは特に浮かびやすくなります。ただ、押さえ込みがうまくいく研究もあり、結論はまだ出ていません。
心理学では、ある考えを頭から追い出そうとすることを「思考抑制」と呼びます。有名なのは「シロクマのことを考えないでください」と頼む実験です。考えないようにした人ほど、あとでシロクマが頭に浮かびやすくなる。これが「リバウンド」です。
人と比べる考えも、同じことが起きうると考えられます。ただし、比べる考えそのものを押さえ込む実験は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。この記事は、考えを押さえ込むこと全般の研究から、比べてしまうときの手がかりを探します。
SNSで上の人を見ると落ち込むしくみは、SNSで自分より上の人を見ると落ち込むのはなぜかの記事にまとめています。
02 研究とデータでわかっていること考えを押さえ込むと、どうなる?
押さえ込んだあとに考えが戻りやすいことは、複数のまとめで確かめられています。一方で、練習すれば押さえ込みは上達し、気分の改善につながったという実験もあります。
Wang ら(2020年)[1]
「ある考えを頭から追い出す」実験31件をまとめました。押さえ込んだあとにその考えが戻りやすいリバウンドは、頭への負荷があってもなくても見られました。押さえ込んでいる最中に逆に浮かびやすくなる現象は、ほかの課題で頭に負荷がかかっているときにだけ見られました。
対象: 実験室で決められた考え(シロクマなど)を押さえ込む実験31件 / 限界: 人と比べる考えや、自分にとってつらい考えを扱った実験ではありません。
Mamat と Anderson / ケンブリッジ大学(2023年)[2]
16か国の大人120人が、オンラインで3日間の練習をしました。自分の将来の恐れや心配を表す言葉を見たら、それが何かを確認したうえで、中身を思い浮かべずに頭から締め出します。ほかの考えで置き換えることはしません。恐れを締め出した組では、練習後に不安や落ち込みの点数が下がりました。こうした改善は、どうでもよい出来事を締め出した組よりも、恐れを締め出した組ではっきりしていました。落ち込みの改善は3か月後も続いていました。締め出した恐れがかえって強まる逆効果は、全体としては見られませんでした。
対象: 16か国の大人120人(恐れを締め出す組61人、どうでもよい出来事を締め出す組59人)、新型コロナの流行中 / 限界: 1つの研究チームによる1回の実験です。練習は実験者がつき添うオンライン形式でした。
Niczyporuk / ビャウィストク大学(2025年)[3]
考えを押さえ込む研究を、2つの実験方法にまたがって見直したレビューです。健康な人は、押さえ込んでいる間はうまく考えを減らせることが多い、と整理しています。リバウンドは3つのまとめで小〜中くらいの大きさとされる一方、結果が逆向きになった実験も少なくありません。押さえ込みが役に立つかどうかは、人や状況によって変わるとしています。
対象: 思考の押さえ込みに関する実験・調査の研究 / 限界: 1人の研究者による文献のまとめで、新しいデータを集めたものではありません。
Lei ら(2026年)[4]
SNSで自分より上の人と比べることと、心のつらさとの関係を調べた研究をまとめました(54の対象者グループ、計36,583人)。比べる人ほど、ねたみや体への不満、人の評価へのおびえ、孤独といった気持ちが強く、不安や落ち込みも強い関連がありました。この結びつきは、年齢や文化によって違いが見られませんでした。
対象: 54の対象者グループ、計36,583人 / 限界: 関連の強さをまとめたもので、比べることがつらさの原因かどうかまでは言えません。
まとめると、比べる考えが浮かぶこと自体は、多くの人に共通しています。押さえ込むと戻ってきやすい場面はありますが、押さえ込みがいつも逆効果とも言えません。頭が忙しいときに力ずくで追い出そうとするのが、いちばん裏目に出やすい使い方だと考えられます。
03 まだわかっていないこと比べる考えの押さえ込みで、まだわからないことは?
人と比べる考えを押さえ込んだ実験はなく、ここでの話は他の考えの研究からの推測です。リバウンドがどれほど確かな現象かも、研究者の間で意見が分かれています。
- 人と比べる考えを押さえ込んだときに、リバウンドが起きるかを直接調べた実験は見つかりませんでした。
- 3日間の練習で気分が軽くなった実験は1つだけで、別のチームでの追試はまだ少ない状態です。
- リバウンドを示した実験の多くは、シロクマのような決められた考えを使っています。自分にとって大事な考えでも同じかは、はっきりしていません。
- SNSを見る時間を減らすなど、比べる場面を減らす方法と、押さえ込む方法のどちらがよいかを比べた研究もありません。
04 今日からできるセルフケア比べる考えが止まらないとき、どうすればいい?
疲れて頭が忙しいときは、無理に追い出そうとしないこと。余裕があるときは、気づいたら短く締め出す練習をすること。浮かぶ自分を責めないこと。この3つから始められます。
疲れている夜は「比べるな」と力まない
31件のまとめでは、頭に負荷がかかっているときに押さえ込むと、かえって考えが浮かびやすくなっていました。疲れた夜にSNSで比べてしまったら、追い出そうと格闘せず、画面を閉じて寝る準備に移ります。
目安 気づいたらその場で1回
余裕のあるときに「気づいたら締め出す」を試す
ケンブリッジ大学の実験では、きっかけの言葉を見たら中身を思い浮かべず、ほかの考えで置き換えずに締め出す練習を、3日かけてくり返しました。比べる考えに気づいたら「今、比べた」と確認し、その先を思い描かずに目の前のことに戻ります。1回でうまくいかなくても、くり返すうちに上達したとされています。
目安 1回数秒・気づくたびに
「また比べた」で自分を責めない
押さえ込んだ考えが戻ってくるのは、多くの実験で見られる心の仕組みです。比べる考えが浮かんだら、「人ならよくあること」と一言そえて終わりにします。自分への声のかけ方は、人と比べて自分を責めてしまうときの記事で紹介しています。
目安 1回10秒
05よくある質問
「比べるのをやめよう」と思うのは、逆効果?
いつも逆効果とは言えません。31件の実験のまとめでは、考えを押さえ込んだあとにその考えが戻りやすい傾向がありました。一方、2025年のレビューは、健康な人では押さえ込みがうまくいくことも多く、逆効果ははっきり示されていないと整理しています。研究の結論はまだ分かれています。
比べる考えが何度も浮かぶのは、自分の性格のせい?
性格だけのせいとは言えません。SNSで上の人と比べることと気持ちのつらさの結びつきは、計36,583人分の研究のまとめで年齢や文化による違いが見られませんでした。押さえ込もうとした考えが戻りやすいことも、多くの実験で見られる、人の心の仕組みです。
押さえ込む練習は、比べる考えにも効く?
まだわかっていません。3日間の練習で気分が軽くなった実験で押さえ込んだのは、自分の将来についての恐れや心配で、人と比べる考えではありませんでした。比べる考えで同じ結果になるかは、確かめられていません。
比べたことを何日も思い返してしまうときは?
比べて落ち込んだことを何日も思い返してしまう記事で、少し離れた視点から振り返る方法を紹介しています。自分を責める気持ちが強いときは、人と比べて自分を責めてしまうときの記事も参考になります。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Wang DA, Hagger MS, Chatzisarantis NLD (2020). Ironic Effects of Thought Suppression: A Meta-Analysis. Perspectives on Psychological Science, 15(3), 778-793. https://doi.org/10.1177/1745691619898795
- Mamat Z, Anderson MC (2023). Improving mental health by training the suppression of unwanted thoughts. Science Advances, 9(38), eadh5292. https://doi.org/10.1126/sciadv.adh5292
- Niczyporuk A (2025). The effectiveness and adaptiveness of suppressing unwanted thoughts. Psychonomic Bulletin & Review, 33. https://doi.org/10.3758/s13423-025-02763-w
- Lei Y, Hu S, Sun Y, Zheng L (2026). "Looking up" linked to feeling down: a meta-analysis of online upward social comparison and psychological maladjustment. Frontiers in Psychology, 17, 1825169. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1825169


