スマホを見る時間が長くて、心まで疲れそうで心配。ドイツの503人の実験では、2週間だけ1日1時間減らした組で、3か月後もスマホの時間が短く、落ち込みの点数も下がっていた

仕事の連絡も、AIのニュースも、気晴らしの動画も、全部スマホの中にあります。気づけば1日の何時間も画面を見ていて、このままだと心まで疲れそう、と感じる人は少なくありません。ドイツの503人の実験では、スマホを完全にやめるのではなく、2週間だけ1日1時間減らした組で、3か月後もスマホの時間が短く、落ち込みと不安の点数が下がっていました。
3行でわかる
- ドイツの503人の実験で、2週間スマホを1日1時間減らした組は、3か月後も1日あたりの時間が対照の組より約44分短かった。
- この組では3か月後、落ち込みと不安の点数が対照の組より低かった。ただし差は小さく、時間は本人の申告。
- やめるより「1時間減らす」から始め、空いた時間に少し体を動かすのが、研究から言える無理のない予防策。
01 結論から言うとスマホを1日1時間減らすと、心の疲れは防げる?
ドイツの実験では、スマホを2週間だけ1日1時間減らした人たちで、3か月後も使う時間が短く、落ち込みと不安の点数が下がっていました。完全にやめる必要はなさそうですが、効果の大きさは小さめです。
ポイントは「ゼロにしない」ことです。この実験で頼まれたのは、いつもより1日60分だけ短くすることでした。
それでも、実験が終わったあとも使う時間は短いまま保たれていました。研究者は、減らす経験そのものが自分の使い方に気づくきっかけになり、「減らせた」という手応えが続く理由になったのではないかと考えています。ただし、これは研究者の解釈で、測って確かめたことではありません。
02 研究とデータでわかっていること1時間減らした人には、何が起きた?
1日1時間減らした組では、スマホの時間が約4時間から約3時間に減り、3か月後もほぼ同じ短さでした。落ち込みと不安の点数は、終わって1〜3か月後に下がっていました。
Prechtら / ルール大学ボーフム(2023)[1]
ドイツの成人503人を4つの組に分けた実験です。2週間、①スマホを1日60分減らす、②運動を1日30分増やす、③その両方、④いつも通り、のどれかを続けてもらいました。①の組では1日のスマホ時間が平均239分から175分に減り、3か月後も177分でした。3か月後は、いつも通りの組より1日約44分短い状態でした。
対象: ドイツの18〜79歳の503人(平均29歳、8割が女性、半数ほどが大学生、4割ほどが会社員など)。もともとスマホを1日1時間以上使い、運動は1日1時間以下の人 / 限界: スマホ時間も心の状態も本人の申告で、途中でやめた人が9〜17%いた。
Prechtら(2023)同じ研究の、心の状態の結果 [1]
①の組の落ち込みの点数は、実験前の平均3.98点から3か月後に2.76点へ下がりました(0〜21点の尺度)。3か月後の落ち込みと不安の点数は、いつも通りの組より低く、前向きな心の状態の点数は高くなっていました。どれも差の大きさは「小さい」と判定されています。
注意: 減らしている2週間のあいだは、落ち込みや「やめられない感じ」の点数ははっきり変わらず、変化が見えたのは終わってから1〜3か月後でした。
運動を1日30分増やした②の組も見てみます。週の運動時間は平均144分から329分に増え、直後は落ち込みと不安が下がりました。けれど運動量はその後減り、前向きな心の状態の点数には変化が見られませんでした。研究者は、2週間だけでなく長く続けることが大切だと述べています。
③の両方を組み合わせた組では、落ち込みの点数が実験の途中から3か月後まで、すべての時点で実験前より低くなっていました。変化が早めに出たのがこの組の特徴でした。
Liuら(2025)[2]
SNSを一定期間休む、または減らす実験(ランダム化比較試験)20件、のべ10,106人分をまとめた分析です。心の状態への効果は全体として「小さいがプラス」でした。完全にやめる方法と、時間を減らす方法のあいだで、効果の差ははっきりしませんでした。
対象: SNSを休む・減らす実験 / 限界: スマホ全体ではなくSNSの研究のまとめ。研究によって結果の幅が大きかった。
世界保健機関(WHO)の2020年の指針は、大人に週150〜300分の中くらいの強さの運動をすすめ、座って過ごす時間を軽い運動に置き換えるだけでも健康によいとしています[3]。スマホを減らした①の組でも、2週間の終わりには運動時間が増えていました。空いた時間が、体を動かす時間に回ったのかもしれません。
03 まだわかっていないこと1時間という数字は、誰にでも合う?
1時間が最適かどうかは、まだわかっていません。もともと1日6時間使う人と1時間ちょっとの人では、同じ1時間でも意味が違うと研究者自身が書いています。
- スマホ時間は本人の申告で、利用記録で測ったものではありません。
- 参加者の8割が女性で、ドイツの若い大人が中心でした。働く大人の全体や日本の人に同じ結果が出るかはわかりません。
- 何を減らしたか(SNS・動画・仕事の連絡など)は区別されていません。生成AIのチャットを減らした研究ではありません。
- 効果の大きさは小さめで、3か月より先まで続くかは調べられていません。
04 今日からできるセルフケアスマホ疲れを防ぐ減らし方は?
完全にやめるより、まず「1日1時間だけ減らす」と決め、2週間続けるのが研究に近いやり方です。空いた時間に少し体を動かすと、変化が早く出るかもしれません。
今の1日の利用時間を1回だけ確かめる
スマホの利用時間の表示を見て、平日1日の合計をメモします。そこから60分引いた数字を、2週間の目安にします。
目安 1回3分
減らす1時間を「時間帯」で決める
寝る前の30分と、朝の30分のように、使わない時間帯を2つ決めると数えやすくなります。実験の参加者も、できた日に印をつける記録表を使っていました。
目安 2週間、14日中9日できれば十分
空いた時間の一部で体を動かす
早歩きや自転車など、少し息が上がる程度の運動を入れます。減らしたぶんを全部埋める必要はありません。
目安 1日10〜30分
最初の落ち着かなさは「途中経過」と考える
実験でも、減らしている間は変化が見えにくく、良い変化が見えたのは終わって1か月ほど後でした。最初の数日でやめてしまわないための目安にします。
目安 2週間たってから振り返る
完全にスマホを断つ方法の研究はデジタルデトックスは本当に効く?に、画面を白黒にして使う時間を減らした実験はスマホの画面を白黒にすると減る?にまとめています。体を動かす効果は運動と落ち込み・不安の研究も参考になります。
05よくある質問
スマホは完全にやめないと意味がない?
完全にやめなくても変化は出ていました。ドイツの実験では1日1時間減らすだけで、3か月後の落ち込みと不安の点数が対照の組より低くなりました。SNSを休む実験のまとめでも、完全にやめる方法と時間を減らす方法の効果の差ははっきりしませんでした。
減らし始めは、かえってそわそわするのは普通?
実験でも、減らしている2週間のあいだは「やめられない感じ」の点数は下がらず、下がったのは終わって1か月後からでした。最初の落ち着かなさは、研究の中でも見られた反応です。
スマホを減らす代わりに運動するのはどう?
運動を1日30分増やした組でも、直後は落ち込みと不安が下がりました。ただ運動量はその後減り、3か月後まで続いた変化は、スマホを減らした組のほうが多くありました。両方を組み合わせた組では、変化が早めに出ていました。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Precht, L.-M., Mertens, F., Brickau, D. S., Kramm, R. J., Margraf, J., Stirnberg, J., & Brailovskaia, J. (2023). Engaging in physical activity instead of (over)using the smartphone: An experimental investigation of lifestyle interventions to prevent problematic smartphone use and to promote mental health. Journal of Public Health. https://doi.org/10.1007/s10389-023-01832-5
- Liu, Y., Mohamad, E. M. W., Azlan, A. A., & Tan, Y. (2025). Am I Happier Without You? Social Media Detox and Well-Being: A Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Behavioral Sciences, 15(3), 290. https://doi.org/10.3390/bs15030290
- Bull, F. C., et al. (2020). World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour. British Journal of Sports Medicine, 54(24), 1451. https://doi.org/10.1136/bjsports-2020-102955


