仕事のストレスで気持ちが張りつめる。子犬の動画を見ると落ち着く?韓国の会社員66人の実験では、15分見たあと不安の点数が下がっていたが、見なかった組との比較はなかった

締め切りや慣れないAIの作業に追われて、肩も気持ちもこわばったまま。そんなとき、子犬や猫の動画をつい開いてしまう人は多いはずです。それは息抜きになっているのか、ただの逃げなのか。結論から言うと、子犬の動画を見たあとに不安の点数が下がった実験はありますが、見なかった組と比べていないため、動画のおかげとまでは言えません。比べた別の実験では、前向きな気分は上がった一方、いやな気分の下がり方は見なかった組と変わりませんでした。
3行でわかる
- 韓国の会社員66人が子犬の動画を15分見た実験では、見たあとに不安の点数が6〜9点ほど下がり、脈も少し落ち着いていました。ただし、動画を見なかった組がありません。
- 米国の大学生152人をくじで分けた実験では、犬や猫の1分の動画を見た組は、意味のない砂嵐の映像の組より前向きな気分が高まりましたが、いやな気分の下がり方には差がありませんでした。
- 動物の動画は「気分を上げる小休止」として使える可能性があります。見る時間を先に決め、見たあとの気分を自分で確かめるのが現実的です。
01 結論から言うと仕事中に子犬の動画を見ると、ストレスは和らぐ?
和らぐ可能性はありますが、確かめた研究はまだ少なく、比べる組のない実験が中心です。前向きな気分を上げる効果のほうが、いやな気分を下げる効果より確かめられています。
動物とふれあうと心が落ち着く、という考えは昔からあります。生きた犬などと過ごす取り組みは「動物介在介入」と呼ばれ、病院や学校で研究されてきました。[3]
一方で、職場に犬を連れてくることはできません。そこで、画面で見るだけでも似た効果があるのかを調べた研究が出てきました。結果は「見たあとに落ち着いた」というものですが、研究の数も設計もまだ十分ではありません。
かわいい動物の写真を見たあとに細かい作業が丁寧になった日本の実験は、かわいい動物の写真と集中の記事にまとめています。こちらの記事は、集中ではなく、ストレスや不安が和らぐかに絞って見ていきます。
02 研究とデータでわかっていること動物の動画とストレスの研究は、何を示している?
子犬の動画15分で会社員の不安の点数は下がりましたが、比べる組はありませんでした。比べる組のある1分の実験では、前向きな気分だけが上がりました。
Kwak ら / 全北大学校など(2026年)[1]
韓国の会社員66人が、会社の静かな会議室で、子犬の動画(3分×5本、計15分)を見ました。見る前と後で比べると、測った時点の不安の点数が、血圧が高めでない36人で43.1から36.4に、血圧が高めの30人で41.4から32.0に下がっていました。脈拍もどちらの組でも1分あたり約3〜4回減り、緊張・怒り・疲れなどの気分の点数も下がっていました。
対象: 韓国の金融・建設の会社で働く66人(平均年齢は約39〜42歳) / 限界: 動画を見ない組がなく、1回だけの実験です。時間がたっただけで落ち着いた可能性や、調べられていると意識した影響を区別できないと、著者自身が書いています。動画を作った制作会社の代表が著者の1人です。血圧が高めでない組では、活気の点数も少し下がっていました。
Johnson ら / ネバダ大学ラスベガス校(2023年)[2]
大学の履修相談に来た学生152人を、くじで4組に分け、相談の前に1分の動画を見てもらいました。犬と猫、野生の動物、自然の風景、意味のない砂嵐の映像の4種類です。犬と猫の動画の組は、砂嵐の組より前向きな気分の点数が高くなりました。一方、いやな気分の点数は、どの動画の組も砂嵐の組と差がありませんでした。
対象: 米国の公立大学の学生152人(オンラインの履修相談) / 限界: 気分を測ったのは相談が終わったあとで、動画だけの影響とは言い切れません。仕事中の大人を対象にした実験ではありません。
Ehrlich と Peled-Avron / バル・イラン大学(2026年)[3]
生きた動物とふれあう取り組みで体の反応を測った34件の研究をまとめました。ストレスに関わるホルモン(コルチゾール)を測った14件のうち9件(64.3%)で値が下がり、心拍などの反応は研究によって結果がばらばらでした。
対象: 子ども・学生・患者などを対象にした研究34件(うち3件は学位論文) / 限界: 生きた動物の研究で、動画の研究ではありません。研究ごとの方法の違いが大きいとまとめられています。
Nittono ら / 広島大学(2012年)[4]
日本の大学生48人の実験で、子犬や子猫の写真を見たあとは、細かい作業の成功数が平均43.9%増え、大人の犬や猫の写真のあと(11.9%)より大きく伸びていました。かわいさで気持ちが前向きになり、注意が絞られたためと考えられています。
対象: 日本の大学生48人(18〜22歳) / 限界: 測ったのは作業の丁寧さで、ストレスや不安ではありません。
03 まだわかっていないこと動物の動画の効果で、まだわからないことは?
動画を見ずにただ休んだ場合と比べてどれだけ違うのかは、まだわかっていません。毎日見続けたときの効果や、仕事への影響も確かめられていません。
- 会社員の実験には、動画を見ない組がありません。15分静かに座っていただけでも、不安は下がったかもしれません。
- 比べる組のある大学生の実験では、いやな気分は砂嵐の映像の組と同じように変わっていました。ストレスそのものを下げる効果は、はっきりしていません。
- 見たのは1回だけです。毎日見る習慣にしたとき、効果が続くのか、慣れて薄れるのかは調べられていません。
- 動画のあとに仕事の成績やミスがどう変わるのかは、ストレスの実験では測られていません。
- 犬が苦手な人や、ペットを亡くしたばかりの人では、反応が違う可能性があります。
04 今日からできるセルフケア張りつめたとき、動物の動画をどう使えばいい?
時間を決めて短く見ること、見たあとの気分を自分で確かめること、見続けて止まらなくなったら別の方法に切り替えることの3つです。
見る長さを先に決めてから開く
実験で使われたのは1分と15分の動画でした。休憩のはじめに「この1本だけ」「タイマー5分まで」と決めてから見ます。おすすめ動画が次々に流れる画面は避けると、止めやすくなります。
目安 1〜15分・タイマーを使う
見る前と後で、気分を10段階でつける
研究の結果は人によって違います。見る前と後に「張りつめ度」を1〜10で心の中でつけ、下がるなら自分に合う休み方として残し、変わらないなら別の方法を試します。
目安 前後に10秒ずつ
落ち着かないときは、体から整える方法に切り替える
動画は前向きな気分を上げる効果のほうが確かめられています。焦りが強いときは、ゆっくりした呼吸や冷たいもので顔を冷やす方法のような、体の緊張に直接はたらく方法を試すのも一つです。
目安 3〜5分
05よくある質問
仕事中に動物の動画を見るのは、サボっていることになる?
休憩の時間に短く見るなら、息抜きの一つです。研究では、子犬の動画を見たあとに不安や緊張の点数が下がっていました。ただし、見る長さを決めずに見続けると休憩が長引きやすいので、時間を決めておくのが安心です。
子犬でなく、猫や他の動物の動画でもいい?
米国の大学生の実験では、犬と猫を混ぜた動画で前向きな気分が上がり、野生の動物の動画でも一部の指標で上がっていました。どの動物がよいかを比べた研究はまだ少ないので、自分が見て和むものを選べば十分です。
動画より、本物の動物とふれあうほうが効く?
生きた動物とふれあう研究は数が多く、14件中9件でストレスに関わるホルモンが下がっていました。今回調べた範囲では、動画と本物を直接比べた研究は見当たらず、どちらが効くかはわかっていません。
何本も見続けてしまい、かえって疲れる。
短い動画は次々に見てしまいやすい形です。研究で使われたのは1〜15分でした。タイマーをかけて見る、決めた本数で閉じる、おすすめが流れない画面で見る、といった工夫で区切りをつけやすくなります。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Kwak SG, Shin YJ, Kang WG, Kim MY, Lee JH, Park C, Song YH (2026). Structured puppy video viewing improves physiological and psychological stress responses in office workers. Frontiers in Public Health, 14, 1726679. https://doi.org/10.3389/fpubh.2026.1726679
- Johnson EA, Survase S, Gray PB (2023). Examining the Impact of Virtual Animal Stimuli on College Students' Affect and Perception of their Academic Advising Experience. Animals, 13(9), 1522. https://doi.org/10.3390/ani13091522
- Ehrlich N, Peled-Avron L (2026). The neural and physiological mechanisms of Animal-Assisted Interventions (AAI): A systematic review and integrated framework. Comprehensive Psychoneuroendocrinology, 27, 100367. https://doi.org/10.1016/j.cpnec.2026.100367
- Nittono H, Fukushima M, Yano A, Moriya H (2012). The power of Kawaii: Viewing cute images promotes a careful behavior and narrows attentional focus. PLoS ONE, 7(9), e46362. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0046362


